ヴァンガードがゲートを通った先にあったのは石造りの荘厳な神殿であった。
辺りを見回したが、光のイグニスらはいない。ミラーリンクヴレインズ突入時に襲撃してきたビットとブート、ハル、ウィンディ、ロボッピを除けば残るのはライトニングとボーマンの二人。
ゲートは四つだったので数が合わないが、それは一人ずつ相手をする、ということなのだろう。
探索しようと取り敢えず神殿の外に出ようとしたが、見えない壁により囲まれていてそれはできなかった。
精霊の力を借りれば無理やりに壊すことはできるだろうが、それを今する必要性が感じられないので保留。下手に弄れば罠が起動する、という可能性の方が高い。
そうして対戦相手が現れるまで待機していたヴァンガードの目の前に現れたのは――味方であるはずのスペクターだった。
「デュエル開始後に通信が途切れ、再接続が不可能、と。……そうですか、わかりました」
焦った声の三騎士からの通信と、目の前にいる彼を合わせれば自ずと答えは見えてくる。
スペクターは光のイグニスと戦い、敗れ――洗脳されてしまった。
思い出すのはつい先ほど、ゲート突入前に聞いた言葉。私に殺される前に負けるな、という激励と怒りの混ざっていたあの声はもう、別のものに染められている。
「…………そっちが負けたら駄目でしょうが」
手に力が入る。今すぐに光のイグニスに決闘を挑みたい衝動を堪え、彼がどういう状態にあるのかを確認する。
「ねえ。スペクター、
「突然何を言っているのですか? そんなもの
男は本気で困惑した様子の視線を向けている。
「ライトニング様のおわす場所に侵入するとはどんな愚か者かと思えば、ただのオカルト信者だったとは。このような馬鹿を倒すだけで良いとは少々興醒めです」
ため息をついたスペクターがパチン、と指を鳴らすと神殿内上部にて複数の中継映像が出現した。プレイメーカーと相対するボーマン、こちらを認識したリボルバーとグラドスの驚く顔、それだけではなく鬼塚とアース、ブルーメイデンが戦う姿も。
……この中継の目的は公開処刑だ。どちらか、もしくはどちらもが倒れる様を皆へ見せつけるための悪趣味な仕掛け。
「絆というくだらないものに左右される程度の力しか持たない奴らには充分な仕打ちでしょう?」
「…………ああ、そう。わかった。まさかこうなるとは、ね」
ヴァンガードは明確な返答をせず、デュエルディスクを構え、起動させる。
「とっとと終わらせよう」
対戦よろしくお願いします、とわざとらしい礼を入れた後にスペクターもデュエルディスクを構える。
「おや、私の先攻ですか。では永続魔法、種子弾丸を発動。そして
《
星1/攻0
《種子弾丸》
プラントカウンター 0→1
種子弾丸――植物族モンスターが召喚・特殊召喚されるたびプラントカウンターが1つ置かれ、墓地に送ることでカウンターの数に応じた効果ダメージを与える効果も持つカードだ。
スペクターは両手を広げ高らかに声を上げる。
「現れよ、私たちの道を照らす未来回路! 召喚条件はレベル4以下の植物族モンスター1体! 私は
《
Link1/攻0
【リンクマーカー:下】
《種子弾丸》
プラントカウンター 1→2
スペクターの背後へと彼が操る聖天樹――その起点となる若木が召喚された。だが、幹にある顔は普段と違いどこか生気がないように見える。
「
スペクター
LP 4000→3000
《種子弾丸》
プラントカウンター 2→3
《
星2/守800
スペクターの身を削り、樹は種をまく。ダメージを受けたことで聖天樹はざわめきだす。
「まず
スペクター
LP 3000→4000
《種子弾丸》
プラントカウンター 3→4→5(MAX)
《
Link1/攻600
【リンクマーカー:上】
「青い涙の天使……
聖天樹はスペクターの胴にぐるりと己の枝葉を巻き癒す。ついで、とばかりに伏せられた罠は攻撃力を参照して回復する効果を持つ少々厄介なカードだ。
「特殊召喚に成功した
スペクター
LP 4000→4300
追加で回復したことにより、スペクターは初期のライフポイント4000を微量ながら超えた。
