ハノイの塔に向かって走る人影。私の姿が見えたのか速度を落とす。
「……来たね」
「ヴァンガード……」
何でそんな顔をしているのだろうか。私はハノイの騎士で、君が憎むべき存在。
――――いや、そんな。……まさか、ね。
「そこを退け」
「ここを通すわけにはいかない。私達の計画を邪魔する者は殲滅しろ、とリボルバー様から命令されているからね」
こう話している間にも残り時間は減る。お話に時間をかけるのは君達にとって良くないことだと思うけど。
「お前は何故ハノイの騎士に手を貸す?」
「何故? 何故、か……。それを今から消える人に言う必要がある?」
「俺が納得いかないだけだ。お前がハノイの騎士になったのは、何か理由があるはずだろう?」
「……どうしたんだプレイメーカー様?」
真っ直ぐに私を見る目には確かな光があった。彼は私の正体について確信している。
「身長、機械族、クリファについての知識、ブレイブマックスへの応援、ヒントは十分にあった」
お手上げ、というように両手を上げる。
「……あーあ、気づいちゃったか。そうだよ、私は君のすぐ近くにいた」
「文字通り、隣にいた」
「……まさか!?」
学校へ行った時にAiはデュエルディスクにいたから彼女のことは知っている。だからこそ信じられない。現実での友人がリンクヴレインズでは敵だった、なんて出来すぎた展開。
――プレイメーカーの信念を揺らがせる存在。こいつは危険だ。
「……私だってびっくりだよ。ここで気づかれるのは想定外だった」
「今すぐに手を引け! ハノイの騎士が何をしようとしているのか分かっているのか!?」
「……知ってるよ、それぐらい」
消えてしまいそうな声がこぼれた。説得を続ければ引いてくれる可能性はあると思い、続けて問いかけようとした時。
「おっと、それ以上はやめて頂きましょうかプレイメーカー」
「っ、スペクター様」
空間に波紋が広がり、そこからスペクターが姿を現した。
「私の名前はスペクター、やっとお目にかかりましたねプレイメーカー。どうやらヴァンガードと知り合いのようですが」
ちらりとヴァンガードの方を見る。
「それはそれ、これはこれ。この状況で私情を挟むほど馬鹿じゃないですよ。…………?」
背後で足音がした、気がする。空気が少しだけ揺らいだ。何かの気配。
「――そこっ!」
突如ヴァンガードがデュエルアンカーを何も無いところに投げつける。デュエルアンカーが透明な何かにぶつかり、ばちりと電気が走るとAIデュエリストが姿を現した。
「ぐっ、そう上手くはいきませんか」
「そう簡単には通さないよ」
デュエルアンカーで拘束されたAIデュエリスト。
「おやおや」
「くっ……」
この悪趣味なゲームは誰か一人でもリボルバーの元へ辿り着き倒せば終わる。二人一組で行動していたプレイメーカーとグラドスは、どちらかが囮になることで辿り着く可能性を上げていた。その企みはヴァンガードによって阻止されたが。
「これはデュエルが終わるまで外れることはない。AIデュエリスト、名前もないまま消滅することになるとはね」
「いいえ、名前はあります。私の名前はグラドスです」
「…………グラドス?」
ヴァンガードはその名前に何か思うところがあったのかAIデュエリストに尋ね始める。先ほどまでと違い声も若干高く、早口になっていた。
「もしかしてあれかな? ケーキは嘘? 鳥は邪悪? キャロラインは――」
「何の事を言っているのですか?」
「……そっか、偶然か」
残念そうに俯く。本来ならばいるはずがないモノ。もしかしたら同類かと思ったが、その期待は簡単に崩れた。
「…………?」
ここにいる人の中で、先ほどのヴァンガードの言葉の意味を理解できる人はいない。グラドスは不思議そうにヴァンガードを見て、直ぐに表情を変えた。
プレイメーカーによる説得は失敗。デュエルアンカーによってここから自分は動けない。ならばする事は一つ。
「ここで決着をつけましょう、ヴァンガード! この世界が消滅するのを黙って見過ごすわけにはいかない!」
「そうさ、君を消さないと私は終われない!」
「「デュエル!!」」
ヴァンガード
LP 4000
グラドス
LP 4000
背後ではプレイメーカーとスペクター様のデュエルも始まった。デュエルディスクがグラドスの先行を表示する。
「私の先行です。私はサイバー・ヴァリーを召喚!」
《サイバー・ヴァリー》
効果モンスター
星1/光属性/機械族/攻 0/守 0
以下の効果から1つを選択して発動できる。
●このカードが相手モンスターの攻撃対象に選択された時、
このカードを除外して発動できる。
デッキからカードを1枚ドローし、バトルフェイズを終了する。
●自分のメインフェイズ時に発動できる。
このカードと自分フィールド上に表側表示で存在する
モンスター1体を選択して除外し、その後デッキからカードを2枚ドローする。
●自分のメインフェイズ時に、
自分の墓地のカード1枚を選択して発動できる。
このカードと手札1枚を除外し、その後選択したカードをデッキの一番上に戻す。
「手札から機械複製術を発動! デッキからサイバー・ヴァリーを2体特殊召喚する!」
これでフィールドには3体のサイバー・ヴァリー。普通ならリンク召喚をしてくると思うだろう。
