閣螳螂は娯楽を求める   作:白月

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「どんな世界も狂ってるわ。勿論、狂ってるのが普通。」
「はいはい。」
他の世界(仮想)を指摘し、自分の世界(自己)を指摘する。思考があるから。」
「うんうん。」
「でも、自分の理解しやすい方向に無意識に解釈してしまう。」
「うむうむ。」
「……そして曲がりくねってまた過ちを犯す。」
「その時はまた終焉()わらせるから大丈夫だ。」


正しい行動

未知の樹海・遺跡地帯

 

 

狂竜化レウスを追っていたら地面が揺れだした。

 

「おい、何か来そうだぞ。」

「ですね。……しかも雰囲気がヤバい。気を抜くんじゃねぇぞ。」

「勿論。」

 

遂に彼女もやる気になったか。リオレウスは逃すが、強大な存在を確認出来るなら別にいいはず。

 

 

 

雪が降り出す。

 

一つの遺跡が突然割れる。

 

その遺跡を跳ね飛ばしながら龍が出てくる。

 

龍は二人組を見つけ、常人なら失神する程の音量と狂気が混じった咆哮を天に向けて放つ。

 

 

 

二人は武器を構える。

 

 

 

ナンデヤイバヲムケルノ……!?

イヤダ、イヤダイヤダイヤダァァァッ!!

 

 

 

再び龍が咆哮する。

尻尾を振り回す。

 

 

 

「……なるほど、止まっていると足が動かなくなるのか。俺は足踏みしている。」

「私も足踏みしてる。」

 

龍は足で地面を削り、威嚇している。

 

「だけど……あの龍、戦意あるのか?攻撃的ではなさそうだが。」

「あぁ……どうも様子がおかしい。俺が話しかけてみる。」

 

 

「おい、理解出来るか。」

………エ?

「どっか怪我していて苦しいのか?」

…ヨカッタ、タイワシテクレルニンゲンモイルジャン。

 

「首を横に振った……のですか。」

「やはりライダーを見た時から思っていたが、龍は想像より遥かに賢いな。」

 

「すまない、今、ここに雪が降ってるだろう?ここは元々樹海と砂漠の地域なんだ。お前の能力だと思うから環境の為に北に移動してくれないか?」

……ナンゼンネンブリダロウ。

ワタシヲタイトウニミテクレルイキモノハ。

「頷いた……ありがとう。じゃあ早速今から一緒に行こうか。」

ヤッタァ!

 

 

まさかの交渉で解決する結果となった。

そしてギルドナイトと共に北に向かい、寒冷地の頂点として全ての生物の為に生態系を守る様になったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

アイツらが居なければ。

 

 

「†キリト†復活ぅぅ!」

「砲撃術式!展開!」

「波動方程式、開始。」

 

「「……え?」」

 

……イヤ。

 

 

強力な攻撃が炸裂する!

 

勿論、煙が晴れた時に見えたゼスクリオには一切のダメージが入っていない。

 

「まぁじかよ。固スギィ!」

 

「お前ら、やめろ!」

「「は?」」

「今、この龍と交渉して北に――」

 

「一般ハンターが何言ってんの?交渉したところでまた来たらどうすんの?責任取れんの?」

「一般人は下がってなよ。邪魔だから。」

「駆逐だ、皆殺しだ!ドゥレムディラなんて始めてだ!」

「初見さんいらっしゃーい。何回も殺した俺のアドバイスを聞け。というかこいつドゥレムディラじゃねぇよ。」

 

ふざけるな、奇襲が失敗しただろ!?

それに穏便に済ませる考え方はないのか!?

 

と、彼女が口を開いた。

 

「あのーお言葉ですが……」

「どうしたんだい嬢ちゃん。」

「狂竜化モンスターを先に殺った方が……」

「は?w あんな雑魚達はアンタらでも狩れるでしょ?え、何?それもやんないといけないの?」

「古龍と交渉とかほざくなら狂竜化モンスター3匹殺してこいw」

 

ランポスやオルタロスも狂竜化しているのだが……

 

 

「強い奴を狩る方が楽しいんだよ!あっち行った!」

 

 

 

――ザッ

 

……ここは…?

何か、人間が見える……あ……嫌……

 

「『強い奴を――』」

 

嫌だ……

 

「『強い奴を――』」

 

嫌ダ嫌ダ……!

 

「『――――――のは楽しいなぁ!あぁはははっ!!アハハハハハハ!!』」

 

イヤァァァァァァッ!!

 

―ザザァァ――

 

 

 

イヤダ……イヤダァァァッ!!

