こっから少しずつ原作軸に近付いていきたいと思ってます。
……タツラバとスサラバも書きたいなぁ…(ボソッ)
「__……そうか。お前も
「はい。
バン族討伐後のある日。漸く意を決した俺は、ナジェンダさんの執務室で対談を申し出ていた。内容は見ての通り、帝国の離反。
俺は前世と同じように自分の記録を死亡扱いにして偽装し、軍からの逃亡を謀るという相談を彼女に話した。
前回と違うのは決行のタイミング。偽装した後すぐ、ナジェンダさん達よりも一足先にファーム山の軍事基地に立ち寄ってから革命軍本部へと行き、本部隊にナジェンダ軍との合流を催促するのが俺の算段だ。ただ、もう一つの違い…いや、問題は……、
「帝国やエスデスの目を欺く策としては良いと思うが……何も知らんリネットが悲しむぞ?」
そう、前世では起きなかった想定外、帝都に来てしまった兄の存在である。けれど、
「……
俺の離反がバレたら、リネット兄さんだけではなく実家に居る家族も帝国の人質になるか…最悪の場合はその場で殺されかねない。でもナジェンダさんの言う通り、自分の死を偽装したあの時、実家に居る家族への罪悪感はあった。本当は今も、その気持ちでいっぱいだ。
それでも、ナジェンダさんに付いて行くと決めたあの時、俺は覚悟したんだ。この先また何があろうと、その決意だけは絶対に変わらない。
顔色を変えずに、ナジェンダさんの目を真っ直ぐに見つめる。すると彼女は諦めたように深い溜め息を吐いた。
「……わかった。私も出来る限り協力しよう」
私の負けだ。そう呟いた彼女の顔は、どこか嬉しそうでもあった。
……しかしその時、部屋の外から誰かが走り出す足音がした。
「……聞かれてしまったか。急いで取っ捕まえないとな」
「……いえ、俺が行きます。今のが誰なのかは、足音でなんとなく察してますから」
~リネットside~
ラバックとナジェンダさんが、帝国を離反する…?それにあの会話……まさか、二人は帝国を裏切って反乱軍に入るつもりなんじゃ…?
通りすがり際に偶然聞いてしまった妹とその上司の密談。その内容に動揺を隠し切れない僕は、どこに行くでもなくただただ走る。もう自分が今どこに居るのかさえわからない程に。
この国はおかしい。それは帝都の街で色んな人達に出会って薄々感じていた。皇帝を操る大臣による悪政の数々。その噂も幾度か耳にしていた。恐らくそれが、ラバックとナジェンダさんが軍を脱走しようとする理由なんだろうなと頭では理解出来た。
だけど、その為に妹が自ら自分の存在を消そうとするなんて……。僕にはそれがショックで仕方がなかった。
「あー居た居た!やっと追い付いたぜ兄さん!」
「!!ラバ……」
後ろから走って声を掛けてきたのは、愛する妹のラバック。追い付いた、という事は、聞いてしまったのがバレていたらしい。
マズい……あれは明らかに厳密な内容だったから、怒られるだけで済むか怪しい。
「ご、ごめんラバ……僕、盗み聞きするつもりは……」
「なかったんだろ?そんぐらいわかってるって」
へらへらと笑うその様子に、怒っていないのがわかってホッとする。……が、
「……ただ、聞かれちゃったのには変わりないからね。ちょっと付いて来て貰うよ、兄さん」
スッと目を細めて口に孤を描くラバックは、やはり僕をただで帰すつもりはなさそうだった。
「__とまぁ、俺らは帝国の腐りっぷりとエスデス軍の残忍さに付いて行けなくなっちまってさ……」
「だから革命軍に入って、民の為にも外側から今の帝国を壊そう…って事?」
「そゆこと」
帝都近郊の鬱蒼とした場所にひっそりと建つ廃屋。そこに連れて来られた僕は、目の前で片足を立てて座る妹から、帝国を離反して革命軍に入ろうとする理由を教えて貰っていた。
