ネタ晒し編   作:yoshiaki

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なぜか書けた謎の更新。今回おまけ二つあります。


気が付いたら戦乙女だった 3 殺し愛x愚痴x形成(笑)

斬る。斬る。斬る。銃撃。避ける。斬り捨てる。

降りしきる雨の中を駆け抜ける。

背後で人間だったモノが倒れるのも気にせず、心を凍らせひたすら斬って斬って斬り続ける。

 

「はあッ!……っはあっ…はぁ…っ…はっ……っ!」

 

……息が切れる。おかしい。とうの昔にこの程度でどうこうなるような軟な身体では無くなっているというのに。

 

「これで、五百…っですかねっ…はっ…っ」

 

……いや、悲鳴を上げているのは私の弱い心か。自ら始めた殺戮を忌避し、全て投げて逃げ出したいとでも言うつもりか…?醜い、汚い。だがそれでいい。戒ではないが、穢れるのは私だけでいいのだ。

 

「はっ…はっ…次は…次、はっ……」

 

主役は主役らしく、綺麗で格好よくなければならない。こんな穢れた殺戮劇は彼には似合わない。元々場違いな年寄り達が始めたことだ。汚い裏方は私がすればいい。私が道を開いて、彼がそこを通るのだ。

 

「なの、にっ……」

 

私の渇望は変わらずこの胸にあるが、それとは矛盾した破滅願望が湧いてくる。……全部終わったら彼の手にかかって死にたい、だなんて。頭おかしいですよね、こんなの。これが噂の自死衝動とやらでしょうか。彼からしても迷惑極まりないでしょうし。自分で自分の始末も付けられないのかって思いますよね、はい。少佐にもどやされるだろうな…あはは……。

 

「なんで……」

 

あなたと女神の劇はまだはじまったばかりなのに。

 

「何であなたがここにくるのよぉッ!……蓮!!」

 

どうしてここに来ちゃうのよ…馬鹿。

 

「……ふざけるなよベアトリス。こんな真似今すぐ止めろ!お前こんなことして喜ぶようなやつじゃねえだろ!こんな夜中に似合わない真似してないでさっさと帰るぞ。明日も学校だろうがッ!」

 

刃を合わせ、鍔迫り合いをしながら、こんな時でも相変わらず強情だ。…正直彼の言葉に喜びを感じなかったと言えば嘘になるが、これで止まるようならそもそもこんなことはしていない。

 

「……あなたの勘違いですよ。私は元々こういう女です。…あなたこそさっさと帰りなさい!私は私の目的があってこうしているの!子供の出る幕じゃない!!」

 

そう、あなたはこんなところにいるべきじゃない。主人公がこんな女に関わっていてはいけないのだ。

 

「……これまでの人生で大勢殺してきました。私に良くしてくれた人も大勢見捨ててきましたよ。櫻井の兄…戒もそうですし妹の螢も変わらない。…ああ、そういえばあなたのよく知っている人がもう一人いましたね」

 

出来るだけ冷酷な、非情な女の顔を作って、告げる。

 

「香純のこともそうです。シュピーネに彼女が連れ去られるのを私、知ってて見過ごしましたからね」

「ッ!?」

 

驚愕の表情を浮かべる蓮。…そう、私はこういう女だ。香純があの蜘蛛に拉致されるのを私は見過ごした。彼の成長に必要だったというただそれだけの理由で彼女を含めた犠牲を容認した。

 

櫻井の兄妹に関してもそうだ。何だかんだと思ってはいても戒がもたず、2006年には間に合わない、ここで何をしようが脚本は変えられない。だから、人として彼が朽ちていくのを放置し、流れに任されてしまったのだ。螢のことも……彼女がトバルカインと化すのを私は止められないだろう。彼女は私を姉のように慕ってくるのが嬉しくも悲しい。私に彼らを愛し、愛される資格なんてない。ありはしないのだ。

 

「……さあ、こんな女に関わる気なんて失せたでしょう。それとも死にたがりの病でも発症しましたか?馬鹿なことを考えるなら私がここで斬り捨ててあげましょう、かあ…ッ!」

 

叫びと共に剣を叩きつける。お願い…退いて。

 

「…馬鹿言ってんじゃねえぞ」

 

…え?

 

「お前の事情なんて知るか!お前も俺の日常の一部なんだよ!今更欠けるなんて許さねえから力ずくでも連れ戻すからな!!」

 

そんな、馬鹿で、恥ずかしい台詞を…。

 

「っ!まだそんな馬鹿なことをべらべらと!子供が生意気言うんじゃない!!私はあなたの言うような人間なんかじゃ…」

「じゃあなんで!」

 

言葉を遮られる。

 

「なんでお前…泣いてんだよ!」

 

―――え?

