閣螳螂は娯楽を求める 作:白月
ゴア・マガラ
分類不明
未知の樹海・雪原地帯
まさかギルドナイトの私達も出動するとは……
ドンドルマがアトラル・カに襲われた時も命令に従って樹海にいたのですが……
また樹海ですよ。しかも寒い!
ホットドリンクなんて持ってきてないし耐えるしかないですね!(-2℃)
「大丈夫か?少し震えているが。」
「そりゃ雪の降る中、そこまで厚着じゃないのに寒くない訳がないじゃないですか!」
「そ、そういうものなのか。」
彼は平然としています。
私は二人組ですが、実際彼はソロの方がいいんじゃないですかね?
彼は対人寄りなのにモンスターにも無敗です。
敵に対しては冷酷かつ迅速に行動しますし……
バサッ
「上着をもう一枚羽織っとけ。」
「あ、えぇぇぇぇ!?さ、寒くないのですか?」
「対人には必要な技能だからな。服だけで冷凍保存施設に潜入や地下に穴を掘って待機もするし。」
「………」
インナーと軽装しか着ていないのに雪を掻き分け、痕跡を探してから導蟲を飛ばせる彼はやはりギルドナイト内でもトップレベルだからでしょうか。
導蟲が示しているのはこっちか。独自ルートで入手した導蟲がかなり優秀で使い勝手がいい。
さて、青や緑に明滅してるという事は微妙な強さのモンスターが近くに――
赤く輝いた。
「来たぞ。」
「分かりました〜」
「……おい。」
暴れながら走ってくるのは黒く変色したジンオウガでした。……まさか狂竜化でしょうか?ならば大丈夫。狂竜化なら他のモンスターに感染はしないですからね。
「いけるか?」
「大丈夫ですよ。それに体をあっためなきゃ。」
……だけどなんだろう。嫌な予感がします。
抗竜石を盾と双剣に擦り、戦闘体勢にうつります。
彼も盾とハンマー、ライトボウガンに抗竜石を擦りました。
「「………ハァ…!!」」
互いに呼吸を合わせ、走り出します。
その場で回転しているジンオウガの尻尾を切りつける。盾で回転してきた腕を弾いて体を打ち上げ口に片方刺して頭の上に乗る。
ジャンプしてハンマーを背中に叩きつけ体をはね上げながら納刀。ボウガンをだして事前に装填した斬裂弾を撃ち、再びハンマーに持ち替え斬裂弾を叩いて打ち込み離脱する。
斬裂弾が弾ける為一度離脱、怯んでいる間にエリアルの技術で跳躍して、頭から背中にかけて回転しながら切りつけ、鬼人化して尻尾で切り返し、尻尾から頭にかけて再び回転しながら切りつける。
彼女が回転しきって両腕で盾を上に構えた為、踏み台にして跳躍、ボウガンに徹甲榴弾を装填し、頭、尻尾、頭に放ち離脱。
連撃に刺激され、ひたすらその場で暴れ回っている為、ボウガンで刺激し続ける。
雪を握って頭ぐらいのサイズで固める。
ジンオウガが背面跳びしてくる。
一度回避し、抱えながら近づき口に押し込む。ジンオウガの頭に乱舞をする。
嫌がって飛び退いた所にパレットゲイザーを放ち、ハンマーに力を貯めながら駆け寄る。
口の中の氷に気を取られているジンオウガの頭に二連スタンプを放つ。
「いけるかっ!?」
「大丈夫!」
怯んでいる隙に直線上に並ぶ。男は盾を上に構える。女は深呼吸をする。
「「いざっ!」」
双剣を構えはしり、盾を踏み台に回転しながら跳躍する。
「はぁぁぁぁっ!!天 翔 空 破 断!!」
背中を深く裂く。
「おるぁぁぁっ!!」
特別な改良をされたライトボウガンから支柱が伸びる。
本来はヘビィボウガン用の排熱噴射機構がとてつもないエネルギーの熱線を放つ!
「……!くそっ、なんか火力が弱まっている!?」
しかしジンオウガの息の根を止めるには充分な攻撃だった。
「……おかしいですね。」
「解除ならず……か。」
一通りの装備チェックと武器を整え終わりましたので、さっきの戦闘を振り返ります。
かなり切った筈なのですが……
「本来なら途中で解除になり、ダウンになるからそこでスタンをとるのだがな。」
「ですね……」
「……ところで導蟲が出てこない。」
「……なるほど。」
轟音と共にディアブロスが雪を吹き飛ばしながらとび出てきました。
「ヴォォォォォォォ!!」
「まさか?」
「あの色……まさか極限化個体がいるのでしょうか?」
「まずは狩るか。」
「えぇ。ディアブロスには音爆弾ですね。」
未知の樹海・遺跡地帯
「タイプ:エンジェル!炎天!」
弱まっているが、アグナコトル亜種なら燃やし尽くせる。周りの木や草は燃えにくいから意外に開けた場所なら使える。
「嬢ちゃん頼んだにゃ!」
「早くその方を運んで下さい!」
「大丈夫にゃ!任せときにゃ!」
「よろしくお願いします!」
ドォンッ!!