「サイバー・ヴァリーの効果発動。このカードと自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して除外し、その後デッキからカードを2枚ドローする。私はもう1体のサイバー・ヴァリーを選択! 除外して2枚ドロー!」
これで減った手札が補充されて5枚に戻った。それに、サイバー・ヴァリーには攻撃対象に選択された時、自身を除外してデッキからカードを1枚ドローし、バトルフェイズを終了する効果もある。堅実に守備を固めてきた。
「カードを1枚セットし、ターンエンドです」
「サイバー流は後攻有利。先行をとったら守備を固めるのは予想済み、ってね! 私のターン、ドロー!」
よし、妨害されなければワンキルいける。……絶対あのセットカード妨害だろうけど。
「私はスケール1のクリフォート・アセンブラと、スケール9のクリフォート・ツールでペンデュラムスケールをセッティング!」
二本の光の柱の中に現れる機殻。クリフォート・アセンブラがいる柱には1、クリフォート・ツールがいる柱には9の数字が浮かび上がる。
《クリフォート・アセンブラ》
ペンデュラム・通常モンスター
星5/地属性/機械族/攻2400/守1000
【Pスケール:青1/赤1】
(1):自分は「クリフォート」モンスターしか特殊召喚できない。
この効果は無効化されない。
(2):自分がアドバンス召喚に成功したターンのエンドフェイズに発動できる。
このターン自分がアドバンス召喚のためにリリースした「クリフォート」モンスターの数だけ、
自分はデッキからドローする。
【モンスター情報】
qliphoth.exe の 0x1i-666 でハンドルされていない例外を確認。
場所 0x00-000 に書き込み中にアクセス違反が発生しました。
このエラーを無視し、続行しますか? <Y/N>...[ ]
===CARNAGE===
たッgなnトiのoモdる知rヲu悪o善yりナnにoウよyノrりgトnひaノれsワiれワdはo人Gヨ見
イdなoレo知lもfカるeキr生iにf久永gベn食iてrッb取もoラtか木tノn命aベw伸ヲd手nはa彼
《クリフォート・ツール》
ペンデュラム・通常モンスター
星5/地属性/機械族/攻1000/守2800
【Pスケール:青9/赤9】
(1):自分は「クリフォート」モンスターしか特殊召喚できない。
この効果は無効化されない。
(2):1ターンに1度、800LPを払って発動できる。
デッキから「クリフォート・ツール」以外の「クリフォート」カード1枚を手札に加える。
【モンスター情報】
システムをレプリカモードで起動する準備をしています...
C:¥sophia¥sefiroth.exe 実行中にエラーが発生しました。
次の不明な発行元からのプログラムを実行しようとしています。
C:¥tierra¥qliphoth.exe の実行を許可しますか? <Y/N>...[Y]
システムを自律モードで起動します。
「ペンデュラム……!? それが貴方の本気というわけですか!」
「クリフォート・ツールのペンデュラム効果! ライフを800払い、デッキから
《
フィールド魔法
(1):このカードがフィールドゾーンに存在する限り、
自分は通常召喚に加えて1度だけ、
自分メインフェイズに「クリフォート」モンスター1体を召喚できる。
(2):このカードがフィールドゾーンに存在する限り、
「クリフォート」モンスターの召喚は無効化されない。
ヴァンガード
LP4000→3200
「振動せよ、起動せよ! 集え、私のモンスター達! ペンデュラム召喚! 現れよ! クリフォート・アクセス、クリフォート・ゲノム!」
二本の光の柱の間から現れる機殻達。巨大、人工的な見た目、正に機械というべき姿。
《クリフォート・アクセス》
ペンデュラム・効果モンスター
星7/地属性/機械族/攻2800/守1000
【Pスケール:青9/赤9】
(1):自分は「クリフォート」モンスターしか特殊召喚できない。
この効果は無効化されない。
(2):相手フィールドのモンスターの攻撃力は300ダウンする。
【モンスター効果】
(1):このカードはリリースなしで召喚できる。
(2):特殊召喚またはリリースなしで召喚した
このカードのレベルは4になり、元々の攻撃力は1800になる。
(3):通常召喚したこのカードは、このカードのレベルよりも
元々のレベルまたはランクが低いモンスターが発動した効果を受けない。
(4):「クリフォート」モンスターをリリースしてこのカードのアドバンス召喚に成功した時に発動できる。
相手の墓地のモンスターの数が自分の墓地のモンスターより多い場合、
自分はその差×300LP回復し、その数値分だけ相手にダメージを与える。
《クリフォート・ゲノム》
ペンデュラム・効果モンスター
星6/地属性/機械族/攻2400/守1000
【Pスケール:青9/赤9】
(1):自分は「クリフォート」モンスターしか特殊召喚できない。
この効果は無効化されない。
(2):相手フィールドのモンスターの攻撃力は300ダウンする。
【モンスター効果】
(1):このカードはリリースなしで召喚できる。
(2):特殊召喚またはリリースなしで召喚した
