糸使いちゃんの逆行物語   作:96ごま

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猫よ、何故いつも私の邪魔をするのだ……!?(←愛猫に噛まれながらキーボードを打つ作者)

なんかやってると構ってくれーって邪魔してくるのに、こっちが作業やめて構おうとするとガン無視して寝る猫がムカつくけど可愛いから許す←


交渉を斬る

「もうバレちまったか。ほんとなら作戦とやらの内容も聞きたかったんだがな。流石は元暗殺者ってとこか?」

 

くつくつと笑って姿を現したシュラ。それとは対照的に、俺には緊張感が走り、冷ややかな汗が頬に伝わる。

 

「……いつからそこに居やがった?」

 

「お前がリネットの兄ちゃんと一緒に宮殿を出たのを見掛けてな。裏で生きてたお前に違和感はなかったが、挙動不審な兄ちゃんの動きが兄妹仲良くお出掛け、って感じじゃなかったから、後を追わせて貰ったぜ」

 

「このストーカー野郎が…!!」

 

苛立ちを隠さず舌打ちする。

 

顔に出やすい兄さんの動きで誰かにバレる可能性は危惧していたが、まさか宮殿を出た時からこいつに尾行されていたとは……。前世で帝具に頼りっきりだったのも仇になってるのか、やはり警戒心がまだ足りなかったようだ。

 

どうする?ここで殺すか?けど相手はステゴロが得意な肉弾戦タイプ。おまけに瞬間移動が可能な帝具もある。反射的に剣の柄に手を伸ばすが、こちらが圧倒的に不利なのは一目瞭然だ。

 

緊急事態を前に思考をフル回転させても焦燥が募るばかり。今は相手に睨みを利かせて牽制するので精一杯だ。

 

「おいおい、そんな警戒すんなよ。こっちは交渉しに来たんだ」

 

「交渉…?どうせろくな事じゃねぇだろ」

 

「まぁ話ぐらい聞いとけよ」

 

余裕のある笑みを浮かべているシュラに、より一層警戒心を強めていく。すると彼は、予想だにしなかった衝撃的な発言をした。

 

「この話を親父達にバラさないでいてやる。その代わり、俺を革命軍に入れろ」

 

「はぁ!!?」

 

これでどうだ、と両腕を組むシュラを凝視する。

 

「いきなり何言ってんだてめぇ…。まさか、スパイとして潜入して革命軍を内側から壊そうって魂胆か?ンな事させるわけ……」

 

「ちげぇよ、本気で入れろって言ってんだ。ま、俺は大臣の息子だし一周目の事もあるから、お前に疑われるのは当然だけどよ」

 

「!!?」

 

やけに冷静な態度で告げるシュラ。こいつの言ってる事がますますわからなくなってきた。

 

「じゃあ一体何が目的なんだ?全部吐け。じゃないと交渉もクソもねぇよ!」

 

「……はぁ、しゃーねぇなぁ」

 

威嚇するように睨むと、そいつはすぐに観念した。

 

「俺はよ、前回と同じ事繰り返してもつまらねぇんだよ。だから今回は帝国の敵に回って、外側から今度こそ親父を越えてやる。それが俺の最終目標だ」

 

「大臣を越える…?」

 

「ああ、帝国の頂点にある椅子から親父を引き摺り降ろして嘲笑う。これって最高の親孝行だと思わねぇか?」

 

「……そりゃあ随分ととち狂った親孝行だな。…でもま、あのクズには最高の親孝行だとは思うぜ」

 

そこには同意してやるよ、と頷く。だが、

 

「で、他は?目的はそれだけじゃないんだろ?」

 

「……ナイトレイドに入って味方になれば、お前を落とすチャンスが大幅に増えるから」

 

「…………はっ?」

 

今なんて?俺を落とす?……ハッ!まさかこいつ…!?