「先制攻撃といきましょうか。種子弾丸を墓地へ送る事で、このカードに乗っているプラントカウンターの数×500ポイントのダメージを相手に与える。カウンターの数は最大の5つ! 2500のダメージを受けなさいヴァンガード!」
植物が増えるとともに貯め込まれた種がヴァンガード目掛け射出される。ターンが回ってくる前に大ダメージを受けることになってしまったヴァンガードだが、落ち着き払った様子で手札から1枚のカードを出した。
「ダメージを与える効果の対策をしていないとでも? 相手がダメージを与える効果を発動した時、手札のジャンクリボーを墓地に送り効果発動! 種子爆弾の効果の発動を無効にする!」
クリクリ鳴く目つきの悪い機械クリボーが種へと体当たりし、爆発。爆風が後続の種も吹き飛ばし、ヴァンガードは無傷で立っていた。
「そう簡単にはいかない、ということですか。再び現れよ、私たちの道を照らす未来回路! 召喚条件はリンクモンスターを含む植物族モンスター2体以上! 私は
《
Link3/攻0
【リンクマーカー:上/左/右】
「リンク召喚に成功した
《廻生のベンガランゼス》
Link4/攻2500
【リンクマーカー:上/左/右/下】
連続リンク召喚により現れたのは光属性のリンク4モンスター。緑の葉をマントのように翻し、内に流れる赤い樹液が輝く。右には槍を模した腕を、左には盾を模した幹を担ぐ人型の樹。
植物族ならば採用可能な緩い召喚条件をしているが、それだけでスペクターのデッキに採用されたわけではない。最も厄介なのはダメージと引き換えに相手モンスターをバウンスする効果だ。
「
《
Link2/攻0
【リンクマーカー:左下/右下】
「カードを1枚セットしてターンエンド」
スペクターのエクストラモンスターゾーンにはリンク先が2つとも空いている
魔法・罠ゾーンにはシュラインとセットされたカードが2枚、内1枚は通常罠
……余計な力を抜くように、軽く息を吐く。
「私のターン、ドロー。手札の『帝王』魔法、帝王の凍気を墓地に送って汎神の帝王を発動。デッキから2枚ドローする」
ヴァンガードは手札の補充からスタート。……というよりも、手札がほとんど緑色と魔法カードが占めているのでこの動き出しは仕方がないものであった。
精霊達の後押しによりドロー運をかさ増しし、相手の展開に合わせてデッキからカードを揃えるためなのだろうがかなり心臓に悪い。
「墓地の帝王の凍気の効果! 墓地にあるこのカードと汎神の帝王を除外し、フィールドにセットされたカード1枚を対象としそのカードを破壊する。破壊するのは青い涙の天使でセットしたカード
「……っ!
順風満帆であったスペクターの先攻展開、それを崩しにかかる。スペクターがぎらりと睨みつける。
青い涙の天使の効果により伏せたカードはその場所がわかっているので、もう片方の謎の伏せカードは確実に狙える。
……まさかアニメオリジナルカードの中でも少々ヤバめな効果をしている
「相手フィールドのモンスターの数が自分フィールドのモンスターより多いため、速攻魔法緊急ダイヤを発動。機械族・地属性、レベル4の銅鑼ドラゴンとレベル5のクリフォート・ツールをデッキから効果を無効にして守備表示で特殊召喚。このカードを発動するターン、私は機械族モンスターでしか攻撃宣言できない」
《銅鑼ドラゴン》
星4/守2100
《クリフォート・ツール》
星5/守2800
魔法カードによりフィールドに現れた銅鑼ドラゴンとクリフォート・ツールはどちらも通常モンスター。ベンガランゼスの効果は『効果モンスター』を対象にするため、このタイミングで効果の発動はできない。
ベンガランゼスでモンスターをバウンスしダメージを受け、
というのも、永続罠
まあ、とりあえず。今回は最初に破壊できたのでヨシとする。
「通常魔法、マジカル・ペンデュラム・ボックス発動! デッキから2枚ドローし、お互いに確認する。確認したカードがペンデュラムモンスターだった場合、そのカードを手札に加える。違った場合はそのカードを墓地へ送る」
ヴァンガードはドローしたカードを見て――ふっと微笑む。
