Fate / your name   作:JALBAS

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今回はFate側は日常的な話。
但し、相変わらずルートごちゃ混ぜ、順不同です。
糸守側には新キャラ登場……
といっても、他作品のキャラをお借りしているだけですが。




《 第七話 》

 

日課となった、セイバーとの剣術の特訓。容赦無くしごかれた後、俺は、土蔵で今迄も日課だった強化の鍛錬に臨む……のだが……

俺は、溜息をひとつついて、土蔵の戸を開ける。そして、土蔵の前に座り込んでいる人影に語り掛ける。

「セイバー、いつまでそうしている気なんだ?」

「もちろん、士郎の鍛錬が終わるまでです。気にせずに続けて下さい。」

 

そんな事言われても、気になって集中できる訳が無いだろう?

 

俺は入れ替ってしまったので知らないが、先日土蔵でそのまま寝てしまい、そこをキャスターに狙われて柳洞寺まで誘き出されてしまった。そのため、二度とそのような事が無いように、ちゃんと床につくまでセイバーが警護するろ言って聞かないのだ。また同じ部屋で寝ると言い出さないだけ、まだマシなのだが……

 

そういえば、また三葉を危ない目に合わせちゃったな。うっかり土蔵で寝込んでしまった、俺がいけないんだが……あいつ、相当怒ってたよな。スマホ一面に“バカ”のオンパレードだったし……

 

 

 

 

もう、衛宮くんのばかばかばかばかばかばかばかっ!

桜ちゃんの気持ちを、全く分かって無いんだからっ!正義の味方になりたいですって?ふざけないで、その前にあんたは女の敵よっ!

 

「三葉、何そんなに怒っとるの?」

険しい表情で、ずしずしと歩く私に、サヤちんが聞いて来る。

「え?い……いや……あの……」

私は返答に困る。まさか、入れ替ってる男の子の事なんて言える筈もないし、言っても信じてもらえるとも思えないし……

「あ……あはは、朝、四葉とおかずの取り合いになって……」

適当な事を言って、誤魔化した。

昨夜は、直接文句を言ってやろうと何度も自分のスマホに電話を掛けたが、全く繋がらなかった。前にもやったけど、何故か衛宮くんとの電話やメールは繋がらない。仕方が無いので、スマホの画面いっぱいに“バカ”と書いてやった。

 

学校に着いて、先生が入って来た時に教室内が騒然とした。

先生と一緒に、外国人の女の子が入って来たのだ。銀色の長いしなやかなストレートヘアに、スタイルの良い体。美しい顔立ちに、ちょっとあどけなさも残し、赤い瞳をしている。

「転校生を紹介する。皆も知っていると思うが、町外れに建てられた城に昨日越して来た……自己紹介は、自分でできるか?」

「ハイ!」

元気良くそう答えた彼女は、自分の名前をカタカナで黒板に書く。そして、皆の方に向き直って、自己紹介を始める。

「ドイツからキマシタ。クロエスフィール・フォン・アインツベルン、デス!“クロエ”ってよんでクダサイ!ミナさん、ヨロシクおねがいシマス。」

教室内は、未だに騒然としている。それはそうだろう。こんな田舎に転校生が来る事自体珍しいのに、何しろ外国人の、しかもとびきりの美人の転校生が来たのだから。

「ほ……ほんまに、美人の転校生が来よった……痛っ!」

つい鼻の下を伸ばすテッシーを、サヤちんが抓った。

 

あれ?でも、この娘の顔、どこかで見た事あるような……“アインツベルン”ってラストネームも、どこかで聞いた事があるような?

 

「じゃあ、席は……宮水の隣が空いているから、そこに座りなさい。」

「ハイ!」

元気良く返事して、彼女は私の隣に歩いて来る。

「クロエスフィール、デス!ヨロシクおねがいシマス!えっと……」

「み……宮水三葉です。宜しく……クロエスフィールさん……」

「オー、ミヤミズさんデスね?“クロエ”ってよんでクダサイ!」

「は……はい、じゃあ、私も“三葉”と呼んで下さい。」

「ミツハさんデスね?わかりマシタ!」

 

席が隣になったこともあり、私はクロエさんと直ぐに仲良くなった。

クロエさんは、昼休みは私達と一緒に、校庭の隅で昼食を食べた。クロエさんはサンドウィッチだったが、私のお弁当にやたらと興味を示した。

「ミツハさん?これは、なんデスか?」

「え?ああ、これは、だし巻き卵やよ。」

「オー、とってもオイシそうデスね?」

クロエさんの目が、星のように輝いている。

「食べる?」

「イイんデスか?」

「どうぞ。」

「アリがとうゴザいマス!」

私は、箸でだし巻き卵を掴み、クロエさんに差し出す。彼女は、大きく口を開けて、ひと口でそれを頬張った。

「オー、スゴくおいしいデス!」

こんな感じで、とても賑やかな昼食となった。

クロエさんは、人見知りということを知らないのか凄く人懐っこくて、目茶目茶明るかった。外国の人は、みんなこんな感じなんだろうか?おかげで、わりと人見知りなサヤちんも、クロエさんとは直ぐに打ち解けた。

「クロエさんの家って、ほんまにお城みたいやね?」

「ハイ、ドイツのおシロ、そのままモッテきまシタ。」

「え?それじゃあ、住んでた家ごと引っ越して来たん?」

「ハイ!」

 

何とも、スケールの大きな話だけど、そのまま移管なんてできるの?日本のブロック住宅じゃあるまいし……部材になるまで全部ばらして、また組み立てたの?

