Ai LP 4000 手札1
モンスター
アースゴーレム@イグニスター レベル7 ATK2300
魔法・罠
伏せカード1枚
フィールド魔法
イグニスターAiランド
ライトニング LP 3000 手札0→1
モンスター
魔法・罠
フィールド魔法
「私のターン、ドローだ。スタンバイフェイズにピルス・プリオルの効果で除外した3枚のカードが手札に加わる」
これで手札が4枚になった。エクストラリンクは崩せたが、まだライトニングのフィールドにはリンク魔法がある。リンク召喚を行うのには問題ない。むしろ、フィールドにモンスターが1体のみのAiの方が不利な状況だ。
「ピルス・プリオルの効果発動。墓地から
上級中隊長が掲げた片手剣から放たれる光は墓地を照らし、闘士の石像をフィールドへ浮かび上がらせる。
《
星2/守800
「リンク3の
《
Link2/攻1700
【リンクマーカー:左/右】
フィールドと墓地のモンスターが入れ替わる。マントをたなびかせ、槍を構えた百人隊長がメインモンスターゾーン中央へ陣取る。
「手札から
《
星1/守400
《
星3/守1800
ライトニングの指示に従い仁は手札のモンスターカードを1枚墓地へと沈め、ケントゥリオンの左右に向いたリンクマーカーに墓地と繋がる穴が開通。短剣のシーカと大楯のスクトゥムがケントゥリオンの両脇を固める。
「いでよ、光を導くサーキット! 召喚条件はリンクモンスターを含む『アルマートス・レギオー』モンスター2体。私はデクリオンとシーカをリンクマーカーにセット! リンク召喚! リンク2、
《
Link2/攻1800
【リンクマーカー:上/左下】
「またソイツらかよ! アースゴーレムでエクストラモンスターゾーンの1つは埋まってるから、もうエクストラリンクはできない……お前のエースを出すつもりか!」
エクストラリンクを構成していたリンク2のモンスター、その2体目がフィールドに呼び出され、Aiはリンク召喚への警戒を強める。
「プリミ・オルディネスの効果発動。墓地から
ピルス・プリオル同様、中隊長は己の得物である長剣の力を使い墓地にいる兜を装備した石像を蘇生する。
《
星3/守1000
――これで、ライトニングのメインモンスターゾーン5つが全て埋まった。リンク召喚の準備は万全。手を天に伸ばし、サーキットを展開する。
「再びいでよ、光を導くサーキット! アローヘッド確認! 召喚条件は『アルマートス・レギオー』モンスター3体以上! 私はリンク2のプリミ・オルディネス、ガレア、スクトゥムの3体をリンクマーカーにセット! ――現れろ、混沌たるネットワークの戦場を進軍する指揮官よ! リンク召喚! リンク4!
《
Link4/攻3000
【リンクマーカー:上/左/右/下】
フィールドを踏み締めるのは二つの大砲で武装した戦象。光の象徴である黄金の鎧をぎらつかせ、長い鼻を上げてパオオオ! と力強く鳴く。それに騎乗する偉大なる指揮官は杖を手にし、ただ決闘者からの指示を待つ。
ケントゥリオンの右隣に呼び出され、リンク魔法の力を受け、かつ相互リンク状態でもあるという恵まれた状態。みなぎる力は動きに現れ、ガスガスと乱雑に地面を掻くような仕草を見せる。
「リンク4……ついに来やがったか、ライトニングのエースが!」
Aiのよく知っているファイアウォール・ドラゴンと同じ向きのリンクマーカーを持つが、ライトニングの使うこちらの方が攻撃力は上だ。
また、比較対象であるファイアウォールは召喚条件がモンスター2体以上と緩い縛りだったが、こちらは『アルマートス・レギオー』モンスターの縛りがついているためか、さらに強力な効果を持っている。
「三度いでよ、光を導くサーキット! 召喚条件はレベル4以下の『アルマートス・レギオー』モンスター1体。私はグラディウスをリンクマーカーにセット! リンク召喚! リンク1、
《
Link1/攻800
【リンクマーカー:左】
それはリンクモンスターでありながら、メインデッキに入る
これで2体のモンスターと相互リンク状態となり、戦象の力を発揮するために必要な状況が整った。
