下忍選抜サバイバル演習はカカシ、アスマ、紅の班が合格を勝ち取り、その9名は晴れて下忍になった。彼らはまずは子守やペット探し、農作業の手伝いなどのDランク任務に従事している。しかしながらこれでは実力がつかない。そのため俺はその上忍三名を呼び寄せた。
「さて、部下達は任務をしっかりこなしているようで問題はなさそうじゃの?」
俺がそう聞くと、彼らは話し出した。
「まー、ウチの班はナルトとサスケが早くも文句を言い出しましたね…確かに彼奴らは下手な中忍よりも実力はありますし、早くもDランク任務では役不足かなあと。サクラも退屈がってますね」
「あんたのとこもやっぱりそうなのね、カカシ。私の方も感知タイプが揃っているからDランク任務はあっという間に片付いちゃって、キバが全然満足いってない感じだわ」
「お前ら大変だな…こっちはそもそもシカマルがやる気ねえし、チョウジものんびりやってる。いのは少し退屈そうだけど、お前ら程不満は溜まってなさそうだぜ」
カカシと紅の班はなるほど当然だなと思ったが、アスマ班はそこまでなのか…
「アスマのとこは別としても、やはり実戦的なことを行いたく思ってるってことじゃのう…出来れば各々の得意分野に基づいて修行メニューを具体的に考えることをしたかったのじゃが、それを披露できる場も与えなきゃならないか…」
「Cランク任務を割り当てるつもりですか?」
「それも悪くないのじゃが、これと言って今良さそうな任務が無くての」
シスイの報告などから考えるに、波の国の任務はあと1ヶ月程先のようだ。
ここ数年は新人下忍にも早めにCランク任務を経験させて、モチベーションの向上や短所と長所の把握などに繋げてきたが、この世代は今までに無く優秀だ。去年のガイ班の時にも同じことを思ったが、それより上かもしれない。
しかしながらCランク任務で大したものがない…ナルト世代はこれからの成長がかなり重要になってくる。そして来たる中忍試験で大蛇丸が何か画策していると仮定すると、それまでにある程度実力を上げさせておきたいのだ。
「…わかった。ではこれはどうじゃろう。儂直々に三班それぞれにAランク任務を与える」
「「「…Aランク任務!?」」」
我ながら良い案だと思う。
「その内容は……」
ーーーーーーーーーーー
カカシは火影室を出てから家でゆっくり食事をとって部下のところに向かった。
「お前ら、おはよー」
「「「遅い!もうお昼!!」」」
9時集合なのに12時過ぎに来たクソ上司に対しナルトら3人は怒るも、カカシはそれを流しながら話し出す。
「悪いねー、でも面白い任務貰ってきたから許せ」
「何だってばよ?どうせまた子守とかペット探しだろ?」
「いやいや、そんなDランク任務じゃないよ」
「え?私達ついにCランク任務やれるの?」
3人は先程のイライラした態度から一転、ワクワクした顔をする。
「実はね…Aランク任務貰ってきちゃったのよ」
そしてワクワクした顔がカカシの言葉により一変、驚きと焦りを見せ始めた。
「Aランク任務!?それって上忍がやるようなものでしょ?私達にできるわけないじゃない!」
「いやー、これ火影様直々に命じられた任務だから断れないのよねー」
「じいちゃんが?どうしてだってばよ」
「内容は一体何なんだ?三代目も何も考えなしに俺たちにAランク任務は与えないはずだ」
サスケがいち早く冷静になってカカシに問い詰めた。
「内容は至ってシンプル、三代目火影の影分身を倒すこと。勿論俺は参加しない」
そう、ヒルゼンはそれぞれの班に自分の影分身の撃破というAランク任務を課したのだった。
「じいちゃんを倒す?それならお色気の術で一撃だってばよ!」
ナルトが笑いながらそう言った。
「それは火影様が戦闘モードじゃないからでしょ…ぶっちゃけ言って忍界で五本指に入る実力だからな」
「火影様ってそんなに凄いの?知らなかった…」
「面白いじゃねえか。直ぐ終わらせてやるぜ」
サスケが乗り気になってそういうと、カカシはこう告げた。
「サクラもサスケも本当に火影様の実力分かってないのね…一応言っておくけど期間は1ヶ月。俺は敗因を分析してお前らに修行メニューを課す」
「負けるのが前提になってるじゃねえか!おかしいってばよ」
「おかしいのはお前らだよ…ま、何れにせよ直ぐ思い知るさ。本当にあの方、年齢を重ねるにつれ更に強くなってる気がするよ。だからこそ3体も影分身出して下忍の相手できるんだろうな」
「3体ってことは俺らは1対1で闘うのか?」
「いや、そんなことしたら10年経っても勝てないよ。8班と10班にも同じ任務が課されてるってわけ」
「そうなのか!なら俺ら第7班が一番に任務完了させてやるってばよ!」
ーーーーーーーーーーー
「下忍達の実力を底上げするのに火影と闘わせる、か。ヒルゼンよ、中々面白い発想だな」
火影室に来たダンゾウは俺から先程の件を伝えるとそう述べた。
「そうじゃろう。他の下忍達が優秀だからCランク任務が大体消化されてしまってのう」
「ガイのところか。そういえば彼奴らは何故前回の中忍試験に合格しなかったのだ?」
「確かに中忍になるのに十分な実力はあったのだが、今の木の葉だとそのレベルの忍は沢山おる。彼らはルーキーじゃったから、経験の差で僅かに届かず、先輩が合格を勝ち取ったという感じじゃったかのう」
「そうだったのか。なら今回は問題なく上がれそうだな。彼らにも同じ任務を課してみたらどうだ?流石に身体が持たぬか?」
