どうも、ハノイの騎士(バイト)です。   作:ウボァー

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SOLを交えた三つ巴にしたいって言ったな? スマンありゃ嘘だ。
あとアニメに沿っているとすると時系列がちょっとおかしくなるのですが、そこは気にしちゃいけないぜ!


鬼も角折る

 プレイメーカーを超えたかった。だから奴に深く刻まれた事件、ロスト事件と同じようにデュエルを繰り返した。

 負けた。負けた。負けた。負けた。負けた。負けた。負けた。負けた。負けた。勝った。負けた。勝った。勝った――。

 

 勝ち星を数える暇はなかった。ただデュエルをし続けた。それだけだった。

 

 

「――最初から分かっていたさ。俺はプレイメーカーにはなれない」

 

 

 男の口からそう言葉がこぼれたのは、SOLが開発した巨大なデュエルシミュレーターから解放されてすぐの事だった。

 

 

 

 

 

 

 プレイメーカーを超えたいというプライドが、ロスト事件の擬似的な追体験を可能とするデュエルシミュレーターへと男を走らせた。強くならねばならないと自分に言い聞かせ続ける中――ある少女の顔が浮かんだ。

 

『ファンとして、個人的に鬼塚さんと戦わせたいデッキがあるんです。いや、駄目なら列車使いますけど』

 

 ファン。……ファン? 誰の? 俺の。

 

 普段使っている列車ではなく、古代の機械(アンティーク・ギア)へとデッキを変えた彼女……いや、サブウェイマスターと呼ぶべきか。かつての俺を思い起こさせる『魅せる』デュエル。彼女は楽しみながらデュエルをしていたように見えた。

 対して俺はどうだった? SOLに縛られ、プライドに縛られ、ほんの一欠片の勝利が欲しいとみっともなく手を伸ばし続けて。

 

 

 

 ――俺は本当にこうなりたかったのか? 違う。

 

 ――俺は自分のためだけにデュエルをしていたか? 違う!

 

 ――そうだ、俺は。俺は子供達の笑顔を守る為に戦っていた!

 

 

 

 目が覚めた。……いや、この場合は周りを見れるようになった、と言うべきだろう。

 前だけ見てなりふり構わず走り続けて、息も切れ切れようやく後ろを振り返った。

 俺が走っていた道は、何もかもを捨てなければ走れない道なのだとようやく気がつけた。このまま走り続けたら、奈落の底へと落ちるか俺自身が擦り切れて無くなるかのどちらかしか無い。

 

 確かに、道を間違えてしまったかもしれない。そんな俺でも、帰ってくるのを待っている人達がいる。行くべき場所が分かったのなら、あとはそこを目的に据え、もう一度走り直す。

 

 ――俺にはまだ、それが出来るのだから。

 

 

 

 

「プレイメーカーにソウルバーナー……あいつらは、ロスト事件の被害者達は生きるためのデュエルを強制され続けた。対して俺はどうだ? 俺は子供達を笑顔にするためにプロとして活躍し続けた」

 

 そうして積み上げた評価は、たった数回のプレイメーカーのデュエルで脆く崩れ去った。

 最初にあったのは怒り。俺の方が強い、とプライドが吠えた。張り合おうとした。今思い返せばそれがどれだけ愚かなことだったのかよく分かる。

 

「俺とあいつらは始まりが違う。ロスト事件まがいのデュエルを続けたところで、俺があいつらと同じ存在になれるはずがなかったんだ」

 

 俺はプレイメーカーの焼き直しになんかなれない。それに、なんの捻りもない二番煎じは受けないと相場が決まっている。そんな単純なことに気が付かなかったとは、エンターテイナー失格だ。

 

「……クイーンさん、だったか? 俺に何を期待しているのかは分からないが、俺は俺だ。それとデュエルは強制されるものじゃない。あの悪趣味な機械は別のことに使ったほうがいいと俺は思うぜ」

 

 SOLテクノロジーの開発したデュエルシミュレーターを悪趣味呼ばわり。それを聞いたクイーンの眉がピクリと動く。が、すぐに表情を元に戻し、クイーンは新たな商品を勧めようと口を開く。

 

