お待ちかね、答え合わせ回です。作者、プロット組めてない行き当たりばったりな小説でここまで繋ぎ合わせられるとは思わなかった。
各クリファは常にデュエリストで賑わっていた。ヴァンガードを一目見たい人、憧れる人、批判する人。理由は違えど、ヴァンガードに関心があるのは違いない。
人混みの中、うさぎが跳ねる。工事現場で見るような黄色いヘルメットを被ったそれは、子供を見つけるとその方向へ走り、体当たりするように跳ねる。……うさぎがぶつかったその瞬間、子供が消えた。いや、強制的にログアウトさせられたのだ。誰によって? ひくひくと鼻を動かすうさぎに聞いても、返事は返ってこないだろう。
「……これで各クリファにいた児童全員のログアウトは完了しました」
「了解。君達も持ち場についてね」
「はっ」
空を見上げる。
「きっと君は来るんだろうね、プレイメーカー」
私のヒント、気づいてくれただろうか。気づいたとしても、一人ではどうしようもない。
「賽は投げられた……ってね」
さあ、ヴァンガードとして最大の
「あれは?」
ビルの屋上に佇む人影に誰かが気づく。もしかして、と思って皆上を向く。
「ヴァンガード様ー!」
「やっぱ生ヴァンガード可愛いー!」
「デュエルしてくれー!」
歓声。ハノイの騎士であるにもかかわらず、人気が高いリンクヴレインズ話題のデュエリストの一人。ヴァンガードがそこにいた。クリファには老若男女問わずファンが集まって……いや、子供だけがいない。だがその事には彼らは気づかなかった。
「うおお、私大人気……。えー、皆さん、デュエル強いですかー?」
応。
「私の下で働いてみたいですかー?」
応。
「っ、遅かったか……!? 今すぐそこから逃げろ!」
デュエルボードに乗って登場したのはプレイメーカー。地上の人達の頭上を飛行している。
「……え、プレイメーカー!?」
「俺、俺、この瞬間に立ち会えるなんて夢みたいだ……!」
「あーあ、来ちゃったかー」
地上にいる人にはわからないだろうけど、彼は珍しく焦っていた。私を見つけるまでに時間をかけ過ぎた、それを理解しているからだろう。もっと早くに見つけられたら、このプログラムは完成していなかった。
「ヴァンガード! 俺とデュエ――」
「先に言っとくけど、私は事件については本当に何も知らないよ? バイラ様かファウスト様に聞いて下さいな」
「!?」
予想外の一撃で反応が遅れたね。最初に逃げろって言ってるから解析は出来たんだろう。でも、ここで登場したのは失敗だったね。皆戸惑っている。この一瞬で私の計画は果たされる。
「ちょっと邪魔入っちゃったけど――それじゃあ皆さん、ハノイの騎士になって下さい」
ぱん、と手を叩く。今までの歓声から一転、悲鳴が響く。火がクリファを覆う。
「火の洪水……プログラムを頼んどいてあれだけど、思ってたより地獄だね」
ヴァンガードがいないクリファでも同様に、彼女の部下によって起動させられたプログラムの火がデュエリストを包み込んでいた。
「――――っ!!」
プレイメーカーががくり、とバランスを崩す。リンクセンス……だったっけ、あれのせいかな。各クリファで同時に強力なプログラムを起動したからかな。あれアニメで説明何もされてないのよね。地上に落下ーーすることはなく、着地には成功した。火に覆われた大地のど真ん中に落ちたけど。
「あづ、熱――くない? でもこのプログラムすごくキモチワルイ!」
デュエルディスクから出てきたAiが不快を訴える。火の見た目をしたウイルスだから、本当に熱い訳じゃない。侵略すること火の如く……ってね。
「だって君達を対象にしたウイルスじゃないからね、それ。……それじゃあ、答え合わせといきましょう」
「ふざけるな、俺とデュエルしろ!」
「まーそうカリカリしないで、君の相手は私じゃない。彼らだよ」
「どういう……!」
火の中からむくり、と人が立ち上がる。その目にはプレイメーカーへの敵意しか存在しない。あちらでも、こちらでも人が立ち上がりプレイメーカーに向かって歩く。
「プレイメーカー、俺とデュエルしろ」
「私と、ハノイの騎士とデュエルよ」
「我々、ハノイの騎士と」
「デュエル」
「「「デュエル!!!」」」
ぐるりと囲まれる。逃げる事はできない。さあさあ始まるデュエル地獄。一度たりとも負けられない戦いが延々と続く。
「はい、私暇になったから暇つぶしに語らせてもらいますよー。君は聞いてもいいし、聞かなくてもいい。でもどっちかというと聞いてほしいなー……」
あっ、プレメこっち見てねえ! 既にデュエルしとる! ……まあいっか。
「私がこれを思いついたのはAIデュエリストとデュエルしていた時。数ってやっぱり大事だなー、と思ったのですよ。でも数だけじゃ駄目、ちゃんとしたデュエリストでないと何もできないまま終わる」
メタったら動けないのは言語道断。デッキの多様性も大事だった。
「そこで、私の名前を使うことにした」
両腕を広げる。
「ヴァンガードがある場所でだけ現れる、なんて面白そうなネタ。私のファンが飛びつくのは誰にだってわかること。その予想通り、彼らはこのクリファの中に集まった」
本当にいるかもわからない私を探して。途中からの被害者はヒャッハノイ達の偽装。凄く楽しそうにぶら下がってくれましたよ、ええ。テンションが異常に高かったのは、ヴァンガードとデュエルしたからだろう、みたいに受け取ってくれたけど。
「人が集まれば集まるほどいい。強いデュエリストがいる確率が高くなるから。そうして集まったのを……纏めて洗脳する」
洗脳は遊戯王の恒例行事! ここテストに出るよ!
「とても平等に。一定以上のランクのデュエリストを兵士へと変えるウイルス。それをクリファに仕込んだ。もし基準に満たない場合は、デッキをこっちが用意したものに変更して、その回し方を強制的にインストールさせる」
デュエリストとして信じられないような行動をしている自覚はある。でも、私はハノイの騎士のヴァンガードだから。
「彼らはちゃんと意識を持っている。そうじゃないと君を倒す刃にはならないでしょう? 救われたいなら、プレイメーカーを倒すしかない。そうプログラムしてある。地獄じゃない。だからこその
ヴァンガードが笑う。
「
既に何人かの洗脳兵士とデュエルを終えたプレイメーカーがこちらを睨みながら話しかける。
「――わからない、何故逃した」
「? 何の事?」
「何故、子供だけを逃したかと聞いているんだ。ヴァンガード」
……あー、流石に気付いちゃったか。
「今ここにいるデュエリストの中に、子供だけがいなかった。お前の仕業だろう、ヴァンガード」
「さあ、どうだろうね? それに、そんな余裕見せていいのかな? ほら、第二陣のご到着だ」
他のクリファからぞろぞろと歩いてくる。走って来るよりもこっちの方が危機感出るでしょ?
「どうするんだよ、プレイメーカー!」
さあ、どうする主人公? 除去プログラムを作る時間は無い。洗脳兵士を全部倒すまで私とデュエルできない。消耗したプレイメーカーなんて敵じゃない。真面目に詰んでるこの状況。どう覆す!
「――ならば私とデュエルしなさい、ヴァンガード」
「っ、誰だ!」
あの時全て倒したはずの、AIデュエリストがそこにいた。
あれ、AIデュエリストもの凄くかっこ良く見えてきたぞ?(困惑)