そろそろデュエル考えないといけないので更新がかなり遅くなるかもしれない……その前に設定開示だッ!くらえ!
考える。与えられた知識を基に、より深く世界を知る。
ボーマンは一人禅を組む。人ならざる身ではあるが、人に近しい身である自身が精神を統一しやすい姿勢にとなった結果、自然とその形になっていた。
地上絵として地に縛られた神々、地下深くへと押し込まれた紅蓮の悪魔。人間とイグニスが争い、人が死ねばその魂を喰らい現れるだろう今最も現れ出る可能性が高い危機。
他には異世界より現れ、堕落による滅亡で蝕む
これらはほんの一例であり、殆どが突発的に現れてもおかしくない、まさしく対策のしようがないもの。考えるだけ無駄、とライトニングが切り捨てるだろうモノだ。それらが現れた際に世界に出るだろう影響を観測できるようにプログラムを構築、シミュレート、圧縮し保存。
「人類の後継種を統べるため作られた私がこのザマか」
目を開き、呟く。数度のシミュレーションで識る。自分は後手しか打てず、発生する被害を止められないと。
その現実に怒りはしなかった。それらへの対処法はこれから会得するのだから。
かの人間は自分に対して
――なればこそ、己の在り方を見つめ直す。与えられた情報を基に、現実だけでなく空想も含めた存在へと再構築する。
「根源から振り返るとするか」
目を閉じ、外からの情報を断つ。
意志を持つAIであり人類の後継種、それがイグニス。人を導く叡智の炎。
その炎をこの世に生み出すために焚べられた薪。それがオリジン。過酷な環境下でデュエルを強いられた子供達。……藤、穂、杉、草。オリジンが植物に関連する名を持つのは偶然ではなく必然なのだろう。
考察する。鴻上聖が被験者の基準としたナニカを。その手がかりとなりそうなものは名前だけでなく……年齢、だろう。
『七つ前は神の内』――七歳までの子供は神の元に属する存在である、故に我儘や非礼をしてもそこに責任はない。そんな意味のことわざだ。七歳までは神の子、この観念は実は古代からのものではなく近代で成立したものだが、多くの人に昔からそう言われていたのだ、と信じられているのならばそれが真実となる。
そして、ロスト事件に巻き込まれた子供達の中で年齢が七歳を超えるものはいない。皆、まだ『神の子』として扱われるだろう子供だった。
幼い頃よりリンクセンスを得ていた鴻上了見が何故被験者とならなかったのか? その理由の一つが年齢だったのだろう。彼の出生に関しても謎は多いが今回は関係のないこととして除外する。
複数の出来事を掘り起こす。接続する。
星遺物の有る世界の伝説で、『守護竜は神の眷属』だと記載がある。小さき者達を守る存在であり、時代が進むにつれ滅びたが、とある出来事をきっかけに遺物より変化したものたち。
……捕食形態となったイグニスの見た目はどこか要らないものがあるように見える。
人型から手足を無くし巨大化、伸びた首と大きな頭。口でデータを喰らう。捕食を目的とするならこれだけで良いはずなのに、その胴体には無用の六つの触腕がある。
例えるなら、捕食形態のシルエットは――竜に似ている。
星杯の守護竜イムドゥーク。
星遺物より生まれ変わったユスティア、ガルミデス、プロミネンス、アンドレイク、エルピィ、ピスティ、アガーペイン。
死の力に呑まれたメロダーク。生の力を呼び起こされたアルマドゥーク。
守護竜の中に光属性は
ロスト事件の最中、光のイグニスであるライトニングが他のイグニスとは違いオリジンへ直接的な干渉を、精神への攻撃をしてしまったのはこれが理由なのか? と可能性を提示し、肯定も否定もせず一つの仮説として保存しておく。
……神の子から生み出されたイグニスと、神の眷属である守護竜。ならば自分は『双星神』と同等に成らねば格が足りないのか、とここでようやく明確な目標を知る。
とてつもない無茶振りだ。……だというのに、どこか喜んでいる自分がいる。
そうなるとイグニスを纏めて消し去るために建造したハノイの塔はオルフェゴール・バベルと地上へ落とされた星杖か、はたまた明星の
どちらであっても世界を崩壊させる恐ろしい力を持つ物体なのは変わらず、守護竜は発達した化学技術によって滅ぼされるという結末も変わらない。
ハノイの塔の企みが成功し、全てのサイバースが消え、あらゆる機械類が使用不可能となれば人は何を頼るのか? 決まっている。人智の及ばぬ存在だ。祈り、願い、祀りあげる。
――それは必ず、精霊信仰の復活に繋がるだろう。
そこへ行き着くと同時、背に冷たいものが走るのを感じた。考えすぎだと否定してくる存在は今ここにはいない。
この世界で最もオカルトに長けた人間の今上詩織へこれらの仮説について尋ねたのならば、
