何故、間桐家が糸守に居るのか?
何故、アインツベルンがクロエを糸守に送ったのか?
その理由が、明かされます。
3日ぶりに、三葉の体で目覚めた。
着替えて、下に降りて、朝食の準備を始める。今日の当番がどちらかは分からないが、まあ、やっておいて怒られる事も無いだろう。ある程度出来上がったところで、四葉が起きて来る。
「あれ?今朝は早いんやね、お姉ちゃん?」
そう言って、四葉も手伝ってくれる。この辺は、桜と朝食を準備している時と被る。
俺の表情を覗き込んで、四葉が呟く。
「良かった。」
「え?何が?」
「今朝は、お姉ちゃんが普通で。」
今朝は普通?どういう事だ……昨日までは、普通じゃ無かったのか?入れ替わった方が普通って、おかしくないか?
朝食を食べながらテレビを見ていると、また彗星最接近のニュースが流れる。
『いよいよ、一週間後に迫ったティアマト彗星の地球最接近ですが……』
しかし変だな、このニュース、冬木では一度も見た事が無い。全世界的な話だから、糸守にだけ放送される訳は無いんだが……そういえば、学校でも誰もそんな話題は話さない。こんな大ニュースなら……
あれ?“ティアマト彗星”って、前に聞いた事が無かったか?あれは確か……2年か3年前……?!
俺は、はっとしてスマホの日付を見る。
日付はあっている。しかし、西暦は……“2013!”
迂闊だった……時系列がずれていたのか?今迄、散々スマホの画面は見ていたけど、年号を気に留めてなかった。
よくよく考えれば、曜日もずれていた。だけど、冬木では聖杯戦争の関係で、学校どころじゃ無い日が多かった。だから、気が付かなかった……
学校に向かいながら、入れ替わりの事について考えていた。
俺と三葉の時間は、3年ずれている。今、俺の居る糸守は、3年前の糸守だ。電話やメールが繋がらなかったのは、そのためだ。そして、この時系列のずれが、入れ替わりの原因に何か関係しているように思えてならなかった。
「三葉?」
「え?……な……何、サヤちん?」
「どうしたん?ずっと考え込んで?」
サヤちんが、心配して声を掛けて来る。
「え?い……いや……今夜のおかず、何にしようかなって……」
「ミツハさん!さやチンさん!テッシーさん!オハヨウございマス!」
そこに、クロエが合流して来る。
「クロエさん、私達のは“あだ名”やから、“さん”はいらへんよ。」
「オー、そうデシタか?シツレイしまシタ。」
クロエは、今日も元気だ。
そういえば、イリヤはクロエの事を知らなかった。しかし、クロエは知っていて、快く思っていない。過去に、アインツベルン家で、いったい何があったんだ?既にここは3年前だから、それよりもっと前に何かがあったという事だが……まさか、10年前の聖杯戦争が関係しているなんて事は無いよな?
するとクロエは、俺に寄り添って来て、耳元で囁く。
「いよいよデスね、オタガイせいせいどうどうトたたかいマショう。」
「は?」
そう言って、離れて行く。
正々堂々と戦う?何を?
学校に着いたら、門の所に間桐霧也が立っていた。
彼は何も言わず、ずっとこちらを見ていた。気になったので、声を掛けてみる。
「おはよう、間桐くん。」
すると、直ぐに向こうを向いて行ってしまった。いったい何なんだ?
「ほんまに、感じ悪いやっちゃな。」
テッシーが文句を言う。
その時に、気付いた。クロエが、真剣な顔で、去って行く霧也をじっと見詰めているのを。
そして、こちらに来ると1回は必ずあるのだが、松本の嫌味がまた炸裂する。
「宮水、お前が大きな顔しとれんのも、あと1週間やな?祭りの日が楽しみや。」
廊下ですれ違いざまに、俺の耳元でそう囁いた。
何なんだ、どいつもこいつも。今日はちょっとおかしくないか?
一番分かんないのは松本だ、祭りの日が何だと言うんだ?そもそも、俺は大きな顔なんかしていない。三葉だって……
こんな感じで、ゆっくり入れ替わりの事を考えてもいられなかった。
その夜、お婆さんに神社の本殿に呼び出された。祭りが近い事もあり、組紐作り等をやらされる事があったが、当然やり方が分からないので失敗してばかりだった。その件でお説教か、一から修業させられるのかと思ったが、お婆さんは全く違う話を始めた。
「今迄黙っておったが、もうその日が1週間後に迫ったでの。今夜、お前にも全てを知ってもらう。」
また1週間後?お婆さんまで……全てって、何を?