ガイ班もやるのか…悪くない。勿論俺の身体は心配ない。
「そうじゃの。ガイ達が今の任務から帰ってきたらそうしよう」
ーーーーーーーーーーー
「ハァ、ハァ、ハァ…全然当たらねえってばよ」
「どうしたナルト、まだまだその程度じゃったか。自来也にも折角色々教えてもらったのに」
「エロ仙人は何か取材とか行って全然教えてくれてねえんだってばよ!」
「え、そうなのか?全く…後でしっかり言っておこう」
それにしても、第7班。動きは悪くない。ナルトとサスケが基本的に隙を作ってサクラが何とかして一撃を入れる、というプランのようだ。カカシがサバイバル演習で鈴を取られたのも納得だ。
ただ、こっちは火影。しかも影分身を潰すほどの一撃を喰らわせる必要がある。
「さて、そろそろ良いかの?少しは足りないとこが分かったと思うから、終わらせてやる」
そう言った瞬間、俺は一瞬でサクラの背後に回り、首元を軽くトンとやって眠らせた。あまりに一瞬過ぎて戸惑いを見せた二人にも続けて同じことをして、終了。
「勝負あり、ですね」
遠くから見ていたカカシがそう言ってこちらに近づいて来た。
「チームワークは悪くないが、精度がまだまだじゃの。まずナルトとサスケにサクラが付いてこれてない。サクラには基礎的な体術じゃ。次にナルトは数を使った多彩な攻撃を放ち、発想も豊かだ。サスケも火遁や手裏剣術に長けており中々手強い。しかし二人とも決定力に欠ける。チャクラ感応紙で適性を調べ、性質変化の修行をやってみてはどうじゃ?きっとサスケもまだ秘められたものを持ってるはずじゃ」
「仰る通りです…サクラは性質変化よりも基礎的なことからですね。ナルトとサスケに性質変化の修行ですか…俺一人で何とかなるとも思えませんが、やってみます」
「一応班毎に別々の任務となっているが、効率化できるならまとめて修行つけるのでも良いぞ。…ナルトは自来也に任せてもよいの。あとこの任務、ガイ班も加わった」
「ガイが?…はあ、また何か言われそうですね」
ーーーーーーーーーーー
とりあえず最初の三班の1戦目は終わった。カカシ班は先の通りだが、紅班はもう少しチームワークから見直した方が良さそう。キバをかなりキツ目に絞ったから、改善されると良いが…
そして実はアスマ班が一番良かった。シカマルの分析力とチームワークが半端ないので、個々の戦闘力は別に鍛える余地があるが、一番早く終わるんじゃないかな。
と考えていると、ガイ班の方も終わったようだ。
まあここは1年先輩な分洗練されたチームワークで一番苦戦した…当然手は抜いているが。
ヒザシが生きているからか、ネジは原作ほどひねくれていない。リーと切磋琢磨して二人とも体術は一級品だ。
ただ、体術中心の近距離タイプが2人もいるので3対1だと少しやりづらそうな印象。テンテンの中距離からのアシストが鍵になるな。
ではでは、彼らの成長を楽しみにしますかね。
ーーーーーーーーーーー
「じいちゃんってこんなに強かったのか…知らなかったってばよ…」
「チッ…全く見えなかった…本当に70手前の爺さんなのか?」
「ごめん二人とも…私が足引っ張ってばっかりで…」
最強ルーキーの呼び声高い第7班は三代目火影に字の如く子供扱いされたことにひどくショックを受けていたのだった。
「ま!こんなもんだと思ったよ。サクラもそう落ち込み過ぎるな。これからお前らには修行を課す。サクラとサスケはとりあえず俺と、ナルトは自来也様と修行する」
「え!サスケ君と?頑張らなくちゃ!!」
さっきまで凄く落ち込んでいたサクラだが、サスケと修行できると知って急にテンションを上げた。
「え?俺だけカカシ先生じゃねーのかよ!あのエロ仙人ってば全然修行つけてくれねーんだぞ!」
「まあそう言うな。火影様がさっき話をつけてくれてたみたいだから、大丈夫だよ。恐らく温泉街にいるから、向かってくれ」
この様な形で他の三班も敗因を分析してから各自修行に取り組み始めた。
ーーーーーーーーーーー
「エロ仙人…じいちゃんの教え子って聞いてたけど本当に凄い忍者なのか?ただのスケベジジイにしか見えないってばよ」
「何を言っておる!儂は里の英雄四代目火影の師だぞ!」
「え!?父ちゃんの師匠なのか?」
「何、お前はミナトのことを聞いているのか!?」
「2,3年前にじいちゃんが教えてくれたってばよ。この中の九喇嘛のこともな!」
実はヒルゼン、自来也にナルトのことについてはあまり伝えていなかったのであった。
「九喇嘛…九尾のことか?」
「九尾は勝手に人間が付けた名前だってばよ。あいつの名前は九喇嘛だ!」
「まさかナルト、お前は九尾…じゃなくて九喇嘛と話せるのか?」
「まあな!まだ完全には認めてもらってないけど、俺は友達だと思ってるってばよ!」
「そうか…ならやることは決まりだのう」
「何するんだってばよ?」
自来也はナルトに彼が持っている2種類のチャクラについて説明した。しかしナルトは今まで命を懸けた戦いの経験が無く、今までその2種類目のチャクラを感じたことはなかったようだった。
「その九喇嘛のチャクラを引き出すことができれば、猿飛先生の影分身に一撃喰らわせるかもしれん」
「そうなのか!?九喇嘛ってやっぱスゲーんだな」
「まずはとにかくやってみようかのう。今からやるのは自分のチャクラを使い切ることだ。あそこの池に1,2時間ほど立ってろ」
「いきなりそんな退屈な修行かよ…」
こうしてナルトと自来也は修行を始めた。