火影室にて
「…ナルト達は大丈夫かのう」
「あの第七班だぞ?それにイタチとシスイも付いている。寧ろガトーの心配をしてやっても良いくらいではないか?」
ダンゾウの言う通りではある。再不斬と白相手に対しては余りにも十全たる準備だ。
「確かにそうではあるが…何やら胸騒ぎがしてのう」
「だからイタチとシスイを遣ったのだろう。問題無いではないか。では儂は仕事に戻るぞ。お前ほど暇ではないからな」
そう言ってダンゾウは退室していった。彼は自分では気づいていないだろうが、とても充実した生活を過ごせている雰囲気が最近すごい。とりあえずうちはとの関係強化の過程で根とダンゾウにも働きかけることができたのは良かったようだ。
…胸騒ぎがする一方で優秀な忍を多数抱えるこの里の火影はやる事があまり無いので暇である。影分身が猿魔と修行をしているが、本体の俺は本当にやる事がない。
「…ああ、これだこれ。やっと見つけた、禁術の巻物…」
原作一話でナルトが火影亭から盗んだかの巻物だが、ミナトは「ヒルゼン」よりも物の管理をしっかりしていたらしく、禁術の巻物は普通に探しても見つからないような場所に隠されていた。周りの人に聞くこともできないのでここ最近部屋を掃除がてら色々探索してみていたが、やっと見つける事ができた。
「なるほど…今の俺なら会得できそうなものもあるかな…あ、これは…」
軽く巻物を開いてみると、ある一つの術に目が止まった。それは、ミナトが命を賭して里を九尾…否、マダラから守った術。そして何より原作での猿飛ヒルゼンを死なせた禁断の封印術、屍鬼封尽である。
「…嫌だ。絶対覚えたくない。こんなの知らない」
命を賭けたミナトと原作の「俺」には悪いが、こんな恐ろしい術はどんな状況下でも使いたくない。
「『封印せし者とされし者の魂は共に死神に喰われ、その魂は決して成仏せず、死神の腹の中で永遠に絡み合い、憎しみ合い、そして争い続ける』、か。いや、異世界に来て成仏できないとか何事。絶対覚えない。大蛇丸は俺が別の手で何とかする」
こんな自分勝手なことを考えながら、仮初めの平和の下で暇を持て余す三代目火影であった。
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「成る程…餓鬼の割には結構やりますねえ。木の葉の里の戦力が九尾襲来以降みるみる強大化してるという噂は本当だったのでしょうか」
「クソっ、ダメだ…全然隙がねえってばよ」
「チィ…」
鬼鮫は目の前の2人が"下忍にしては"優秀であることに少し関心しつつも、全く呼吸を乱すことなく適当に攻撃をいなしていた。一方ナルトとサスケは前回の三代目火影に一撃喰らわした要領で連携攻撃をし続けるも、それを全て躱されるという鬼鮫の圧倒的な実力に脅威を感じていた。
「次はこちらから行かせてもらいますよ!」
そう言うと鬼鮫は自慢の鮫肌を使って我武者羅に向かって来るナルトを斬った…否、削った。ナルトは瞬時に避けるも間に合わず、少しだけ左腕が鮫肌からの攻撃を受けた。
「おい…ナルト!」
「へへっ、大丈夫だってばよ。大した刀じゃないから全然痛くないってばよ。気を取り直して影分身の…あれ?チャクラが全然練れねえ!」
「鮫肌を喰らってしまいましたね…私の鮫肌は斬るのではなく、削る。その中でチャクラを喰らう。気を付けた方がいいですよ…フフフ」
「チィ…厄介な武器だな。これじゃあ接近戦はリスクがあり過ぎるぜ…」
鮫肌の真の恐ろしさを知ったサスケは近接攻撃が悪手だと悟る。
(正直俺の千鳥かナルトの螺旋丸をぶつけないと決定打は与えられない…というかそもそも攻撃を当てることさえ難しいな。ナルトは中遠距離攻撃を持ってない。となると俺の手裏剣術か…)
「ナルト!奴と一旦距離を取れ!これ以上鮫肌を受けるともう闘えなくなるぞ!」
「そうだけど!じゃあどうやってコイツを倒すんだってばよ!?」
「とりあえず俺が中距離攻撃で時間を稼ぐ。おまえはその間に練れなくなったそのチャクラを何とかしやがれ!」
鮫肌を受けたナルトが再びチャクラを練れる保証も無く、手裏剣攻撃もいずれジリ貧となることは分かっていたが、サスケは
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「フッ…四千万両の賞金首にしては淡白だな。まあ楽に稼げるに越したことはないか」
「こんな知らない術ばかり使ってくる謎の相手にいきなり仕掛ける訳ないでしょ…」
(不味いな…見たこともない術ばかり。そして滝隠れの抜け忍…全く情報がない。鬼鮫と同じ服、抜け忍集団か?こんな危険な集団がいるなんて聞いたことないぞ…)
カカシはあらゆる性質変化を駆使している大男の分析をするために防戦一方だったものの、中々打開策を見つけられないでいた。
ただでさえ部下が超上忍クラスの抜け忍と闘っているのに、このままでは自分がジリ貧でやられる…という最悪の状況。各個撃破でさえ困難を極めるが、そのような相手を二人に同時に対処―依頼人を護衛しながら―は第七班にとっては絶望的なものであった。
「あーやだやだ。再不斬と氷遁使いの次は化け物コンビとかとんでもないCランク任務だよ…」
カカシは愚痴を零す。そのくらいの余裕を取り繕っておくことで精神的な安定を保つというカカシのやり方であるが、それでも流石に焦る気持ちは拭えない。
「向こうは黒髪のガキが手裏剣で防戦一方、チャクラを削られた金髪のガキは使い物にならないか。これでは時間の問題か。では俺もそろそろ終わりにするか…」
(あいつらを守るにはこっちを片付けないといけない…なら逆に好都合だ。これに賭ける!)
