「…!これはシスイの鳥か」
シスイが何か情報を伝えてきたみたいだ。どれどれ…
「ガトーはタズナ殿の暗殺のために桃地再不斬を雇っていた、か」
俺にとって真新しい情報は無かった。それだけならあのメンバーで行けば問題ないはずだ。ただ凄く嫌な予感がするのは何故だろう…
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「火影様!ナルト達がCランク任務に行ったって本当ですか!?俺達にも行かせてくださいよ!」
「ちょっとキバ!火影様に何て口聞いてるのよ!!」
「しかしキバの言うことに俺も同感だ…何故なら俺達もナルト達と同じくAランク任務に成功した経験があるからだ」
「ナルトくん…大丈夫かなぁ」
この世界ではキバが一方的にナルトとサスケをライバル視しているらしい。アカデミー入学前から既にナルトとサスケがライバルだったからなのと、その二人の実力が図抜けていたのが原因だろう。
シノとヒナタは原作通りみたいだ。ヒナタについては多分ナルトが俺が知らない時にヒナタが虐められているところを助けに行ったのだろう。いじめっ子に勝ったかどうかは分からないが…
「確かにお前達も先の任務で実力をつけた。それは儂もよく分かっている。だから勿論、第8班にもCランク任務をやってもらう」
「やったぜ赤丸!俺ってやっぱりすぐに出世しちゃうな!!」
「火影様…すみません」
「いやいや、元より紅やアスマ達にもCランク任務を割り当てるつもりだったのじゃよ」
…とは言うものの、恐らくナルト達の「Cランク」任務とは一味も二味も劣るものにはなるだろう…
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カカシ一行がタズナの家にたどり着くと、距離を取って護衛をしていたイタチがカカシの前に現れた。
「カカシさん、俺はシスイのところへ合流してきます。今夜は護衛をお任せしても大丈夫ですね?」
「ああ、俺らだけゆっくりする感じになって申し訳ないねえ…」
「この任務は態々兄さん達まで出なきゃ行けない程のものなのか?あの二人だけなら俺らだけでも…」
「どうだろうな…火影様が直々に命じたのだから何かあるのかもしれない。サスケ、呉々も油断するなよ」
「ああ、こっちは任せてくれ」
「イタチの兄ちゃんまた後でな!」
「お兄様…お気をつけて行ってらっしゃいませ!」
サクラが少し恥ずかしそうにしながらも、何とか好きな男の子のお兄さんに気に入られようとアピールをした。
「ああ。ナルトもサクラさんもサスケを宜しく頼む」
そう言ってイタチは颯爽と消えて行った。
「おう!」
「は、はい!」
「ったく…余計なお世話だぜ」
サスケはそう言いながらも、兄と一緒に任務を行えることにとてもワクワクしているのだった。
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「全くあのクソ餓鬼め…俺様の片手をよくも…」
「ガトー様、あんな奴らを雇う意味があるんですか!?部下も負けて、本人達まで撤退を余儀なくされたというのにあの態度…」
「まさか!あいつらが仕事をしてくれようがくれまいが、ギリギリになって契約を切るつもりだ。抜け忍風情に払う金なんか無いからな。あの感じだと仮に木の葉の奴らとやり合ってタズナを殺せたとしても、その身は満身創痍になっているだろう…そこに俺達がトドメを刺す。どうだ、完璧だろう?」
ガトーは再不斬達が出て行った後で、手下とその後の企みについて語っていた。
「…まさかなあ。ガトーの腹がここまで黒いとはねえ…」
そしてまたもやシスイの偵察は見破られることなく、ガトー達は知らずのうちにシスイに重要な情報を提供することになった。
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その夜、波の国の外れの森でイタチとシスイが落ち合っていた。
「イタチ、そちらはどうだった?」
「再不斬達と交戦した。お前の情報のお陰で全員無事だったが、逃げられた…」
「再不斬
「ああ、妙な忍だ。直接は見ていないが、水遁を凍らせていたようだった。…もしかしたら氷遁使いなのかもしれない」
「血継限界持ちか…手強いかもな。あ、そうだ。こっちも驚くべきことが分かったんだ」
そう言ってシスイは先程目撃したガトー達の会話についてイタチに伝えた。
「ガトーが再不斬を裏切るつもりということか?」
「ああ…その可能性が高い」
「もしそれが本当なら…俺達はそもそも再不斬達と戦う必要が無いんじゃないか?」
「それはそうだが…俺達が取引をしたとして、向こうにどうやって信じてもらうんだ?」
イタチは少し考えたが、あまり良い案は浮かばなかった。
「できる限り戦闘は避けたいが、難しい問題だな…一先ず火影様に報告だ。俺達も近くの宿で休もう」
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「ふう…久々に夜遅くまで仕事したな。そろそろ帰ろうかな…あれ?」
火影室から出ようとすると、窓から鳥が嘴でつつく音がした。またシスイの鳥だ。
「次は何だ?…ああ、またこれも原作通りか…」
ガトーの再不斬に対する裏切りが前もって分かったか…しかしそれが分かったところで交渉するには向こうからの信頼が絶望的ということみたいだ。
確かに難しいな…しかし鬼人と氷遁使い、もし木の葉の忍になれば戦力は格段に上がる。非常に魅力的だ。
…よし、決めた。シスイ達に任せてみるか!
