但し、相変わらずルートごちゃ混ぜ、順不同です。
糸守側には新キャラ登場……
といっても、他作品のキャラをお借りしているだけですが。
日課となった、セイバーとの剣術の特訓。容赦無くしごかれた後、俺は、土蔵で今迄も日課だった強化の鍛錬に臨む……のだが……
俺は、溜息をひとつついて、土蔵の戸を開ける。そして、土蔵の前に座り込んでいる人影に語り掛ける。
「セイバー、いつまでそうしている気なんだ?」
「もちろん、士郎の鍛錬が終わるまでです。気にせずに続けて下さい。」
そんな事言われても、気になって集中できる訳が無いだろう?
俺は入れ替ってしまったので知らないが、先日土蔵でそのまま寝てしまい、そこをキャスターに狙われて柳洞寺まで誘き出されてしまった。そのため、二度とそのような事が無いように、ちゃんと床につくまでセイバーが警護するろ言って聞かないのだ。また同じ部屋で寝ると言い出さないだけ、まだマシなのだが……
そういえば、また三葉を危ない目に合わせちゃったな。うっかり土蔵で寝込んでしまった、俺がいけないんだが……あいつ、相当怒ってたよな。スマホ一面に“バカ”のオンパレードだったし……
もう、衛宮くんのばかばかばかばかばかばかばかっ!
桜ちゃんの気持ちを、全く分かって無いんだからっ!正義の味方になりたいですって?ふざけないで、その前にあんたは女の敵よっ!
「三葉、何そんなに怒っとるの?」
険しい表情で、ずしずしと歩く私に、サヤちんが聞いて来る。
「え?い……いや……あの……」
私は返答に困る。まさか、入れ替ってる男の子の事なんて言える筈もないし、言っても信じてもらえるとも思えないし……
「あ……あはは、朝、四葉とおかずの取り合いになって……」
適当な事を言って、誤魔化した。
昨夜は、直接文句を言ってやろうと何度も自分のスマホに電話を掛けたが、全く繋がらなかった。前にもやったけど、何故か衛宮くんとの電話やメールは繋がらない。仕方が無いので、スマホの画面いっぱいに“バカ”と書いてやった。
学校に着いて、先生が入って来た時に教室内が騒然とした。
先生と一緒に、外国人の女の子が入って来たのだ。銀色の長いしなやかなストレートヘアに、スタイルの良い体。美しい顔立ちに、ちょっとあどけなさも残し、赤い瞳をしている。
「転校生を紹介する。皆も知っていると思うが、町外れに建てられた城に昨日越して来た……自己紹介は、自分でできるか?」
「ハイ!」
元気良くそう答えた彼女は、自分の名前をカタカナで黒板に書く。そして、皆の方に向き直って、自己紹介を始める。
「ドイツからキマシタ。クロエスフィール・フォン・アインツベルン、デス!“クロエ”ってよんでクダサイ!ミナさん、ヨロシクおねがいシマス。」
教室内は、未だに騒然としている。それはそうだろう。こんな田舎に転校生が来る事自体珍しいのに、何しろ外国人の、しかもとびきりの美人の転校生が来たのだから。
「ほ……ほんまに、美人の転校生が来よった……痛っ!」
つい鼻の下を伸ばすテッシーを、サヤちんが抓った。
あれ?でも、この娘の顔、どこかで見た事あるような……“アインツベルン”ってラストネームも、どこかで聞いた事があるような?
「じゃあ、席は……宮水の隣が空いているから、そこに座りなさい。」
「ハイ!」
元気良く返事して、彼女は私の隣に歩いて来る。
「クロエスフィール、デス!ヨロシクおねがいシマス!えっと……」
「み……宮水三葉です。宜しく……クロエスフィールさん……」
「オー、ミヤミズさんデスね?“クロエ”ってよんでクダサイ!」
「は……はい、じゃあ、私も“三葉”と呼んで下さい。」
「ミツハさんデスね?わかりマシタ!」
席が隣になったこともあり、私はクロエさんと直ぐに仲良くなった。
クロエさんは、昼休みは私達と一緒に、校庭の隅で昼食を食べた。クロエさんはサンドウィッチだったが、私のお弁当にやたらと興味を示した。
「ミツハさん?これは、なんデスか?」
「え?ああ、これは、だし巻き卵やよ。」
「オー、とってもオイシそうデスね?」
クロエさんの目が、星のように輝いている。
「食べる?」
「イイんデスか?」
「どうぞ。」
「アリがとうゴザいマス!」
私は、箸でだし巻き卵を掴み、クロエさんに差し出す。彼女は、大きく口を開けて、ひと口でそれを頬張った。
「オー、スゴくおいしいデス!」
こんな感じで、とても賑やかな昼食となった。
クロエさんは、人見知りということを知らないのか凄く人懐っこくて、目茶目茶明るかった。外国の人は、みんなこんな感じなんだろうか?おかげで、わりと人見知りなサヤちんも、クロエさんとは直ぐに打ち解けた。
「クロエさんの家って、ほんまにお城みたいやね?」
「ハイ、ドイツのおシロ、そのままモッテきまシタ。」
「え?それじゃあ、住んでた家ごと引っ越して来たん?」
「ハイ!」
何とも、スケールの大きな話だけど、そのまま移管なんてできるの?日本のブロック住宅じゃあるまいし……部材になるまで全部ばらして、また組み立てたの?
