閣螳螂は娯楽を求める   作:白月

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「上位のハンターやる事ない……」
「早く狩猟解禁してくれぇ!!」
「死ぬぞお前……」
「あ、先輩!何故ミステルンデス!?」
「この世の終わりみたいな状況だから。自殺『行為』じゃなくて『自殺』になる。」
「……(・□・;)ゞリョウカイデス」
「でも先輩?いや、流石先輩!普通に帰ってきましたね!」
「あたぼうよ!G級ハンターなめんじゃねぇ!(クエスト失敗だけど)」


忙しい人間

ドンドルマ

 

あの日から6日。やっと復興が始まった。

私がアイツらに負けた時、街はランゴスタ達に復興資材を盗られ、大工の生き残りがほぼいない状況だった……

 

本来龍が襲来した場合、竜達は遠くに逃げる。

だからこそ、すかさず復興を始める事により竜の脅威を受けずに済む。

 

筈だったのに……

 

なんなのあの虫!?

 

気を取り直して、とりあえず大老殿で夜出発のクエストを見せてもらおう。

 

 

 

 

『神選者規則・其ノ壱』

 

ある程度のポイントを一月に得る必要がある。

ポイントはHRPと同じ。

得なかったら……

 

 

大老殿立ち入り禁止。野良ハンター化。

 

 

 

 

ノルマは優しいし、衣食住が保証されるから従うのは当たり前だけどね。

あと5p足りないだけだから採取クエストを受ける。

地球だったら狩猟クエストをばんばんやればいいって思ってたけど……実際は襲来を警戒するタイプのクエストが多かった。

 

そして狩りに行くのは間引きか探索、そして襲来した後。

実際にモンスターを狩った場合にのみポイントを獲得するから、安定するのは採取という……

しかも採取だけなら三つまで同時に受けれる。

 

 

 

往復で半日の距離とはいえ、環境不安定だと求められるHRも上がる。

だから大老殿にも採取関連のクエストも急増している……

 

 

「はい、確かに納品を確認しましたにゃー!」

 

納品箱に入れる時は付き添いのアイルーに一度渡す。

考えてみれば……草や木の実を入れても品質や大きさ、数の詐称があったら困るからね。

アイルーは卵をギルド支給のクッションに入れ、草は一枚一枚通気性の高い網に入れる。

 

「それでは……どうしますにゃ?」

「帰るよ。」

「引き車に乗って待ってて下さいにゃー。」

 

……もっと予想外だったのは納品クエスト前後。

納品した物を運搬する警護をハンターがする。

私だけだったら飛んで帰れるのになぁ……

 

といっても狩猟クエストも狩猟対象を拘束して運ぶ必要があるから捕獲の時は同じなのだけど……

 

まぁ討伐しても特殊な場合を除き死体を運ばないと……

 

「どうかしましたかにゃ?」

「んぁ?あぁ大丈夫。考え事をしていただけ。」

「はーい。帰るまでクエストですにゃよー?」

「そう……だね。」

 

卵を狙ってくる鳥竜種、夫妻。……虫。

ハンターって緊張しっぱなしだなぁ……

 

 

 

 

「はい、これとこれ、これの完了を確認しました。報酬はどうします?」

「全売却で。」

「分かりました、合計18433zとなります。ギルド保管でよろしいですか?」

「はい、大丈夫です。」

「お疲れ様でした。ではこちらの書類に。」

「はい、はい……」

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

ボフッ。

 

特一級のムーファベッドに横になる。

 

「ニャー」

「おぅおぅーどうしたニャゴー?」

「ニャー!」

「うりうり〜!」

 

他に驚いた事。

地球の生物が結構いる。なんでだろう……

 

「さてー!」

「ニャッ?」

「もう少し仕事しないといけないし、今日は忙しいから、明日の朝までニャゴは待っててね。」

「……ニャッ。」

「はぁ……」

 

軽装に着替える。

 

午後からはきちんと復興のお手伝いをしないと。

 

 

 

『神選者規則・其ノ二』

 

特異な力を持つならばそれを他の者の為に役立てなければならない。

周りからの羨望は嫉妬に変わり、そのうち刃物になる。

守らなかったら……

 

 

 

何時だろうと身体の保証はしかねる。

 

 

 

 

普段自分勝手に動いていたら、事件や事故で負傷しても自己責任で、身の安全は守りませんという事。

えっと……つまり、

 

 

街中で刺された! 契約無しの狩猟中に怪我した!

