これも全て読んで下さっている皆様のおかげです、本当にいつもありがとうございます……!!!(感涙)
しかもその翌日にTwitterで田代先生の新連載の発表があったので、二日連続で良い事があるとかもう自分死ぬんじゃないかなって思う…(震え)
でも来月号のガンガンJOKER買って先生の新作読む為にも頑張って生きます←
……といった理由で昂ったテンションの状態のまま書いたんで、今回のラバックさんは一部テンションが可笑しいかもしれないです。
シリアス?んなもん知るか((
「……で、そのまま奴を逃がしてしまったわけか」
「はい……ほんっっっとうにすみませんでした」
笑顔なのに鬼神を思わせるようなプレッシャーを放つナジェンダさんと、正座した状態で頭部に出来たたんこぶの痛みにしくしくと頬を濡らす俺ラバックは、本日二度目の密会をしていた。前回この場に居なかったリネット兄さんを交えて。
初めてこの部屋に入った兄さんは、最初は緊張感でそわそわしていたが、今は目の前で上司の拳骨を食らった俺を心配してあわあわとしている。
「あ、あの、ナジェンダさん…も、もうそこまでにしてあげ……」
「ああ、そうだ。リネット、我々について来るつもりなら、お前にはこれからうちの軍で働いて貰うぞ」
「へあっ!!?」
諌めようとした途端にギラリと獲物見るような鋭い眼光を向けられて、いつも以上に情けない声を上げる兄さん。
シュラにバレる原因となった自分に矛先が向くのはわかっていただろうが、まさかそんな形でくるとは思っていなかったようだ。
まぁ、こっちの世界に来てしまうのなら、少しでも帝国軍についての知識や情報を直に知った方が良いもんな。
「なに、そんな怯えずとも、私はお前に戦いを強いてるわけじゃない。素人でも出来そうな簡単な書類作業を押し付け…ン゛ン゛ッ!任せたいだけだ」
「「(今絶対『押し付けたい』って言おうとしたなこの人……)」」
咳払いで誤魔化された部分に内心ツッコむと、それに勘付いた上司が眉を寄せる。
「なんだその目は」
「「ナンデモナイデス」」
よく口にせず我慢したな俺ら、って自分達を誉めたくなる程の威圧を放たれた。流石ナジェンダさん、睨むだけでこちらを黙らせられる。
それから離反作戦についての変更点を三人で…といっても兄さんはほんど相槌を打つだけだったが話し合った。
結論だけを言うと、俺とナジェンダさんの帝国軍脱走計画は元々俺が偽装死した日の内に革命軍に行く予定だったのだが、当日は先日の廃屋で一晩隠れ、その翌日に兄さんと合流して出発する事になった。
ナジェンダ軍のデスクワークを手伝わせる事になるとはいえ、兵士でもない一般人のリネット兄さんが、なんの前触れもなく突然ナジェンダ軍と一緒に帝都を出るのは怪し過ぎるからな。だったら俺の死を聞いてかなりのショックを受け、家族に直接報告する為にも実家へ帰るという体で前記のように俺と二人で行った方が良い。
いくらなんでも妹の死の翌日に帰るって可笑しくないか?と周りに思われる心配はある。が、そこはナジェンダさんがフォローしてくれるみたいだから多少の不審感は軽減される…と思う。多分。っていうかもう祈るしかねぇ……。
ナジェンダさんの執務室を出た後。二人で静かな廊下を歩いていると、兄さんは身震いするようにして呟く。
「はぁ…改めて話聞くと、もう緊張してきた……」
「早ぇなおい。まだ前日ですらないのにそんな緊張するって、本当に大丈夫なのかよ?頼むから顔には絶対出すなよ。そのせいでシュラの奴にバレちまったんだからさ」
「う゛っ…!そ、それについてはほんと反省してる……。これ以上足引っ張らない為にも頑張って演技力を身に付けるよ」
そう言ってぎこちない笑みを作る兄に、やれやれと嘆息を漏らす。
「にしても、僕なんかに軍のお仕事が出来るのかな…?」
ポツリと出てきた新たな不安の声。それに対して俺は、
「ふっ、そう不安に思わず、軍についての勉強だと思え。ニート同様のお前にはちょうど良い仕事だろう?」
キリッとした顔で、その不安を吹き飛ばしてやろうと自分の最大限のイケボを出して言う。でも兄さんの反応は、
「……もしかして、それってナジェンダさんの物真似?」
「……何も言うな」
苦笑した兄の様子に自分がスベッたのを自覚し、みるみると顔が赤くなっていく。
そんな俺は逸らした顔を片手で押さえ、もう片方の手は兄を制止するように伸ばして、自分が行った悪ふざけを後悔する。
ああ、やっちまった……。多分ナジェンダさんには言わないでいてくれると思うけど、これは暫くこいつにイジられるな……無念…っ!!
