どうも、ハノイの騎士(バイト)です。   作:ウボァー

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島くんは弱いんじゃなくて伸び代に満ち溢れているの方が正しいのでは?と作者は思います。そんな感じでしっかりしたデュエルは書いていませんがどうぞ。
後書きに今後の更新について重要なお知らせがありますので、どうか御一読お願いします。


覚醒のブレイブ・マックス!

 大通りから一つ中に入った道、相対する二人のデュエリスト。ブルーエンジェルの緊急イベントで盛り上がるデュエリスト達の喧騒は届かず、彼らの周囲は恐ろしいほど静まり返っている。

 

 

 ――相手がか弱い女性だとしても、俺はデュエリスト。プレイメーカーに認められた男として、ここは負けられない!

 

 

 ……それにしても綺麗な人だなあ、と内心が顔に思い切り出ているのはご愛嬌。

 ブレイブ・マックスこと島直樹。彼のデュエル部でのおちゃらけた態度や効果処理のとんでもない間違い、それらは全て演技なのか?

 

「…………」

 

 ブレイブマックスとゴーストガールの様子を屋上から見つめるデュエリストが一人――、

 

「あ、おひさーブルーガール。たこ焼き食べる?」

 

『はふはふ、あひゅい! でもおいしい! もう一個!』

 

「…………ちょっと待ちなさい」

 

 改め二人と一匹。何故かヴァンガードはたこ焼き一舟を片手に持っている。

 

「あ、ソース派じゃなくてダシ派だった?」

 

 爪楊枝に刺した一つをふうふう冷ましながらクラッキング・ドラゴンの口元へ運ぶ。鰹節が踊っているところから出来立てのたこ焼きだということがわかる。……だからどうした。

 

「〜っヴァンガード! 今すぐにグラドスを返しなさい! あれはイグニスになったとはいえ元はAIデュエリスト。SOLテクノロジーの所有物よ!」

 

 呆気にとられていたのもつかの間、キリリとした表情に戻ったブルーガールはヴァンガードを問い詰める。

 

「『(モノ)』ってより『(モノ)』の方が私はしっくりくるけどなー。そんでもって、グラドスは私の個人所有じゃないからね? ――でもまあ、今は『ここ』にはいないよ。私以外には絶対に見つけられない場所にいる」

 

 残っていたたこ焼きをクラッキング・ドラゴンの口に全部放り込み、牽制の一手を打つ。クラッキング・ドラゴンはあっつーい! と口を開閉させた後、スゥーっと消えた。ふざけた様子は消え、二人の間に緊張感が走る。

 

「……ハッタリかしら」

 

「そう思うなら確かめてみる?」

 

 そう言ったヴァンガードは静かに微笑む。

 

「…………今は止めておくわ。貴女、嘘は吐かないもの」

 

 張り詰めた空気。先に根をあげたのはブルーガールだった。

 そも最初からしてヴァンガードは戦いに来た、という雰囲気では無かった。今回はデュエル観戦が主な目的のようだ。

 

「あっほらほら、二人のデュエル始まってるよ?」

 

 

 ゴーストガールのフィールドには攻撃表示のオルターガイスト・シルキタスと伏せカードが2枚。自称プレイメーカーに認められた男こと、ブレイブ・マックスに手を抜く気はないようだ。

 

「俺のターーンッ、ドロォーッ!」

 

 効果音がつきそうな、無駄にカッコつけたドローポーズ。

 

「こ、これは……」

 

 ドローしたカードと手札を確認し、雷に打たれたような衝撃が走る。

 

「(…………勝った!)」

 

 

 初期手札の偏りがいろんな意味で凄いブレイブ・マックスだが、今回は違う。スクラップ・コングに二重召喚、バブーンを2体特殊召喚することでライフがゴリゴリ削られていた彼はいない。その理由は三つある。

 

 

 一つ、今上とのデュエルで彼自身思い出したくない程にボッコボコにされてしまったこと。

 

 

 二つ、後からデュエル部に入ってきた藤木遊作に敗北を喫したこと。

 

 

 三つ、そして何よりカッコいい召喚エフェクトに心を奪われたこと。

 

 

 ――以上の三つの原因から、彼のデッキには改良が加えられた。具体的にどうなったのか? それはこのデュエルを見れば分かる。

 

 

「ゴブリンドバーグを通常召喚! こいつは召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスターを特殊召喚できる! 来い、レスキューラビット!」

 

《ゴブリンドバーグ》

星4/攻1400

 

《レスキューラビット》

星4/攻300

 

 飛行機に吊り下げられていたコンテナが投下され、その中から可愛らしいウサギが現れる。

 

「この効果を発動したゴブリンドバーグは守備表示になる……がしかーし! ここで終わらないのが俺だぜ! フィールドのレスキューラビットを除外して効果発動! デッキからレベル4以下の同名の通常モンスター2体を特殊召喚するぜ! 現れろ、2体のケンタウロス!」

 

