秘封倶楽部と行く恐怖の旅   作:タミ

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秘密を暴く者達、秘封倶楽部。もしもこの2人が、フリーホラーゲームの事件に巻き込まれていったら?そんなクロスオーバー二次創作作品です。この作品には、以下の成分が含まれています。

シリアス ネタ 7:3
ホラー
残酷な表現
キャラが死亡
ゲームのネタバレ

以上の成分で大丈夫だ。問題ない。という方はこのままお進みください。以上の成分で大丈夫じゃない。大問題だ。という方はブラウザバックをお願いします。ゆっくり読んでいってね!


第1章(という名の最終章) ib編
act.1 秘封とゲルテナ


「はぁっ…はぁっ…やばい………っ、マジでやばい……っ!」

 

2118年、京都。遷都によって東京から移された首都である。この平和な都市に、走る女性が1人。

 

彼女は何かに追われるように、また取り憑かれたように何処かに向かってひた走る。

 

「もうちょっと………!うおおっ!!燃えろーっ!私の何かーーっ!!」

 

(昨日寝付けないからってイライラして目覚まし時計ぶん投げて壊したのがいけなかったんだー!ちくしょー!)

 

そんなことを考えながら女性は大通りの曲がり角を曲がる。

 

そして、ある喫茶店の前で右足を出して急停止する。

 

「ぜえっ…ぜえっ…」

 

女性は汗だくになり息を荒げながら喫茶店「ごらど」のドアを開く。

 

「ふうっ、着いたっ!!」

 

「着いた、じゃないわ蓮子。37分の遅刻。……何か言うことはないのかしら?」

 

ブロンドの髪の少女はぶすくれながら蓮子を叱責する。

 

「いやぁ、ごめんね…目覚まし時計が………」

 

「言い訳しても駄目。まったく……それに、あのフザけた留守電の件、許してないのよ」

 

「まあまあ、パフェでも奢ってあげるからさ、機嫌直してよメリー…」

 

そう言って蓮子はメリーの向かいに座る。

 

彼女らは宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーン。蓮子には"メリー"という愛称で呼ばれている。

 

二人で秘封倶楽部というオカルトサークル活動をしている。

 

しかし、彼女らは除霊や降霊などということはせず、結界暴きなどをしているため、不良サークルと呼ばれてしまっているのだ。

 

彼女らは彼女らの通う大学でも悪い意味で有名である。

 

今日も蓮子がメリーを呼び出したのだが、当の蓮子が先程説明されたように、37分も遅刻したのでメリーはご立腹なのだ。

 

時刻は10時37分。集合時間は10時なのだが、蓮子が起きたのはなんと10時17分である。

 

「にしても、ここって古い喫茶店よねー…今やってるアニメって100年くらい前のでしょ?進んでないわねぇ」

 

蓮子は出されたコーヒーを飲む。

 

「名前も知らないアニメね。画質も古いし。空を飛ぶのかぁ……男の子が好きそうなアニメね。………ところで、今日はなんで呼び出したの?また結界?」

 

「ふふん、今回は違うのだ!」

 

メリーの問いに、蓮子は自慢げに一枚のチラシをテーブルにばん、と叩きつける。

 

「なにこれ?美術館の特設展の案内………ゲルテナ展?」

 

メリーは意外そうな顔をして蓮子を見つめる。

 

「そ。最近色んなとこ行ってきたでしょ?だからたまにはこんなのもいいかなーってね」

 

「へぇ……蓮子にしては意外な提案ね」

 

「でしょー?………ん?"にしては"とはなによ"にしては"とは」

 

「自分の胸に手を当てて考えてみなさい」

 

メリーは冷たく言い放つ。

 

「ま、いいや…ほら、はやく行こうよ!」

 

蓮子はわくわくしながら席を立つ。

 

「行くのはいいけど、今回は全部蓮子の奢りね。美術館のも」

 

「…………え?」

 

蓮子は思考を止めてしまう。

 

「そりゃそうでしょ。これで通算299回目の遅刻よ」

 

「数えてんのかよ……」

 

蓮子は苦笑いを浮かべる。

 

「とにかく、今日は罰としてです!いいわね」

 

「…そんなぁ………私の貧乏がマッハ……」

 

蓮子はガックシと肩を落とす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、着いたわよ。……イヴは美術館は初めてよね?」

 

「うん」

 

「今日観に来たのは「ゲルテナ」って人の展覧会で、絵のほかにも、彫刻とか……色々と面白い作品があるらしいから、きっとイヴでも楽しめると思うわ」

 

美術館に、3人の人が訪れてきた。小さな少女、イヴに、彼女の母親らしき人物が話している。

 

「受付、済ませてしまおうか」

 