 

 

ゼスクリオから強烈な爆発が起こり、二人は吹っ飛ばされる。

 

「うおっ、とっ!」

 

一度腕をつき、更に回転して華麗に着地する。

しかし『魔法』を使う神選者が壁を作り再びゼスクリオに近づく事が出来なくなっていた。

 

「ゴォァァァァ!!」

 

叫ぶと同時に、徐々に気温が下がる風がゼスクリオに向かって吹く。

 

急速にゼスクリオの体内の光が強く発光し始め、分裂する。

 

「緩和結界!」

「干渉。」

「ふん!」

 

それぞれ散らばりながら防御をする。

ゼスクリオが足を叩きつける。

 

「うおっ!?飛行魔法!」

 

地面の水分が一気に氷に変わり地面がふかふかになる。飛んだ敵に対して熱風を浴びせる。

 

「氷河の絶盾!」

 

氷が昇華していく。

 

 

「てぇぇやぁぁぁ!!」

 

双剣の両方が触れる前に重くなり地面に倒れる。

 

「波動方程式!」

 

粒子が束ねられ、レーザーの様に発射されるが粒子はそのままに運動エネルギーだけを吸収する。光が強くなる。

 

 

一つの光が口元までせり上がる。

 

「ァァァァァッ!!」

 

まるで悲鳴の様にも聞こえる声をあげながらビームを放つ。

 

「ぐわぁぁぁぁ!?」

 

ビームは死なない人間を壁に叩きつける。

 

「い、痛い……!?」

 

ごく稀に感じる痛みに呻く。しかし火傷になる事はなかった。

座った体制から起きようとするが、体が地面から動かなくなる。

 

光が背中に触れ、ガラスが割れる様な音と共に『腕』を作り出す。

そのまま近づき握り溶かす。

 

「あ、熱いっ!?」

 

マグマに潜っても大丈夫な体が熱さに悲鳴を上げる。

 

「た、助け――」

 

溶けないと分かり地面を割りながら持ち上げ、放り投げる。

光を前脚に移動させながら走り出す。

 

 

「ポルターガイスト!!」

 

岩が壁の外から大量に入ってくる。

『腕』を振り回し黒い粉にする。

 

「くそっ……!?障壁『プロダクトキー』!!」

 

ほぼ全てを拒絶する障壁を作る。

ゼスクリオは光がある前脚を壁にぶち当てる。

 

爆発が起きるが障壁は微動だにしない。

ゼスクリオが一度離れ、飛翔する。

 

障壁を解除しながら走り魔法を使う神選者は言う。

 

「おい、なんなんだこの技!何も見えないぞ!?」

「は!?何言ってんの!?」

「え?……まさか!?」

 

「ギャオアッ!!」

「うがぁっ―――」

 

上空からの攻撃に対応出来ず、上半身と下半身が分かれる。

 

「おいぃぃ!?対応出来ただろ!こいつも地雷かよ……」

 

余りに強い光によって失明して、対応出来ずに死んだナマモノを罵倒する。

 

「おい、地雷!」

「地雷呼びすんな!」

「注意を引いとけ!電磁速射砲!!」

 

手に召喚された銃から、ジンオウガの鱗と皮で作った玉を大量に射出する。

 

 

もちろんゼスクリオには届かない。

 

「スターバースト・ストリーム!!」

 

やはり剣がとてつもなく重くなり落ちる。

 

 

 

今になって壁が消える。

男は大声で叫ぶ。

 

「おい、やめろぉぉっ!」

「あぁ!?明らかに敵意むき出しの奴を放っておくとかバカか!?あっち行ってろ!!」

 

 

その時、森から飛び出してくる人がいた。

 

「ここにいた!」

「おぉ、天使さんじゃないか!」

「天使さん!頼むから龍を殺そうとするのやめさせろ!」

 

「だ、大丈夫ですよ!?ダメージを与えて、弱めてから仲間にしますから生態は分かります!」

「だから何言ってんだ神選者は!?」

 

おかしい、神選者の感覚はおかしい!

少し考えれば分かるだろう……?傷つけられた奴が傷つけた奴の仲間になるのはただの服従じゃないか。それを龍がやるなんて事は……

 

 

 

 

ザッ―――

 

「ほぅら――見てごらん――」

 

見たくナい……!!