 

「ぁ…や、やだ。なんで。いつの間に、こん、な…」

 

いつから流していたのかわからない涙。止めようとするが止まらない。止められない。

 

「全然隠せてねえんだよこの馬鹿!自分を偽って押し殺してるのが見え見えなんだよ!放っておけるかよ!!…それに…ッ」

 

彼が強い意志と共に押し込んでくる。押されてしまう。

 

「……惚れた女盾にして平然としていられる程俺は男止めてねえんだよ察しろこの鈍感女!!」

「えっなっ!?」

 

予想していなかった言葉に手が緩み、剣が飛ばされ、そのまま押し倒されてしまう。

ちょっ…やだ…顔近い。

 

「…やっと捕まえたぞ、ベアトリス。頼まれたってもう絶対に離さないからな」

 

……いつからだろう、彼のことをそういう風に見るようになったのは。彼と共に過ごす日々が愛おしく感じられるようになったのは。こんなこと言われたら抵抗、出来ないじゃない。

…もう、こんなところまで主人公張らなくたっていいのに。恥ずかしい台詞を臆面もなく吐くんだから。

 

「…どうした?まだ抵抗するつもりなら、…ッ!?」

 

腕を回して顔を引き寄せ、口づける。…

なにげにファーストキスですねこれ。我ながら大事にとっとき過ぎでしょう。少佐を笑えません。

 

「…ん、ちゅ…むぅ……ふぅ」

 

唇を離し、何やら今更赤面しつつこちらをジト目で見つめる彼の顔がおかしくて、つい笑う。

 

「…そこまで言うなら、責任とってもらいますからね。今度は私も離しませんからね。…二度もあなたを見捨てたりなんか…しない」

 

訝る彼の頬を撫で、抱きしめる。彼と共になら、どんな困難だって乗り越えられる。そんな風に考えてみよう。また、明日を見ることから、始めよう。そんなことを、雨の中彼と抱き合いながら私は思った。

 

……この時私は気付いていなかった。怒りと寂しさと喜びの入り混じった複雑な感情を抱いた少女が私を見つめていたことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

~おまけ・いつかの酒場にて~

 

「聞いてくださいよ、ロートス!…もうホントうちの職場環境ブラックでしてね!?」

 

ビール片手にロートスに詰め寄る。最初は興味本位から顔を合わせて意気投合し友人となったが、こうして時々酒の席を共にして彼に愚痴るのはもはや日常の一部と化してしまった。

 

「…はいはい。その話さっきからこれで五回目だぞ。というか、会うたびにその話してる気がするんだが…。」

 

むー。相変わらずつれないですねこの歴史オタクは。いや、芸術だったっけ?どっちでもいいか。

 

「だって私の周りときたら、ガチガチの軍人肌やら馬鹿みたいに喚いてるチンピラ崩れやら権力を持ったキ○ガイやら死んだ魚の目をした中年オヤジ共やらですよ!?いや、転職したいですよ本当に…」

 

延々と愚痴り続ける私に呆れ顔で彼は言う。

 

「そんなに嫌な職場なら転属願いでも出せばいいものを」

 

それが出来れば苦労はしないんですよ。

 

「…いやまあ、上官見捨てるわけにもいかないですし?あの人友達少ないですし。うへへ、逃げ場なし!国家保安本部は地獄だぜえ…」

「また酔ってるな。…と、そうだ。同僚にはもう話したんだが、この前面白いやつと会ってさ、意気投合して一緒に士官学校に行くことにしたんだ」

 

手が止まる。

 

「……ん、それはまた。似合わないことをしますね。国家のためにーとか言うたまには見えないですが。いいんですか?気に入ってたんでしょう、今の職場」

 

来るべき時が来た、ということだろうか。彼は戦場で散る。いや、散った後からが本当地獄が始まるのだろう。私は彼から目をそらす。そらしてしまう。

 

「いや、さ。今の職場での日常にはまあ、それなりに満足してる。でも、それは世界が平和な中で享受すれば、後顧の憂いなく輝かしき平凡なる日常を楽しめるってもんだろ?趣味に没頭するのはそれからでも遅くはないさ」

 

違うの。あなたはあなたの愛した日常へ帰れない。この戦争が終結しても、あなたの戦いが終わることはない。私はそれを知っている。でも、彼に出来ることは何もない。してはいけない。