「そうね。あとパンフレットももらいましょう」

 

イヴの父親がそう言って、3人は受付へと足を運ぶ。

 

「………先に観てるね」

 

ふと、イヴが母親に話す。その言葉に、イヴの母親は少し驚いたような表情を見せる。が、すぐに頷いて、

 

「もう、イヴったら仕方ないわね。いい?美術館のなかでは静かにしてなきゃ駄目よ………まあ、貴女なら心配ないと思うけど…他の人の迷惑にならないようにね」

 

イヴは大きく頷き、ゆっくりと歩き出す。

 

「………2階から見て回ろっと」

 

イヴは胸を踊らせながらゲルテナの世界へと足を踏み入れていった。

 

 

 

 

 

 

ゲルテナ展、二階。ここに、蓮子とメリーが並んでゲルテナの作品を鑑賞していた。

 

「ったく、なんで私が2人分の入館料を払わねばならんのだ」

 

蓮子はぶつぶつと文句を言いながら歩く。

 

「37分」

 

「はいはい、私が悪ぅございました」

 

蓮子は諦めたようにため息を吐く。

 

「ところで、起きたら泣いていたってどういうことなのよ」

 

「もういいよその話は…でもなんか今朝はすんごく長い夢を見てたみたいで…起きたらボロ泣きしてたのよねー…」

 

「…1回診てもらったら?ストレスが関係してるとかどうとかってネットにもあるけど」

 

蓮子もストレス溜めるのね、とメリーは付け加える。

 

「一言余計だっつの…」

 

聞こえていたのか、蓮子はぼやいた。

 

「それにしても、ゲルテナって色んな絵とか彫刻を造っているのね」

 

メリーは周囲を見回す。

 

「ほらメリー、こっちだよ」

 

すると、蓮子が急にメリーの手を掴み歩いていく。

 

「ちょっと、蓮子!急に何よ?!」

 

「ふふん、私がこの美術展に来た本当の理由を教えてしんぜよう、メリー君!」

 

蓮子は怪しげにニヤッと微笑む。

 

「この美術展、神隠しが起こるって噂よ。人気の少ないところに展示されている絵に、引きずり込まれる…っていうね」

 

蓮子の説明に、メリーはやっぱり、と顔を覆う。

 

「蓮子のことだから何か裏がある、と思ったけど、やっぱりそんなのだったのね」

 

「そんなのとはなんだ!私は100年前のあの事件の真相に辿り着くまでこういうの止めないからね!」

 

蓮子は頬を膨らませ、ずかずかと進んでいく。

 

「………まったくもう」

 

メリーは急いで蓮子の後を追う。

 

 

 

「わぁ……大きな絵……」

 

イヴは大きな絵の前に立ち尽くしていた。その絵のタイトルは、「絵空事の世界」。絵空事とはありもしないこと、などの意味がある。その絵には、ここと同じような美術館のような光景が広がっている。そこに飾られている絵は、イヴも見覚えのある、このゲルテナ展に展示されている絵が沢山あった。

 

「………なんて読むんだろう?ーーーの世界………」

 

「それは絵空事の世界って読むんだよ」

 

ふと、背後から声をかけられ、イヴは振り返る。

 

すると、帽子を被った黒髪の女性とブロンド髪の女性が立っていた。そう。蓮子とメリーである。

 

「えっと、お姉さんたちは?」

 

イヴは若干の懐疑心を抱きながら問いかける。

 

「私?私は宇佐見蓮子…で、これはマエリベリー・ハーン。メリーって呼んで」

 

「これとはなによこれとは」

 

メリーはジト目で蓮子を睨む。

 

蓮子は苦笑いをして、

 

「まあまあ、そう邪険にしなさんなって、あはは…」

 

すると、館内の照明がチカチカと点滅する。

 

「ん、電気が……?」

 

蓮子たちは、照明に釘付けになっていた。すると、今まで少しざわざわしていた館内が急にしん、と静まりかえった。耳をすませても、人の話し声が全く聞こえない。

 

「あれ、こんなに静かだったっけ?」

 

イヴは謎の変化に言い知れぬ不安感を抱き、身を縮こませる。

 

「まぁ、静かに越したことはないけどね!」

 

「ブーメランが刺さってるわ蓮子」

 

「え?ブーメラン?刺さってないよ?」

 

蓮子は自分の身体を見る。

 

「………あなたが一番うるさかったってこと」

 

メリーは小声で呟く。

 

「ま、さっさと神隠しの真相を暴いて帰るわよ…メリー。っと、その前に……ねぇ。貴女、名前はなんていうの?」

 

「………イヴ……年は9歳です」

 

「イヴちゃん。今日は親御さんと一緒?」

 

