閣螳螂は娯楽を求める   作:白月

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緊急クエスト
戦火舞う災厄の龍

撃退対象:ゴグマジオス

報酬金:後払い ランク上昇

依頼者:古龍観測隊
普段は眠っているあの古龍が
動き出した。
ゆらゆら進行方向が揺れてはいるが
ドンドルマに向かっているのは確かだ。
撃退を頼む。
雨という天候らしいが……

特例:200人参加許可(上位180人 G級20人)


興味に身を任せ

クイーンが出かけてから七日が経つ。夕方になり、皆が集まる。

 

確かに考えてみれば突然他人に一番上の位置に置くことは、留守番にしては余りにもリスクが高い。

だが、一番上が一週間もいないなら、群れが散らないよう抜けない杭が必要だ。

だからきっと私にクイーンの座を任せたのだろう。

 

 

 

「キシャッ!……(酒飲んで沼に墜落してたら風邪ひいたわ……長く外出する可能性を考えないで任せたけどアトラル大丈夫かなぁ……?)」

ジョオウサマ カブツ デス

(ありがとう……)

 

 

 

しかし……こいつらは知能は低いが、労働力としては最高だ。

連携する能力も高く、重い物は皆で運び、大きくて搬出出来ない物は一時的に脇によける。非常に有能だ。

 

分かったことだが、ランゴスタ達は魚も、草も、果実も口にする。

これだけの規模になるのだ、妥当な進化だろう。

だが、魚はサシミウオや黄金魚、淡水マグロ類という食べやすい生物しかとらない。

 

という訳で、三日前から夕方からは冬の食料を安定させるために破裂するタイプの魚を安全に食べる為に研究するため、持ってこさせている。

どうやら内臓や骨の周りが爆発しやすい、という所までは分かったのだが……

 

バチィッ!!

 

肝心の腐りやすい内臓が抜き出せない。やはり栄養価が高い為必ず口に入れるからだろう。はじけイワシからは多少の肉しか得られない。

次にバクレツアロワナ……だが、こちらは深く肉を裂くだけで爆発する。肺呼吸する魚竜種で、生命力も高い筈だがすぐに爆発してしまう。

 

痛っ……

 

体を抑えながら尻尾を引き抜いたがやはり爆発した。難しいな。

氷を使うと爆発は軽減されるが爆発自体はする。

火を使うと大爆発だ。

しかし毒草の毒を抜いて食べる様に何かしら抜け道はあるはずだが、まぁ、今の私達では無理なようだ。

 

空が黒く染まっていく。

 

七日目が終わる。

 

 

 

 

 

八日目。

 

朝日が見える前に起きる。

ランゴスタは既に活動を開始している……『寒いから動きたくない』という思考が無いのは非常にありがたい。

 

さて、遂に崩落した遺跡が崩れた形で通れる状況になった為、色々得られる情報があるだろう。そしてやっと目的の冬眠空間の確保が出来る。良く働いた、と賛辞を送らせて頂こう。

撃龍槍を背負う。焼いた土で出来た箱を持ってこさせる。

 

炎を出させ、明るくする。

 

早速、目新しい物が見つかる。

ガラスの破片と鉄の土台。そして意図的に巻かれた様な奇妙な形の針金。一体何だろうか…箱に入れる。同じような物があちこちから見つかる。

 

違う。等間隔に配置していたようだ。壁から垂れ下がるロープと繋がっている物もあった。……一体何だろうか。

 

 

先に進むと分岐があった。上から確かめよう―――いや、余りにも臭う。腐ったモノがあったか……鎌で方向を指し槍で壁を叩く。

かなりのランゴスタが処理に向かった。

 

正面から見ていこう。

 

 

そこはカーペットが敷かれた部屋だった。

血のシミ。壊れた木――テーブルか。散らばったトランプ。割れた見た事の無い素材のコイン。

 

この部屋はカジノか。

 

岩や死体以外の瓦礫がそのままなのは今の私にとってはいい事だ。

 