 

「…と。もうこんな時間か。この後用事があったのを忘れてたよ。じゃあまたな、ベアトリス。ここは俺が奢っとくよ」

「…えぇ、ありがとう」

 

気の入らない声で答える。私は…

 

Auf Wiedersehen(また会いましょう)、ロートス…」

 

遠ざかる彼の背中にそう呟くことしか、しなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~おまけ・形成(笑)の末路~

 

子悪党が死に瀕しつつも、まだ生きていた。

 

「おのれ、おのれおのれおのれおのれ―――」

 

彼の名はシュピーネ。聖槍十三騎士団・黒円卓第十位、ロート・シュ(ryである。

 

「ゆるさんぞ……」

 

顔の差(笑)で敗れたシュピーネだが、蜘蛛の生き汚さ、執念深さは伊達ではなかった。

 

「キキ、キヒヒヒ……」

 

黒円卓一粘着質な男は頭の中で彼を負かした男とその周囲の者を貶め、這いつくばらせる。

血の海にのたうちながらも復讐を誓い、嗤うシュピーネ。

 

―――だが彼の復讐は決して成就することはない。

 

「ギ、ハハ、アハハハハ、はぎゃあっ!」

 

激痛がはしる右足を見ると、そこには蒼く雷を帯びた剣が突き立っていた。

 

戦雷の聖剣(スルーズ・ワルキューレ)!?ぎ、ギルヒアイゼンぎょう、な、なじぇえッ!?」

「…痛いですか?あなたに嬲られ、死んでいった者たちも痛かったでしょうね」

 

剣を引いて右足を飛ばす。

 

「イギャあああああッ!!や、やめっ…」

「…私、とても苛立ってるんです。静かにしてください」

 

返す刀で左足も飛ばす。

 

「ぐぎゃあああッ、ゆ、ゆるぢでえええッ!!」

「そう、とても腹立たしい」

 

両腕を一気に飛ばす。

 

「いぎいいいいいィッ!!」

「あなたのような下種の所業に。…でも」

 

軍靴で心臓のある位置を踏みつけ、力を込める。何をされるか悟ったシュピーネが身を捩って逃れようとするが、叶わない。…彼の手足はもうないのだから。

 

「誰より、何より、それをわかっていながらあえて見過ごして穢れた私が……ッ!」

「ぎゃああああ!、や、べで、ぢぬううううッ!!、がっ!がぎゃ…」

 

足を思い切り踏み抜く。

 

「…許せないんですよおおおぉッ!」

「がぎぇええええおええええああああああああああああ!!!!」

 

軍靴が胴体を貫通して心臓を踏み潰し、今度こそ絶命する。

貯蓄した魂が散花するが、どうでもいい。

 

「はあ…はあ…はあッ…っ」

 

……そう、こんな汚いモノは彼には合わない。昔から裏方は私の仕事だ。幸いと言っていいかどうか微妙だが、私達は今だ世界の敵だ。何も私達を狙っているのはかつての双頭の鷲(ドッペル・アドラー)に限った話ではない。今回の儀式の為に、裏社会を通じて世界中の組織から兵隊をこの都市に誘き寄せた。生贄は多ければ多いほど良い。私が目をそらし続けてきた、見捨ててきたツケをようやく支払える時が来たのだ。

 

「これで、いい…これで……」

 

―――穢れるのは、私だけでいい。




陰で覗いてた神父「キルヒアイゼン卿怖すぎワロタ」

たまたま時間があって筆が乗ったとはいえ時間かかり過ぎるw
この駄文に丸一日かかってるぞwなんだよこれw長文書くと死ぬわw
ベア子ちょろいwいやまあ前から惚れてたのと練炭の主人公力による力押しのせいですw
あ、ちなみに双頭鷲はもうありません。ギロチンはベア子がダッシュしました。
幼馴染のヒゲは死なない程度にぼこって故郷に叩き返し、電波少女は孤児院へ送り付け、クラスメートの刃物娘はOHANASHIして街から見送りました。あ、ストーカー君はアンナちゃんのところにお望み通り郵送しました(おい
何か企んでた神父はむかついてたのでシスターにチクった上で無理やり南極に転送してクレバスに蹴り落としました。帰りは泳ぎですw
形成(笑)さんの末路については…なんかベア子が勝手に動いてHELLSINGばりのバイオレンスな処刑を行ってましたwシュピーネファンの皆さんすいません。

あーもう駄目かも。文書くのマジ疲れるわー。続きを書きたい人、書いてもいいですよ(チラッ
いや本当に。

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