「……貴方は勝利したくないのですか? 力が欲しくないのですか? 現在SOLテクノロジーが開発しているAIチップがあります。それを使えばプレイメーカーを」

 

「超えられる、ってか。……これ以上インチキ臭いモノには頼りたくないんでな、お断りさせてもらうぜ。俺は俺自身の力でプレイメーカーを越える」

 

 AIチップを体内に埋め込み脳に作用させる――その使用法を彼は知らない筈だ。もし首を縦に振ったらどうなるかを本能的に察知したのだろうか。鬼塚はクイーンの誘いを断った。

 たった一人のデュエリストが起こした波紋。それが鬼塚の運命を変えた。鬼塚はクイーンが思い描いていた策略から逃れようとしている。

 

「――待ちなさい!」

 

 無理矢理にでも引き止めなければならない。開発途中のAIチップの実験台となり得るのは現在彼だけなのだから。

 ブラッドシェパード――彼はAIを嫌っている。被検体になるはずがない。

 今上詩織――論外だ。彼女はまだ学生。何かあれば警察沙汰になるのは確実だ。もし彼女に手出ししようものなら、優秀なバウンティハンターであるブラッドシェパードとGo鬼塚はSOLに愛想を尽かして出て行くだろう。

 

「私とデュエルしなさい! 雇い主の命令を聞けぬのならば実力でねじ伏せるまで!」

 

 クイーンの切羽詰まった表情から出された声を聞いた鬼塚は立ち止まり、振り返る。

 

「……あれが命令? そうは聞こえなかったが……まあ、感情的になるってことはそっちにも何かあるんだろうな。――だが! 挑まれたデュエルは受けるが礼儀。そのデュエル、受けてたとう!」

 

 双方デュエルディスクを構える。どうやらリンクヴレインズへログインする時間も惜しいらしい。この街では珍しい、現実世界でのスタンディングデュエルが始まろうとしていた。

 

「「デュエル!」」

 

 

クイーン

LP 4000

 

鬼塚豪

LP 4000

 

 

 デュエルディスクが先攻を示したのはクイーン。

 

「私のターン! フィールド魔法、魅惑の宮殿(アリュール・パレス)と永続魔法、魅惑の舞(アリュール・ダンス)を発動! そして魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV3を通常召喚!」

 

魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV3》

星3/攻500

 

魅惑の宮殿(アリュール・パレス)の効果により、私のフィールドの『アリュール・クィーン』モンスターは攻撃力・守備力が500アップするわ」

 

魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV3》

攻500→1000

 

 クイーンが操るのは艶めかしい光を放つ2枚の魔法カードと、うら若き女王。クイーンのモンスターを見た鬼塚は落ち着いた様子で相手の戦術を分析する。

 

「成る程、レベルモンスターか」

 

 デュエルの高速化が進む今、レベルモンスターを使用するデュエリストはかなり珍しい。相手の妨害によりレベルを上げる条件やタイミングなどを逃すことが多いからだ。

 そんなレベルモンスターを操るクイーンのタクティクスは高いと見て良いだろう。鬼塚は気を引き締める。

 

「自分フィールドに『アリュール・クィーン』が召喚されたことで、魅惑の宮殿(アリュール・パレス)の効果が発動する!」

 

 デッキから特殊召喚されたのは、クイーンが通常召喚したモンスターと同じく、魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV3。だが、現れたフィールドが問題だった。

 

「……俺のフィールドに特殊召喚、だと?」

 

 ダイナレスラーには、自分フィールド上にモンスターがいない時に特殊召喚できるモンスターがいる。それを利用し鬼塚の展開を封じるための行為かと思ったが、クイーンの狙いはそこではないようだ。

 

魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV3の効果! 相手フィールドのレベル3以下のモンスター1体を選択し、装備カード扱いで装備することができる。この効果で貴方のフィールドの魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV3を装備する!」

 

 くるりと身を翻し、鬼塚のフィールドからクイーンのフィールドへ魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV3が移動し……クイーンの操る魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV3の装備カードとなる。

 

魅惑の舞(アリュール・ダンス)の効果で、フィールドの『アリュール・クィーン』モンスターの攻撃力は自身の効果で装備しているモンスターの攻撃力分上昇する……けどそれだけじゃないわ。魅惑の宮殿(アリュール・パレス)の効果により、アリュール・クィーン達はメインフェイズにレベルアップを可能とする! 自身の効果で装備カードを装備した魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV3を墓地へ送り、レベルアップ! ――女王の威光を示しなさい! 魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV5!」