崩れた天井の周りを見ると、これまた見た事の無い武器があった。

複雑な形の鉄……とりあえず箱に入れておこう。血の量からしてかなりの人間が潰されたようだ。

 

 

壁を槍で叩きながらまわる。

すると一箇所のみ金属音がなった。押してみると質感が違う。しかし固く閉ざされている。

耳 (脚) を当てると何かが動く音が聞こえる。

 

もう一度槍をぶつけ、再び耳を当てると何も音がしない。

 

糸に引っかけ槍を引っ張る。

 

放つと簡単に扉に穴があく。

そこから光が漏れる。

 

「あっ……うわぁぁぁぁ!」

「放て!放てぇぇ!」

 

反撃は予測していた事だ。

人間は奇妙な形の鉄を明らかに私に向けている。

 

大きな音と共にいくつかの何かが私を貫くが、痛みを無視して糸を放ち部屋に飛び込む。

ランゴスタも後に続く。

 

「来るな―――」

「嫌だ―――」

「何で―――」

「死ね―――」

 

四人をさっさと処理する。残りの四人もランゴスタに首を針に貫かれて死んだ。

ふむ、ランゴスタも戦闘の基本を分かっているようだ。流石はあのクイーンの部下だからか。

新鮮な人間の装備や服を裂き内臓や消化器官を抜いて食べる。残りを凍らせて持っていかせる。

 

なるほど、この部屋は損傷が少なく食料もあり、更に通気口や井戸まである。立て篭もるには最適な環境だ。

槍を回収して貫かれていた二人をランゴスタに放り投げ食わせる。

 

先程見たのと同じ鉄の塊だ。この武器をこのように構えていたな……転がっている木箱に向け、動く部分を糸で引く。

 

 

バァン!!

 

木箱に穴が空いた。

 

 

鉄から煙があがる。

人間になら致命傷だが私達には大ダメージであっても動きを止めるレベルではない。……いや、筋肉の筋を局所的に貫けるか。

あらゆる所に力をかける。パコっと持ち手が外れ、小さい鉄の塊がこぼれる。

 

……笛と同じ程興味を引かれるな。

 

持ち手に鉄の塊を入れる……少し力がいる。

 

他の同じ鉄の持ち手を外し再び鉄の塊、いや、これを撃ち出すなら玉か。それをこぼす。

そして槍を叩きつけて凹ませ穴を開ける。

すると更に小さい鉄と物入れの2つに分かれた。……この粉末の匂いは……火薬草と似た匂いだ。恐らく粉末にして他の何かを少し混ぜたのだろう。……当たり前だが私には作る技術は無いな。

 

とりあえず全部箱に入れ、持ち手も合計24個入れる。

 

食料も搬出させる。落ち着いてから奥にある扉を警戒しながら開ける。

 

 

しかし襲ってくる者はいなかった。ただ縛られ震えている少女と犬がいたから処理した。

……斬った後だが、有効活用出来たかもしれなかったな。

謎の紋章の垂幕と、ズラッと並ぶ本。

そして謎の陣がカーペットと天井に書かれている。

 

こんな場所にあるとは……宗教か……?

まともじゃない人間は怖いからな……やはり先程の女は処理して正解だ。

一冊を手に取り開く。

謎の単語が並ぶだけだ、私には必要がない事が分かる。

 

一匹のランゴスタがやってきて、終了したという動きをとる。

死体以外が腐っていたと考えると植物……食事する場所か。ランゴスタ達には悪いが最後に行こう。

 

やはりいくつかの通路は完全に潰れていて行けない。しょうがないから地下に行くか。

 

 

……鳴き声一つない牢屋だ。檻が折れ、折れてなければ水を飲めず餓死している。とりあえず食料確保の為に檻を破壊し、切り裂き腐ってない部分のみ凍らせて腐った部分はランゴスタ達に投げる。スカベンジャー体質なのだから、きっと体調は崩さないだろう。

 

 

彼はきっと脱出したのだろうな。

 

 

結局、食料が増えただけだった。

二階にあがる。

 

少し残った腐った匂いと焼き焦げた匂いが蔓延している。

やはり食堂か。

 