「ドローしたのは
スペクターへと見せたカードはどちらも確かにペンデュラムモンスター。気になるとすればクリフォートとは無関係のモンスターであることぐらいか。
ハノイの騎士と協力するにあたり、ヴァンガードはデッキの構築を明かし続けることを決めた。が、それはスピードデュエルのデッキのみ。マスターデュエルのデッキについては誰も何も知らない。何をしてくるのか予想がつかない。
「先駆けとなれ、我が未来回路! 召喚条件は機械族モンスター2体! 私は銅鑼ドラゴンとクリフォート・ツールをリンクマーカーにセット! リンク召喚! リンク2、クリフォート・ゲニウス!」
《クリフォート・ゲニウス》
Link2/攻1800
【リンクマーカー:左下/右下】
クリフォート・ゲニウスがリンク召喚され、ペンデュラムスケールに置くであろうカードを2枚既に手札に揃えた。ペンデュラム召喚とそれに伴うサーチが確定――スペクターは動いた。
「ベンガランゼスの効果をクリフォート・ゲニウスを対象に発動。私はそのモンスターの攻撃力分のダメージを受け、そのモンスターは持ち主の手札に戻る」
「……クリフォート・ゲニウスは自身以外のリンクモンスターが発動した効果を受けない」
「ええ、分かっています。故に私はベンガランゼスの効果で1800のダメージを受けるのみとなる。――ダメージを受けたことで
自傷、からの展開。スペクターが受けたダメージはすぐに消え、
《
Link1/攻800
【リンクマーカー:下】
「
《
攻800→2400
力を得た剣士は片刃の剣を構え、母なる樹を守る騎士として立ち塞がった。
ヴァンガードは手札から2枚のカードを取り、デュエルディスクの両端へと置く。
「
ヴァンガードの背後、左右離れた位置で立ち昇る二つの光の柱。その中に浮かぶのは二色の眼を持つ竜と、逆光によりその顔がはっきりとは見えないエンターテイナー。
ペンデュラムモンスター達は互いに視線を合わせた後、頷き、ヴァンガードの指揮下で敵を打破するべく気合を入れる。
「2枚のペンデュラムスケールは8と4、よってレベル5から7までのモンスターが同時にペンデュラム召喚が可能になる――このままならね! 永続魔法、魂のペンデュラムを発動!」
それは、ペンデュラム召喚を世に広めたとある決闘者に由来する永続魔法。
「ペンデュラムゾーンのカード2枚を対象とし、対象のカードのペンデュラムスケールをそれぞれ1つ上げるか下げる。この効果で稀代の
ヴァンガードのエクストラデッキに加わったペンデュラムモンスター2体どちらもペンデュラム召喚が可能になり、クリフォート・ゲニウスによるサーチを経由したクリフォート・エイリアスのアドバンス召喚がほぼ確定した。
クリフォート・エイリアスはアドバンス召喚が成功した時フィールドのカード1枚を手札に戻すうえ、その効果の発動に相手は効果発動ができない。スペクターはここしかないか、と青い涙の天使の効果で伏せた罠を発動する。
「
いわずもがなスペクターが選んだのは植物族。同じ種族となる廻生のベンガランゼスの攻撃力は2500、
スペクター
LP 4300→9200
「ゲニウスの効果を相手フィールドの
ゲニウスから漏れ出た影のようなものが纏わりつき、その効果を蝕む。ただでさえ生気がなさそうな聖天樹がさらに弱々しくなっていく――それに対して、スペクターは特に反応しない。いや、効果を無効にされて大変だ次のターンにどう巻き返そうか、ぐらいは考えているかもしれないが、それだけだ。
……今の彼は、よくも我が母なる樹を穢したな、という怒りを一切抱いていない。
「光のイグニスが非科学的な現象を嫌って洗脳ついでに記憶を消したことで精霊の力も弱くなった、ってこと? ――なら、精霊がいる事の強さってものを見せてあげる! 振動せよ、起動せよ! 集え、私のモンスター達! ペンデュラム召喚! 来て、銅鑼ドラゴン、クリフォート・ツール! そしてクリフォート・ゲニウスのリンク先にモンスター2体が同時に特殊召喚されたことでデッキからレベル5以上の機械族モンスター、クリフォート・エイリアスを手札に加える!」
