閣螳螂は娯楽を求める 作:白月
「また狩人の戦闘スタイルが増えるわね〜。」
「まぁ俺達にゃぁ余り関係ないと思われますね。」
「……三バカぁ!暴飲暴食するのやめて下さい!!」
「いやぁ妃さんすまねぇ。」
「止められない止まらない!おっれ達です!」
「うふふふ!」
「……我が妻よ、ちょっと装備売ってくる。」
躱す。
例え巨体でも突進は突進だ。とてつもなく大きい場合以外は当たる要素がない。
すかさず糸を放ち、ボルボロスの足を拘束する。どうしようか……会場を盛りあげれば私の待遇が上がるかもしれない。とりあえず糸を引っ張る。
糸が剥がれ落ちる。
……!?何が原因だ。再び突進してきた為、衝撃を出来るだけ薄めて張り付く。
泥か。暴れ回るボルボロスの背中で理解する。とりあえず切りつけてみるが力が入れにくく軽い傷しか入らない。
……見栄え悪いし降りるか。
ボルボロスが通常の個体より大きい咆哮をする。跳ね飛ばされる様に無様に降りる。まぁこんな感じでいいだろう。
ボルボロスが再び突進の体制をとる。次はどう回避――
泥が私を飲み込む。
「まじか。」
「やはり変異した個体は怖いですね。」
ボルボロスが泥をブレスにして放っています。アトラル・カは質量に押されて段々後退してます。
もしこのままだと……と考えたのと同時にブレスが途切れました。
あのブレスはとある古龍を思い出しますね……
「やっとブレスがおさまったか。」
「アトラル……頑張れー!(モグモグ)」
「しかし、あのアトラル・カ間違いなく例の個体ですよね。」
「確証はないがな。」
奴は泥を落としながら歩き、相手を見据える。明らかに動き方が本能のみのモンスターとは違う。
だが力の差は歴然だ。正面から殺りあえばボルボロスが勝つ。
一体どうする?
一体どうしようか。泥を落としきって身構える。ボルボロスはこっちに走ってきながら頭を振りかぶった。横に跳び回避。
外れた頭突きが闘技場を揺らす。巨体故に火力が高いのは必然だ。
観衆から賞賛と不満の声が聞こえる。多少観衆は盛り上がったし姑息に足でも引っ掛けて水に落とすか――!?
光が私の視界を奪う。
同時に私の体に衝撃が走る。
「不正だ!違反だ!」
「あぁ!?うっせぇよ!あんな雑魚に巨体のボルボロスが負ける訳ねぇんだよ!」
「この屑がァ!閃光つかってんじゃねぇよ!」
「……これは厳しいですね。」
「……チッ。生き延びてくれればいいのだが。」
視界を失ったアトラル・カはボルボロスに跳ね飛ばされる。足音でも聞いているのか攻撃に完全に当たる事は無いが突進を避ける事は難しいらしい。再び宙に打ち上げられる。
このままだとアトラル・カが死んでしまうかもしれない。いや、その前に水に落ちるだろうか。
とりあえず俺は水に落ちてくれる事を願う。
ついにアトラル・カが水の上に投げ出される。
ザクッ、バシャァッ!!
落ちたのはボルボロスだった。
「おおっ!アトラル・カ、最後の抵抗でボルボロスの尾を切断し水に突き落としたぁぁっ!」
危なかった。最後から二回目で視界が戻った時はもう体が動かしにくいレベルだった……まぁ、思慮が無くて助かった。
最後に縁で飛ばされたが、糸を遠くに放ち自分を引き寄せボルボロスの尾を切る。尾を切れるかは、かなり賭けだったが肉質が柔らかい方で助かった。
ボルボロスは水中でもがいている。落とせば勝ちというルールで良かった。
足を引きずりながら私を捕まえに来た人間の方へ歩いていく。だからそれ着けなくても私は逃げないのだが……。
「皆様お疲れさまでした!アトラル・カの勝利です!賭け金関連はあちらのカウンターで行っております!続いての試合は10分後に始まりますので続けて見る方はしばらくお待ち下さい!また、賭け金は今日ならいつでも受け取れますのでご安心下さい!」
「次が今回の本命ですね。」
「よりによってギルドが隠してるモンスターが捕獲されているとはな……」
「私、ポップコーンを買ってくるので席を保持していて下さい!」
「あ、あぁ。」
「レディースアーンドジェントルマン!本日は既に二戦行われました。待ちの紅に舞う白。金の糸に破壊の茶。しかし次の試合はそれが霞み、更に歴史に残る一戦となるでしょう!」
「きたか。」
「凄くないですか!冷えたビールもありましたよ!」
「馬鹿野郎!!」
「いだっ。」
「まず現れるは嵐を消し飛ばす風前の灯火!死に向かう哀れな運命の強者!渾沌に呻くぅぅゴアッマガラァァァ!」
「シャァァァァァ!!」
「迎え撃つは幾多のモンスターを屠りし女王!闘技場不敗の最強!クイィィィンランゴスタァァァァッ!!」
「グァァアー」
「戦闘開始ぃぃぃい!!」
ドォォォン!!
