閣螳螂は娯楽を求める   作:白月

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彼が不自然に手に力を入れている。

「……賭けたのですか?」
「……さぁな。」

視点:人間


脱法娯楽

さて。

ついに私達はギルドに潜り込んだ奴らの目を掻い潜る事が出来た。

裏では新たな特例の個体にするべきか悩んでいるアトラル・カの一連の流れ。

そのアトラル・カが入った以上未知の樹海に私達が入ることに理由付けは必要なくなる。

ついに実態が掴める日が……

 

「この遺跡か……」

「用意は出来ている。」

「改めて確かめる。何があっても扉まで無視して歩いて直進すること。いい?」

「あぁ、分かった。ヤク中みたいに判断力が低下しても通れる仕組みだな。」

 

周りを確かめ、普通に遺跡の下り坂を進む。

 

目の前の床から槍が出てくる。私達の場所だけ引っ込む。

岩が後ろから転がってくる。そっと彼が刀を抜きたがるのを抑えるといきなり私達の後ろに穴が開き岩が落下していく。

中央に匂い粉を発する機械があるが、お互いに手を離してわざとではないように見せる避け方をする。……止まらない。この機械だけ例外か。運が良かった〜……

 

壁に突き当たる。丸い模様の中心を殴ると扉が開き、ローブを来た誰かが手を出してくる。ここからはアドリブかな。

 

私はバックを渡す。彼はアイテムポーチを渡す。

 

「……イヒヒ、引っかか」

 

馬鹿なローブを殴り立ったまま硬直させる。これでも私は一応ドンドルマのギルドナイトだ。人間を立ったまま気絶させる事が出来る。

 

彼も同じ事をしたようだ。さっさとその場を離れる。

 

しばらく進むとパンフレットがある。まずは何から回ろうかな〜。

 

「遊びに来た訳じゃないだろう。」

「しーごーとーでーすぅー。まずは上で腹ごしらえでもしましょー。」

「お前……言葉使いですぐ分かるのだが。おい、待て!……はぁ。」

 

 

階段を上り、食器音や会話で騒がしい大広間に出る。ここにカレーがあると書いてある。なんという偶然!私はカレーが大好きだ!

店を見つけ、メニューを確かめる。大盛カレー120zか。……目立つのも嫌だし2皿にしておこう。あ、隣は焼きそばかー。…まぁ1皿ぐらい大丈夫ですよね。……ん!?刺身!?東方から来た料理ですか!えっ、蕎麦!?おぉぉ、すっごい!ど、どうしよう……

 

 

「「31番!」」「31番!」「「31番!」」「「31番!」」

 

 

 

俺の相方はブラックホールだ。……わかりやすく言えば底無しの胃だ。

さて、我々ギルドナイトはあらゆる事をする存在、いわば雑務を担当している。いつもはハンターなどに身元を隠しあらゆる所に点在し、かなり大変な時や暗に行わなければならない事のみギルドナイトとして出動する。だが俺達はドンドルマ直属のため、普段から色々な事を命令されており、ギルドナイトとして毎日を過ごしている。

まぁ幸い月収+依頼ごとの報酬によって金に困る事は無い。

 

それで、言いたい事だが…ギルドナイトはソロか二人組の場合が多い。俺達も二人組という訳だが……はっきり言って彼女は俺以外とペアを組むことが難しいはずだ。

敵陣地に忍び込んだのにこんなに大量の飯を食う大胆さよ……

 

「おぉいふぃ〜!」

「やめろ、目立つぞ。」

 

「31番!」

 

「まだ頼んでいたのか!?」

「食後のデザートは大事でーすよっ。」

「お前なぁ……」

 

彼女は立ち上がりアイスを取りに行く。その姿を見て思う。

こんな調子なのに任務は完了するというその実力は計り知れない。近くにいながら力を理解出来ていない俺は果たして――

 

 

 

拳を避ける。……理由は分かるがこの皿の量を見てなんとも思わないのか。しかも全て大盛りだし……。

あぁ、いっぱい食べる君が好きタイプか?