 

という時は。

 

 

大丈夫!?→治療&警備&捜査→全て無償→退院の祝い金→しばらくは失敗しても何度かは見逃してもらえる

 

 

あっそう→治療→治療費を請求される→元の生活

 

 

の様に対応が天と地の差がある……自己治癒力が高くて従わない人は多いけど。

 

でも、私は感謝してくれる事が嬉しいから規則関係ないけどね……。

よっと。

 

「その石はあっちでーす。」

「はーい!」

「無茶するなよー!?」

「大丈夫ですー!」

 

それに私は飛べるから他の人より尚更頑張らないと。

 

 

そうそう。

 

元の世界の私達よりこの世界の人間は凄い屈強。

普通の女性の大半が、ジャンプして屋根に両手をかけたら体を引き上げられる。

 

人によっては子供をおんぶしながら洗いたての洗濯物を入れた籠を持ち、片手で屋根に登る。女性なのに。……しかも少なくない。

 

そんな世界だからか、他の人より強い存在の私はとんでもなく力が強い。元の世界ならクレーンが必要な岩を飛んで持ち上げられる……このまま地球に帰ったらどうなるのかな?

 

 

 

 

 

ゴトン。岩を置く。

タタタ!風に煽られる前に、隙間に石や木を挟む。

ストン!ストン!バシャッ!漏れないように鉄で挟み、接着剤を流し込む。

見事な連携で一ブロックにかかる時間は乾かす時間を除いて十分もない。

 

 

「野郎共!今日は終わりだ!」

「「うっす!!」」

「嬢ちゃんもサンキューな!」

「はい!」

 

 

星が瞬く。

 

 

朝からずっと資材を運ぶ事が出来る男性達は凄い。私は重い物を午後から運んだけどそれを固定したり周りに置くのは大工さん達。やっぱり皆の力が無いと駄目だね。

 

 

路地裏に向かって歩く。

さて……

 

「エントランス。」

 

そう言うと扉が出現する。

向こう側から声が聞こえる。

 

「ビザはおもちですかぁぁ!?」

「え?」

「ビザはお餅ではなぁい?お持ちでもなぁい!?中にピザあるから入って食え!」

「え?あ、はい。」

 

 

 

『神選者規則・其ノ参』

 

時々開かれる集会への参加は絶対。

規定時刻には強制的に集められる。

それまでに入室も可能。

 

 

意地でも抵抗したら……

 

 

 

何があるのだろう?行方不明になるらしいけど。

 

 

扉を開くと大広間に出る。

 

 

「やぁ、天使(エンジェル)。」

「ど、どうもー……」

「アトラル・カに負けた雑魚だぜはっはっ!」

「誤認な上にはしたないぞ。アトラル・カ率いる白統虫のランゴスタにやられたのだ。」

「どちらにしろ雑魚にやられたんだろ?リョナキャラクターかなぁぁぁ?」

「そういう事を言うな。」

「役立たずを気遣う必要なんてねぇだろぉがよ!!」

「……俺はそういうのは嫌いだ。」

「はぁぁぁっ?お前なんかに聞いてないしぃぃぃ?」

 

「こっちこっち。精神的な子供は相手にしなくていいのよ。」

「は、はい。」

「転生してから調子に乗る人は多いからね……大丈夫?傷は?」

「治りました。腕もきちんと動かせます。」

「そう。……敬語は使わなくてもいいのよ。」

「あー…ははは。」

「……聞かせてもらえる?」

「良いですよ。ソレはですね―――」

 

 

「皆。リーダーの話だ。」

 

 

話そうとした時に、スピーカーから声が聞こえる。

 

 

「こんばんは。今日、集まってもらった理由は簡単。ドンドルマ近くの未知の樹海に存在を確認された『ゼスクリオ』という龍を討伐してほしい。」

 

「『ゼスクリオ』?」

 

「あぁ。気温が下がっている原因と見られている。」

「へっ!ドンドルマの役立たずには任せられないから集めたんだな!」

「いや、そこには白統虫クイーンランゴスタもいるため非常に困難だ。パーティーで―――」

 

「雑魚に足を引っ張られるから行ってくるわ!じゃあな!!」

 

バタン

 

「挑んでほしい。後でゼスクリオの書類を出す。後は交流の時間にしてくれ。」

 

 

「リーダーが集めてまで倒そうとする……どんな相手かしら。」

「分かりませんね……」

「あ、怖いかもしれないけどアトラル・カの話の続きをしてもらえる?」

「大丈夫です。奴は―――」

 

