閣螳螂は娯楽を求める 作:白月
「おい、何か言いたいから来たんだろ。……聞いてんのか!?」
「あ、あ、はい、えっとね〜そろそろ年越しじゃない。」
「という訳でいつも通りよろしくですわ。」
「あぁ、きちんと俺が声かけますからお手は煩わせないっすよ。」
「……はいはい、ここら辺を私は電光石火して、夫が瞬間移動して見て回ればいいんだろ!あぁ毎年めんどくせぇぇ!!」バシュッ!
「「ぁぁぁっ!酒に雷がぁぁ!」」
「流石私が樹海の管理者と(勝手に)認めた夫婦の妻……露骨に地味な嫌がらせをしてくる。」
「ほら、なんか喋りません?」
音を立てて地に埋もれていく遺跡から抜け出し着地する。
降ろしてもらいさっそくウチケシの実を探しに行こうとしたら…うむ、羽で話してきた。
「えっと、今何か欲しい物とかありません?」
……『ウチケシの実』と地に書く。
「………」
………
「(会話が出来ない………!)」
絵を描く。特徴的な部分を強調する。
「…あ、あぁ?あっ、あの青い実ですか!しかし何故……なんて聞いても無理ですね。」
頷く。考えて見れば文字を読むなんて普通出来ないからな。
(全員青い実を探せ!)
リョウカイ
ふむ、どうやら羽で指令しているのか。実際に見るのは始めてだ……だがランゴスタはランゴスタで同一の音を出している。これは凄い……
一瞬周りに飛んでいる様々な色のランゴスタの層が薄くなり、直ぐに色を濃くする。青い色が強くなっていた。
そして1匹1匹が私の前をゆっくり通り過ぎる。………これだ。ランゴスタを叩く。
次の瞬間その実を持った者達が私の前に渦を巻き、離れた時には山が積み上がっていた。
な ん な ん だ こ い つ ら
とりあえず三つウチケシの実を食べる。
しばらく待つ。流石に血を失いすぎて意識が薄らいできたが、まだ焦るほどじゃない。それに傷が小さくなっていき流れる血の量が減っていくことも分かる。急いだせいでウイルスを活性化させるなんて馬鹿な事はしない……。
「もっと食べた方がいいのでは?」
頭を振る。
ウチケシの実を食べすぎると抗菌作用と代謝促進のせいで体内の良い菌や必要悪の菌が全て死滅し、下痢や過剰な発汗でガリガリになりながら塩分不足して最終的に栄養吸収する臓器も垢にまみれて死ぬ。
という意味を含めながら。
「そうですか……私も食べていいですか?」
二つ転がす。まぁこのクイーンなら数十個食べても大丈夫だろう。
「いただきます!」
クイーンが食べた瞬間、羽が付け根から白くなっていく――
「…新しい力、です!」
……
な ん な ん だ こ い つ
「ふむ……おそらく。」
クイーンは上空に炎、雷を放ち、追うように白い光を放つ。両方が消える。
「これは属性を消すのですね!」
ちがう!原理がちがう!……
見るとクイーンの本来は赤い冠が白く染まっていた。
なんだ、古龍と同じか。ならば無茶苦茶なのも許容するしかない。
クイーンランゴスタ。そういう古龍というのなら……虫だが……
時間が経ち、笛を吹き傷を治す。
日が今日一番の高度をとる時間になる。
「あ、アトラル。どうやらあっちの方角に手強い敵がいるらしいので処理をお願いします。」
……は?
「行ってらっしゃい!」
突如吹く強い風に抵抗するように槍に掴まり笛を背負う。しかし引きずる様に動き出す。
「……ふっ、ならば!」(連れて行け!リーダーはアトラル・カだ!)
シカシ カイワ フカ
(多分こんな感じー程度でok)
リョウカ……エ? ……リョウカイ
私の周りに黒雲が出来る。正しくは虹雲だろうか。
私を掴み持ち上げる。……死体運びの要領か、体の一部に痛みが走る事は無い。槍を見るとそこにも群がっていた。
体が森より上まで浮き上がる。ゆっくりと回転し進行方向をみると色とりどりの発光と土煙が見える。そしてそっちに動き出す。
近づくにつれ「ミシミシ」や「バキバキ」などの不思議な音が聞こえる。
更に近づくと岩のモンスターの周りをランゴスタが飛びまわっていた。私達がやってきたのを見てふらつく様に負傷した者がクイーンの方へ飛んでいく。
岩のモンスターの姿はこうだ。
歪な四本足。折れそうな細長い尻尾。明らかに意味のある形をしていない頭。箱の様な体。
ランゴスタ達はそれぞれ隊列を組み火球を生成したり足を凍結させて動きを止めようとしている。雷を集め撃ち出し水を大量に流し込む。
しかし歪な形は予期せぬ盾となり、岩に攻撃した所で痛みもダメージもない。振り回される尻尾と足に隊列を崩され、逃げ遅れた者が傷を負う。
水を上からかけると丁度パイプみたいに下に流れていくのか。糸が濡れないとキツいが既に青い羽のランゴスタは疲弊している。
そこで『アトラル・ネセト』を私が倒せと。……ここに槍があります。
ジェスチャーで 派手に何かしろ、と伝える。
ランゴスタはオドオドしながら隊列を組んで飛んでいき、爆発を複数回起こす。
その間に笛をふく。旋律、身体強化。
四本の糸を八本の木に巻きつける。
爆発を起こす隊がネセトにより散り散りにされる。
槍を引っ張る。槍の付け根と棘が始まる部分、それぞれ2本で支える。
私の方をネセトは向く。搭乗者は私に対して明らかな敵意を見せる。
ギリギリギリ……パキパキパキ!!