……駄目だ、私達が来る前から焼き尽くされていて食料やレシピ、なんの料理を扱っていたかさえ分からない。

 

 

……くそっ結局駄目だった。包丁を振り回す。そして箱に入れる……完全にヤバい虫の行動をしていた。

 

さて、他に気になる所は……そうだ、カジノスペースから上にあがれるな。何かがあるかもしれない。

 

とりあえずカジノスペースに戻り崩れていた所に立つ。槍で通れる程の穴を開けて見渡す。

 

……

何か大量の鉄の筒とゴム製?の縄だ。使用の仕方や何に繋がってるか分からないと何も出来ないな……

 

 

 

外に出る。

きっと槍で破壊してまわれば収穫はあったはずだが遺跡が崩れると困る。だが、収穫が箱に入れた物、そして意味不明な本だけではな……

 

 

 

納得のいかないまま立ち尽くしていると、雨が降り出す。

 

少し痛いと感じ、よく見ると氷が混ざっていた。

だが……周りの木を見ると寒さに多少は耐えるが明らかに雪が降る環境には生えない植物だ……どういう事だろう?

 

冬眠を許可する為、石を打ち鳴らす。ランゴスタ達は次々遺跡に入っていく。

 

もう暗くなってきた……一日とはとても早い。再び魚を前にする。

さて、今日はどのように―――

 

 

 

やはり駄目だった。

霙の夜、自分が濡れない場所を探す。

 

 

サァァァァ……と音が鳴っている。近くではカチカチッと音が鳴る。

 

 

 

 

アトラルは気づく。遠く。非常に遠くで爆発音が聞こえる。

 

 

 

 

 

ドンドルマ

 

 

「今だぁぁ!放てぇぇ!!」

「駄目です!!火薬に火がつきにくい上に視界が悪く撃てません!」

「ちっ、貸せ!」

 

ドドドドドドドドドドッ!!

 

「流石です!」

「褒めてる暇があったら―――」

 

 

「オォォーーー」

ドォォォッ

 

ガァァァァァッ!!

 

とてつもない爆発と共に何人もの命が消える。

 

再び胸部が光る。

 

「拘束組!放てぇぇ!」

 

何十本もの拘束弾が放たれる。

胸部の光は落ち着き、抵抗で身を揺らす。

しかし好機と誤解し、近づく馬鹿は小さい爆発に巻き込まれ死ぬ。

 

「今だぁぁ!」

 

ガコン!!

 

非常に大きな大砲が音をたてて傾く。

そして不快な音と共にエネルギーが収束する。

 

「「いっけぇぇぇ!!」」

 

 

しかし古龍。例え喋る程の知能は無くても本能的な賢さは高い。しかも攻撃中ではなく、周りを睨みつけながら拘束に抗っているのだ。

見るからに危険な色をしていて不快な音をたてているのを避けない訳がない。

 

全力で翼を広げ回転し、バリスタを破壊しながら飛ぶ。

 

人類の英知の結晶は回避された。

 

 

再び胸部が光る。

 

 

 

霙の中、炎に包まれた砦でその龍は吠える。

 

翼を広げ、身を丸くする。

 

油が砦に満ちていく。

 

自らも燃えながら一時の睡眠をとる。

 




あぁ、我らの神を讃えよ
叡智を与える者よ
力を与える者よ
救いを与える者よ
我らの道を照らす
数多の道を照らす
あぁ、我らの光を讃えよ

あぁ、我らの神を讃えよ
讃えよ そして話しかけよ
内に秘めたる思いを天に放て
我らの願いを天に放て
我らの安寧を崩す者を
我らの知らぬ所で消す神に
求めれば手を差し伸べてくれる神に

しかし心がけよ
偽りの光
偽りの力
混沌の権化の存在を
我らの神を脅かす者を



白き龍は人類を今一度消そうとしているのだから




あぁ、我らの命を捧げよ
いくつもの叡智を
いくつもの力を
いくつもの救いを
与えて下さったのだから
恐れるなかれ
怯えるなかれ




神は正しい者をお救いになる


我らの命を捧げよ

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