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「再不斬さん、流石にあの人数じゃあ中々難しいですね」
「…それもあるが、彼奴らは何故俺の刀に反応できたんだ?あの距離からあの初速だ。予測してないと身体が追いつかない筈だ。気配も完全に消してたはずだったんだが…」
「はい。少なくとも僕達の居場所に気づいているような素振りは見せてませんでしたからね…確かに護衛任務故に全体的な警戒はしていたでしょうが…」
再不斬と白が自分達の隠れ場で話していると、二人の大男がゆっくりと現れた。
「さっきは見っともなかったですねえ再不斬。同じ忍刀七人衆として恥ずかしいですよ…」
「!!お前は…干柿鬼鮫!」
再不斬と白は直ぐに立ち上がり戦闘態勢を整えたが、二人の大男は全く戦うような素振りは見せない。
「俺達は貴様らと戦いに来た訳じゃない。交渉に来た」
「一体何だ?その額当て…滝隠れの抜け忍か?」
「俺の名は角都。単刀直入に言う。俺達の組織『暁』にお前ら二人をスカウトしに来た」
「再不斬さん…本当に戦うつもりではなさそうですが、全く信用できません」
「ああ、暁だ?…聞いたこともねえな。鬼鮫、お前は里を抜けてそんなよく分からない集団に身を置いてたのか」
「中々悪くない所ですよ…まあ、ガトーの犬に成り下がるよりはずっと良い環境ではないかと思いますねえ」
鬼鮫が再不斬を挑発したが、再不斬は鬼鮫の実力を知っているからか、無駄に噛み付くようなことはしない。
「言ってくれるな…そもそも何を目的に動いている?俺にどんな利益があるんだ?」
「そうですねえ…今の所はS級犯罪者の抜け忍を集めた傭兵集団が賞金首を狩って資金を貯めている、位までならお伝えできますねえ。貴方にとっての利益ですか…逆に聞きますが、再不斬、貴方は今何のために生きている?」
「は?何が言いたい?」
「水影の暗殺に失敗して情けなく里を抜け、その後各地を転々として追い忍を撒きつつガトーなどとの裏取引でその日その日の生計を立てる…明確な目的を持って生きているとは考えづらいですねえ」
鬼鮫の言葉が図星だったのか、再不斬は返答に戸惑った。
「それは…」
そんな再不斬に白は声をかける。
「再不斬さん。僕はこの人と再不斬さんがどんな関係にあるのか知りませんが、この人の言うことを間に受けないでください!」
「別に貴方がこの先どうなろうと私にはどうでもいい…ただ、暁に入れば自分が真に望んだ世界へ行ける。それだけは言っておきましょうか」
「鬼鮫、まだ入るとも言ってない奴にベラベラ話すな。…返事は3日後まで待ってやる。…最も、お前に選択肢があるとは思えないがな」
そう言うと角都は鬼鮫を連れてそこから去って行った…
「再不斬さん、僕は貴方の言う通りに従います。…しかし、本当にその暁とやらに入るつもりですか?」
「白、俺は今一体何の為に生きて…いや、何でもない」
再不斬は鬼鮫の言葉に感じるところがあったのか、二人が去った後もその場で立ち尽くしていた。
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波の国の見すぼらしい宿にて
「…シスイ、起きろ」
「ん…何だ?まだ早くないか?」
「火影様から伝書が来た…」
「そうか!貸してみろ!」.
イタチから伝書のことを聞いたシスイは飛び上がって起きて、ヒルゼンからの伝書を読んだ。
「これは…。火影様は正気か?」
「何て書いてあった?」
「桃地再不斬とその付き人と交渉して、ガトーとの契約を破棄させ、木の葉の里に迎え入れよ、だってよ…」
「…成る程、そういうことか」
「どういうことだよ?流石に破天荒過ぎないか?」
「いや、寧ろ火影様の考えからすれば自然なことだ。虚偽のCランク任務で被害を出す可能性を最小限に抑え、その上血継限界持ちを含む手練れ二人を里に迎え入れることで戦力増強を図る…三代目らしいお考えだ」
「そういうことか。でも俺交渉は全然やったことないんだよな…迎え入れるのが究極目的なら、上忍待遇とかにしても問題ないよな?」
「火影様がそこまで言及していなければ、問題ないだろう。確かにあの二人は上忍待遇にしてもやり過ぎではない。…ただ、向こうが拒絶して戦闘状態になるのが最悪のケースだ。俺も同行しよう。先ずはこの件をカカシさんに伝えてくる」
「ああ、頼む」
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「…成る程。俺達がここで休んでいる間にそんなに事が進んでたとはねえ…」
「はい。なので今からシスイと交渉に行ってきます。カカシさん達は引き続き依頼人の護衛をお願いします」
「色々済まないな…こっちは任せておいてよ」
イタチはカカシに現状報告をすると、直ぐに瞬身の術で消え去った。
「うーん…結局暗部に任せっきりで、俺達にとっては本当にCランク任務で終わるかもしれないな…まあそれが何よりなんだけどね」