 

「って訳です。」

「……相性が悪かったのね。」

「なんと言えばいいのか……冷静?落ち着いていた?みたいな。」

「ネセトに乗って突撃するのに落ち着いている。怖いわね……」

 

 

 

 

 

遺跡

 

 

「分かる!ここだ……ここだ!!」

 

先程飛び出した神選者は直感でたどり着く。

 

 

龍は感じる。熱源を。

 

 

『虐光』はゼスクリオに向かう。

遺跡を走る。障害物を破壊する。

 

あっという間にゼスクリオが寝ている場所につく。

 

体を起こしたゼスクリオを見て、神選者は狂った笑顔を見せる。

 

足を叩きつけながら叫ぶ。

 

「さようなら!『大噴火』!!」

 

部屋が揺れる。

 

 

 

 

それ以外は何も起こらない。

 

 

 

「ダークスラッシュ!!」

 

剣を構える。何も起こらない。

 

「……!?破壊砲!!」

 

大きな機械が現れる。何も起こらない。

 

「……フリーズ!!」

 

始めてゼスクリオが反応し、翼をパタパタする。何も起こらない。

 

「……は?『死ね』。」

 

謎の力がゼスクリオの首を絞める。すぐに何も起こらなくなる。

 

「……」

 

「…グルル……?」

 

「……ちっ!……は!?」

 

足が動かない。空間に縫いつけられた様に。

 

「う、わぁぁぁ!?閃光!地割れ!ダークインフェルノ!冥門!」

 

全て何も起こらない。

 

 

いや全く何も起こらない訳ではない。

 

透明な青の体の中に見える白の光が、最初より僅かに大きくなったように見える。

ドゥレムディラの骨格をした龍が立ち上がる。

 

体内の白い光が背中に触れる。

 

 

 

バキィッ!!

 

橙に光を放つ『腕』が生成された。

 

 

哀れな人間に近づく。

 

「きゅ、『吸収』!!」

 

腕が穴に吸われるがすぐに溢れる。

 

「いやぁぁ!ァァァァァァ――!?」

 

人間が出さない様な叫び声。

死に物狂いで念じても何も起こらない。

 

そっと『手』が神選者を包む。

 

 

 

ドロッと液体が滴る。

 

上半身から腕をゆっくり降ろす。

熱したチョコレートの様に地面にモノが広がる。

白い光を放っていたソレは一瞬で黒くなり、後には黒い粉が舞うだけだった。

 

再び龍は体を横にする。

 

 

 

 

 

「エネルギーを司る龍ですかー。」

「随分ファンタジーな力を持ってるわね……あ、帰る時間だわ。じゃあね。」

「では、また!」

 

五時間ぐらいするとみんな帰る。

私も帰らないと……眠い。

 

 

 

「ただいまー……」

 

ニャゴは寝ている。

 

「『雑魚』……か。」

 

気にしていないつもりだった罵倒を思い出す。

下僕に負けるなら女王に勝てるかは怪しい……でも1VS1なら……そんな状況にはそうそうならないか……

 

着替える。睡眠無効を発動させて布団に入る。

(特一級ムーファベッドで起きなくなる事例あり)

 

 

天井を眺めながら様々な思考をする。

 

 

 

そして嫌な想像に辿り着く。

 

……まさか。

アトラル・カを燃やせなかった炎天。

炎天を弱めたのは……ゼスクリオ?

エネルギーを司るって……具体的にどう対応すればいいの?

昔の人はどうやって抑えたの?

 

明日から調べなきゃ……!

 




神選者配布書類(簡略済)

ゼスクリオ

別名(仮):収静龍
体長:不明
体型:ドゥレムディラにかなり似ている
脅威:全生物死滅……?

能力:エネルギーを司る……?(吸収確認済、放出系が不明。すぐに操れる範囲は余り広くない?)

戦闘:相手に何もさせずに勝つ。ブレスは空中で消え、直接の衝撃は寸前で吸収される。相手を拘束出来る。エネルギーを発散と吸収を同時にする事で構成された『腕』を扱うらしいが、腕の存在や、威力は不明。


概要:古代の文献に確認出来る古龍。
幼体や、成体の姿がかなり細かく描かれている。
かなり暴れまわり、人類にもモンスターにも大打撃を与えた。
森は凍土に。凍土は草原になったという。

しかし深く掘り下げていないため、余り対策が必要な相手では無かったらしい。

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