とある科学の生物兵器   作:洗剤@ハーメルン

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こちらでもよろしくお願いします


プロローグ

 学園都市。日本の東京都のほとんどを含む広大な土地をその敷地内に収め、巨大な外壁と堀の先にある外界の数十年先の技術力を有し、ほぼ独占している。そのため、警備は極めて厳重かつ、内部には独自の治安維持機関まで存在する。そのため、内部への侵入はほぼ不可能と言ってもいい。

 とはいえ、通常の手続きを踏めば、厳しいとはいえ普通に入れるのだ。

 

 

 学園都市第七学区に存在するドアも窓もないビル。その内部の巨大なビーカーの正面に、一人の無表情な外国人男性がいた。灰色のフードの付いた服の上に、黒い長袖のジャケットにジーパンという、彼の母国アメリカなら何ら違和感のない服装だ。

 しかし、このビーカーの部屋は無機質な何かで作られており、カジュアルな恰好が似つかわしい場所ではないが。

 

 

「分かった。ここで俺は……学生として暮らせばいいんだな?」

 

 

 長い沈黙の後、フードの男が不服そうな声を発した。

 彼の言葉は誰かに向けられた物なのだが、彼の目の前にあるのは赤い光を放つビーカーであり、この薄暗い空間には彼以外の人はいない。

 

 

「ああ、そうしてくれ。できるなら君を研究したいところだが、こちらもニューヨークの二の舞は御免でね。アメリカの弱みを握っていて、時間があれば国を滅ぼせるような君がいるだけでも、学園都市のような小さな存在にとっては心強い」

 

 

 そして、彼に対する返答として、ビーカーの下にあるスピーカーから声が出た。

 だがそれでも、男の視線はビーカーへと、ビーカーの内部へと向いている。

 

 

「――――それにしても、お前のような奴が統括理事長だとはな。もう少し、マトモなのを想像していた」

 

「髭を蓄えてスーツでも着てると思ったのか?」

 

「少なくとも見た目はな。まあ、こんな規模の都市のトップがホムンクルスというのも、それはそれでおかしな話だ」

 

 

 そう男は嘲笑まじりに言うと、ビーカーの中の男に背を向けて歩き出した。


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