「祭りの夜、彗星がこの糸守に最も近づく時に行う儀式に、お前に宮水家の代表として参加してもらう。」
「儀式?……いったい、何の儀式?」
「聖杯戦争じゃ。」
「ええっ?聖杯戦争?!」
思わず、大声で反応してしまったため、お婆さんは怪訝な顔をする。
い……今、聖杯戦争って言ったのか?聖杯戦争は、冬木で今真っ最中じゃないか?3年の時差があるから、3年後だけど……何でお婆さんが知って……いや、糸守で行うって言ってなかったか?
「聖杯戦争とは、冬木市で200年前から始められた、どんな願いでも叶う万能の器“聖杯”を求めて行われる儀式じゃ。」
お婆さんは、聖杯戦争の解説から始めるが、俺は、それは既に知っている。だが、何故、糸守のお婆さんがそれを知ってるんだ?
「じゃが、その起源は、1200年前に糸守で行われた儀式とされる……」
な……何だって?!
「200年前、“繭五郎の大火”により宮水神社は本殿も焼失し、全ての古文書も失われた。その古文書の中に、1200年前のその儀式の事が記されておった……」
「え?……焼失しちゃったんじゃないの?何で、お婆ちゃんその事知ってるの?」
「間桐の者が、それを記録しておった。」
「え?間桐?」
「今、この糸守におるのは間桐の分家。じゃが、間桐の本家は、元々はこの地の人間だったんじゃ。その間桐が、1200年前にこの地で行われた儀式を参考に、遠坂、アインツベルンと共に冬木の聖杯戦争を始めたんじゃ。」
ふ……冬木の聖杯戦争のルーツが、この糸守?
「冬木の聖杯戦争は、土地の霊脈に霊力を溜め込んで行うもの、それを溜めるには60年の歳月を必要とする。じゃが、糸守で行われた儀式は、土地の霊脈では無く別な力を使った。」
「別な……力?」
「彗星じゃ……」
「彗星?」
「1200年に一度、地球に最接近するティアマト彗星……最も距離が近づくのが、この糸守じゃ。よって、彗星からの霊力がこの地に、御神体に降り注ぐのじゃ。」
その後、お婆さんから糸守の聖杯戦争の詳細が語られた。
聖杯は、宮水神社の御神体がその役を担う。これは何故か神社には無く、裏山の頂上の窪地内にあるとの事。
参加するのは、4人のマスター、ここでは“主”と呼ばれる。その4人の主が、各位ひとりの“使い魔”と呼ばれる“英霊”を呼び出し、戦わせる。英霊は、基本日本の歴史に名を残す“英雄”が呼び出される。位は、“侍”、“陰陽師”、“忍者”、“僧兵”の4つ。これが、サーヴァントと考えればいいだろう。
戦いはトーナメント方式で行われ、最終的な勝者が聖杯を手にする。サバイバルでは無く、戦う期日も既に決められている。祭りの前日に二組に分かれて一回戦を行い、祭り当日に決勝戦を行う。戦闘は、人目につかない夜間に行われる。
そして、冬木の聖杯戦争と決定的に違っているのが、戦うのは使い魔同士に限定されている事だ。指示は出せても、主は基本戦闘には参加できない。また、使い魔が他の主や人間に危害を及ぼすのもルール違反となり、失格となる。
ただ、間桐が残した古文書の写しには、儀式の決め事の詳細までは記載されていなかった。細かいルールは、お婆さんと間桐の長老が、今後に遺恨を残さないように決めた物らしい。
これに参加するのは、この事を知っている四家のみ。
まず、三葉達宮水家、間桐家、そしてアインツベルン家。元々アインツベルンには糸守の1200年前の儀式の事は伝えられていなかったが、どこかで情報を仕入れて来たようで、参加を要請して来たらしい。そして、最後に松本家。今は落ちぶれてしまったが、大昔は宮水家と肩を並べるくらい、この地で力のある家であったようだ。松本が何かと三葉に絡むのも、そういう過去があったからかもしれない。
但し、1200年前の儀式は失敗に終わっているらしい。詳しい事情は、間桐が残した写しには記されていなかったようだ。
焼失した古文書には、書かれていたのかな?