悔し涙を流しそうな気持ちを必死に堪える俺は、最愛の上司の物真似という黒歴史を、自分と兄の記憶に刻んでしまったのだった。
__それから時は早く流れ、俺の偽装死を実行する前日…と言っても既に夜中で、エスデスと寝る準備をしていたのだが。
あの後、俺とナジェンダさんは各々空いた時間にシュラを探したが、一度も見ていない。恐らく宮殿の奥…自宅にずっと籠っているのだろう。いつも神出鬼没に現れる癖に、こういう時に限って隠れて出て来ないとは卑怯なり…!
でもそれと同時に、あいつが誰かに告げ口をしたという話は一度も聞かなかった。まぁ、バレてる事がこちらに気付かれないよう大騒ぎしてないだけかもしれないが……どちらにせよ、警戒を強める必要がある。
そんな懸念や明日に向けた緊張感を解かぬまま、いつも通り部屋着姿でベッドの上に座っていると、隣に居たエスデスが心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
「ラバック、ここ最近ずっと上の空のようだが、どうかしたのか?」
「え?あ、いや…ちょっと考え事があるっていうかなんつーか……」
明日から実行する計画や、杞憂でいて欲しい心配事…主に現在行方を眩ませているシュラと不安が残る兄さんについて。そればかりを考えていたが、エスデスに言えるわけもなく。
ただ、寝てしまう前に一つだけ。彼女に無言の別れを告げる前に、これだけは一か八か試してみたい。
そう思って意を決した俺は、エスデスの正面に向き直して息を飲む。そしてその次の瞬間に行った俺の行動は……。
「……エスデス将軍。俺と一緒に、反乱軍に入りませんか?」
超必殺!上目使遣い!!!
これはただの上目遣いではない。困り果てたように眉を下げながら目を潤ませ、甘えるように相手の袖を遠慮気味に掴んだ俺の新しい必殺技だ。
どーせ乙女心も知らないタツミは正面から懇願しただけなんだろうが、俺はあいつとはちげぇ。俺は意図的に萌えを作って誘惑してやるんだ!そしてこれで落ちない乙女なんているわけがねぇ!既に攻略済みなら尚の事!さぁ!この話に乗れエスデス!!その瞬間からお前は俺の操り人形になるんだッ!!
健気で可愛らしい顔を作る一方、内心は真っ黒な笑顔。所謂腹黒というやつである。俺は漫画知識で培ってきたモテテク(実践で成果を出せた事は一度もない)を使って、エスデスを革命軍側に勧誘しようとしているのだ。
シュラと同じクズだと思われそうなのは癪だが、そんなこたぁ今はどうでもいい!俺は散々振り回してきたこの女から勝利を納めるんだッ!!
そんなゲッスい策略を知らないエスデスは、俺の頬にスッと両手を添えてきた。
落ちた…!これは間違いなく落ちた……!ぃよっしゃあぁ!!俺の勝ちだあああぁッ!!!見たかタツミィ!!これで俺の方が年上キラーのお前よりも女性の攻略スキルが高い事が証明出来たぜ!お姉さん受けが良いのはこの俺だあああぁーッ!!!