 

「ほな、ご家族も一緒やの?」

私が聞く。

「ハイ、でもカゾクといっても、メイドがふたりデスが。」

「ええっ?あんな大きなお城に、たった3人やの?」

「ハイ!」

何とも、驚く事ばかりだ。うちも3人だけど、クロエさん家の1/10の大きさも無い。

「今度、遊びに行ってもええか?」

テッシーが聞く。建築業の跡取りとしては、あの巨大建造物にも興味があるだろう。

「ハイ、もちろんデス。ぜひ、キテくだサイ!」

 

 

放課後になって、クロエはひとりで学校内を見回っていた。

あらかた見終わった後に、校舎の裏で何やらスマホを操作する。そんなクロエに、ひとりの男が近づいて行く。

「……君が、アインツベルンから派遣された“主”か?」

「エ?アナタは、だれデスカ?」

「……間桐……霧也だ……」

「オー!アナタが、マトウさんデシたか?」

三葉は、焼却場にごみを捨てに行った帰りに、たまたまその近くを通り掛かる。

 

え?

 

思わず、校舎の影に隠れ、その様子を伺う。

 

ま……間桐くんと、クロエさん?間桐くんが人と話しているのを初めて見たけど、何でクロエさんと?

 

 

 

 

実際に行ってみて(行ったのは三葉だが)、柳洞寺に攻め込むのはリスクが多い事が分かった。なので遠坂の提案通り、まずはキャスターのマスターを捜して、柳洞寺の外で抑えるのが得策という事になった。

しかし、学校が休校なので、キャスターのマスター捜しはしばらく待つしか無い。

朝から家に居るので、午前中はみっちりセイバーに扱かれた。その後、俺は昼食の買出しに商店街に来ていた。買い物を済ませて自転車に乗ろうとしたところで、後ろから誰かに服を引っ張られた。振り向いてみると……

「うわあああっ!」

驚いて、俺は尻餅をついてしまう。

「ごきげんよう。」

紫の帽子とコートを着た少女が、コートの裾を上げて挨拶をして来る。

「生きてたんだね、お兄ちゃん!」

バーサーカーのマスターの少女だ。

「あ……ま……まさか、ここでやる気か?」

俺は、思わず後ずさりしてしまう。しかし、その子は無邪気な口調で言って来る。

「え~っ、何で?お日様が出ている内に戦っちゃ、ダメなんだから!」

「だ……だけど、お前……えっと……」

「私はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン、長いから、イリヤでいいよ。」

「あ……ああ、お……俺は……」

「知ってるよ、“シロウ・エミヤ”、“シロウ”って呼んでいい?」

「あ…ああ、いいけど……」

 

知ってるって……何で?敵のマスターだから、調査済みって事か?

 

俺は帰ろうとしたが、その子は、ずっと俺の後を付いて来る。

「今日は、バーサーカー置いて来たの。だって、お兄ちゃんだってセイバー連れてないから、おあいこ!」

「おあいこってなあ、」

「ねえ、お話したい事いっぱいあったんだからっ!」

そう言って、今度は俺の腕に抱きついて来る。

「お……お話って……」

「普通の子供は、仲良くお話するものでしょ?」

「マスター同士仲良くできるか、一度戦った相手だし、むしろ敵だ敵!」

「私に敵なんかいないもん。でも、いい子にしてたら、シロウは見逃してあげてもいいよ。」

「滅茶苦茶言ってる!」

俺は、抱きつかれた腕を振り解こうとする。

「うわあっ!」

「あ……危ない!」

だが、イリヤが倒れそうになったので、思わず支えてしまう。

イリヤは、悲しそうな顔をして俺を見る。

「何?お兄ちゃん、私の事嫌いなの?」

俺は、その哀しそうな目に負けてしまう。

「分かった、話をすればいいんだろ。」

「うん!」

そう言うと、急に元気になって走り出して行く。

「じゃあ、あっち早く……早く~置いてっちゃうぞ、シロウ!」

 