「お前には、宮水家の“主”として、“侍”の使い魔を召喚して戦ってもらう。」
「さ……侍?」
「間桐は“陰陽師”、アインツベルンは“僧兵”、松本家は“忍者”を召喚する。」
どの家が、どの位を召喚するかまで、事前に決められているようだ。
「これを……」
お婆さんは、細長い箱を取り出し、俺の前に置く。
「開けてみんさい。」
紐を解き、箱を開ける。中には、古びた木刀が入っていた。
「これは、“宮本武蔵”が最も愛用したとされる、木刀じゃ。」
「武蔵?……じゃあ、召喚する英霊は……」
「そう、宮本武蔵じゃ。」
そこで、俺はずっと気になってた事を聞く。
「ねえ、お婆ちゃん?それで、もし勝ったら、聖杯に何をお願いするの?」
「決まっておろう……二葉を、蘇らせるんじゃ。」
「え?」
二葉って誰?……まてよ、お婆ちゃんは“一葉”、今の俺が“三葉”で、妹が“四葉”……ということは、三葉のお母さん?
「二葉が亡くなったせいで、としきも家を出てしまい、家族がばらばらになってもうた。このままじゃ、四葉が不備でならん。二葉が戻ってくれれば、また、家族がひとつになれるんよ……」
お婆さんはそう言って、天井を見上げて目を閉じる。
そうか……あの親父さんが出て行った原因は、三葉のお母さんが亡くなった事にあったのか?
そして、そのまま召喚の儀式に入る。
彗星の接近により、既に糸守には彗星からの霊力が注がれていて、最接近の1週間前になれば、英霊の召喚が可能になるらしい。
本殿の中央に触媒となる木刀を置き、その正面に“主”となるべき俺が立ち、右手を開いて触媒に翳す。
その後ろで、お婆さんが何やら呪文を唱えている。すると、触媒を中心に、大きな魔方陣が広がる。そして、激しく輝き出す。魔方陣から光のカーテンが立ち登り、その中から、ひとつの人影が現れる。しかし……
「ば……ばかな……何故じゃ?」
その人影を見た、お婆ちゃんは驚いて腰を抜かす。
それもその筈、そこに現れたのは、伝説の剣豪、宮本武蔵などでは無かった。
召喚されたその英霊は……青い服に銀の鎧を纏い、ブロンドの髪をした美しい女性だった。
「問おう、あなたが私の、マスターか?」
「せ……セイバー?!」
同時刻、間桐家の地下室でも、英霊の召還が行われていた。
間桐霧也の、右手の先の魔方陣の中に、陰陽師の英霊が姿を現す。その姿を見た間桐の長老が、歓喜の声を上げる。
「でかしたぞ、霧也……これで、もうこの聖杯戦争は間桐の勝利じゃ!」
その声に、魔方陣の中の英霊が応える。
「良かろう……この、安倍晴明、聖杯戦争とやらに参加させて頂こう……」
という訳で、糸守でも聖杯戦争が勃発します。
そして、何故か三葉(士郎)に呼び出されたのは、セイバーでした。
ただ、まだ士郎は、1200年前の儀式が何故失敗したかを知りません。
彗星最接近の日に、糸守に起こる悲劇も……
陰陽師といえば、やはり安倍晴明ですよね?
では、忍者と僧兵は?
皆さんで、想像してみて下さい。
また、この話とは全然関係無いんですが、Fateのメインキャラがエヴァンゲリオンのメインキャラをやったら、誰が誰になるかを妄想してみました。
<遠坂凛 = 惣流・アスカ・ラングレー>
これが、一番ハマリ役だと思います。士郎に向かって“あんたバカァ!”って言うのが本当に似合いそう。
<セイバー = 綾波レイ>
従順に命令に従い、傷付きながら戦うってとこと、感情表現が薄いところが合いそう。士郎に向かって“あなたは死にません。私が護りますから”なんて言ったりして……
<衛宮士郎 = 碇シンジ>
間桐シンジでは無いです。性格は全然違うけど、傷付きながら戦うセイバーを庇って“俺がエヴァに乗ります”とか言いそう。
<アーチャー = 加持リョウジ>
主人公にさりげなくアドバイスを送るところとか、いつも平静なところが合いそう。まあ、嫌味っぽく話すだろうけど……
<衛宮切嗣 = 碇ゲンドウ>
一応父さんですから。あと、無感情でセイバーに無理強いするのが合いそう。“令呪をもって命じる、使徒を破壊せよ”とか……
<言峰綺礼 = 冬月コウゾウ>
こいつと切継が、ふたりで協力して指揮をするのは到底考えられませんが、なんとなく……
<藤村大河 = 葛城ミサト>
いや、分かってます。全然似合いません。主人公との位置関係でこうなるかと……
<ギルガメッシュ = 渚カヲル>
キャラの位置づけ的にこうかと。まあ、主人公に対して常に高圧的に接するでしょうけど。