 

「君の仲間だよ――!」

 

見タクナ―――

 

 

四肢を拘束された私はどうしようもなかった。

私の目に映ったのは―――

 

 

ザザ―――

 

 

 

 

「ァ……ァ………」

 

 

 

「様子がおかしいですよ!」

「全員防御体勢!!」

 

 

「ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!」

 

 

雲が消える。太陽の光が辺りを照らす。

 

 

体内の光をかなり消費して放ったゼスクリオの技は天候を変えた。

 

 

 

先程まで雪が積もりかけていた地面は、まるで何年も水を浴びてない砂漠のようになり、ゼスクリオ周辺は明るくなる。

 

 

周りの草は蒸発し、木が砂のように崩れる。

 

 

 

気温が戻り、溶けた地面が黒くなる。そしてゼスクリオの体内に数個光が戻ると共に、再び雲が発生する。

雪が降り出すまでそこまでかからないだろう。

 

 

 

 

「超越秘技はこういう時の為に取って置かないとな。」

「発動行動中でも暑かったですよ。」

 

 

他人を地雷呼ばわりしていた神選者は骨になっていた。先程死んだ人間も同じだった。

 

 

「熱いぃぃぃぃ!」

「……ご冥福をお祈りします。」

 

残りの神選者は火傷一つ負わなかった。

 

 

 

唐突に、始めに死んだ者の骨が光り出す。

骨が宙に浮き、光に包まれる。

 

「俺復活〜!リレイズ!」

 

再び自動復活魔法を自分にかける。

 

 

 

一体どうすればいいのでしょうか……

さっきの話をした感じだと余りにも考え方が普通から逸脱していて、私達の言葉が届きません。

もしかしたら共通認識さえ実はズレていたりして……

 

「グアッ!グルルル……アッ!」

 

龍は苦しんでる様に見えます。

勿論、普通の敵ならチャンスなのですが……

 

 

「自分にもダメージあんのかぁ!?馬鹿じゃねぇか!サンダーハンマー!!」

 

雷が落ちます。

龍の体に触れるか触れないかで消えてしまいましたが。

しかも…小さいですが光が一つ増えました。

なんなのでしょうかこの龍……。

 

「チッ。」

「炎天!……えぇ!?」

 

もはやただ大きいだけの炎にまで弱まったその技がゼスクリオを襲いますが、腕で跳ね除けられてしまいました。

 

……なるほど、討伐方法を分かってしまいました。でも気づかないで―――

 

 

「うん?もしかして、お前の炎天は吸いきれないんじゃ?」

「ほ、本当ですか?」

「あぁ、始めて攻撃を拒絶する反応を見せた。」

 

 

やはり駄目か!うぅ……

 

「……私達はどうしましょう。」

「どうしようも出来ない。後始末をするだけだ。」

「そう、ですか……」

 

 

「じゃあ炎天をずっとやってますね!はぁぁぁっ!!」

「頼んだ。拘束魔法陣、展開!」

「ほら!かかってこいよ!ぶち殺してやる!」

 

 

 

タスケテ……ダレカ……

 

 

 

吸収しきれない炎の塊がゼスクリオを追う。

逃げれないと判断し、『腕』で抑える。

 

「今ですっ!」

「貫通榴弾魔力回路構築!完了!発射!」

「ソード飛ばし!!」

 

 

更に炎の塊が収縮しただけで、新たな攻撃の勢いは余り弱まらかった。

遂にゼスクリオにダメージが与えられる様になった。と全員が理解する。

 

剣が二回目の衝撃を放つのと同時に、貫通出来なかった榴弾が爆発する。

 

 

 

ゼスクリオが動きを止まる。

 

 

 

しかし、どんどん体内の光の塊が全て巨大になっていく。

 

龍の吐息(ドラゴンブレス)!!」

「乱舞っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃。

 

アトラルは壁が見えないとてつもなく広い書斎にいた。

しかし棚ごと消す黒い波に追われ逃げている。

 

 

 

……余りにも現実味が無い。なるほど、私は夢の中か。

しかし夢とは無意識の中で起こること、だとしたら何故今は知覚しているのだろう。

 

黒い波から逃げている。

だが、その黒には何か安心する雰囲気があり、いずれ呑み込まれるかもしれないのにそれが正しい自分になる為の必要事項がする。

 

同時に何か恐怖を感じる。呑み込まれる事ではなく、呑み込まれた後の正しい自分に恐怖している。虚しさや、哀しさも混じっている。

 

 

いつまで逃げれば……

 





解読済み・昔の書類


経過報告

EEDWP #37669

EDD 5ー1
個体名「ゼスクリオ」


戦闘結果

Aタイプ 1.52
Bタイプ 1.48
Cタイプ 1.67

感想
先手を取られる様にしたものの、自己能力を使い無視。
余り考えずとも使える程まで順応したよう。

改善点
ここ数回に言える事だが、元来の能力の使用が出来ない様。
また、非常に反抗的な為調教を要請する。尻尾を潰す事を提案。

EDD 5ー2 に強い関係がある模様。精神的支柱になっている可能性を考慮し、5ー2の精神スクラップを提案、推奨する。

別件 EDD 5ー1 EDD 5ー2 それぞれの細胞交配を検討して欲しい。EDD 5ー2 はその後精神スクラップにする様に計画を。


P.S. EDD 5ー1 の体色の変化を確認。
EDD 7ー1 としての登録を検討中。
他、絆石洗脳器具の運用可能かの検査日程を記す。

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