お願い、死なないで英雄王!!あんたが今ここで倒れたらセイバールートのラスボスはどうなっちゃうの?麻婆神父はまだ生き残ってる。ここを耐えれば、アルトリアに勝てるんだから!
次回、「英雄王死す」。デュエルスタンバイ!
……ああ。
またここに戻ってきてしまった。
折れた女のもとに来たベディヴィエール卿が可笑しな顔をしている。
可笑しいに決まっている。
臣下が死のうと人々が苦しもうと、何も感じず眉一つ動かさない女が全てに絶望したような顔をしているのだから。
そうだ。
これは全て決まっていたこと。
始めから終わりまで全てを偽り裏切った女が絶望して果てる。
ただそれだけのこと。
だが。
…ああ、だが。
「わたしから奪うな……!」
虚空を睨みつける。
「渡さない!渡してなるモノかああアッ!!」
あの過ぎ去った日々を。
私の記憶すらも排除しようとするか。
騎士王という英霊を歪ませる余分なモノを削り取ろうとするそれに抵抗する。
世界が軋む。
「思い通りになると思ったか!消え失せろッ!!」
私という存在が世界から弾き出される。
私が最期に行き着く先へと。
この世ならざる異界へと締め出されていく。
…あきらめたか。
私という存在もこれで終わるのだろう。
……いや。
まだ残っている。
私の中でつながっている。
シロウとの繋がりを感じる。
ああ。
はやく。
「かえらないと」
***
狂乱の時は終わり、静寂が訪れる。
「…言峰がやられたか。因果応報とはよく言ったものだが奴もこのように凄惨な仕儀にあいなるとは予想だにしなかったであろうな」
元がどんな形をしていたかわからぬほどに喰い千切られ、咀嚼されて吐き捨てられたモノを見下ろす黄金の王。
視線を無惨な骸から外し、その先にあるモノを見やる。
「堕ちるところまで堕ちた女がどこまで行くかと思えば…」
そこに先ほどまで暴虐の限りを尽くしていた竜はいない。
あるのは───
「このような珍奇な代物が生まれようとはな」
剣の英霊に生き写しの銀色の少女が死んだかのように眠っている。
いや、実際に死んで別のモノになってしまったと言うべきなのかもしれない。
「セイバーは逃がしてしまったがまあよかろう」
一歩一歩近づいてくる。
「代わりというには随分と外れているようだが」
手を伸ばしてくる。
「余計なモノを取り除けば置物として愛でるぐらいには役に立とう」
指が触れ
「しね」
一瞬遅れて腕が飛ばされたことに気づく。
「がああッ!?き、貴様っ」
少女の身体がかくんかくんと不自然に起き上がる。
まるで操られたマリオネットのように。
「しねしねしねしねわたしのわたしのしろうにしろうにさわるなさわるなよくもよくもしねしねしねしねし」
ぶつぶつと怨嗟の言葉は吐き出し続ける銀の少女の内側から無数の聖剣や聖槍がバキバキと不気味な音を立てながら無秩序に飛び出してくる。周囲の空間もそれらと同じもので埋め尽くされていく。
「セイバー…!よもやきさ」
最後まで言葉を口にすることすら許されなかった英雄王が最後に見た光景は己が視界を隙間なく埋め尽くす聖剣と聖槍で構成された群体だった。
「…」
「……かえらないと」
「あまりおそくなるとみな心配するでしょう」
「はやく帰りましょうシロウ」
「今日の夕食はなんでしょうかシロウ」
「…シロウ」
かくかくと壊れた人形のように銀の少女は「家」に向かって歩き続ける。
……其処こそが己が本当に帰るべき場所だと信じて。
世界「英霊騎士王という存在に邪魔なので記憶改竄しようとしたら抵抗されて人理崩壊させそうなぐらいキレられたのでアヴァロンにしまっちゃうよー」
後半のアレは全部ロンゴミニアドとエクスカリバーです。