 

「よぅ、兄さん?アンタの嬢ちゃんちょい貸してくんないか?」

「本人に聞け。」

「あんたはワック!無いのかラック!俺らがファック!彼女をハック!」

「……どういう事だ?とりあえず彼女に聞けばいい。」

「あぁ。『強引』でも構わないな?」

「俺に聞く必要は無い。」

 

彼女が3段アイスを持って帰ってくる。

 

 

 

彼女を放棄するとか最悪な輩だな。俺達がアイしてやろう。イヒヒ…綺麗と可愛さが混じった良い奴じゃねぇか。

 

「よぉ、姉ちゃん!遊ぼうや!」

「あーいっすねー!」

「……!?」

「冷やかしですよー。冷えているアイスだけに。」

「……舐めとんのかぁ!」

「このアイスは舐めるタイプじゃないですよ?」

「言葉が分からん残念人間、綺麗に失礼、馬鹿に儚い!」

「学んだ物ではなく自分の言葉で話したらいいかもですね。ではー。」

 

なんだこの女。生意気だ、容赦はしない。通り抜けようとする女の肩を掴む。

 

「おい、待ちやがれ。」

「危なっ、アイスが落ちたら困ります!」

「いいから従いやがれ!」

 

横顔を一発殴る。

――女は居なかった。声が聞こえる。

 

「31番とサーティーワン、何か縁を感じます〜!」

「たまたまだろうが……」

 

 

 

やはりアイツらでは彼女を支配する事など出来ない。

さて。そろそろ移動しなければ……彼女は既にパンフレットを見ている。

 

「次はどうするの?」

「アイス食べながら仕事口調に戻られてもな……まぁいいか。」

掴みかかってくる輩の関節を外す。

「よし。次は賭博場に向かおう。」

「俺は異論なし。」

「チップは100まで。」

「……異論なし。」

 

 

階段を降り最初の階を直進する。半開きの扉を触らずに通る。

そこは赤い絨毯にシャンデリアが飾ってある部屋だった。

カウンターにいる賭博場の支配人がお辞儀をする。

 

「こんにちは。」

「チップを100枚。」

「今日は試しですか。1万zになります。」

「あぁ。この量でいいよな。」

「私もお願い。」

「了解しました。チップからの換金はあちらのテーブルで行っています。」

「ありがとう。」

「チップ100枚でございます。後でお確かめ下さい。よき時間を……」

 

初めて私は賭博場に入る。彼は既に何度か指令で入って慣れてるらしい、頼もしい限りだ。

 

「分かるだろう?」

「えぇ、明らかに動き方に違和感がある物が多い。」

 

急に減速が早くなるルーレット。

左手が不自然な動きをするディーラー。

回っている時の柄とスイッチ?を押して止める時に柄が一つ追加されるスロット。

やってみれば更に顕著に分かるはず。

 

 

「うぅぅ……なんでですか、分かってはいるのに……」

「ふふふ…普段が出ているぞ。」

「んっ、んんん、難しいね。スロット。」

「そうだな。ちょっと貸してみろ。よいしょ。」

 

777 ピーン!カカカカカカ。

 

「……それは新しい特技?」

「8通りの中からランダムなだけだ。」

「そう…。」

 

スロットを回し始めた彼を横目に見渡す。

大体の人間が頭を抱えている。中には泣いている人もいる。

 

そんな中、気になる看板が目に入る。

 

『三連戦!モンスターコロシアム!

 

一戦目

破壊の剛腕、紅兜アオアシラ

vs

狂気の遊戯 大雪主ウルクスス

 

二戦目

知略の王女 アトラル・カ

vs

巨体粉砕道 ボルボロス

 

三戦目

一瞬の輝き 渾沌ゴア・マガラ

vs

闘技の覇者――― 』

 

「あれを。」

「うん?……マジか。」

「私達が関わる前にこの遺跡が滅びそうだ。」

「今からなら……二戦目から見れる。」

「行きましょう。」

「あぁ、すまんが先に行っててくれ。」

「分かった。2席きちんと取ってくる。」

 

 

 

「よし、お前のチップ取ってきた……ぞ。」

「ん?んぁぁ、はりがとぉ、っ、ございます。」

「ポップコーンを食ってんのか。」

「そ、そんな事より始まりますよ?」

 

 

「今日のぉぉモンスターはぁぁ!最近噂のぉぉアトラル・カぁぁ!ブゥァサァス!檻の中で突如巨大化!ボルボロォォッス!」

 

司会の大声が響く。

会場が盛り上がる。

 

「今日って言うのですね。」

「一戦しか見ない人間も多々いるからな。」




「非公式のあれってどうやってモンスター集めているのでしょうか?」
「大体が密猟だな。要求されているモンスターならばかなりの大金が手に入る。」
「密猟者は何故減らないのでしょうか……」
「ギャンブルに勝とうが負けようがハマると世界が狭くなるから『金がない!ん?このモンスターを狩れば金が手に入るのか!』という感じになる。」
「さすが暗殺人数一位……人間を観察していますね。」
「無情みたいな言い方やめろ。」

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