「カカシ…これで良いんだな?」
「ああ…まさか2戦目の火影様の手裏剣影分身の術で写輪眼を開眼するとは思わなかったよ。これで千鳥も完成だ」
サスケはカカシのオリジナル忍術「千鳥」を教えてもらい、遂に今日、巨大な岩を打ち砕いて完成となった。
「そうか…俺に雷遁の適性があったとはな」
「ただ、まだお前のチャクラ量じゃ1日2発が限界だ。そこは絶対守れよ?」
「ああ…ナルトやサクラは順調なのか?」
「ナルトは自来也様のお陰でどうやら順調みたいだ。サクラも苦しい修行だったけどよく頑張ってくれたよ」
2人が話していると、女の子がそこへ向かって来た。
「カカシ先生。何とか完成しました!」
「おおサクラ、早かったな。サスケも今成功したところだ」
「サスケ君も?良かった…」
「今日はもうこんな時間だ。とりあえずナルトのとこへ寄って、明日の決戦に備えて作戦会議をするぞ」
「うん!」
ーーーーーーーーーーー
森の中…
ギュイイインンン!!!!ドカーーン!!!
と大きな音がなって、大木が倒れた。
「ハァ、ハァ、エロ仙人…これで…」
「ああ、螺旋丸の第三段階『留める』はこれで達成だ。…まさか2週間で完成させやがるとはのぉ」
「へへっ。俺ってば四代目火影を超える忍になる男だからな!」
ナルトは自来也との修行でまず口寄せの術を習得する過程で九喇嘛のチャクラを引き出すことを覚えた。まだ完全な和解がなされていないことから自来也は封印の鍵を使うことはしなかったが、ナルトは檻から九喇嘛のチャクラを一部引き出せるようになった。
しかしそれでもヒルゼンを倒すだけの決定力は得られず、二戦目もコテンパンにやられた。
そこで自来也は多くのチャクラを引き出せるナルトを見て、ミナトの術の螺旋丸を伝授することを決断した。ナルトは第二段階まで3日で完了したが、最終段階の『留める』には苦戦していた。チャクラを放出しながら、同時に密度を高める為にそれを圧縮するという行為は一流の上忍にとっても難しい技術なのだ。
「しかしまさか影分身を使って放出と留めるを分担するとはな。意外性は既にミナトより高いか…というかクシナ譲りかのう」
自来也がナルトをミナト夫妻と重ね合わせてしみじみとしていると、サクラとサスケがやって来た。
「ナルトー!修行の調子はどう?」
「サクラちゃんとサスケ!今俺ってば新術を完成させたところだってばよ!」
「お前もか…俺らもさっき完成させた。これで準備万端か」
「2人も修行上手くいったんだな!じゃあ明日に向けて作戦会議だってばよ!」
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やばい…再戦から2週間しか経ってないのにナルト達強くなり過ぎてる。これは少し本気を出さないと不味い…
「手裏剣影分身の術!」
俺が術を発動するも、サスケの写輪眼はそれを全て見切った。
「全部見えてるぜ!…というか俺に気を取られ過ぎじゃないか?」
「何…?」
そして振り向くと、サクラにいつの間にか距離を詰められていた。
「木の葉旋風!」
「むっ!サクラが体術を…中々やるのう」
正直ナルトとサスケの足手纏いとなっていたサクラも基礎能力を徹底して磨いたのか、油断できない1人の忍となっていた。
「俺もいるってばよ!!」
そうすると、次は上から3人のナルトが襲いかかって来た。連携の速さだけでなくパワーも格段に上がっている。本当にこいつらルーキーの下忍なのか?
ナルトとサクラの体術の応酬に対処していると、後ろからチチチ…と鳥が鳴くような音がし始めた。
「この音は…まさか…」
「サクラちゃん、左に回避だ!」
「わかった。2人とも後は頼んだわ!」
そう言うとサクラは戦闘から離脱した。
「じいちゃん、じっとしててくれってばよ!!」
3人のナルトはそう言って俺を掴んで身動きが取れないようにしようとした。
しかし俺もそう簡単にやられるつもりはない。両手を掴むナルトを振りほどいて手が自由になった。サスケが左手に雷遁の性質変化を施したチャクラを携えて全速力で向かってくる。
「喰らえ、千鳥!!」
「これじゃあ流石に避けれないのう…じゃが跳ね返すことならできるか。サスケよ、お主に性質変化の優劣について教えてやろう…風遁・大突破!」
ナルトは残りの両足を掴んで俺を動かないようにするも、印を組めれば問題ない。雷は風に劣る。しかもこの火影の風遁だ。下忍の雷遁など話にならない。
「!…フン」
しかしサスケが風で吹っ飛ばされる直前、彼の口元が心なしか緩んだ気がした…けど気のせいだろう。
そう思っていると、次は背後からギュイインと音が聞こえた。…え、まさか。嘘でしょ?