 

魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV5》

星5/攻1000→1500

 

魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV5が特殊召喚されたことで、再び魅惑の宮殿(アリュール・パレス)の効果が発動!」

 

 新たにクイーンのデッキから鬼塚のフィールドに特殊召喚される魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV5。

 

「……成る程な。その魔法カードはレベルモンスターの欠点を補うカードか」

 

 特殊召喚、自身のレベル以下のモンスターを装備、レベルアップ――。この展開を可能とするクイーンの魔法カードにはターン1の制限はない。

 先程と同じような展開を繰り返し、魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV7を装備した魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV7がフィールドに残る。

 

魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV7》

星7/攻1500→3500

 

魅惑の舞(アリュール・ダンス)のさらなる効果! 『アリュール・クィーン』の効果で装備された装備カードを墓地に送り発動! 墓地から各レベルの『アリュール・クィーン』を1体ずつ特殊召喚する! 舞い踊れ、魅惑の女王(アリュール・クィーン)達よ!」

 

 

魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV7》

攻3500→2000

 

魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV3》

攻500→1000

 

魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV5》

攻1000→1500

 

魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV7》

攻1500→2000

 

 

 クイーンのフィールドに4体の魅惑の女王(アリュール・クィーン)が並ぶ。

 クイーンは、す、と手を空へ伸ばし――現れるのはリンクサーキット。

 

「現れなさい、力を導くサーキット! アローヘッド確認! 召喚条件は魔法使い族モンスター3体! 私は魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV3、LV5、LV7をリンクマーカーにセット! リンク召喚! リンク3、金色の魅惑の女王(ゴールデン・アリュール・クィーン)!」

 

 

金色の魅惑の女王(ゴールデン・アリュール・クィーン)

Link 3/攻2500

【リンクマーカー:右/左/下】

 

 

 サーキットから現れたのは金色の衣服を身にまとった女王。

 

金色の魅惑の女王(ゴールデン・アリュール・クィーン)の効果! このカードの攻撃力はリンク先の『アリュール・クィーン』モンスターの攻撃力分アップする! そして魅惑の宮殿(アリュール・パレス)の効果でさらに上昇!」

 

 リンク先にいるのは魅惑の宮殿(アリュール・パレス)の効果で攻撃力が500上昇した魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV7。その攻撃力は2000。そこへ魅惑の宮殿(アリュール・パレス)の効果が乗り――。

 

金色の魅惑の女王(ゴールデン・アリュール・クィーン)

攻2500→5000

 

「攻撃力5000だと!?」

 

 滅多に見ることのできない数値に、流石の鬼塚も動揺を隠せない。

 

「更に魅惑の宮殿(アリュール・パレス)が存在し、『アリュール・クィーン』モンスターが攻撃効果の対象となったとき、そのモンスターはこのターン破壊されなくなる。その後、相手フィールドに存在するモンスターを破壊するわ」

 

 自慢げに効果の説明をするクイーン。

 

「(中々にやっかいな布陣だな……)」

 

 攻撃対象となるモンスターを変更できる。それはつまり、攻撃力5000を突破しなければクイーンにダメージを与えられないという事になる。しかもこちらのモンスターを破壊されるオマケ付きで。

 

「私はこれでターンエンド。女王の前にはいかなる抵抗も無力だということを、たっぷりと教えてあげるわ」

 

 この私が負けるはずなどない、と自信に満ち溢れるクイーン。

 ……デュエルにおいて、絶対は存在しない。それを誰よりもわかっているのが鬼塚という男だと、彼女は知らない。分かろうともしていない。プロとして活躍していた頃の逆境、逆転劇。それらを演出していた彼は、その状況下に誰よりも慣れている。

 

「俺のターン……ドロー!」

 

 鬼塚はいつもと変わらぬ様子でカードを引く。

 

「手札から魔法カード、おろかな副葬を発動! この効果でデッキからワールド・ダイナ・レスリングを墓地へ送る。そして自分フィールドにモンスターが存在しないとき、こいつは手札から特殊召喚できる。来い、ダイナレスラー・コエロシラフィット!」