「ほな、ご家族も一緒やの?」
私が聞く。
「ハイ、でもカゾクといっても、メイドがふたりデスが。」
「ええっ?あんな大きなお城に、たった3人やの?」
「ハイ!」
何とも、驚く事ばかりだ。うちも3人だけど、クロエさん家の1/10の大きさも無い。
「今度、遊びに行ってもええか?」
テッシーが聞く。建築業の跡取りとしては、あの巨大建造物にも興味があるだろう。
「ハイ、もちろんデス。ぜひ、キテくだサイ!」
放課後になって、クロエはひとりで学校内を見回っていた。
あらかた見終わった後に、校舎の裏で何やらスマホを操作する。そんなクロエに、ひとりの男が近づいて行く。
「……君が、アインツベルンから派遣された“主”か?」
「エ?アナタは、だれデスカ?」
「……間桐……霧也だ……」
「オー!アナタが、マトウさんデシたか?」
三葉は、焼却場にごみを捨てに行った帰りに、たまたまその近くを通り掛かる。
え?
思わず、校舎の影に隠れ、その様子を伺う。
ま……間桐くんと、クロエさん?間桐くんが人と話しているのを初めて見たけど、何でクロエさんと?
実際に行ってみて(行ったのは三葉だが)、柳洞寺に攻め込むのはリスクが多い事が分かった。なので遠坂の提案通り、まずはキャスターのマスターを捜して、柳洞寺の外で抑えるのが得策という事になった。
しかし、学校が休校なので、キャスターのマスター捜しはしばらく待つしか無い。
朝から家に居るので、午前中はみっちりセイバーに扱かれた。その後、俺は昼食の買出しに商店街に来ていた。買い物を済ませて自転車に乗ろうとしたところで、後ろから誰かに服を引っ張られた。振り向いてみると……
「うわあああっ!」
驚いて、俺は尻餅をついてしまう。
「ごきげんよう。」
紫の帽子とコートを着た少女が、コートの裾を上げて挨拶をして来る。
「生きてたんだね、お兄ちゃん!」
バーサーカーのマスターの少女だ。
「あ……ま……まさか、ここでやる気か?」
俺は、思わず後ずさりしてしまう。しかし、その子は無邪気な口調で言って来る。
「え~っ、何で?お日様が出ている内に戦っちゃ、ダメなんだから!」
「だ……だけど、お前……えっと……」
「私はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン、長いから、イリヤでいいよ。」
「あ……ああ、お……俺は……」
「知ってるよ、“シロウ・エミヤ”、“シロウ”って呼んでいい?」
「あ…ああ、いいけど……」
知ってるって……何で?敵のマスターだから、調査済みって事か?
俺は帰ろうとしたが、その子は、ずっと俺の後を付いて来る。
「今日は、バーサーカー置いて来たの。だって、お兄ちゃんだってセイバー連れてないから、おあいこ!」
「おあいこってなあ、」
「ねえ、お話したい事いっぱいあったんだからっ!」
そう言って、今度は俺の腕に抱きついて来る。
「お……お話って……」
「普通の子供は、仲良くお話するものでしょ?」
「マスター同士仲良くできるか、一度戦った相手だし、むしろ敵だ敵!」
「私に敵なんかいないもん。でも、いい子にしてたら、シロウは見逃してあげてもいいよ。」
「滅茶苦茶言ってる!」
俺は、抱きつかれた腕を振り解こうとする。
「うわあっ!」
「あ……危ない!」
だが、イリヤが倒れそうになったので、思わず支えてしまう。
イリヤは、悲しそうな顔をして俺を見る。
「何?お兄ちゃん、私の事嫌いなの?」
俺は、その哀しそうな目に負けてしまう。
「分かった、話をすればいいんだろ。」
「うん!」
そう言うと、急に元気になって走り出して行く。
「じゃあ、あっち早く……早く~置いてっちゃうぞ、シロウ!」
俺達は、近くの公園で話をしていた。俺はベンチに腰掛け、イリヤはその前で丸太に乗ってバランスを取っている。
「それで?セイバーの事を聞きたいのか?」
「そんなお話つまんない、もっと面白いお話して!」
「じゃあ、イリヤはどんな話が好きなんだ?」
「私、あんまり人とお話した事無いし……おっと、」
急に風が吹いて、イリヤはバランスを崩す。
「……だから、シロウに任せる。レディをエスコートするのは、男の人の責任でしょ?」