「マグヌス・ドゥクスの効果! このカードがフィールドに表側表示で存在する限り1度だけ、このカードと相互リンク状態のモンスターの数までフィールド・墓地のカードを対象として発動できる。そのカードを持ち主の手札に戻す。私が対象とするのは貴様のアースゴーレムとセットカードの2枚だ!」
この効果が通ればAiのフィールドはがら空き。直接攻撃を許すことになる。
「そうはさせねえ! 対象になったセットカード、戦線復帰を発動! この効果で墓地のピカリ@イグニスターを守備表示で特殊召喚する!」
アースゴーレムはマグヌス・ドゥクスの背負う砲弾による攻撃で退去したが、罠は発動されたことで墓地送りが確定。マグヌス・ドゥクスの効果を受けようとも手札へ戻ることはない。
《ピカリ@イグニスター》
星4/守600
『ピカァ〜!』
小さなサイバースはまだまだ頑張るぞ、と両手を動かし気合の入った声をあげる。
「また墓地からの特殊召喚か、芸のない」
「まだまだ負けるわけにはいかねえからな、というかお前が言うなってやつだろソレ! ……特殊召喚に成功したピカリの効果で、デッキからめぐり-Ai-を手札に加える」
折角の壁となるモンスターだが、エクエス・フランマの攻撃力はピカリの守備力を上回っている。
ピカリを戦闘で処理すればマグヌス・ドゥクスとケントゥリオンがAiへ直接攻撃が可能。ライトニングは指示を下す。
「バトルだ! エクエス・フランマ、ピカリを粉砕し――」
「おーっと! その言葉、黙ってもらおうか! 攻撃宣言時、手札のダンマリ@イグニスターの効果発動! こいつを守備表示で特殊召喚し、その攻撃を無効にする!」
《ダンマリ@イグニスター》
星6/守0
捕食形態のAiとよく似た@イグニスターが出現、六碗でもにっとエクエス・フランマの腕と口を取り押さえて攻撃を封じる。
これで守備表示のモンスターは2体。ライトニングの攻撃可能なモンスターも2体。仕留めきれなかったか、と怒りで眉間に皺が寄る。
「……ならばケントゥリオンとマグヌス・ドゥクスで守備表示のモンスター2体に攻撃!
《
攻1700→3400
《
攻3000→6000
「いくら攻撃力を上げようとこっちにダメージは無いぜ」
「わかりきっていることを言うな。カードを2枚セットしてターンエンドだ」
ケントゥリオンにより攻撃の無効化、マグヌス・ドゥクスとセットカードによる妨害。敗北する要素は無い。
攻撃力が低いエクエス・フランマだが、自分フィールドにこのカード以外の『アルマートス・レギオー』モンスターが存在する限り、相手はこのカードを攻撃対象に選択できないため問題はない。
「イグニスの中で最も劣った存在が、よくもここまで喰らいつくものだ」
「ダメダメなのは認めるさ。オレはサイバース世界にいた時、何もしなかった」
けど、と区切る。
「ハノイの騎士やプレイメーカーと出会って――この世界は計算が全てじゃないってことを知った。きっかけさえあれば、駄目なオレも変われるんだ。だから【@イグニスター】がある」
「…………黙れ!」
ダメだったものが変わろうとした、それがライトニングの怒りの琴線に触れたようだ。
「私以下の計算能力しかないお前が、何故そこまで不確定な未来を信じられる!? 私達イグニスにはシミュレーションが全てだ! 電子の世界こそが現実だ!! いくら詭弁を並べようとイグニスを人間と同じように語ることはできない! 例え私がいなくなろうと、お前のみになれば未来は――」
「じゃあなんでお前はオリジンをそばに置こうとした!」
Aiの叫びにライトニングが動揺する。
「お前の未来に人間がいらないっていうなら、今すぐ仁を捨てればいい。人質にするにしても、頭のいいお前ならもっと早い段階で有効的な使い方ができた。なのに、オレとデュエルしている中でそういう手を打とうとしなかった。……オリジンとイグニスには言葉にできない、特別な繋がりがある。お前は……もしかしたら、っていう可能性を信じたいんじゃないのか」
「優秀である私がお前のような劣等と同じ、だと……!? ふざけるな! そんなことがあるものか!!」
荒々しい語気で言い放つ。
「強い否定は肯定と一緒だぜ、ライトニング。……ここからは、オレとあいつのカードで相手だ。オレのターン、ドロー!」
