閣螳螂は娯楽を求める 作:白月
mh2の大きさで、
mh4gの様に壁と兵器が並ぶ。
また、二つのモンスターの出入口にも壁を作っている。
そして巨龍砲はスイッチを押すだけで発射される。
移動式砲台は3つ備えられており、巨龍砲の所へは替えの線路が三つずつ用意されている。
九日目。
朝日が出る。
空を見ると一箇所から煙が上がっているのが見えた。眠れなかった冬眠組を、冬眠しない方が守る様に指令する。
二段階強化をすると体が対応出来ないだろうから普段通りの旋律のみ吹く。
八匹ランゴスタを連れて糸を放ちながら煙の発生している場所へ向かう。
森を抜けると非常に大きな街が見え、向こう側から煙が上がっているのが見える。
しかしモンスター対策の為に伐採されたのか、かなり見通しのいい状態だ。直接向かうことは不可能だろう…森の中を迂回しよう。
煙に近づくほど見える人間の数が多く、更に草が生えていない。
微かに油の匂いがするが……ただの大火事だろうか?どうにか確かめたい。
そういえばあの憎いイビルジョーに捕まった際に球と双眼鏡を置いてきていたままだったな。
予想より時間はかからずに見つける事が出来た。泥を払う際に鎌で表面を傷つけてしまったが……一緒に見つける事が出来た球は搬出された遺跡の残骸の横に置いてきた。
さて、覗いてみよう。
運ばれる石柱。組まれる木の枠組み。それしか見えないが……石が炎に燃やし尽くされるなんて事はないだろう。とすると何かの襲来か。
油……夜間に聞こえた爆発音。パッと思いつくのはゴグマジオスか。
「……な………だ…」
「……した……か……」
おっと、人間の声が聞こえる。身を隠しながらついていこう。
「しっかし……なんで神選者はいなかったんだ?」
「ああ、いつもより気温が下がるから強大な古龍が来たんじゃないかって一週間以上前から探索に出かけていたからな。」
「一人ぐらい残せよ……」
「いやぁ、余りにもデカいからって逃げた奴と、精神崩壊してる奴はいたぞ。」
「戦力になる奴はどこぉ?w」
「まぁ、ドンドルマが攻められたから二人帰ってきたがな。」
離れる。
今の話から推測出来ることは
・あの街は人間が大量に住んでいる
・今いる使い物になる神選者が二人……いや三人
・ゴグマジオスに攻められたが復興しはじめるまで半日もかからない
バケモノか……?
まぁいいだろう。怪我したモノを逃がすようなヘマはしない。
急がなければ……
……気温は例年より低いのか。
濡れた地が乾く夕方。
兵器のメンテナンスや、ドンドルマの復旧が大分進んだ。
俺の指揮通り、そして予定通りに防衛ラインは直る。
今回攻めてきたのがゴグマジオスだった為、シェンガオレンの様に壁を粉微塵にされずに済んでよかった……
無能共が……!何故、現役開拓地狩人か、神選者を呼ばない……!
何が、
『今、気温を下げる程の古龍がいるかもだからー』
だ!
何が、
『白統虫が未知の樹海にいるからー』
だ!
しかも最低な事に、
『警備が手薄になる』や、『例のアトラルが近い』、『金や時間がかかる』
とか、ギルドは民衆を守る気が全く無いのか!!近くの危険はゴグマジオスだっつってんのにぃぃ…!くそっ……!
「おい、聞いてるか?」
くそっ!
石壁を殴る。拳が痛むが、ただの痛みじゃ自分の不甲斐なさを消せる訳がないのは分かっている。だが……もう一度拳を当てる。皮が切れる感覚がある。
「お、おい?」
「……なんだ?」
「早く逃げる様に指示を出したほうがいいぞ?」
「……名無し。根拠を先に言え。」
「いやぁ、例のアトラル・カが来るだろうなぁって思ったのさ。」
「……は?」
「いやぁ昼ね、森の中を歩いていたらさ。ランゴスタに追いかけられてるアトラル・カがいてさ。いやぁ、もう嬉しさでおーどーりー」
「続きを言え!」
「……へーい。真っ直ぐドンドルマに向かったんだ。でも発見報告がナッシングー。そしてアイツはチャーミンg」
「早く!!」
「…………で、知能が高い様な行動をとるらしいからさ。偵察に来て、帰ったんじゃないかなぁって。」
「……お前のモンスターに対する勘はよく当たるからな。従ってやる。」
馬鹿げた話だ。他の奴なら。
「だが、なんでギルドに伝えないんだ?」
彼は肩をすくめる。俺と同じか。
しょうがない、柄にもなく叫ぶか。
「おい!!皆、今日は引き上げるぞ!!」
「何故だ!!」
「強大な虫が来ている!!」
「あぁ!!おめぇら!!切り上げだ!!」
「「了解です親方!!」」
これで大丈夫だろう。
――揺れ?