いや、ドォォォンってされても困るのですが。ゴアマガラですか。なるほど、どうでもいい。
うん……アトラル・カ。かつて戦って叱られましたね……
「クイーンがゴアのブレスに当たる!しかしクイーンはものともしない!」
まぁ当時の事はあまり覚えてませんが。しかし懐かしい……笛を持つという事は彼女も考える事が出来るという事でしょうか。よっと。
「クイーンが突進する!ゴア・マガラ、押される!しかし掴んだ、掴んだぞ!ゴア・マガラがクイーンを掴んだ!」
今の彼女は私を覚えているのでしょうか。まぁ私の方が強いのは当たり前ですがね。なんか ゴアマガラ って空白置いてます?まさか ゴア・マガラ でしょうか。……振り回されると頭に血が上りますね。うわっ。
「ゴア・マガラの叩きつけ!土下座と呼ばれる行動だぁぁ!掴まれているクイーンは避ける事が出来ないぃぃ!」
……そろそろ潮時だし明日にでもこの施設?を破壊して抜け出しましょうかね。
さて、殺しましょう。
「おぉ!ついにクイーンが動き出す!羽にご注目下さい!色とりどりになりました!しかも四色!短期決戦の様です!ゴア・マガラは耐える事が出来るか!」
掴まれた状態ですが火の玉を作ります。体にも雷も纏っていきます。
少し緩んだので無理やり抜け出し、火を叩きつけます。飛んで避けられましたが、龍のビームを放ちます。……あれ、効かない?変なヤツら大体効くはずですが。
飛行突進ですか……氷を作り出し無理やり地に落とします。
やはり雑魚……いや、私が強すぎるだけですね。
再び火を作り出し、腹を地に叩きつけます。ふぅ…っ!
「ぁぁっ!ゴア・マガラピンチだぁぁ!狂竜化出来ずに終わるのかぁぁ!」
火の塊を水が貫いてますね。勝ちました。
「……動かない!動かないぞ!やはり女王は強かった!」
私を捕まえにくる人間を燃やしまして、さっさと帰ります。
彼にアトラルへの伝言を頼みましょうか……彼女を連れ出しましょう。
「やはり白統虫の力はとんでもない強さですね。」
「本来なら捕まる様な弱さじゃないのだがな。」
「渾沌ゴア・マガラもそのはずじゃないのですが……。」
「知らん。さて、引き続き調査だ。」
「あ、ちょっと待って下さい、これ食べきってからで!」
「……早くしろよ。」
……私の牢の前にランゴスタがいるのだが。気持ち悪いな……。しかしよく見ると普通の体色じゃないな。まるでガブラスみたいで怖い。
虫の知らせなのかなにか嫌な予感もする……。待遇云々の前に抜け出さなければ。
彼が肉を持ってくる。
「アトラル。君、明日も別の闘技場だってさ。」
驚く仕草をする。体がボロボロなのだが……
「驚くのも無理ないな。まぁその後もっと凄いこと起きるから!」
漠然としか教えてくれないのか。しかし彼の雰囲気から悪い事ではないと思う。……体力回復しなければ。肉を――
あの馬鹿……肉に薬を混ぜるんじゃない。……ランゴスタがまた来たし渡しておこう。証拠隠滅だ。
謎の書類
元種族:クイーンランゴスタ
属性:全属性
弱点部位:腹先
弱点属性:羽(属性によって変わる)
攻撃威力:強古龍と同等かそれ以上
警戒タイミング:巣移動
備考:周囲のランゴスタもとんでもなく強く、ずっと麻痺にしてくる為麻痺無効が必須