フィールドにモンスターは0体。手札2枚のうち1枚はめぐり-Ai-と明かされている。このドローで引いたカードは――。
「イグニスターAiランドの効果で手札からドヨン@イグニスターを特殊召喚! ドヨンの特殊召喚に成功したことで効果発動、墓地のピカリ@イグニスターを手札に加える」
《ドヨン@イグニスター》
星4/守1600
「現れろ、闇を導くサーキット! 召喚条件はレベル4以下のサイバース族モンスター1体! オレはドヨンをリンクマーカーにセット! リンク召喚! リンク1、リンク・デコーダー!」
《リンク・デコーダー》
Link1/攻300
【リンクマーカー:下】
「それは、プレイメーカーの……」
Aiがリンク召喚したのは、名前も見た目もデコード・トーカーを意識したリンク1。
「リンク素材として墓地に送られたドヨンの効果で墓地のAiドリング・ボーンを手札に加える。自分メインモンスターゾーンにモンスターがいないため、イグニスターAiランドの効果発動! 手札からピカリ@イグニスターを特殊召喚! ピカリの効果でデッキからAi打ちを手札に加える」
《ピカリ@イグニスター》
星4/守600
「めぐり-Ai-を発動! エクストラデッキのデコード・トーカー・ヒートソウルを見せ、デッキからアチチ@イグニスターを手札に加える。そしてアチチを通常召喚! 召喚に成功したアチチの効果でデッキからブルル@イグニスターを手札に加えるぜ!」
《アチチ@イグニスター》
星2/攻800
「……見せたカード、あれは」
ライトニングが詳細を確認する前に、それはエクストラデッキに戻された。
「再び現れろ、闇を導くサーキット! 召喚条件はカード名が異なるモンスター3体! オレはリンク・デコーダー、ピカリ、アチチをリンクマーカーにセット! もう一度立ち上がれ、ダークナイト@イグニスター!」
《ダークナイト@イグニスター》
Link3/攻2300
【リンクマーカー:左下/下/右下】
「リンク・デコーダーは元々の攻撃力が2300以上のサイバース族リンクモンスターのリンク素材として墓地へ送られた場合、自身を特殊召喚する!」
特殊召喚されたのはダークナイト@イグニスターのリンク先。それにより、闇の騎士の効果を起動させる。
「この瞬間、ダークナイトの効果が発動!」
「させん! マグヌス・ドゥクスの効果! 相手のリンクモンスターの効果が発動した場合、その発動を無効にして破壊する!」
「何ぃ!? だが、自分フィールドの攻撃力2300以上の『@イグニスター』モンスターが効果で破壊される場合、代わりに墓地のキ-Ai-を除外する! これでダークナイトは破壊されない!」
「だが墓地からの蘇生は無効だ」
どこからともなくみなぎる気合で破壊からは逃れたが、Aiの展開は妨害された。だが、まだAiは諦めていない。
「まだまだ! 三度現れろ、闇を導くサーキット! 召喚条件はサイバース族モンスター2体! オレはダークナイトとリンク・デコーダーをリンクマーカーにセット! リンク召喚! リンク2、スプラッシュ・メイジ!」
《スプラッシュ・メイジ》
Link2/攻1100
【リンクマーカー:右上/右下】
リンク召喚は止まらない。水を操るサイバースの魔術師がエクストラモンスターゾーンにて構える。そして、このリンク召喚によりまたメインモンスターゾーンは空となった。
「イグニスターAiランドの効果で手札からブルル@イグニスターを特殊召喚!」
《ブルル@イグニスター》
星3/守1000
『ブルル〜ッ』
風の力を持つ、緑色の@イグニスター。頭部にある耳のようなものをぴこぴこ動かし必死に相手を威嚇する。
「スプラッシュ・メイジの効果! 墓地からドヨン@イグニスターを守備表示で特殊召喚!」
水が舞い上がり、墓地から闇の力を持つ@イグニスターが浮上。
「ウィンディ、お前の力を使わせてもらうぜ……レベル4のドヨンにレベル3のブルルをチューニング! ――闇路を彷徨いし混沌! 蒼穹を駆ける疾風が道開く! シンクロ召喚! 現れろ、レベル7! ウィンドペガサス@イグニスター!」
《ウィンドペガサス@イグニスター》
星7/攻2300
シンクロ召喚の光より飛び出し、フィールドを駆けるは白の鎧と風を纏う天馬。
