祝 クラッキング・ドラゴンをサポートするスキル『ハノイの騎士の名のもとに』実装
……私は今日死んでしまうのか? あれでもクラッキング・ドラゴンまだデュエルリンクスにいないぞ? あれっリボルバー様のレベルアップ報酬にも無いぞ? ……アッ後日出るパックで実装するの!?←今ココ
皆もデュエルリンクスでハノイの騎士になってサイバースを抹殺しよう!
空に開かれたゲート、そこから現れるデュエルボードに乗った決闘者達。旧リンクヴレインズに遺棄されたハノイの塔という巨大な目印の下へ集う。
かつてリンクヴレインズを救った英雄プレイメーカーと闇のイグニス、Ai。
運命に立ち向かうべく参戦したソウルバーナーと炎のイグニス、不霊夢。
親友を助けるために決意を固めたブルーエンジェル改めブルーガール――ではなく、更にアバターを変更したブルーメイデンと水のイグニス、アクア。
己の道を貫く闘士Go鬼塚と地のイグニス、アース。
電脳トレジャーハンター、ゴーストガール。
狡猾な狩人、ブラッドシェパード。
そして――ヴァンガード。
「来たか」
空を見上げて男は呟く。
威風堂々とした姿で決闘者を待つのはハノイの騎士リーダーのリボルバーと副官のスペクター。かつてリンクヴレインズの平和を脅かす敵としてその力を振るった者たち。
「あそこか」
プレイメーカーが二人を視認し、進行方向を下向きに変更。彼らの目の前へ降り、荒れた大地を踏み締める。その後を追い皆も降り立つ。
――錚々たる面々が並ぶ。まさにリンクヴレインズのオールスター。
……あれ? そういえば鬼塚さんにはリアルで時間作ってもらってお話ししたけどもエマさんに会ったことないんだよなあ、とヴァンガード。自分に指を差し、その次にゴーストガールへ指を差し。手でパクパクと喋ったのかとジェスチャー。
ブルーメイデンとブラッドシェパード、首を横に振る。ついでにブルーメイデンはヴァンガードへ力強く何度も指を差して口パク。
あんたが。じぶんで。やりなさい!
アッハイそうですかわかりました……としょぼしょぼしながら説明に向かうヴァンガード。
ゴーストガールは急に近寄ってきたヴァンガードに戸惑いつつも話を聞いて――数秒して頭を抱え始めたのでしっかりと最初から説明を始めたのが分かる。もういい、もういいから、と情報量で頭がパンクしそうになったのかヴァンガードに対し話を中断するよう要求している。
……引き締まっているような、緩くなっているような微妙な空気の中リボルバーは決闘者を呼んだその理由を語る。
一刻も早く人類の敵である光のイグニスを見つけ出すためにハノイの塔を再起動、スキャンプログラムを放出するモノへと改造する。そのためイグニス・アルゴリズムを解する優秀なプログラマーが必要である、と。
「だから俺を選んだという事か」
「ああ」
ブラッドシェパードはイグニス・アルゴリズムを利用した罠を仕掛け、プレイメーカーらを騙したという実績がある。……過去にロスト事件やハノイの騎士、イグニスと全く関わりがなかった一般市民が、である。ハノイの騎士が喉から手が出るほど欲しい人材だ。
なおパンドールに推し進められた『ヴァンガードの正体バラシ』を採用した結果、ブラッドシェパードの引き抜きには大失敗している。ので、本来ならばここに来る筈がなかった、のだが……今上詩織という存在がかなり気に入られているらしく協力関係になってくれている。というのが正しい状態である。
つまりは中間管理職という縛りから解き放たれたよかれと思ってフリーダムヴァンガードによる多方面へのやらかしっぷり、ではなく顔の広さという強みを活かしてヴァンガードを経由した協力関係が構築されている。
「ハノイの塔はもともとイグニスを抹殺するためのものよね。光のイグニスがいる場所を見つけ出した後にあなたが私達を裏切らないという保証はあるの?」
ブルーメイデンが心配するのも当然である裏切り。それを防ぐためにもハノイの塔を再起動させるメインプログラムは共同で作成する。そうリボルバーは告げる。
……なおプログラミングに関してはよく分からないヴァンガードであったが、スキャンプログラムの言葉に反応し例の増殖するG型プログラムを取り出そうとしたところプレイメーカーとリボルバーの「やめろ」の綺麗なユニゾンで一蹴された。
「ハイワカリマシタ……私プログラミングに関してはお手伝い出来ないので警戒に回っておきますね……」
この場から離れつつ、こっそり入り込んで秘密の会合を動画撮影しようとしてた鳩とカエルの頭を引っ掴み、隣に現れたクラッキング・ドラゴンの頭に乗る。
刺々しいシルエットとタスケテーイノチダケハーと叫ぶ声の両方が遠ざかっていく。
人間とイグニスが手を取り合ってのモブプログラミング。後は各々が現実世界でプログラミングを行い完成を待つだけ――その筈だった。
「リボルバー、俺はお前を許せない」
敵意がソウルバーナーからリボルバーに向けて放たれていた。
これまでヴァンガードやプレイメーカーが仲介していたためにリボルバーへと直接向けられていなかった怒りは、延々と彼の中で燻っていた。
リボルバー――鴻上了見と初めて出会った時のきれいなスペクターショックと精霊界のアレコレでなんやかんや有耶無耶になったように見えたが、真実は怒りの発露が先送りになっただけであった。