《銅鑼ドラゴン》
星4/守2100
《クリフォート・ツール》
星5/守2800
緊急ダイヤで呼び出され、リンク素材として活用した通常モンスター2体が再び並び立つ。
「魂のペンデュラムの効果! 自分のペンデュラムモンスターがペンデュラム召喚される度にこのカードにカウンターを1つ置き、フィールドのペンデュラムモンスターの攻撃力はこのカードのカウンターの数×300アップする!」
《魂のペンデュラム》
カウンター 0→1
「クリフォート・ツールに装備魔法
《クリフォート・エイリアス》
星8/攻2800→3100
クリフォートの中核を担うモンスターと十の輝石を贄とし、巨大なステルス機が出撃。魂のペンデュラムにより強化されたことでその攻撃力は3000の大台を超えている。
「フィールドから墓地に送られた
だからこそ、簡単な再利用がしにくいバウンスで今のうちに処理するべきとヴァンガードは判断した。
「クリフォート・ゲニウスで効果が無効となっている
スペクター
LP 9200→7400
「クリフォート・エイリアスで
「くっ……! 自分フィールドの植物族リンクモンスターが戦闘または相手の効果で破壊される場合、代わりに墓地の
攻撃力3100対2400。本来なら戦闘破壊できたはずが、スペクターの墓地にあった魔法カードが身代わりとなる。
スペクター
LP 7400→6700
「サーチ可能かつ身代わり効果持ちの展開札……厄介な」
スペクターのフィールドにモンスターを残してしまったままバトルフェイズを終え、メインフェイズ2に入る。
「先駆けとなれ、我が未来回路! アローヘッド確認! 召喚条件はペンデュラムモンスターを含む効果モンスター2体以上! 私は銅鑼ドラゴンとリンク2のクリフォート・ゲニウスをリンクマーカーにセット! リンク召喚! リンク3、
《
Link3/攻2000
【リンクマーカー:左下/下/右下】
白の三角帽子に赤い髪、ペンデュラムの赤と青をモチーフとした装飾を持つ魔法使いが剣を片手に舞い降りる。
……ペンデュラムスケールにいる2体が魔法使いの顔を見てどこか固まっているように見えるけれども、多分、気のせいである。
「
今、ヴァンガードのフィールドにはペンデュラムスケールの2枚とペンデュラムモンスターのクリフォート・エイリアス、合計3枚のペンデュラムカードが存在する。よって魔法使いの攻撃力は2000から2300に上昇する。
《
攻2000→2300
「カードを1枚セットしてターンエンド」
声には出さず、おのれ、とスペクターは歯噛みする。
墓地の
だが、ヴァンガードは帝王の凍気の墓地効果で魔法を2枚除外していたため、レベル4のペンデュラムモンスターを破壊する妨害ができなかったのだ。
ヴァンガード自身に向いたリンクマーカーとペンデュラムスケール、ある程度の下地が整えば出てくるのは高レベルモンスターばかりになり、墓地の
……スペクターの手札は0。ドローするカードによっては巻き返すのに厳しくなる。それは困る。ライトニング様に顔向けできなくなる。
デッキを睨みつける。
道具は道具らしく、私の望みのまま使われるべきなのだ。突然非科学的だの精霊だの、意味のわからないことを言うあいつごときに負けてはならない。
私を救ってくださった、ライトニング様のためにも!
「私のターン。ドロー。……これはこれは、良いカードを引きました。ですが使う前にある程度は済ませておきましょう」
ドローしたカードを確認したが使わずに、今フィールドに残っているカードのみでスペクターは展開を開始する。
「永続魔法
先攻1ターン目と同様に現れるリンク1の聖天樹。
「さあ、再び現れよ、私たちの道を照らす未来回路!
《
Link2/攻0
【リンクマーカー:左下/右下】
「
スペクター
LP 6700→5700→6700
《
星2/守800
《
星1/守600
《
Link1/攻600
【リンクマーカー:上】
瞬く間にモンスターがフィールドに計4体並ぶ。
「三度現れよ、私たちの道を照らす未来回路!