地面が揺れる!
「キシィキシイッ!!」
ネルスキュラ亜種がとびだして来た!?
しかも……この色は狂竜化!?
地面から飛び出したネルスキュラが私に糸を飛ばしてくる。
勿論飛んで回避。
「ライトニング!!」
足を穿ち転倒させる。
「はぁぁぁっ!鏡面!」
勢いを更に追加しながら反転、腹を貫く。
ネルスキュラが地面に潜る。
とりあえず警戒して飛んでおこう……
「キシィィィッ!!」
「きゃぁっ!?」
まさか地中から飛び出して私を捕らえるとは……でも大丈夫。
「はぁぁっ!」
光剣をネルスキュラの頭に向ける。そして一気に巨大化させて貫く。
挟む力が弱った隙を逃さず脱出する。
再びネルスキュラが地中に潜ろうと――
「アァァァァッ!」
「キシャァ!…ァ…」
ネルスキュラを貫く様に雷を纏った何かが飛び出す。
まさか。
バチバチッ!
タイクンザムザ第三形態……しかも狂竜化している!?
ドンドルマ 対策本部
「な、なんだこれは……」
絶望から皆が笑う。
「ははは……狂竜化した個体が大量に居るって?何の冗談……」
「しかも極限個体もゴア・マガラ、シャガルマガラさえ見られてないんだろ?明らかに報酬を釣り上げようと……」
「……まさか狂竜化個体から狂竜ウイルスが寄生、増殖する状態で蔓延しているのか?」
「ないない…ないないない。そんな事したら全生物が死滅する。」
「だが……血液感染は低確率ではあるが可能性はあるからもしかしたらそれらは……」
「「………」」
一人が扉を開けて駆け込んでくる。
「未知の樹海にティガレックス希少…種の……感染個体……確認……!!」
「はぁ!?……あはははっw亜種が返り血を浴びただけでは?」
「爆発確認です……」
「「………」」
「嫌ぁぁぁっ!」
「ぁぁぁぁぁっ!!」
「龍識船を用意してぇっ!気球でもいいわ!!」
「落ち着け!落ち着けぇぇ!」
「無理だっ、無理だぁぁぁっ!!」
「退去命令を!早くっ!逃げろぉぉっ!!」
一人がパニックに陥ると連鎖的に広がる。
対策本部の筈が、現在は一番混乱していたのだった。
未知の樹海・遺跡地帯
「貴女も来てたのか!『爆星』!!」
「おー天使さんじゃーないかー。」
「………」
「あ、傭兵さんも?」
「……うむ。火の国経由で我も雇われた。要求された事は全力で遂行する所存である。」
「まーねー。私はー余りー乗り気じゃーないけどー。テ……テトリがー暴走しない様にねー。」
「要らぬ心配だと申しているのだがな……」
「……タイクンザムザが来た。」
「あー私達がー処理しとくからー他のー頼むよー。」
「あ、え、そう?じゃあよろしく!」
天使は飛んでいった。
「……バル。貴殿、一瞬我のことをテオと呼びそうになったのであろう?」
「な、なんのことかな?」
「分かりやすい。さて、タイクンザムザとやらを討伐せねば。」
「キシィィィッ!!」
タイクンザムザが飛び出て二人を貫く。
筈が、通り過ぎていく。
陽炎と、地面を焼く音による誘導に引っかかったザムザは周りを見渡す。
ザムザを熱が包み込む。
「とりあえず今晩のおかずの一つは蟹の鍋になりそうか。」
「うへぇ……多足類きらーい。」
あっという間にザムザは煮上がっていた。
「タイクンザムザ100%煮込み〜狂竜ウイルスを添えて〜 の完成だ。」
「添えてない添えてない!混ざってるよー!?」
「……お巫山戯はここまでにしておこうか。」
タイクンザムザを爆発させながら言う。
「やはり予想通りの現象になっているな。」
「うんーここに居ることー自体がー燃費ー悪いー」
「しかし我等は眺めるだけだ。人間としての役目以外はな。」
「スパイーしてるんだからー感謝ーしてー」
「勿論、余りにも危険なら紅ミラ殿に報告するが。」
「女性のー姿ってさーどーゆーのがーいいのかなーちょっとー確かめてよー」
「……愚か者。ここで脱ぐんじゃない。」
―――ザザザッ
アタタカイ……ドコ……
サミシイ………
……モウイチド……アイタイ……
ザッザァァ―――
―――恨みは募る。
いくら恨んでもこれは消えない。
人類を殺さないのは本人がそう言い続けていたから。
だから殺さない。
だから殺さない。
今、迎えに―――