「じいちゃんまたサスケにばっか目がいってるってばよ!喰らえ、螺旋丸!!!」
なんと俺のことを掴んでいたナルトは全て影分身で、本体は別に隠れていたのだった。そして本体のナルトは完全にチャクラを留め切った螺旋丸を俺にぶつけにきた。
完全に油断していた。仮に避けることができても後ろからサスケかサクラが追撃してくるだろう。
「成長したな…」
そう告げるとヒルゼンの影分身は螺旋丸の衝撃で煙となった。
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「…!第7班に今倒された」
影分身の経験が還元され、ナルトの螺旋丸でやられたことがわかった。
「ほう…やはり一番早く倒したのはカカシ班だったか」
「ああ…まさかナルトが螺旋丸を習得していたとは思わなんだ…」
そう言うとダンゾウは驚いた顔をした。
「螺旋丸を!?下忍になって1ヶ月程でAランク忍術を…もしかすれば四代目を超える忍になるかもわからんな」
「だから言ったじゃろうて。ミナトはナルトを信じて未来を託したのじゃよ」
「…未来か。ヒルゼンよ、折り入って相談があるのだが」
ダンゾウが俺に相談を持ちかけるなど今まで一度もなかったことだ。意外に思うが、聞いてみようと思う。
「ほう?珍しいの。一体何じゃ?」
「根のことだ…教育改革後の『表』の忍を見ていて、徐々にその在り方に疑問を感じることが多くなった。今まで儂は忍とは庶民の生活を裏で支える名も無き平和の立役者だと思っていた。いや、立役者と言うよりは平和の為の道具と言った方が良いか」
「確かに根は過酷な精神訓練を受け、任務を全うすることが全てというような組織ではあるの…」
「そうだ。勿論儂は根の者は他の木の葉の忍に劣らず優秀だと思っている。…しかしな、彼らが道具として祝福や感謝を受けることもなく唯々任務に死力を尽くしている状態での『平和』は、真の平和と言えるだろうか?同じように任務に尽力する他の忍と同じ幸せを享受できないのだろうか?という疑問が儂の中で生じてきたのだ」
『忍の本分は自己犠牲』と今まで何度も口にしてきたダンゾウがまさかこんな事を言うなんて想像してもいなかった。
正直、これは大変難しい問題だと思う。今ここで根の解体を進言して、それをダンゾウが受け入れたとしよう。今まで根が受けてきた過酷な任務は誰がやるのだろうか?俺は木の葉の忍は優秀とは言えど、任務内容を見るに根がやっていることは彼等以外にできる者は殆どいないと思う。
「皆が平等に平和を享受できるように根を解体しよう」なんていう綺麗事では済まされないことなのだ。
「そうじゃのう…今迄木の葉の人々が平穏に過ごせてこれたのは、それを脅かすものを先んじて根が処理していたからだと言っても過言ではない。ダンゾウと根には感謝してもし切れないのう」
「いや、儂は別にそういうことを言ってる訳では…」
「分かっておる。じゃがこの現状がこの先ずっと続いて良い訳でもなかろう。あの事件から12年、ここまで色々と変化を取り入れて、木の葉はより良くなったと思っておる。きっと今なら根もより良い道をみつけることができるかもしれない。そうは思わんか?」
「そういうことだ。だから儂は他でもないお前に相談しているのだ」
意外とダンゾウには信頼されているようだ。
…しかしどうしよう。根の解体は現実的ではない。それ以外の方法となると…その構造自体を作り変えると言ったところか。それなら…
「例えばじゃが、木の葉の警務部隊はうちはが全体的に務めている。しかしこれもまた保守的で良いものとは言えぬじゃろう。一般的な忍として活躍するうちはも増えてきたし、警務部隊もこれからうちはだけではやっていけるとは思えん」
「…つまり、根と警務部隊を統合するということか?」
「例えばの話じゃ。警務部隊を里内の治安維持のみならず、治外法権的なものが絡むような対外問題をも対処する組織として作り変えれば、根もそこで活躍できるのではないかということだ。暗躍や裏取引はお手の物じゃろう」
パッと思いついたのを言ってみただけだからよく分からないが、ダンゾウの反応は…
「…悪くないな。それなら警務部隊という名目で今までの活動を続けられる。人々もその働きを認知するようになるだろう」
悪くないな、と言っていたが、ダンゾウの表情から察するにかなり良い感触だ。嘘から出た真ではないが、思ったことを言っただけで進展するとは、不思議なものだな。
「では、フガクに進言してみるかの?」
「そうだな、もう少し案を固めてから会議を開くぞ」
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一週間が経ち、カカシ班以外の三班も無事任務完了。担当上忍達もかなりの成果を実感したらしく、満足そうにしていた。
紅班はまずキバには冷静な対処をすることを、ヒナタにはチャクラコントロールの強化による柔拳の決定力向上を、シノにはサクラと同様に体術強化による近距離戦能力向上を徹底させたみたいだった。その上で連携を磨いたらしい。