俺は、溜息をつく
「うわ!」
その時、更に強い風が吹いてイリヤは倒れそうになる。が、そのまま俺のところに飛び込んで事無きを得る。
「お…おい!」
イリヤは、そのまま俺に抱き付く。
「イリヤ、もしかして、寒いのか?」
「うん、私、寒いの苦手……日本は、私の国より暖かいって聞いたのに……」
「今年は、異常気象だからな……あ、そうだ、イリヤは何処から来たんだ?随分と、貴族っぽい名前だけど。」
「ぽいんじゃ無くて、貴族だよ。私、アインツベルンの古いお城で生まれたの。いっつも寒くて、雪が降ってたんだ。」
「寒い国で生まれたら、寒さには慣れるんじゃないか?」
「慣れてるけど、寒いのは嫌いなの。私、冷たいのより暖かい方が好きだもん。だけど、雪は大好きだよ。私の髪は白くて、雪みたいだって……父様が言ってたから。」
「確かに、イリヤの髪は雪みたいだ。雪の妖精って感じだもんな。」
「でしょ!この髪は、母様譲りでイリヤの自慢なんだから……」
こんな無邪気な顔を見ていると、この子があのバーサーカーのマスターだとは、とても信じられない。
イリヤは、森の奥の洋館に二人のメイドと一緒に暮らしているらしい。しかし、いつもは部屋から出る事を禁じられているそうだ。
「食べるか?」
俺は、先程買ったたい焼きをひとつイリヤに渡す。
「何?それ?」
「たい焼き見るの、初めてか?」
「たい焼き?……えっと、その、くれるの?」
「甘いぞ。」
「わあ!ありがとう。」
嬉しそうな顔をして、イリヤはたい焼きを口にする。
「ふむ……はむ……ほいしい!」
本当に楽しそうに、イリヤはたい焼きを頬張る。その横で、俺も一緒に食べる。
俺に妹がいたら、こんな感じかな?
すると、イリヤははっとして森の方を見る。そして、急に立ち上がって走り出す。
「私、帰る!」
「え?」
「バーサーカー、起きちゃった!」
そのまま、振り向きもせずイリヤは走り去ってしまった。
そこで、自分も買い出しの途中だった事を思い出す。
いけね、こっちも、セイバーが待ってたんだ!
急いで、自転車をこいで帰りながら、俺は考える。
イリヤに会った事、遠坂とセイバーには黙っていよう。さっきのイリヤは、サーヴァントのマスターとは違う。ただ、何でもない話をして別れた。それだけなんだから……
その夜、また日課の強化の鍛錬を行ったが、いつにも増してうまくはいかなかった。
それを終え、縁側で疲れて寝転がっているところに、アーチャーが現れた。
「ふん、相変わらず、無駄な事ばかり繰り返しているな。」
「はあ?」
「お前の父親も、お前の能力を全く理解していなかったようだ……いや、それとも、見込みが無さ過ぎて見放されただけか?」
「喧嘩を売ってるのか?」
「一度しか言わんから良く聞け。戦いになれば、衛宮士郎に勝ち目は無い。何をしようが、お前はサーヴァントに太刀打ちできない。」
「何?」
「ならば、せめてイメージしろ。現実で敵わぬ相手なら、想像の中で勝てる物を幻想しろ。お前にできる事など、それくらいしか無いのだから。」
俺は、何も反論できず、アーチャーを睨み付けていた。
「ふっ……私もどうかしているな、殺すべき相手に助言するなど……」
そう言い残して、アーチャーは霊体化して消えて行った……
はい、分かる人には分かりますね。
まず、クロエスフィール・フォン・アインツベルンの名前は“プリズマイリヤ”から拝借、キャラは“ガールフレンド(仮)”のクロエ・ルメールから拝借しています。話の都合上、年齢は三葉達と同じにしています。セリフを平仮名とカタカナのごちゃ混ぜにしたのは、たどたどしい日本語の雰囲気を出すためです。全部カタカナだと、ロボットみたいになってしまうので。
もちろん、彼女もホムンクルスです。何で糸守に、アインツベルンのホムンクルスが来るかというと……まだ秘密です。
原作のゲームやってないので詳細は知りませんが、アニメの“セイバールート”だと、イリヤが最初は士郎の名前知らないんですよね。そもそも“衛宮”って苗字も知らなさそうでした。でも、“凛ルート”のアニメだと熟知してて、切継の代わりに士郎を苦しめようとしてます。ルート違うとイリヤの過去も変わるんですかね?