「ブルルがサイバース族シンクロモンスターのシンクロ素材として墓地へ送られた場合、自身と共にシンクロ素材になったモンスター1体を特殊召喚できる。戻ってこい、ドヨン@イグニスター! そしてウィンドペガサスの効果を発動! フィールドの『@イグニスター』の数まで相手フィールドの魔法・罠カードを選んで破壊する!」
今Aiのフィールドにはドヨンとウィンドペガサスの2体がいる。これで裁きの矢とセットカードの2枚を破壊すれば――。
「フィールドのカードを2枚以上破壊する効果が発動したことでカウンター罠、大革命返しを発動! その発動を無効にして除外する!」
ライトニングの発動した罠により、天馬は苦しそうな嘶きをあげフィールドから消えた。
「……これも止められて……いや、まだ、まだだ! 現れろ、闇を導くサーキット! 召喚条件は属性が異なるサイバース族モンスター2体以上! リンク2のスプラッシュ・メイジとドヨンをリンクマーカーにセット! ――風よ、逆巻く炎を巻き上げろ! 今こそ掴むは熱き魂! リンク召喚! リンク3、デコード・トーカー・ヒートソウル!」
《デコード・トーカー・ヒートソウル》
Link3/攻2300
【リンクマーカー:上/左下/右下】
それは先程めぐり-Ai-で公開されたモンスター。
ヒートライオと似たタテガミの炎を首に纏わせ、腕には爪を備えた橙色の手甲を装備したデコード・トーカー。振るう剣の軌跡には火炎が舞う。
「1000ライフポイントを払い、デコード・トーカー・ヒートソウルの効果発動! デッキから1枚ドローする!」
Ai
LP 4000→3000
ドヨンの効果でAiドリング・ボーンが、ピカリの効果でAi打ちが既に手札にある。でも、それだけでは足りない。あいつにあのモンスターを見せられない。
あと1枚、あと1枚だけで良い。
だから頼む。祈る。ここにいない皆へ。
デコード・トーカー・ヒートソウルが、Aiと同じようにドローの体勢に変わる。Aiの手に命を燃やして得た不屈の炎が宿る。
「頼む……皆、応えてくれ。今必殺の、バーニング・ドロー――!!」
ドローしたカードは――死者蘇生!
「Aiドリング・ボーンで墓地のドヨンを、死者蘇生でピカリを特殊召喚する!」
「何度も何度も墓地から這い上がってくる……目障りだ!」
ライトニングの怒りは消えない。ダークナイトの効果や、繰り返し使われる魔法カードはAiがイグニス達の犠牲を否定しているようで。ライトニングのしてきた事の否定に見えて。
「レベル4のピカリとドヨンでオーバーレイネットワークを構築! ――怪力乱神、驚天動地! その力、今こそ久遠の慟哭から目覚めよ! エクシーズ召喚! 来い、ランク4! ライトドラゴン@イグニスター!」
《ライトドラゴン@イグニスター》
ランク4/攻2300
エクシーズ召喚。同じレベルを持つモンスターを重ねてエクストラデッキからエクシーズモンスターを特殊召喚する召喚法。
それにより現れたのは光属性の――ライトニングと同じ属性の黄金の竜。
「これは……」
古くより竜は力の象徴だ。デュエルモンスターズにおいてもドラゴンとは強者の証。
「Ai、お前は――」
「ライトドラゴンのエクシーズ素材を1つ取り除き効果発動! 自分フィールドの『@イグニスター』モンスターの数まで相手の表側表示モンスターを選んで破壊する!」
「……ッ! フィールドのモンスターを破壊する魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、自分及び相手フィールドのリンクモンスターを1体ずつ対象としてシールド・ハンドラを発動! ヒートソウルの効果を無効にし、マグヌス・ドゥクスにこのカードを装備する。そしてシールド・ハンドラを装備したモンスターは効果では破壊されない!」
Aiのフィールドにはライトドラゴンのみ。選んで、の処理によりライトニングのモンスター1体、ケントゥリオンが破壊される。
「バトルだ! ライトドラゴンでマグヌス・ドゥクスに攻撃!」
「
《
攻3000→6000
攻撃力の差は歴然。無策の攻撃ではないはずだ。その思考に答えるようにAiは手札のカードを使う。