 

「お前を殺した俺を地獄に落とすって事か!?」

 

「いや、ガチでそんな勘違いされっと地味に傷付くんだが……」

 

「じゃあどういう意味だよ!?」

 

「俺に惚れさせる」

 

「…………真面目に聞いた俺がバカだったわ。今日はもう解散な」

 

スッと表情を消した俺はシュラに背を向けて足早に帰ろうとする。でも後ろから腕を掴まれ、阻止されてしまう。

 

「おいこら待て!最後まで話聞けっつーの!」

 

「聞けるかアホ!!俺はホモに興味はねぇんだよ!つーかそもそもお前はいつも美人なお姉さん達と遊んでるだろうが!死ねッ!!」

 

今は女だろとかそんな事は言っちゃあいけない。俺からしたらこいつは正真正銘のホモだ。あとわかっているとは思うが、最後のところは完全にただの私怨である。

 

「あー……あいつらはもう飽きた」

 

「かーーーっ!!出たよそういうの!女を取っ変え引っ変えするクソ野郎の定番台詞!何が飽きただよ死ね!!!地獄の底まで落ちろ!!」

 

ピッ!と自分の首の前で親指を横に引く。傍目から見たらほんとにただの逆恨みだ。しかしシュラは、

 

「……他の女抱いても、お前の顔が出てくんだから仕方ねぇだろうが」

 

フイッと、どこか気まずそうに顔を逸らしていた。俺はその言葉を理解するまで、何秒か固まる。

 

そして次の瞬間、ボッと火が付いたように顔が熱くなった。

 

「なっ、なななっ!!?なんでそうなるんだよ!?」

 

「……リアクション遅くねぇか?」

 

そんなツッコミに返す余裕が無い程、今の俺の頭ン中はパニック状態だった。

 

「ガチなの!?それガチなヤツなのか!?中身が男な上に自分を殺した相手に惚れるって……笑えねぇ冗談はやめろよてめぇ!!」

 

「残念ながらガチなんだよなこれ。つーわけで抱かせろ」

 

「そんなわけが通じて堪るかボケェッ!!それではいどうぞとでも言うと思ったのか!?」

 

「でもどーせエスデスには毎晩のように抱かれてるんだろ?」

 

「っ!!そ、それは……!」

 

突然出てきたエスデスの名前にまた顔を赤くして狼狽えると、シュラは俺の態度が気に食わなかったのか、表情を歪ませる。

 

「……図星なのかよ」

 

「あっ!いや、い、今のはちがっ…!エスデスとは同室だから、抵抗出来なくて、その……」

 

鬼気迫るように問い詰めてくるシュラが急に怖くなり、思わず縮こまって涙目になってしまう。すると彼はぎょっとした。

 

「な、なんで泣くんだよ!?」

 

「なっ、泣いてねぇし!!目にゴミが入っただけだ!」

 

目元を強く擦って、涙を誤魔化す時の定番な台詞を言う。さっき自分で言った言葉がブーメランになって帰ってきた。

 

人の事が言えないじゃねぇかと文句を言われるかと思ったが、そんな俺の予想を裏切るかのように、シュラは思いもよらない行動をする。

 

涙を拭う俺の手を退けて、自分と目を合わせるように俺の顎を掬い上げてきた。でもそれを認識する前に、唇を塞がれる。

 

「んんっ……!」

 

なぞるように舐められた下唇のくすぐったさに思わず唇を緩めると、その開いた隙間に舌を押し込まれ、口内への侵入を許してしまう。

 

「んっ、ふぅ……ぁ…んぅ……!」

 

以前までは乱暴に貪るようだった筈のシュラの深いキスは、たどたどしくもゆっくりと、じっくりと味わうように少しずつ角度を変えながら舌を絡めて、俺に絶妙な刺激を与えていく。

 

「ぅ…ん、くる、し……っ!」

 

息苦しさに弱々しく肩を押し返したら、意外にすんなりと唇を離してくれた。

 

でもこいつがこれだけで満足するわけがないと知ってる俺は、次はどこを触られるのかという恐怖を胸に身構え、強く目を瞑る。が、シュラは涙で湿った睫毛を気にする様子もなく瞼にキスを落としてきた。