「ならばこちらも本気で行かせてもらおう。写輪眼!」
「ほう…やっと『写輪眼のカカシ』の本領発揮か。退屈凌ぎになれば良いがな…」
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「まだかナルト!」
「ちょっと待てってばよ!」
「そろそろ飽きてきましたね…下忍にしては上出来の手裏剣術ですが、手裏剣は陽動にしかなりませんよ?何の目的もない陽動など…」
鬼鮫はサスケの手裏剣攻撃を適当にやり過ごしていたが、向こうで行われている角都とカカシの闘いが佳境に入ったことを察すると、自分の方もそろそろ終わらせようとし始めた。
「では終わりにしますか…!」
そういった瞬間鬼鮫は軽く殺気を放つ。軽くといっても、経験の浅い下忍の二人がたじろぐには十分なものだった。
サスケが殺気により手裏剣攻撃を止めたことで生まれた一瞬の隙を鬼鮫が見逃すはずもなく、鬼鮫は高速で印を結び始めた。
(やべぇ…何とかしなきゃ!)
(今回はちぃとマズそうだな、ナルト)
この絶望的な状況に焦るナルトの腹の中から声が聞こえた。
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「九喇嘛!助けてくれってばよ!」
「…チャクラを貸すのは構わんが、どうやってあいつを倒すつもりだ?螺旋丸は鮫肌を喰らうリスクが大きいぞ?」
「…口寄せでガマオヤビン呼ぶってばよ!」
「馬鹿か!そんなことしたら橋が崩れるぞ!」
「あ!そうだった…」
「…とりあえずワシのチャクラで奴の術を相殺してやる。その後は何とかしろ」
「サンキュー九喇嘛!」
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「…水遁・水鮫弾の術」
鬼鮫は地の利で圧倒的な勢いを伴った水遁を発動し、鮫を象った水の塊がサスケとナルトを襲う。
「…終わったな」
カカシと相対する角都は向こうの決着がつくのを悟った。
「くそっ…ナルト!サスケ!」
「サスケ君!ナルト!」
もうカカシにもサクラにも助太刀する余地は無い。
終わった。
と思ったその時、今まで感じられなかったチャクラが、恐ろしいほど強大なチャクラがその空間へ具現化した。
…メラメラメラ、、、グシャーーン!!!ズバババババババーーーーン!!!!
「…こんなとこで負けてたまるかよォ!!!!」
そのチャクラは大きな音、迫力をもって外部化すると、
「…水鮫弾が呑み込まれただと?」
霧隠れの怪人の会得難易度Bランクの忍術は規模・威力共に申し分ない筈だった。
「ほう…あの金髪、木の葉の人柱力だったのか」
ただ、少年の中に居る
(まさか…九尾の封印が解けたのか!?)
カカシは部下が一先ず助かったことに安堵する暇もなく、新たな懸念を抱えた。
(なんだこのナルトのチャクラ…朱いし、具現化してやがる)
「遅えーよウスラトンカチ」
味方であるサスケも内心驚きつつも、ライバルの復帰を頼もしく感じた。
「へへっ。早速だけどよ、作戦があるから耳貸せ」
「作戦?お前が?…なるほど、試してみるか」
アカデミーで座学ドベのナルトであったが、サスケはその意外性No.1のアイデアに賭けてみることにした。
「さーて 暴れるぜェ…」
「まさか私の水鮫弾を軽く防ぐとは…削り甲斐がありそうですね。もう少し楽しんでみましょうか」
お久しぶりです