巨大な影が私を覆う。ガムートより少し大きいくらいだ、鈍重なら尚更緊張する理由がない。
ネセトの片足が上がる。
槍を放つ。
空気を裂く勢いで飛ぶ槍がネセトの首を穿ち、破壊(切断)する。
貫通した槍は更に首の付け根に衝突する。貫くことなく地に落下するが槍の衝撃でネセトが浮き上がり二本足で立つ状況になる。そのまま動かない。
早く突撃しろと全力でアクションする。
しかしランゴスタ達は突然の現象に呆然と飛び尽くしているだけ。
槍を放った糸に自分を引っかけながら後退する。笛にもまた糸を巻き付け、一度地に置く。
ガリッ……ミシミシ…!
少しずつネセトが前の方に倒れ出している。
私自身を発射して笛を急速に巻き取る。全力で胴に笛を叩きつける。
ネセトはちょっと戻るが再び前に倒れ始める。
糸の所に戻るとランゴスタ達が槍を近くに置いてくれていた。
急いで引っ張り、狙いを定める。
倒れ込んでくる箱に足が生えた物体の、中央より少し手前を狙う。
再び槍を放つ。
倒れ込んでくるネセトを下から貫いた槍は上に突き刺さる。
岩を取り外すと標本箱の様な状況だった。胴から槍が生えている為、流石に生きてることは無いだろう。
槍を外す。一応ティガレックスみたいに狂竜化したら困るのでランゴスタになんとか伝えて見張ってもらう。
なるほど、糸はこうやって繋げるのか。確かにこれなら力も少なくて済む。
だが、このネセト。ちょっと歪すぎないか?ふむ………
とりあえず頭以外を復元する。貫かれた腹は足を広げて無視する。一々変わりを探すのもめんどくさい。
なんとか動くが……まさかこれが人類から恐れられているネセトなのか。いくら小さいネセトとはいえ軟弱だな。
ランゴスタ達が見守る中、アトラルは笛の柄で岩のネセトを削る。ひたすら岩を叩く音とそれが割れる音が繰り返される。
日が傾き、時間が経った事が分かるがアトラルは『時間が経った』感覚が無いため火のランゴスタを照明代わりにして作業を続行する。飯に
朝。
日の光に照らされたネセトは明らかに形が変わっていた。
ふ、ふ、ふ……あとは頭を作り取り付けるだけ……
交代で働き、警戒も兼ねていた火のランゴスタは寝る。
アトラルは取り憑かれたようにネセトを作る。
きっとそれは本能が
岩をくり抜き繋げる。糸を内部でパチンコにして足を引っ張るのと同じ仕組みで板に近い形に加工した岩を取り付け頭を胴に何重にもして取れないように取り付け取り付け取り付け……と、取り付け?
……あっ、完成か――
笛を吹かずに岩を扱い続けた結果、体に疲労が溜まってしまい睡眠を求めていた。
アトラルは達成感と共に意識を手放す。無意識に操縦する箱の中に入る。
ランゴスタ達は再び警戒を始めるのであった。
その頃。
バスッ!バスッ!サササ。
「ず、随分派手な挨拶ですね。大分息が上がってる様ですが……」
「全力で世界を回ってるからな。年末空いてるか?いつもの号令だ。」
「……空いてますよ。いつものですか。」
「今回は我が妻とヒプノック殿らしい。」
「あれ、そういえばいつもはボレアスさんが回ってるのに……?」
「どうやら妻が酒に雷入れたせいで癇癪をおこしたみたいた。多分今戦っている。」
「ボレアスさんとジンオウガさんならジンオウガさん勝っちゃいますね。」
「奴は三皇の中でも最弱……」
「で、私の友達にアトラル・カって方が――」
「ならない。」
「了解しました!」
風薙ナルガクルガ
繋ぎ合わせたノート
ふざけ(ここから先は血が広がるのみ)
逃走したハンター談
余りにも素早い動きはまさに風のよう。というか風。あなたがたは風を直接見れるか?直接は無理だろう、肌で感じたり木が揺れるのを見るのが普通。
その感じるのが刃。見えるものが己の血。
極み駆けるナルガクルガなんて目じゃない、異常なミドガロンなんて比じゃない!あいつは風だ!気配や音より先に動いてくる!ぁぁぁぁぁぁぁっ!!
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通算UAが5000を越してました…皆さんありがとうございます!
これからもアトラル・カをよろしくお願いします!
「ドハハハハ!俺達の登場はまだかい!?」
「バハハハハ!辿異種のお陰で腕が戻ってきたんだがなぁ!!」
「エスピナスなら俺、赤鬼が早く!」
「イナガミなら俺、黒鬼に任せなぁ!」
まだ早い……