「自分と相手のモンスター同士が戦闘を行うダメージ計算時、速攻魔法Ai打ちを発動! 自分のモンスターの攻撃力はそのダメージ計算時のみ、その相手モンスターの攻撃力と同じになり、そのダメージステップ終了時にその戦闘で破壊されたモンスターのコントローラーはその元々の攻撃力分のダメージを受ける!」
その効果説明を聞き、ライトニングは嗤う。
「お前も犠牲を出さねば勝てない! 私と同じだ! お前の振りかざした理想も最後には崩れる!」
ライトドラゴンのブレスと、マグヌス・ドゥクスの砲撃。攻撃力6000となった互いの攻撃がぶつかる。
爆発。黒煙に隠され、光のサイバース達の姿が見えなくなる。視界が晴れた時、そこには。
「何故、残っている……!?」
ライトドラゴン@イグニスターは未だ残っていた。
「Ai打ちの更なる効果。自分の『@イグニスター』モンスターが戦闘で破壊される場合、代わりに墓地のこのカードを除外できる――これがオレのAi打ちだ」
マグヌス・ドゥクスの元々の攻撃力は3000。ライトニングの残りのライフポイントも3000。カードから射出されたダメージがライトニングを撃ち抜く。
ライトニング
LP 3000→0
膝を折る光のイグニスを、闇のイグニスはただ見つめていた。
「終わった、のか。それじゃあライトニング! ニューロンリンクと草薙の弟をなんとかして……」
「おめでとうAi! ついに諸悪の根源を倒したのね!」
「…………
そこにはライトニングを鷲掴みにしているヴァンガード……のような、ナニカがいた。
「誰ってそんな……私だよ、ヴァンガード! あの防壁を壊してここに来たの。安心して! この光のイグニスは私が抑えておくから」
「違う、誰だ! ヴァンガードを、今上を返しやがれ!」
言動を真似しているが全然違う。彼女はそんなことは言わない。アセットを適応させたような、自然体ではない作られた表情。見ているだけで気持ち悪い。
「…………そうか。わかるんだ。絆とか友情ってヤツ? 意味がわからない。本当に気持ち悪い」
違和感を指摘されたソレは演技をやめ、素を曝け出す。
そいつはAiよりもニューロンリンクに近い位置にいる。こちらへ顔を向けたまま後ろへと飛行し、ニューロンリンクへ触れようとしている。
何をしたいのかは分からないが、絶対にマズイ。止めないといけない。だから向かって行こうとして――。
「馬鹿が! 危険だとわからないのか!?」
それはライトニングによる妨害……いや、守護。光のデータマテリアルによって構築された球状のバリアが、ヴァンガードもどきの放った攻撃を防いでいる。
「ライトニング! お前!?」
「私はイグニスの未来のために動いているだけだ……ガッ!」
ヴァンガードもどきが手の力を強める。ライトニングは怯むことなく抵抗を続ける。
「さっさと消えろ、Ai……! プレイメーカーらにみっともなく助けを求めるんだな……!」
バリアはAiを閉じ込めたまま急降下を始める。慌てて浮上しようとしてもうまくいかない。バリアも解けない。このままじゃ、お前が。焦るAiを嘲笑うようにそれは動いた。
「ふうん、それが貴方の選択なんだ。――じゃあもういいや」
ぐしゃり。
手の中にいた彼は無感情に握り潰された。
「う、あぁ……! そんな、ライトニング――!」
ライトニングは多くの許されないことをした。とはいえ、消えてほしかったわけじゃない。ハノイの騎士にだって機会は与えられた……罪を償ってほしかった。
戻れない。流れる涙より速く、地上に向かって落ちていく。
「あーあ、行っちゃった。……それにしても神の召喚、なんて馬鹿をしてくれて助かったわ。魂が消耗したお陰でラクに乗っ取れた」
握りつぶした
それは光のイグニスであるライトニングの捕食形態をより生物的に……守護竜に近付けたような姿をしていた。
「守護竜モドキ、まず1匹目。あと5匹の居場所も割れてる。もうどこにも逃げ場なんてない。――さあ、もう一度世界の終わりを始めましょう!」
ヴァンガードが……いや、違う。
ヴァンガードを喰らった
そのサイバースは未だ諦めることなく、
ただ欲のために動く。
創星の力とは違う、己の知らない強大な力。
蛇は輪廻を巡りし人の夢幻を喰らった。
――悪夢が今、始まる。