俺達は、近くの公園で話をしていた。俺はベンチに腰掛け、イリヤはその前で丸太に乗ってバランスを取っている。

「それで?セイバーの事を聞きたいのか?」

「そんなお話つまんない、もっと面白いお話して!」

「じゃあ、イリヤはどんな話が好きなんだ?」

「私、あんまり人とお話した事無いし……おっと、」

急に風が吹いて、イリヤはバランスを崩す。

「……だから、シロウに任せる。レディをエスコートするのは、男の人の責任でしょ?」

俺は、溜息をつく

「うわ!」

その時、更に強い風が吹いてイリヤは倒れそうになる。が、そのまま俺のところに飛び込んで事無きを得る。

「お…おい!」

イリヤは、そのまま俺に抱き付く。

「イリヤ、もしかして、寒いのか?」

「うん、私、寒いの苦手……日本は、私の国より暖かいって聞いたのに……」

「今年は、異常気象だからな……あ、そうだ、イリヤは何処から来たんだ?随分と、貴族っぽい名前だけど。」

「ぽいんじゃ無くて、貴族だよ。私、アインツベルンの古いお城で生まれたの。いっつも寒くて、雪が降ってたんだ。」

「寒い国で生まれたら、寒さには慣れるんじゃないか?」

「慣れてるけど、寒いのは嫌いなの。私、冷たいのより暖かい方が好きだもん。だけど、雪は大好きだよ。私の髪は白くて、雪みたいだって……父様が言ってたから。」

「確かに、イリヤの髪は雪みたいだ。雪の妖精って感じだもんな。」

「でしょ!この髪は、母様譲りでイリヤの自慢なんだから……」

こんな無邪気な顔を見ていると、この子があのバーサーカーのマスターだとは、とても信じられない。

イリヤは、森の奥の洋館に二人のメイドと一緒に暮らしているらしい。しかし、いつもは部屋から出る事を禁じられているそうだ。

「食べるか?」

俺は、先程買ったたい焼きをひとつイリヤに渡す。

「何?それ?」

「たい焼き見るの、初めてか?」

「たい焼き?……えっと、その、くれるの?」

「甘いぞ。」

「わあ!ありがとう。」

嬉しそうな顔をして、イリヤはたい焼きを口にする。

「ふむ……はむ……ほいしい!」

本当に楽しそうに、イリヤはたい焼きを頬張る。その横で、俺も一緒に食べる。

 

俺に妹がいたら、こんな感じかな?

 

すると、イリヤははっとして森の方を見る。そして、急に立ち上がって走り出す。

「私、帰る!」

「え?」

「バーサーカー、起きちゃった!」

そのまま、振り向きもせずイリヤは走り去ってしまった。

そこで、自分も買い出しの途中だった事を思い出す。

 

いけね、こっちも、セイバーが待ってたんだ!

 

急いで、自転車をこいで帰りながら、俺は考える。

 

イリヤに会った事、遠坂とセイバーには黙っていよう。さっきのイリヤは、サーヴァントのマスターとは違う。ただ、何でもない話をして別れた。それだけなんだから……

 

その夜、また日課の強化の鍛錬を行ったが、いつにも増してうまくはいかなかった。

それを終え、縁側で疲れて寝転がっているところに、アーチャーが現れた。

「ふん、相変わらず、無駄な事ばかり繰り返しているな。」

「はあ?」

「お前の父親も、お前の能力を全く理解していなかったようだ……いや、それとも、見込みが無さ過ぎて見放されただけか?」

「喧嘩を売ってるのか?」

「一度しか言わんから良く聞け。戦いになれば、衛宮士郎に勝ち目は無い。何をしようが、お前はサーヴァントに太刀打ちできない。」

「何?」

「ならば、せめてイメージしろ。現実で敵わぬ相手なら、想像の中で勝てる物を幻想しろ。お前にできる事など、それくらいしか無いのだから。」

俺は、何も反論できず、アーチャーを睨み付けていた。

「ふっ……私もどうかしているな、殺すべき相手に助言するなど……」

そう言い残して、アーチャーは霊体化して消えて行った……

 






はい、分かる人には分かりますね。
まず、クロエスフィール・フォン・アインツベルンの名前は“プリズマイリヤ”から拝借、キャラは“ガールフレンド(仮)”のクロエ・ルメールから拝借しています。話の都合上、年齢は三葉達と同じにしています。セリフを平仮名とカタカナのごちゃ混ぜにしたのは、たどたどしい日本語の雰囲気を出すためです。全部カタカナだと、ロボットみたいになってしまうので。
もちろん、彼女もホムンクルスです。何で糸守に、アインツベルンのホムンクルスが来るかというと……まだ秘密です。

原作のゲームやってないので詳細は知りませんが、アニメの“セイバールート”だと、イリヤが最初は士郎の名前知らないんですよね。そもそも“衛宮”って苗字も知らなさそうでした。でも、“凛ルート”のアニメだと熟知してて、切継の代わりに士郎を苦しめようとしてます。ルート違うとイリヤの過去も変わるんですかね?

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