「しまった……」
「名無し?まさか?」
しかしソレは答えが返ってくるより早く来てしまった。
大地が揺れる。
遠くから巨大な何かが近づいてくる音が聞こえる。
壁が弾け飛ぶ。
シェンガオレンの鎌を十数回耐える硬さを持つ壁が、何の前兆も無しに破壊される。
とてつもない勢いで赤い遺跡が入ってくる―――
いや、違う。
大地を削りながらこちらに滑ってくる。
大工達は逃げ惑う。砦の上に立つ俺の目の前でソレは止まる。
とても強い風が吹く。
逃げる音が聞こえるが、悲鳴は聞こえない。まるで時が止まったかの様に―――
その沈黙を破る音色が響く。
更にネセトの頭が俺の方を向き―――
最後に見た光景は、闇から撃龍槍が頭を出した所だった。
危なかった……繭を破りながら深呼吸をする。
ネセトに張り付かせたランゴスタに、そして森に待機しているランゴスタに、出撃の音色を出す。
このまま砦に衝突したらこっちがバラバラになる所だった。
どうやら手ごわいハンターはいないらしい……復興途中なのだ、沢山資材はあるだろう。ささっと奪ってトンズラしなければ。
糸を放ち、群れの中から50匹のランゴスタを連れて街の中を移動する。
私を狙おうとするガンナーは笛で防ぐ。
私を斬ろうとする剣士はスルー。
そうすると後続のランゴスタが針を刺し、麻痺状態にして5匹程度で死ぬまで何度も刺してくれる。
「虫は嫌ぁぁぁっ!」
「アトラ……アトラルぅぅぅわぁぁぁ!」
「ネセトなんてゴグマジオスよりデカイ奴相手に出来ねぇw」
「転生した人で戦うの私だけ!?」
「シャットライト!!」
光の壁を作る。これに触れたらただじゃ済まない!
……凶悪なランゴスタによって、沢山の仲間が体に穴を開けて死んでいる。絶対許さない!
「ライトソード!」
杖に光の刃をつけて、ランゴスタを叩き切ろうとするけど距離をとられる。
まぁ……
「タイプ:エンジェル!!」
羽を生やす。そう、私だって飛べる!このまま貴方達の頂点を断ち切ってやるわ!!
ここだ。槍が大量に立てかけてある。
触れてみると―――
「ライトソード!」
叫びながら突撃してきたのを回避。
あぁ……神選者か。明らかに意味をなしていない羽が生えている。
人間は無駄が好きだな……格好いいが。
糸を放つ。
飛んで回避される。
「シャイニング!」
向けられた光剣から放たれる微かな光が私に当たっている……光線か?突進か?
「はあっ!!」
分かりやすい構えから滑るように跳んでくる。そこまで速くないため、笛で受け流す。糸を放ち槍を構え、引っ張る。
「スターライト!」
私でも熱いと感じる光が降り注ぐ……いや、そこまで熱くない。
暑いだけか。槍を放つ。
「くっ!」
疑問だ。何故、一々声に出してくっ!とか言うのだろうか……。
放った槍が斬られる。
私は笛を吹く。
「!?……何をする気?」
生憎私は人間の言葉を喋る事が出来ない。
再び別の槍を引っ張る。
「タイプ:アークエンジェル!!この街からさりなさい―――」
空中で十字の形をとった彼女の体から針が顔を出す。
額から出た針は次に心臓を貫く。
沢山の針が体を貫き麻痺は勿論、体内から凍傷、火傷を負わせる。
「が……っ!?超…新星――ゴボッ。」
勿論槍を放つ。
何故一々口に出すのかが分からない。
……早く荷物を纏めなければ。
ドンドルマが大老殿を除き虫に占拠される。救援を求める鳥も抜ける事が出来ない。ギルドナイトが必死に防衛する。
街中で追い詰められたハンター達が闇雲に弾を放つ。
ランゴスタは避けつつ、弾を再装填しようとするハンターに対してのみ突撃する。
g級以上の力が必要な相手に上位のハンターが対応出来る筈もなく、殺される。
気が狂った双剣が回転しながら走る。一瞬でランゴスタが集まり五秒で死体がどこかに運ばれていく。
固まって動かないグループはそのまま焼死か凍死させられる。
ドンドルマはその日、夕日に照らされる事はなかった。
沢山の資材を手に入れた。
森からやってきた第二軍がネセトを襲おうとするハンターを押し退けている。
ネセト破壊を考慮していなかったが……まぁ良かった。棚から牡丹餅。
撃龍槍をネセトに糸で縛りつけ、そして少し切られた糸を修復する。
「待ちな……さい……!」
まさか。
「タイプ:アークエンジェル!!」
人間の形状を保ったままさっきの奴が飛んでくる。
声帯も肺も脳も貫かれたはずでは?
とにかく笛を構える。
「ドラゴンバスター!!」
黒い雷が私を貫く。全く痛くない。
「炎天!」
私を炎が包む。暑いという事はリオレウスのブレスより熱いのか。
「はぁ…はぁ……」
早く帰らなければ。私に相性が悪い奴は放っておこう。
なんなの……!?
太陽の表面温度は……はぁ、6000℃なのに……
ランゴスタを従えたネセトが遠ざかっていく……
………
………
「大丈夫か?」
「一撃じゃないなら……死には……しないよ……」
「随分力が抜けてるようだけど。」
「それでも……4000℃……」
「……アトラル・カ、奴はとてつもなく熱に強いよ。」
「なんで……?」
「砂漠の中、鉄に触れて生きているんだ。人間なら火傷で死ぬぜ。」
でも、それだけじゃ無いはず……
他のアトラル・カだって燃やし尽くす炎天が……
コォォォォォ……
壁が凍てついている。
「グルゥゥ……ブルル……」
その龍の体は濡れていた。
ハタヤ カナ
神選者の一人。
光を使い、炎を統べる。
龍属性をも使う。
天使という形態を持つ。
近年まではモンスターをちぎっては投げ、ちぎっては投げていたが、
ディスフィロアを倒しに行き、失敗してから力が弱まった。
(その個体は例のディスフィロア説が濃厚である)
new→虫が大嫌い