緩衝材兼怒りの矛先がある程度向けられていたヴァンガードがクラッキング・ドラゴンに乗り、周囲の警戒へと向かったことで彼のストッパーは完全に外れた。
「今更正義の味方ぶろうと、お前たちハノイの騎士が過去にした事は消えない! 俺は人生を滅茶苦茶にされたんだぞ!」
「わかっている」
「いいや、何も分かってない!」
表情を変えずに肯定するリボルバーとは対称的に、感情をむき出しにしてソウルバーナーは吠える。
「デュエルだ! 俺が勝ったらお前達に全ての責任を取らせる! もし俺が負けたら不霊夢を渡す!」
「ソウルバーナー!?」
驚きの声を上げる不霊夢。当然だろう、そんなことをするという話は何一つとして聞いていない。
「……いいだろう」
「リボルバー様!」
ハノイの騎士の一員であるスペクターも驚愕を隠せないでいる。
今人間同士で争うのは無駄に時間を消費するだけであるのは明白。だが、わだかまりが残ったままでは光のイグニスらとの戦いに大きくない影響が出るかもしれない。問題点と解決の可能性、どちらもわかっているが故に無理やり止めることができない。
「……これほどまでに強い怒りの感情は初めてです」
アクアが能力で感じ取った彼の心、そこにあるのはまさしく何物も寄せ付けない業火。他人が何をどうしようと止めることはできない、それどころか火に油となるだろう。ただ一人を除いて、だが。
その人物が自分で気付いているはずだと信じてデュエルを見守るしかない。
「……ふむ、大丈夫なのか? これは」
「どう見ても大丈夫じゃないな」
二人のやりとりを見て不安げなアースの呟きに対し、間に入って仲裁しようなどという気は全くない鬼塚が反応する。
「ま、一度全部吐き出せば楽になるだろ」
「そういうものか?」
「そういうモンだ」
男にはやらなきゃいけない時がある、と呟いたかと思えば後方で腕を組み傍観の姿勢をとる。
……心配、呆れ、無関心。さまざまな視線が向けられる中、二人はデュエルディスクを構えた。
「俺の先攻! 俺は
《
星3/攻1000
「召喚に成功したフォクシーの効果! デッキの上からカードを3枚めくり、その中から『サラマングレイト』カード1枚を選んで手札に加える。俺はルール上『サラマングレイト』カードとして扱う魔法カードフューリー・オブ・ファイアを手札に加え、そのまま発動!」
「!? 待てソウルバーナー――」
フューリー。ソウルバーナーが抱く強い怒り、激怒を表すかのような名前をした魔法カード。不霊夢がその発動を制止しようとするも、彼の耳には届かない。
「手札の
《
星5/守1000
《
星4/守1600
フィールドには3体の
「現れろ、未来を変えるサーキット! アローヘッド確認! 召喚条件は炎属性の効果モンスター2体以上! 俺はフォクシー、パロー、ファルコの3体をリンクマーカーにセット! 来い、
《
Link3/攻2300
【リンクマーカー:上/左下/右下】
「カードを1枚セットしてターンエンドだ」
ただ、エースモンスターの召喚に成功しても先攻1ターン目のため攻撃できない。ヒートライオは次のターンに来るだろう命令を静かに待つ。
「うっひゃあ〜……1ターン目からヒートライオを出すなんて飛ばしてるなソウルバーナー」
Aiがフィールドを見てわざとらしく声を上げる。
少しでもおちゃらけた態度で緊迫した空気を緩めないと息が詰まりそうでツライったらありゃしない。まあ人間と違いイグニスは呼吸は必要としないのだけれど。
「でもなんで不霊夢はあの時に発動を止めようとしてたんだ? モンスターを展開できる魔法カードなら使って損はしないじゃんか。誰だってエースモンスターを出せたら嬉しいはずだろ?」
デュエルを見ている中でのちょっとした疑問。それに応えるのは闇のイグニスのオリジンであるプレイメーカー。
「いつも通りならばする筈のないミスをしている。だからだろうな」
「ミスぅ? そんな感じはしなかったけどな」
プレイメーカーはソウルバーナーは冷静ではないと断言する。何としても勝利を狙う、そのはずなのにリンク1のあのモンスターを経由しなかった。
「……リボルバー」
プレイメーカーはロスト事件が誰の手によって明るみに出たのかを知っているが、ソウルバーナーは違う。ハノイの騎士リーダーであるリボルバーを恨み続け、積もり積もった感情は今こうして爆発した。
このデュエルが起きたのは真実を伝えなかった自分の責任でもある。手に力が入っていると気付かぬまま、プレイメーカーはリボルバーを注視する。
「私のターン。ドロー」
ターンはリボルバーへと移行した。ドローしたカードに目を向けず、ソウルバーナーを真っ直ぐに見据えリボルバーは口を開く。
「――
その言葉を理解するまで時間が掛かった。
「何もしない、だと? ふざけてんのか!」
「私のターンは終わった。お前のターンだ」
「……ああ、そうかよ」
怒りで顔を歪めるソウルバーナー。彼はもはや目の前にいる相手をぶっ倒す、それしか考えていない。
――その姿を見ている彼一番の相棒、不霊夢がどう思っているのかも知らずに。
サイバースを貫くための力は揃っていた。
だが、男は意思なき武器に成りきれぬまま
デュエルの続行を選んだ。
今は亡き父から継いだ罪を背に、
償いを求める炎は目の前に。
燻る思いは、どこへ向かうのか。
▼ 不霊夢 は 何かをしようとしている……。