《ケンタウロス》

星4/攻1300

 

《ケンタウロス》

星4/攻1300

 

 ウサギが首にかかったホイッスルを吹く。その音に釣られて2体のケンタウロスがデッキからフィールドに特殊召喚される。オーライオーライ、ストップー! と身振り手振りをして上手くフィールドに誘導すると、満足そうにしてウサギは消えた。

 

「手札を1枚セットして、手札抹殺を発動する! お姉さんも手札を全て捨てて、捨てた枚数だけドローしてもらいますよ」

 

「ここで手札交換……? ええ、問題無いわ」

 

 ゴーストガールとブレイブ・マックスは2枚のカードを捨て、捨てた枚数と同じだけドローする。

 

「どんどん行くぜ! フィールドに2体の獣族モンスターがいる事で、墓地からチェーンドッグを特殊召喚!」

 

《チェーンドッグ》

星4/攻1600

 

 フィールドに4体のモンスターが並び立つ。どれも地属性モンスターでレベルは4。彼の主力であるバブーンを引き立てることができるモンスターはこの中にはいないが――。

 

「現れよ、勇者なる俺様のサーキット! アローヘッド確認! 召喚条件は地属性モンスター2体! 俺は2体のケンタウロスをリンクマーカーにセット、サーキットコンバイン! リンク召喚! 現れろ! リンク2、ミセス・レディエント!」

 

《ミセス・レディエント》

リンク2/攻1400

 

 穏やかな顔でたたずむ獣、ミセス・レディエントの効果により地属性モンスターの攻守は500上昇し、風属性モンスターの攻守は400ダウンする。たかが500、されど500。下級モンスター達の攻撃力も油断できなくなる数値になる。

 

「ここで終わる俺じゃないぜ! ゴブリンドバーグとチェーンドッグの2体でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! 現れろ、恐牙狼(きょうがろう) ダイヤウルフ!」

 

《恐牙狼 ダイヤウルフ》

ランク4/攻2000

 

 デュエルディスクから放たれた光が天空に十の字を刻む。2体のモンスターが光に飛び込み消え、それに変わるようにしてフィールドに降り立つのは狼。その巨軀の周りには二つの光球が回っている。

 

「(――くう〜っ! この演出! たまらなくカッケーっ! サンキュー今上! リンクだけじゃなくてエクシーズもアリだな!)」

 

 プレイメーカーもまだ使っていない召喚法、あるよ……そんな危ない薬を勧めるような言葉に乗っかるものかと思っていた島直樹。ご覧の通り見事に陥落した。

 恐ろしい牙の狼とか名前カッコいいし、バブーンの展開の役にも立つ効果。目をキラキラさせてカードを眺める彼を見て、今上詩織は某新世界の神の「計画通り」な顔をしていたのだがそれはまた別の話。

 

 

 

「……へえ? 中々やるじゃない」

 

「でしょー? ハノイの騎士に喧嘩を売った時からここまで伸びるとは思わなかったよ本当。プレイメーカー達は彼を認めてないけど、私は伸びしろ沢山あっていいと思うよ」

 

「え?」

 

「ん?」

 

 ――ヴァンガードは今、何と言った? プレイメーカー達は『認めてない』?

 

「ちょっと、ちょっと待ちなさい。もしかして、いえもしかしなくても」

 

「うん。彼、プレイメーカーに憧れてる普通のデュエリストだよ? 認められた男ー、とかは勝手に言ってるだけだよ?」

 

「じゃあなんで貴方はわざわざ此処に来たのよ!」

 

「ゴーストガールと依頼についてちょっと話したくてさー。そしたらデュエルしてたじゃん? 邪魔したら悪いからこうして上からデュエル見守ってたの。ブレイブ・マックスがいたのは偶然。本当に。信じて、ワタシウソツカナイ」

 

 

 

 ――ブルーガールは激怒した。必ずかの邪智暴虐のヴァンガードを倒さなければならぬと決意した。

 

 

 

「……デュエルよ」

 

「え? でもブルガちゃんもブレイブ・マックスが気になってここに来たんじゃ――」

 

「デュエルしなさい! それと名前を略さないで!」

 

「えっなんで急にデュエル……? まあ別に大丈夫だけどさ。デッキ用意するからちょっと待ってね……」

 

 ごそごそデュエルディスクをいじるヴァンガード。空気を読んでいるのかいないのかよく分からないが、二人の前にいい感じのデータストームが流れてきた。

 

「よしおっけ! ……ってスピードデュエルでいいの? そっちとしては目立ちたくないんじゃ?」

 

「スピードでもマスターでもどっちでもいいわ! 貴方はここで倒さなければいけないと私の心が叫んでるのよ!」

 

 

「「スピードデュエル!」」

 

 

ヴァンガード

LP 4000

 

ブルーガール

LP 4000

 

 

「……あら、先行は私か。それじゃあ早速手札から魔法カード、成金ゴブリンを発動。デッキから1枚ドローして、ブルガちゃんのライフを1000回復する」

 