 

《ダイナレスラー・コエロシラフィット》

星2/守800

 

「相手フィールドのモンスターが自分フィールドのモンスターより多い場合、墓地のワールド・ダイナ・レスリングを除外し、デッキから『ダイナレスラー』モンスターを特殊召喚できる! 頼むぞ、ダイナレスラー・システゴ!」

 

《ダイナレスラー・システゴ》

星4/攻1900

 

「システゴの特殊召喚に成功した事で効果発動。デッキからワールド・ダイナ・レスリングを手札に加える。まだまだ行くぜ! 手札の恐竜族モンスターを墓地へ送り、ダイナレスラー・イグアノドラッカを手札から特殊召喚!」

 

《ダイナレスラー・イグアノドラッカ》

星6/攻2000

 

 鬼塚は慣れた様子で、特殊召喚のみで一気にモンスターを3体並べる。

 

「現れろ、不屈のサーキット! 召喚条件は『ダイナレスラー』モンスター2体! 俺はコエロシラフィットとイグアノドラッカをリンクマーカーにセット! リンク召喚! リンク2、ダイナレスラー・テラ・パルクリオ!」

 

《ダイナレスラー・テラ・パルクリオ》

Link 2/攻1000

【リンクマーカー:上/左】

 

 新たに現れたのはリンク2のダイナレスラー。攻撃力が心許ないが、その分強力な効果を備えている。

 

「フィールド魔法、ワールド・ダイナ・レスリングを発動! そしてワールド・ダイナ・レスリングを発動したことで、テラ・パルクリオの効果が発動! 墓地のダイナレスラー・コエロシラフィットを手札に加える」

 

 フィールドに現れたのは彼らの試合場。テラ・パルクリオが墓地から……いや、場外にいたチームメイトを引き上げ、手札へと戻す。

 

「再び現れろ、不屈のサーキット! 俺はテラ・パルクリオとシステゴをリンクマーカーにセット! リンク召喚! 現れろ! リンク3、ダイナレスラー・キング・T・レックス!」

 

《ダイナレスラー・キング・T・レックス》

Link 3/攻3000

【リンクマーカー:左下/右下/下】

 

 絶対王者、ここにあり――そう示すかのようにキング・T・レックスは吠える。

 

「リンク素材となったテラ・パルクリオの効果発動! 墓地の『ダイナレスラー』モンスターを守備表示で特殊召喚する。甦れ、ダイナレスラー・イグアノドラッカ!」

 

《ダイナレスラー・イグアノドラッカ》

星6/守0

 

「手札のコエロシラフィットを通常召喚し――行くぞ! レベル6のダイナレスラー・イグアノドラッカに、レベル2のダイナレスラー・コエロシラフィットをチューニング! 屈強なる太古の王者よ、全ての敵を蹴散らせ! シンクロ召喚! 現れよ! レベル8、ダイナレスラー・ギガ・スピノサバット!」

 

《ダイナレスラー・ギガ・スピノサバット》

星8/攻3000

 

 ダイナレスラーの中では比較的スラリとした、足技に特化した恐竜レスラー。白きレスラーはフィールドに降り立つと数回軽く飛び跳ね、コンディションを確かめる。

 

「ダイナレスラー・ギガ・スピノサバットの効果! 1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を対象とし、そのモンスターを破壊する! 俺が対象にするのは魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV7だ!」

 

 ダイナレスラー・ギガ・スピノサバットが指を指し指名したのは魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV7。レスラーはコーナーポストへと飛び乗り、さらに上空へと舞い上がり……必殺の蹴りを敵目掛け放つ。

 

「無駄よ! 金色の魅惑の女王(ゴールデン・アリュール・クィーン)の効果発動! その効果を無効にし、魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV7は破壊耐性を得る! そして相手モンスターを破壊する! 女王に楯突いた報いを受けなさい!」

 

 

 ひらりと身を翻し蹴りを回避する女王。無礼者め、と顔をしかめた金色の魅惑の女王(ゴールデン・アリュール・クィーン)は杖を天に振りかざす。天より降るのは女王の怒りの雷。狙われているのは――。

 