「噂には聞いていたけど、帝国の悪政ってそこまで酷かったんだね……」
「それもこれも全部皇帝陛下を操ってるオネスト大臣の仕業。だから俺達の最終目標は、その諸悪の根元を殺す事」
ラバックの口から出た『殺す』の一言に含まれる鋭く尖った殺意に、思わず固唾を飲む。まるで親の仇を見るようなその迫力は、聞いてるだけの僕すらも畏縮してしまう程凄まじかった。
「だからさ、兄さんには
切実に願うように懇願してくるラバック。その時、『巻き込みたくない』と言っていた彼女の言葉が脳内でリピートされる。……けれど僕は__
~ラバックside~
「……わかった、なんて言うと思った?」
一人で実家には帰らない。兄さんはそう告げる。
ナジェンダさんとの密談を聞かれてしまったのなら仕方ないと思って、誤解を招かないよう、彼女が謀反を起こそうとしている理由を全て話した。だが、想定内の返答に俺は不満気な表情を露にして、兄が詰所に居座り始める際にした会話の一部を掘り返す。
「首突っ込まないって言ったじゃねぇか」
「それは帝国軍のお仕事には、だよ。ここまで聞いて知らんぷりなんて出来ない」
「帝国と戦おうとする妹を放っておけねぇってか?へっ、怖がりの癖にかっこいい事言うねぇ」
屁理屈を述べられてムッとし、嫌味のついでに鼻で笑う。それでもリネット兄さんは、
「怖がりなのはラバもでしょ?ここで放っておいたら兄失格だよ。だから仲間外れにしないで、いっそ思いっきり巻き込んで欲しいんだ」
重っ苦しい場の空気に似合わない、ニッコリとした屈託の無い笑顔。その様子に俺は目を見開く。
「って事でさ、怖いけどその作戦に僕も参加させて。大事な妹の為ならなんでもするよ!」
えっへん!と何故か自信満々なのはちょっと不安だが、意外と頑固なとこがあるこいつには、これ以上説得しても聞いてくれなさそうだ。
「はぁ~…やっぱ言わなきゃ良かったなぁ……。クローステールがあればナジェンダさんとの会話も聞かれずに済んだってのに……」
「ん?何か言ったかい?」
「……なんでもない」
ガシガシと頭を掻き毟って、今更後悔しても仕方ない、と割り切る。
まぁ、革命軍は殺しだけが仕事じゃないからな。結局巻き込んじまったのは申し訳ねぇけど、戦闘経験の無い兄さんには密偵や工作員として働いて貰おう。
「作戦はまた後で説明する。先ずは兄さんが加わるのをナジェンダさんに伝えといた方が……っ!!」
一瞬だけ、外から人の気配を感じて咄嗟に振り向く。
「ラバ?もしかして誰か居たの?」
「……いや、気のせいだった。悪いけど俺ちょっと用事思い出したから、先にナジェンダさんのとこ行っててくれねぇかな?」
「?うん、わかった。遠いから暗くなる前に帰るんだよ?」
「ん、大丈夫。すぐ終わらせる」
それより早くナジェンダさんに伝えてくれと廃屋から追い出すように背中を軽く押す。そうやって急に催促する俺に少し戸惑いながらも、兄さんは素直に応じて宮殿へと戻って行ってくれた。
それをしっかり確認した俺は、先程の気配を感じた場所に視線を移した。
「……そこに居るんだろ?シュラのダンナ」
最悪な事に、そこに居たのは暗殺の最終目標であるオネスト大臣の息子、シュラであった。
リネットさんは妹を信じ、そして妹の為ならどんな恐怖も乗り越えられるシスコンです←
リネ「妹の為なら例え火の中水の中!どこにだって付いて行くよ!!」(キリッ!)
ラバ「もしもし、帝都警備隊の方ですか?ここにストーカーが二人居ますんで正義執行してやって下さい。片方はまだ隠れてます。出来れば二人共捕食刑でお願いします」
シュラ「おいバカやめろ」