このカードのレベルは4になり、元々の攻撃力は1800になる。
(3):通常召喚したこのカードは、このカードのレベルよりも
元々のレベルまたはランクが低いモンスターが発動した効果を受けない。
(4):このカードがリリースされた場合、
フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。
「な、レベル7とレベル6のモンスターを一気に召喚した!?」
「召喚ルール効果でレベル4、元々の攻撃力は1800になるけどね。……ああ、クリフォートモンスター共通のペンデュラム効果で私はクリフォートしか特殊召喚出来ない。そして、クリフォートの名が付いた融合、シンクロ、エクシーズはいない。レベル4が2体いるからといってエクシーズは出来ないよ。
――――さあ、クリフォートの恐ろしさはここからだ!」
ペンデュラムの皮を被ったアドバンステーマ。端末世界の再星機構。今、その真の力が発揮される。
「クリフォート・アクセスとクリフォート・ゲノムをリリース! 出でよ、クリフォート・ディスク!」
《クリフォート・ディスク》
ペンデュラム・効果モンスター
星7/地属性/機械族/攻2800/守1000
【Pスケール:青1/赤1】
(1):自分は「クリフォート」モンスターしか特殊召喚できない。
この効果は無効化されない。
(2):自分フィールドの「クリフォート」モンスターの攻撃力は300アップする。
【モンスター効果】
(1):このカードはリリースなしで召喚できる。
(2):特殊召喚またはリリースなしで召喚した
このカードのレベルは4になり、元々の攻撃力は1800になる。
(3):通常召喚したこのカードは、このカードのレベルよりも
元々のレベルまたはランクが低いモンスターが発動した効果を受けない。
(4):「クリフォート」モンスターをリリースしてこのカードのアドバンス召喚に成功した時に発動できる。
デッキから「クリフォート」モンスター2体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズに破壊される。
「まずリリースされたクリフォート・ゲノムの効果をセットカードに対して発動。そのカードを破壊する。そしてクリフォートモンスターをリリースしてアドバンス召喚に成功した時、クリフォート・ディスクの効果発動! デッキからクリフォートモンスター2体を特殊召喚する!」
「っ! チェーンして速攻魔法、禁じられた聖杯をクリフォート・ディスクを対象に発動! クリフォート・ディスクはターン終了時まで攻撃力が400アップし、効果は無効になる!」
天から注がれた神秘的な水がかかり、攻撃力の上昇の対価として効果を封じられるクリフォート・ディスク。
クリフォート・ディスク
攻2800→3200
「あらら、止められちゃったか」
エクストラデッキに戻ったクリフォート・ゲノムから放たれた光球により聖杯が破壊される。が、聖杯により起きた結果を元に戻すことはできない。
ディスクの効果で2体のクリフォートを特殊召喚、その2体でクリフォート・ゲニウスをリンク召喚、クリフォート・ゲニウスの効果でサイバー・ヴァリーとクリフォート・ディスクの効果を無効に。バトルすれば総攻撃力4600。
これが成功していればワンキルだったんだけど、そう簡単には終わらないか。
「ま、止められるのは分かってるけどもバトル! クリフォート・ディスクでサイバー・ヴァリーを攻撃!」
「サイバー・ヴァリーの効果! このカードが相手モンスターの攻撃対象に選択された時、このカードを除外して発動できる。デッキからカードを1枚ドローし、バトルフェイズを終了する!」
サイバー・ヴァリーが除外されると同時にフィールドに電流が走り、クリフォート・ディスクの攻撃が止まる。
「……なるほど、貴方のデッキが読めてきました。リリース時に効果が発動するクリフォートと、アドバンス召喚時に効果が発動するクリフォートを使い、フィールドを制圧する攻撃型デッキ」
この一手でクリフォートがどんなモンスター達か理解したらしい。
「正解、だからといって攻撃の手は休めないけどね。カードを1枚セット。エンドフェイズにクリフォート・アセンブラの効果発動! このターン自分がアドバンス召喚のためにリリースしたクリフォートモンスターの数だけ、デッキからドローする。私がリリースしたクリフォートモンスターは2体。よって2枚ドロー! そして禁じられた聖杯の効果が終了し、クリフォート・ディスクの攻撃力は元に戻る」
クリフォート・ディスク
攻3200→ 2800
使い切った手札の補充。クリフォート・アセンブラがいる限り、アドバンス召喚するたびに手札が補充される。グラドスはきっと、ペンデュラムスケールを次のターンで壊しにかかるだろう。ペンデュラムスケールがある限り、エクストラデッキからのリリース素材を1体は確実に用意できるのだから。
――まだデュエルは始まったばかり。終わりは確実に迫っている。
〜悲報〜
遊戯王VRAINSの二次小説なのにリンクモンスターの出番無し
ゲニウス君ごめんね、このデュエルで出番は無いんだ。これからもあるかわからないんだ。初手で君を出してもね、うーん……なんか違う、ボツ!ってなったんだ。ごめんね。