《
Link3/攻0
【リンクマーカー:上/左/右】
「
《
Link1/攻800→3200
【リンクマーカー:下】
怒涛の連続リンク召喚は終わり、スペクターは謎だった1枚の手札を明らかにする。
「では参りましょう。魔法カード、貪欲な壺を発動! 墓地の
「ここでリソースの回復、ね」
連続でリンク召喚をすれば当然、墓地に大量のモンスターが眠ることとなる。使い切ったはずの
「
高い攻撃力を持つモンスターが連続攻撃できるようになったのを受け、ヴァンガードは動く。
「相手メインフェイズに
《クリフォート・アーカイブ》
星6→4/守備1000
特殊召喚されたためクリフォート・アーカイブのレベルは4となり、また、ペンデュラムカードが増えたので
《
攻2300→2400
ヴァンガードのフィールドにはリンクモンスターとペンデュラムモンスターが2体。
「壁を増やそうと狙いが変わるわけではないのですがね。バトル!
「攻撃宣言時に罠カード、パワー・フレーム発動! その攻撃を無効にし
魔法使いを囲むように出現した直方体の形をしたフレームが攻撃を阻んだ後、空いている片手でフレームをがっしり掴んで装備、ストロングに。……そのカードはおそらくそういう使い方をするものではない、とツッコミをする者はいなかった。
《
攻2400→3200
「ならばもう一度
《
攻3200→4200
攻撃力を上げての二度目の攻撃。ヴァンガードにはもうセットカードはない。この攻撃は通る――そう、スペクターは確信していた、が。
「モンスター同士が戦闘を行うダメージステップ開始時に
効果により除外するはずのカードがデッキから飛び出していったが、それを稀代の
ペンデュラム効果で戦闘破壊は防げるようになったが、ペンデュラムカードである
《
攻3200→3100
花の精の後押しを受けた片刃と、決闘者の加護を得た両刃の剣がかち合う。数号の斬り合いの後、軍配は
攻撃力4200と、攻撃力3100。ヴァンガードへ発生するダメージは1100の半分、550。
ヴァンガード
LP 4000→3450
「
「……おや。互いに、ですか。私はカードを1枚セットしターンエンド。ターン終了時に
複数のカードを使いリンクモンスターを守り抜いたことで、ヴァンガードはエクストラデッキからのペンデュラム召喚が可能となった。が、現在エクストラデッキに存在するペンデュラムモンスターは少ない。
「私のターン、ドロー! スタンバイフェイズ、異次元からの宝札が私の手札に戻る。そして互いに2枚ドローする」
「では有り難く」
これでヴァンガードの手札は6枚、スペクターの手札は2枚に。
「スケール8の
手札にはクリフォート・ツールもあるが、そちらをセットした場合はクリフォートのみしかペンデュラム召喚ができなくなるため、今回はスケールに使うのを見送った。
ペンデュラムカードが増えたことで
「振動せよ、起動せよ! ペンデュラム召喚! 来い、銅鑼ドラゴン! ペンデュラムモンスターがペンデュラム召喚されたことにより、魂のペンデュラムにカウンターを1つ置き、ペンデュラムモンスターの攻撃力はさらに300アップする」
《銅鑼ドラゴン》
星4/守2100
《魂のペンデュラム》
カウンター 1→2
《クリフォート・エイリアス》
攻3100→3400
「クリフォート・アーカイブと銅鑼ドラゴンをリリースし、クリフォート・シェルをアドバンス召喚!」
《クリフォート・シェル》
星8/攻2800→3400
守備表示のモンスター2体をリリースして現れたのは攻撃的な効果を備えた、巻貝のような見目のクリフォート。
「『クリフォート』モンスターをリリースしてアドバンス召喚に成功したクリフォート・シェルは2回攻撃と貫通効果を得る! また、クリフォート・アーカイブがリリースされた場合の効果を
フィールドから離れたアーカイブからの砲撃に対し、スペクターは抵抗しない。
「……チェーンはありません。
たとえ他に『サンアバロン』リンクモンスターがいようと、1枚でも相手の効果で離れれば『サンヴァイン』達は自壊してしまう。
そして、『サンアバロン』達は攻撃対象にならない効果を持つが、この効果が適用されたモンスターのみの場合、直接攻撃を許してしまうというアニメ版の地縛神に似た能力となっている。
ライフポイントを削る絶好の機会。ヴァンガードが逃すはずがなかった。
「クリフォート・エイリアスでダイレクトアタック!」
スペクター
LP 6700→3300
クリフォート・エイリアスの攻撃は通った。一撃で3400を削ったうえに、まだ攻撃可能なモンスターは残っている。
次の攻撃が通れば、ヴァンガードが勝つ。