 

今までの激しいやり方とは全く違うシュラの優しい愛撫に戸惑いを隠し切れない。でも僅かに感じる熱がもどかしくも感じ、どこかでこの先を期待している自分がいた。……けれど。

 

「っ!いい加減に、しろッ!!」

 

「ごふっ!!?」

 

羞恥に耐えかねた理性の勝利。キスに夢中になっていたシュラの腹に、拳を一発入れた。そいつは完全に油断していたようで、腕の中から解放された事に安堵する。

 

「い、いくらなんでも腹パンはねぇだろ……」

 

「じゃあ顎にアッパーでも決めて欲しかったか?それとも頭突き?」

 

「……どれも勘弁だ」

 

想像でもしたのか、シュラの顔がげんなりと青褪めていく。

 

何故いつもの乱暴なやり方と違ったのかという疑問も聞きたかったけど、なんとなく聞かない方が良い気がしてやめた。でもそれより、また襲われ掛けるのが嫌だったからこれ以上この話はしたくなかった。

 

「で、どっかのキス魔のせいで話がズレちまったけど、いつ大臣達にバラすつもりだ?」

 

顔を袖で拭いながら、何もなかったかのように平然を装って話を戻す。でも心臓はまだバクバクと鳴っていて、耳を塞ぎたくなる程五月蝉い。

 

「……じゃあ逆に聞くけどよ、どうすりゃ信じてくれんだ?」

 

「ん?んー、そうだな……お前が帝国に指名手配でもされりゃあ少しは信じられるかもな」

 

「……それアリだな」

 

「へ?」

 

適当に受け答えすると、シュラはニヤリとして呟き、俺の口からは間抜けな声が落ちた。

 

「俺が親父を裏切った証拠があれば良いんだろ?ならお前が離反するタイミングに合わせて、親父に攻撃仕掛けてからシャンバラでここに逃げりゃあ完璧だな」

 

「えっ?……は!!?ちょっ、マジでやる気なのお前!?」

 

ドヤァ!と自信に満ち溢れた顔をしているが、言ってる事は滅茶苦茶だ。やっぱバカだこいつ……!

 

それから奴は「早速作戦立てて準備しねぇとな。出来れば親父に一撃入れてみてぇし」とか何故かウキウキして呟いてから、こっちが唖然としている内にシャンバラで帰ってしまった。

 

「う、嘘だろ…?なんだこの展開……。これじゃあ俺が考えてた計画が全部台無しじゃねぇか!!!」

 

偶然に偶然が重なったせいで崩れていった俺の計画。それを容赦無くぶっ壊していった二人にキレて一人叫ぶ。

 

逃げられた以上、もうあいつを信じるしかあるまい。だがナジェンダさんには報告と謝罪をせねば……。

 

今回はどんな怒号が降ってくるのか楽しみだなー…なんて気楽に思えるか畜生。これ絶対に説教で済まねぇから余計怖ぇよぉ……超久々にボッコボッコにされるよぉ……!!

 

ナジェンダさんから鉄槌を下される想像をするだけで全身がガタガタと震え上がる。

 

ああ、もう……ほんと何もかもが憂鬱になってきた……。

 




だよねって感じの展開()
恐らくほとんどの読者様はこうなる事を予想してたでしょうね(笑)

まぁそんな事より←
嫉妬で怒る攻めに恐がって泣いた受けに、普段がっつりくる攻めが狼狽えるのと、泣いてるのに泣いてないと主張する受けのやり取りが尊く思うのって僕だけですかね?
更に言うとそんな強がりな受けに庇護欲を掻き立てられた攻めが優しく抱こう(意味深)として……ってシチュエーションめちゃくちゃ良くないですかね?ね?(迫真)

ラバ「わかった、もうわかったから。俺も読者もお前にドン引きしたからとりあえず黙ってろ」(ガムテ用意)

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