蓮子の問いにイヴは無言でこくり、と頷く。

 

「んじゃあ、早く親御さんのとこに戻りな。迷子になるよ」

 

蓮子はイヴの頭を撫でる。

 

「……ねえ蓮子、周りを見て……こんなに人少なかったかしら?」

 

「ん、確かに………少ないわね………いや、ひとっこひとり居ない………一体何故………?」

 

すると、今までついていた灯りが突然消える。

 

「な、電気が消えた?!」

 

これには、流石の蓮子も困惑しだす。

 

「うう……」

 

イヴは蓮子のスカートにしがみつく。

 

無理もないだろう。急に電気が消え、周りの人たちの気配や声が聞こえなくなったのだから。

 

それに加え、今まで自分を助けてくれて、一緒だった父や母の姿も見えない。

 

そんな状況が寄ってたかってイヴの精神を痛めつけている。

 

「どうしよう蓮子、こんなの初めてよ……?」

 

「うーん、まずは一旦外に」

 

外に出よう、蓮子がそう言いかけた途端、何かが滴り落ちる音が聞こえた。

 

3人がその音の出る方を見ると、何か青いインクのようなもので文字が書かれていた。

 

「………"したのかいにおいでよれんこ、めりー、いゔ。ひみつのばしょ、おしえてあげる"……?」

 

その文章を読み、3人は硬直する。

 

「………何よこれ」

 

「わからないわね。とりあえず、一階に降りないと出られないし、降りましょうよ」

 

メリーの提案で、ひとまず一行は下の階、一階に降りることにした。

 

「ねぇ、蓮子。あの絵……境界が見えたわ」

 

メリーは蓮子にのみ聞こえるように耳打ちする。

 

「え?絵に境界が見えたの?………うーん、わかんないな…取り敢えず今は下を目指そうよ」

 

3人は、階段に向かって歩みを進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、降りてきた……、さあ、さっさと出るとしますかね」

 

蓮子は速歩きで出入り口へと向かう。

 

「ん……?こんなドアノブ付きのドアだったっけ?………まあいいや」

 

蓮子はドアの形状に若干の違和感を感じながらもドアを開けようとノブを回そうとする………が。

 

蓮子がノブに触れた途端、ノブがポロっと取れてしまった。

 

「………えええーーーっ!?ドアノブ逝ったぁぁぁぁーーーっ!!?」

 

「ちょっ、何してんのよ蓮子?!」

 

「いや………軽く回そうとしただけなのに………」

 

蓮子は若干涙目で言い訳をする。

 

「どうしたんですか?蓮子さん、メリーさん。」

 

イヴが心配そうに2人を見つめる。

 

「………ごめん…出られなくなっちゃった」

 

「………えっ?」

 

イヴはつい抜けた声が出てしまう。

 

「………こうなったら、さっきの青い文字の誘いに乗ってやろうじゃない!」

 

蓮子は冷や汗を滲ませつつも決意のこもった眼差しをメリーとイヴに向ける。

 

「………それしか無さそうね。それじゃあイヴちゃん、これから先は何が起こるかわからないわ。だから、ここで待ってて」

 

メリーは蓮子に少し呆れながらイヴに待つように言うが、イヴはふるふると首を横に振る。その華奢な身体は、小刻みに震えている。

 

「あの、私も、私も行きます!」

 

イヴは震える声でなんとかその言葉を絞り出す。

 

「………ほんとにいいの?私たちも貴女も守ってあげられないかもしれないよ?」

 

蓮子の問いかけに、イヴは首を縦に振る。

 

「よし、それじゃあ、その秘密の場所ってのを探してみますか。」

 

 

 

 

 

 

 

「………これかな?不自然に柵が切れてる」

 

蓮子は1つの絵に目をつける。

 

「深海の世………ねぇ」

 

メリーは顎に手を当て、考える仕草をする。

 

深海の世。地面に描かれた絵で、そこには深い青が広がっていた。

 

その青は、水面のように揺らめいているようにも見えている。

 

その青の中に、鮟鱇のような巨大な魚がいた。

 

瞳孔が無い死んだ目を携え、悠然と佇んでいる。

 

まるで侵入を阻むかのように蓮子たちを睨んでいる。

 

「まあ、進むしかないなら、進むだけよ」

 

3人は、絵の中へゆっくりと入っていった…




いかがでしたか?act.1は以上です。

〜〜〜次回予告〜〜〜
「蓮子よ。イヴといっしょに深海の世の絵の中に入ったはいいものの、いや、よくないわ。あれ?これって薔薇よね?赤と白とピンク………どういうことなのかしら?さて、次回、秘封倶楽部と行く恐怖の旅、
「3つの薔薇」
こんなとこ、さっさと脱出してやる!」

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