閣螳螂は娯楽を求める   作:白月

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孤独な者の知識は多い

集団が出来ることは多い



個々

目を開ける前から日に当たるのは随分心地よいものだ。

私は体を起こす。

 

「おはようございますにゃ〜」

「薬は既に塗り終わっておりますにゃ。それでは。」

頭を下げる。

 

……あの回復薬は化け物だ。正常な時には地面につける部分がほぼ出来ている。あと二つ…予想よりとても早く治りそうだ。

 

「アトラル・カさん……長いですしどうにか出来ませんかにゃ?」

「ハンターにも仮名ならバレませんにゃ。」

 

生物には元々名前なんてない。人間が作った言葉があって始めて名前という物が成り立つわけだからどう呼ぼうが気にしない。

 

「金虫とか?」

「アトラとかがいいにゃ。」

「妃でいい希ガスにゃ。」

「スパイダー?」

 

ことごとくアトラル・カを連想させる名前じゃないか……最後はネルスキュラだが。アイルーを捕食する名前は嫌だな。

 

「ア、虎、ルでアコルとか?」

「それでいいにゃ。」

「賛成する。」「賛成にゃ!」

 

まだ怖いがアグナコトルを連想するだろうから大丈夫だろう。

 

「今日は昨日の戦闘のせいで気球が浮いてるのででかけられないな。」

「あいつは上手くやってくれるから安心しにゃ。」

「地図でここら辺の地理を教えるにゃ〜」

 

 

バルバレ:ギルド

 

「という事で未知の樹海に向かったと思われますにゃ。」

「めんどくさい事になったな……」

「上手くヘイトを私達に向けてきたからしょうがなくアルセルタスとゲネル・セルタスを討伐しまくったのだけど〜」

「まぁ近くを彷徨いてる訳がなかったという事だ。」

「ありがとう。丁度5日後に未知の樹海にハンター達を送るのだが君達はどうする?」

「参加させてもらおう。」

「了解した。君達が来れば成功間違いなしだな。」

 

 

バルバレ:錬金術師の家

 

ここは少し前に流行った錬金を研究しているハンターの家。

レンキンと錬金を合わせる事も研究するというかなり本気でやっているハンターなのだ。定期開催の研究会の理事も務める。

 

「すいません。」

「あぁ君か。ベルを鳴らしたまえ。」

「ベルを鳴らしたら?」

「扉の鍵をしめる。」

「はぁ……で、」

「私の頼みを聞いて実行したら叶えてあげよう。」

「話が早いですね。私の頼みが大きかったらどうするのです?」

「長い付き合いではないか。私達は唯一錬金術師の目標の一つを達している。雰囲気で分かる様になる時間はあっただろう。」

「……私もおかしいとはいえ、貴方ほど頭のネジが外れてる訳ではないですから」

「頼みはM-x、Bh-hをそれぞれ1だ。」

「やはり私もおかしいですね。既に用意してます。」

「つまり?」

「Ar-Apもありますよ。」

「話が分かるやつだ。」

「話はしてないからその表現はおかしいです。」

「それならさっきの君の発言もおかしいな。まぁいい。次は私が君の考えを当ててみせ――」

「甲虫種の回復薬の作り方を教えてくださいませ。」

「…分かった。」

 

ハンターは回復薬と書かれたファイルを開く。

彼が回復薬の研究を始めたのは回復弾が与える味方と敵の回復量の違いに疑問をおぼえたからだ。

 

「これだこれ。紙とペンだ。写したまえ。」

「ありがとうございます。」

 

 

アイルーの巣

 

私は笛をいじる。しかし残念だが一つ目の狩猟笛は置いてきてしまったから、何か出来るわけでもない。

 

「そんなに狩猟笛を眺めてどうしたのにゃ?」

笛を吹く。音が流れる。

「あぁ、使いたいのかにゃ?おーいきょーかーん!」

「その呼び方はもういい!で笛の使い方?よかろう、教えてやるにゃ!」

……暑苦しい。

 

とりあえず笛の使い方を教えてもらった。特定方向に振り回すと音色がセットされる……意味不明だ。

そしてやはりと言うべきか私に効力はない。

 

「随分いい音色になったな!」

アイルーはそういう。私には最初と何も変わらない様に聞こえるが効力が上がってたりするのだろうか。

「本日はここまで!解散!」

 

結局夕方まで吹き続けた。周りのアイルーが元気になっている。

 

 

夜。

1匹のアイルーがやってきた。

 

「ワシに任せるにゃ。」

 

鎚を持った髭が濃いアイルーが言う。

……まさか、鍛冶屋?

 

次の日。起きた時には既に形が変わった狩猟笛があった。





狩猟笛はクルペッコをモチーフに作られた説は学者の中で少数だがいる。

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