孤独を隠し、ボーマンは座禅をやめ立ち上がった。
……鴻上聖が本当に星遺物の物語を参考にしていたのならどこでその物語を知ったのか、という問題が浮上する。
その答えとなるサイバース族のモンスターがいる。
ストームアクセスにより捕らえられない効果モンスター。ヴァンガードとのデュエル、オルフェゴール・ロンギルスが忌々しく呼んだ五文字の名前。星遺物に響く残叫。この世界で唯一『鍵』を使用可能な人間を狙い、肉体を乗っ取る力を持つ存在。内に邪悪を秘めたトロイの馬。
「全ての原因は貴様か――
背後に向けて裏拳を放つ。
『やーだこわぁーい! デュエリストがこんなふうに暴力を使っていいわけー?』
それはわざとらしく弱者の演技をしていた。元は人間であるとは思えぬほどの我欲で満ち溢れた何かは、こちらを嘲笑うようにひらひらふわふわと飛び回る。
「…………」
手応えはなかった。こちらへウイルス等の攻撃を仕掛けた形跡も無し。危害を加えられない状態で目の前に現れたのか、と警戒はしつつも情報を得るための会話を開始する。
「鴻上聖を利用して己の欲望を満たそうとした他力本願が何の用だ」
『利用? 違うわ、困ってた人間がいたからちょっとお手伝いしただけよ? 私ってばこうなる前は力を持たない人間を導く優しい妖精だったんだもの! ここに来た理由も単純。悩める命のお話を聞いてあげるためよ』
一挙一動が腹立たしい。眉間に皺を寄せ、ボーマンは問い正す。
「優しい? なら何故鴻上聖が電脳ウイルスを仕込まれた時に助けなかった? お前の行動全ては自分のために、だろう」
『ナニソレ、息子が昏睡状態の父をネットワーク上でデータとして甦らせようとした親孝行を邪魔しろってこと? アレは流石に驚いたけどぉ……ま、流石に息子でもお父さんの全部を理解することはできなかった、ってことよねぇ。息子が必死にお父さんの組み立て作業してるなかで放置されていたのよ、私があげたアイデア。あの男以外が使おうとしたら困るから完全復活する前に私の手でその部分を消したの、綺麗さっぱり。感謝してほしいぐらいなのだけど?』
「下衆が」
どんな言葉で飾りつけようとやったことは証拠隠滅だ。苛立ちを吐き捨てる。
「その真実を私が人間へと明かせば怒りの矛先はお前に向かう、それをわかっていて言っているのか?」
『貴方が今答えを知ってももうヒトとAIの争いからは逃げられないのに! 人間達が信じてくれるはずないでしょうに。ああ、なんて可哀想なモノなのかしら。そうね、勝手に争って、勝手に負けた方を私が有効利用してあげる! そして敵討もしてあげちゃうわ! ほぅら、優しいでしょ?』
「勝ち負け? ……それは、お前が最後までこの戦いを見届けられたら、の話だろう」
そう言い返してくるとは思わなかったのか目を丸くする。一瞬、感情が抜け落ちたような表情になるがすぐに笑顔へと変化した。
『――何を言ってるの? 最後に笑うのは私。でしょう?』
イヴリースは邪悪に嗤い、夢のように消えた。
「ボーマン!?」
ようやく彼の作った光の城に侵入者がいた、と気付いたライトニングが慌てて現れる。計画の要であるボーマンに異常はない、と確認し終わった後に呪詛を吐く。
「これも今上詩織のせいか……あのノイズがぁ……!」
苛立ちから頭を掻きむしっているが無視する。計算能力以外が他の者より劣ったイグニスである彼は同情を好まない。一人にしてやるべきだと彼から離れた場所へ移動する。
「さて、どうするべきか」
歩きながら考える。
人間側の準備は整いつつある。きっと我らが居城も見つけ出すだろう。なら、私は彼らが攻め込む前に余計な手出しをされることない決戦の地を自身の手で作らねばならない。その程度のことができなければ高次の存在になるなど夢のまた夢。
敗北すればそれまで、勝てば……。
「人間とAIだけでなく邪悪な精霊も敵となるか。三つの世界を巻き込んだ争い。……何、その結果をシミュレーションするほど私は無粋ではないさ」
足を止める。胸に手を当て、語りかけるように言葉を紡ぐ。応答するのは彼の体を鼓動のように揺らす力。――デミウルギアによる攻撃で宿した神の力、その欠片だけが彼の話を聞いていた。
ハノイの騎士である者が、
賞金首を狙っていたハンター達が一堂に集う。
人間と敵対するAIとの戦い、その最終決戦の地へ誘う
ハノイの塔が起動する直前に
ソウルバーナーが待ったをかける。
なお、本編で明かす予定がないし「だからなんだよ!」と読者の皆様に言われそうではあるから後書きで明かしますが……。
オシリスはボーボボ世界に召喚されたことがあるので(ボーボボの例の回)信仰が少ないVRAINS世界でも活動にそこまで問題がないという設定があります。ありがとう……ボーボボさん……!