――このままならば。
「ああそんな、私が、負ける…………? クッ、ハハハハハ!」
突然にスペクターは笑い始める。この状況で精神がやられた? そんな筈はない。芯になる存在が確かならば、スペクターの精神は盤石となる。となれば、残る可能性は。
「まさか!」
「ええ、そのまさかですよ! ダメージを受けたことで永続罠、
《
Link1/攻0
【リンクマーカー:下】
スペクター
LP 3300→6700
「
報いを受けよ、とばかりにカードから放出された無数の電撃がヴァンガードを貫く。
「ぐっ、うああぁああぁ――っ!」
ヴァンガード
LP 3450→50
ダメージを受けた証である無数のノイズがアバターの全身に走る。痛みで身体を支えられなくなったのか膝を折るも、倒れ伏す訳にはいかないと気力で耐える。
「まだ、まだだ……っバトルフェイズを終え、メインフェイズ2、に……移行! 一時休戦、発動! 互いに1枚ドローし、次の相手ターン終了時まで互いに受けるダメージは0になる……!」
「おや、そうきましたか。ではドローを」
残り50――効果ダメージを与えるカードとしてよく知られる火の粉でも、使われてしまえば簡単に吹き飛ぶ数字だ。直接効果ダメージを与えるカードでなくとも、スペクターが回復すればそれが効果ダメージになり敗北に繋がる。
受けるダメージを0にする一時休戦であれば、この状況でもなんとか凌ぐことができる。限界での延命措置が吉と出るか凶と出るかはまだ、二人にも分からない。
痛みが引いてきたのか、息を整えた後にヴァンガードはドローしたカードを使う。
「左腕の代償を発動。手札を全部除外しデッキから魔法カード、天空の虹彩を手札に。また、除外された異次元からの宝札は次の私のターンに手札に戻り、スタンバイフェイズに互いに2枚ドローする」
左腕の代償を発動するターンは魔法・罠のセットができない。が、一時休戦により攻撃を防御するカードを用意する必要は薄くなっている。
ヴァンガードが左手に持っていた手札たちは代償として全て消えたが、それにより手札あった異次元の宝札がまた除外され効果を起動する。
「またですか……少々しつこいですね」
前髪を弄りながら、スペクターは鬱陶しそうに呟く。
どこからでも除外さえできればドローに変わる。相手にもドローさせてしまうデメリットはあるが、使用するカードの傾向を把握している相手ならば対策はなんとでもできる。
「フィールド魔法、天空の虹彩を発動!」
フィールド魔法の発動で、空に模様が浮かび上がる。
それはペンデュラム召喚の演出と非常によく似た、幾度も描かれた振り子の軌跡。
「天空の虹彩の効果で
大仰に一礼し、一人は決闘の舞台から降りる。
次に現れるのは巨大な水晶を背に負うドラゴン。ペンデュラムスケールにいるオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンと似た名前と体躯をした暗色の竜は一鳴きし、光柱の中で浮遊する。
「エンドフェイズにオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンのペンデュラム効果を発動。自身を破壊してデッキから攻撃力1500以下のペンデュラムモンスター、エキセントリック・デーモンを手札に。また、『オッドアイズ』が効果で破壊されたのでアークペンデュラムのペンデュラム効果が発動。デッキからオッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンを守備表示で特殊召喚!」
《オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン》
星5/守2400
「私はこれでターンエンド」
一時休戦の適応下であっても油断はできない、とヴァンガードが特殊召喚したオッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンにはエクストラデッキから特殊召喚された相手モンスターの効果を無効にできる、という防御に向いた効果を持つ。
スペクターのフィールドには未だ
ライフポイントの差は歴然。
余裕を見せるスペクターに対し起死回生の一手となる神は――未だ、デッキの中にて時を待つ。
スペクターはエクストラリンクを完成させる。
ラスト1ターン、再起を図るは
電脳世界に、真の神が降臨する。
次回の3つ(3体の生贄)
次話はまだ書き上がってないのでデュエル後半の更新はまだお待ちください……!
感想評価で執筆スピードカウンターが増える可能性があったりなかったり(姑息な感想評価稼ぎ)