男としてではなく女の自分が、という重大な部分をすっかり忘れて、顔に出ないよう心の奥底で興奮して勝利の舞をする。……が、しかし。
ぐにぃーーっと、エスデスの手は俺の頬をモチのように引っ張っていた。
「
「可愛い顔でいきなり何を言い出すのかと思えば、そんな事か」
落胆したように溜め息を吐きながら俺のほっぺたを好き放題に伸ばすエスデスに離せと必死に訴える。
すると彼女はやっと手を離し、俺はヒリヒリする頬を擦った。
「人が真剣な話してる最中に何するんですか!?あれ地味に痛いからやめて下さい!」
「今のはくだらない話を持ち掛けてきたラバックが悪い。おかげで興が醒めてしまったぞ」
「!!」
やれやれと呆れる様は、『NO』という意味を表していた。
「帝国が終われば、楽しい戦が無くなってしまうだろう?私は自分の最期まで戦いたいから帝国に居るんだ。それなのに自ら壊すなど、愚行に過ぎん」
「……そのせいで生まれる犠牲には、本当に何とも思わないんですか…?」
「私が弱者の気持ちなどわかるわけがなかろう?この世は弱肉強食。弱者は強者に淘汰されて当然だ」
淡々と吐き出されたその返答が、俺の中で僅かに残っていた小さな希望をぶち壊す。
最初の頃は、彼女の事を強大な標的としか捉えていなかったのに、気が付けば色んな感情を抱いてしまっていた。
よく振り回されて怒ったり呆れたりするけど、心の隅では嬉しく思ったり、楽しく感じたり……。そうやって一緒に居る内に、『ただの標的』から『親しい人物』に変わっていた。
だけど、目の前にある現実はあまりにも非情だった。
「そう、だよな……変わってくれるわけ、ねぇか」
思わず震える小さな声。その呟きは、俺の想いと共にエスデスに届いてはいない。
「……変な事言い出してすみませんでした。今のは全部忘れて下さい」
割り切ろう。この女との戦いは避けられないのだから……。時には諦めも肝心だ。
調子に乗って浮かれていた自分がバカみたいだと俯くと、頭の上にすっかり見慣れた白く細い手を乗せられた。
「すまないラバック、私も少し冷たく言い過ぎた。だからそんなに落ち込まないでくれ」
先程とは打って変わった優しい声色。その暖かさを、他の人間達にも与えてやって欲しいと心の底から思う。
「……すみません、今日はなんか体調が悪いんで、先に寝てちゃっても良いですか?」
「むぅ…そうか。今夜も可愛がってやりたいところだったが、体調が優れないというなら仕方ない。今夜は抱き枕で我慢してやろう」
あ、抱き枕はやめてくれないんだ…?それだけは絶対なのね…?出来ればやめて欲しいけど、返事も聞かずにもう抱き枕にするんだね…?うん、なんかここ最近ずっと流れ作業みたいにこうなってて泣きたいわ俺。
若干呆れながらも、これで彼女と寝るのは最後だと思うと、少し感傷的になってしまう。
セクハラとかされるのはほんっっっとに嫌だったけど、この人と一緒に生活するのも、案外悪くなかったな。
明日の任務に赴く瞬間、それは彼女との決別になる。その次に会う事があれば、それはお互い敵同士だ。
しんみりとした感情を密かに抱いていると、背に回された手が俺の身体をより一層強く抱き締めた。
大丈夫、私が居るから寂しくない。寂しさに泣く子供をあやすようにそう言われてた気がして、俺はより一層彼女への罪悪感と悲しみに沈んでいった。
__そしてその夜が明けた翌日。俺は無事任務先で死んだ事になった。
せっかくエスラバ好きになって下さった読者様には本当に申し訳ない……。でも彼女を味方に付けてしまうと色々困るので許して下さい…(震え)
意味深な展開にも引っ張れなくてほんとすみません(汗)
あ、『上目遣いでエスデスを勧誘する』というシチュエーションは、とある読者様に提案して頂いたご感想から使わせて頂きました。
ご本人のお名前を出す許可は頂いてないので何方とは言えませんが、改めてネタ提供ありがとうございました!!