 ――女王に楯突こうとした愚か者、ダイナレスラー・ギガ・スピノサバット。

 

 

「スピノサバットを選んでくれてありがとうよ! ダイナレスラー・ギガ・スピノサバットの効果! このカードが破壊される場合、代わりに自分フィールドのカード1枚を破壊できる。俺はワールド・ダイナ・レスリングを破壊する!」

 

 スピノサバット、飛ぶ! 身代わりとなったフィールドは雷により真っ黒に焦げ、使い物にはならない。

 

「魔法カード、テールスイング! このカードは自分フィールド上に表側表示で存在するレベル5以上の恐竜族モンスター1体を選択して発動する。相手フィールド上に存在する裏側表示モンスター、または選択した恐竜族モンスターのレベル未満のモンスターを合計2体まで選択し、持ち主の手札に戻す。この効果でお前のフィールドの魅惑の女王(アリュール・クィーン) LV7を手札に戻す! ……金色の魅惑の女王(ゴールデン・アリュール・クィーン)の効果によって免れるのは『破壊』だけ、だったな?」

 

 しまった、と顔に焦りが見えたクイーンに対し、鬼塚はニヤリとした笑みを見せる。

 

「私の絶対たる女王の布陣を崩して……そんな……馬鹿な……!」

 

 は、とフィールドを確認する。金色の魅惑の女王(ゴールデン・アリュール・クィーン)の攻撃力は2500。相対する鬼塚のフィールドにいる恐竜の攻撃力の合計は6000。その差は3500、まだギリギリ耐えられる……そう分かり少し安堵する。次のターンで巻き返せる、と考える。

 

「――クイーン。デュエルに絶対、なんてものは存在しない。あるのはデュエリストの実力だけだ! 魔法カード、シンクロキャンセルを発動!」

 

 ダイナレスラー・ギガ・スピノサバットの破壊効果は1ターンに1度。――だが、『このカード名』とは縛られていない。

 新たにシンクロ召喚し直したダイナレスラー・ギガ・スピノサバットが、効果で金色の魅惑の女王(ゴールデン・アリュール・クィーン)を破壊する。

 

「あ、ああ、あ――」

 

「行け、ギガ・スピノサバット! ギガサバットストライク!」

 

クイーン

LP 4000→1000

 

「嘘、嘘よっ! 私、が、負ける……!?」

 

「これで終いだ! ダイナレスラー・キング・T・レックスでダイレクトアタック! ジュラシック・バスター!」

 

 

 王者は、女王へ向けてその拳を――。

 

 ――ぴたり、と寸止め。拳を少し緩め……ぴん、と軽いデコピンを攻撃の代わりとした。

 

 

クイーン

LP 1000→0

 

 クイーンはその場に座り込み、放心状態。クイーンが話のできる状態ではないと鬼塚は判断し、その場を去った。

 

 

 

 

 

「――どうして、どうして、どうしてッ!」

 

 深夜、自室にて八つ当たりを繰り返すクイーンの姿があった。

 

「我がSOLテクノロジーは、頂点とならねばならない! その為にはどのような犠牲が起きようと構わない! それをどうして分かろうとしないの!!」

 

 クイーンから見れば、この会社は愚か者の集まりだ。

 財前を筆頭に、人道的などといったくだらない事を掲げる者。甘い汁を吸えればいいだけの者。そして、何も疑わずクイーンの命令を実行する者。

 だからこそ、私が支配しなければならない。私を絶対とした、永遠の王国を築き――。

 

『――成る程。どのような犠牲が起きようと、か。君とは気が合いそうだな』

 

「っ!? 誰!?」

 

 音源は明滅を繰り返すテレビ。最高ランクのセキュリティが敷かれているクイーンの自室にハッキングしてくるとなると、よほどのハッカーでなければ不可能。未知の存在の技術力に怯えながらも、クイーンはそれを見せまいと強気に振る舞う。

 

「姿を見せなさい、曲者――」

 

『良い友達になろうじゃないか――SOLテクノロジー。我々はその技術が欲しいんだ』

 

 光が、クイーンを飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええ…………了解しました。全ては」

 

 ライトニング様の為に。




( ◇ ◇)<わたライトニングこそが一番優れたイグニス。ライトニング超絶有能ドルベ無能

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