シノが冷静に戦況を見極めてキバに的確な指示を出し、キバと赤丸はシノを信じて獣人分身を駆使し俺に多彩な攻撃を仕掛け隙を作り、その隙をヒナタが柔拳によって文字通り突く。
キバがとどめを刺す作戦だろうと思っていた俺はヒナタの攻撃に対応できず、一撃喰らって終了。見事な連携だったと言える。
アスマ班は元々一番チームワークが優れていたが、個々の秘術を親から徹底的に鍛えられたことと、身体能力がアスマによって磨かれたことでそのパフォーマンスは劇的に向上した。
その修行に時間を割いた分、二戦目ではシカマルによる完璧な策略に俺はまんまと嵌められチェックメイト。猪鹿蝶の秘術を何も知らなければ一流の上忍でも初見対処は困難を極めるだろう。
ガイ班は実はカカシ班が俺を倒した翌日に任務を成し遂げた。流石永遠のライバルと言ったところか。
リーは今までの重りの倍の重さがある物を身に付けるようになった上に、アカデミーの教育カリキュラムを復習して基礎的な技術の確認から行うというかなり精神的にも肉体的にも辛い修行を行なったようだ。はっきり言って重りを付けた状態でも下手な上忍より速いです。重りを外したら多分俺も負ける…
ネジはヒナタと共にヒアシ、ヒザシと柔拳の修行に励んだようだ。実はガイの影響で剛拳の造詣を深めており、それを利用して柔拳をさらなる高みへ持って行ったそうだ。もしかしたら日向は木の葉にて最強はそろそろネタに出来ないかもしれない。
ハナビが彼らに影響されて原作より実力を上げたというのはまた別の話…
テンテンは飛び道具の威力を決定付ける要素の一つの速度を高めるために、適性とわかっていた風遁の修行をしたらしい。というのも猪鹿蝶が秘術修行をしている間暇になったアスマが少し教えていたようであった。忍具と風遁の掛け合わせ…原作のテマリ戦を知っている俺からすると大変興味深い。
一年先輩ということもあり少し俺も他よりは力を入れたのだが、このように下忍にしては圧倒的な修行を積んだ3人には結構あっという間に倒された…
こんな感じで下忍のAランク任務は完了した。
そして根と警務部隊の件は何とフガクも賛成のようでどんどん話が進み、根は名目上は解体されたが、呪印は解除されて晴れて警務部隊に異動することになった。
実際うちはも警務部隊志願者が減っており、渡りに船だったらしい。また統合の結果予算も節約できたので、里としてもまた嬉しいことであった。
ダンゾウはというと、根の異動に伴い警務部隊に新たに設置された主に里外問題を処理する第二部の部長となり、フガクと警務部隊の2トップとなった。これで以前よりも印象が良くなったのだろうか、ダンゾウへの期待が高まったらしい。良かった。
そして今日、遂にあの「Cランク」の依頼が届いた。
「火影様、間違いなくこれは虚偽の依頼ですね。ガトー絡みの任務となるでしょう。良くてBランク、悪くて…」
「そうじゃな。しかし今ここで依頼を拒否してしまえばそれはガトーの思うつぼじゃ。とりあえずはCランク任務として受理しよう。これは第7班にやらせるつもりじゃ」
「ナルト達に!?火影様、お言葉ですが幾ら何でも下忍が対処できるものではないですよこれは…スーパールーキーとは言えども…」
「ああ、儂もこの任務はかなりの危険を伴うものだとも承知しておる。だからシスイ、お前も暗部として護衛に向かって欲しい」
「成る程、分かりました。しかし俺は依頼人の警護とガトーの情報収集のどちらを優先すればよいでしょうか?」
原作通りなら今の7班とシスイで十分過ぎる位なんだけど、何か嫌な予感がするんだよな…
しかしこれ以上下忍班を加えたら機動力に欠けるし、何よりタズナが勘付くだろう。
イタチが暁に入ることがなくなったこの世界線で何が起こるか本当にわからない…あ、なるほど。それなら…
「もう1人暗部を付けよう。シスイは情報収集を、もう1人は護衛をやってもらう。お前の相方は…イタチだ」
「イタチですか?それなら俺もやりやすいです」
「うむ、そういうことじゃから、イタチに伝えておいてくれ」
「御意」
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「ペイン、今回は一体何の用だ?」
「角都、お前が何度も相方を殺すせいで人員が不足している。スカウトして来い」
「…彼奴らが俺を怒らせるのが悪いんだ。それで、誰をスカウトするんだ?」
「少し前から抜け忍として裏で有名になっている霧隠れの鬼人、桃地再不斬だ。噂によるとそいつの付き人も血継限界の氷遁使いののことだ。見極めて良さそうだったらそいつも連れてきてくれ」
「十蔵の首斬り包丁があの再不斬の小僧の物になっていたとは…面白いですねえ。角都さん、私も御一緒させてください。…彼がどこまで成長したか削って確かめてみたい」
「…良いだろう。だがあまり調子に乗るなよ。殺すぞ」
サクラは木の葉旋風等の基礎的な体術を高い精度で習得した感じで、特に必殺技とかはまだ無いです。
十蔵というのは、以前まで暁に所属していた忍刀七人衆の一人、枇杷十蔵です。アニメのイタチ真伝で出てきました。この後は登場しません。
次回から波の国編です。やっと。