ブルーガール

LP 4000→5000

 

 ライフを回復されたブルーガールは不満げだ。それに対してヴァンガードはドローしたカードを見て満足そうにしている。

 

「よし来た! 魔法カード、閃刀起動-エンゲージ発動! 効果でデッキから『閃刀』カード、閃刀機-ホーネットビットを手札に加える! そのままホーネットビットの効果発動、フィールドに閃刀姫トークンを守備表示で特殊召喚する!」

 

《閃刀姫トークン》

星1/守0

 

 ホーネットビットから閃刀姫-レイの映像が投影される。

 

「先駆けとなれ、我が未来回路! 召喚条件は炎属性以外の『閃刀姫』モンスター1体! 私は閃刀姫トークンをリンクマーカーにセット! リンク召喚! 来たれ! リンク1、閃刀姫-カガリ!」

 

 

《閃刀姫-カガリ》

リンク・効果モンスター

リンク1/炎属性/機械族/攻1500

【リンクマーカー:左上】

炎属性以外の「閃刀姫」モンスター1体

自分は「閃刀姫-カガリ」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。

(1):このカードが特殊召喚に成功した場合、自分の墓地の「閃刀」魔法カード1枚を対象として発動できる。

そのカードを手札に加える。

(2):このカードの攻撃力は自分の墓地の魔法カードの数×100アップする。

 

 

 リンク素材になったホーネットビットは消え、何処からともなく現れた少女――レイが赤い機体に乗り込む。

 

「カガリの効果! このカードが特殊召喚に成功した場合、自分の墓地の『閃刀』魔法カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。私は閃刀起動-エンゲージを手札に加える!」

 

 閃刀起動-エンゲージには1ターンに一度、といった制限はない。

 

「もう一度、閃刀起動-エンゲージを発動! 効果で閃刀機-イーグルブースターを手札に加える!」

 

 墓地に着実に魔法カードを貯め、閃刀姫は強さを増す。カガリは墓地の魔法カードの枚数分攻撃力が上昇するが、今は先行1ターン目。攻撃よりも防御をし、自分に有利な場を作るのが最優先だ。

 

「先駆けとなれ、我が未来回路! 召喚条件は水属性以外の『閃刀姫』モンスター1体! 私は閃刀姫-カガリをリンクマーカーにセット! リンク召喚! 来たれ! リンク1、閃刀姫-シズク!」

 

 

《閃刀姫-シズク》

リンク・効果モンスター

リンク1/水属性/機械族/攻1500

【リンクマーカー:右上】

水属性以外の「閃刀姫」モンスター1体

自分は「閃刀姫-シズク」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。

(1):相手フィールドのモンスターの攻撃力・守備力は、自分の墓地の魔法カードの数×100ダウンする。

(2):このカードを特殊召喚したターンのエンドフェイズに発動できる。

デッキから、同名カードが自分の墓地に存在しない「閃刀」魔法カード1枚を手札に加える。

 

 

 レイがカガリから飛び出し、青い機体へ乗り換える。シズクは拠点防衛型――防御に長けた閃刀姫。確実に次のターンを凌ぐには良いモンスターだ。

 

「カードを2枚セット。エンドフェイズにシズクの効果発動! デッキから同名カードが自分の墓地に存在しない『閃刀』魔法カード1枚を手札に加える。私は閃刀術式-アフターバーナーを手札に加えるよ」

 

 ヴァンガードの墓地の魔法カードは合計3枚。閃刀姫の扱う魔法達が真の力を発揮できるようになる枚数だ。さらにシズクの効果でブルーガールのモンスターは攻撃力がダウンする。

 ヴァンガードが今使用している閃刀姫は環境に躍り出たことのある強力なテーマ。それを目の前にしているブルーガールは戸惑う事なく、冷静に対処方法を考えていた。

 

「閃刀姫……ね、私のトリックスターの敵じゃないわ!」

 

 

 

 

「…………あら? ブルーガール、どこ行っちゃったのかしら……」

 

「? どうかしたのですか、お姉さん?」

 

「いいえ、何でもないわ」

 

 ――ところで、ブルーガールはゴーストガールに何も連絡せずにヴァンガードとデュエルをしているのだが、その事に気付いているのだろうか?




個人的な都合で申し訳ないのですが、vs.トリックスターの次話を投稿し終わった後、本小説を一時凍結したいと考えています。

主な理由としては、作者が思い描いている2期の終わり方では、3期にうまく繋がらない可能性が非常に高いからです。

よって、2期と3期のストーリーを統合しようと思います。

そうすれば2期で空気なSOLも活躍できるでしょうし、本編ではそこまで強くなかった三つ巴感も出てくると思うので。SOLにいるハノイの騎士のスパイは誰なのかという問題もありますし。
そのため3期がある程度進んで情報が出てから本小説を書く必要があります。そのため長い期間更新が滞ります。

本当に申し訳ありませんが、長い目で見ていただけたら幸いです。

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