さあ、今日はアカデミーの卒業試験。前にも言ったが今年の卒業候補生は皆優秀だから、余程のことが無ければ大丈夫だろうということだ。
俺が見に行っても良いんだけど、一応ミズキの件はあいつに任せてるし、担当上忍の割振りの確認とかもあるので仕事します。
「じいちゃん!行ってくるってばよ!」
「卒業試験しっかり合格してくるのじゃぞ」
「勿論だってばよ!いよいよ俺ってば忍者だ!」
まあ、卒業試験は実技だからまず落ちることはないよな。
俺も仕事に行くとしますかね。
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「グットモーニングだってばよ!」
ナルトの声が教室に響く。そこでやる気の無さそうな男の子とポテチを食べてる膨よかな男の子が反応する。
「朝からテンション高過ぎだぜナルト…今日は卒業試験でただでさえめんどくせーのによ」
「僕は合格したら父ちゃんが焼肉食べ放題連れてってくれるから張り切っちゃうよ」
「俺らってば明日から忍者になるんだぜ!もう楽しみでたまんねーよな!」
「忍者も忍者でめんどくさそーだけどな。それにしてもナルト余裕だな…まあ実技はお前なら問題ないもんな」
3人が話していると、担任の先生が教室に入ってきた。
「おーい朝礼始めるぞ〜。席につけ、ナルト」
「イルカ先生!何で俺だけなんだってばよ!?」
「周りを見てみろ!ナルト、お前しかうろついてるやつはいない!」
「ハハハハハ!周り見えてないで何が忍者だよ!」
「うるせえってばよキバ!!」
実はチョウジとシカマルは既に席についており、ついさっき来たナルトは彼らのいる席の周りで立ち話をしてたのだ。つまり席についてないのはナルトだけだった、ということだ。
「よし、みんなおはよう!今日はついに卒業試験だ。出席番号順に行うぞ。試験内容は『分身の術』だ。まあお前らなら問題ないだろう。20分後に秋道チョウジから始めるから準備しておけよ!」
教育カリキュラムこそ変わったものの、その過程で十分忍としての適性が評価できたので、今や卒業試験はほぼ形骸化している。
「ではこれで朝礼を終了する。自分より2人前の人が呼ばれる頃には廊下で待機するように!」
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「次!6番うずまきナルト、入れ!」
「押忍!」
試験教室には最終学年の2クラスのそれぞれの担任うみのイルカとミズキが座っている。
「ナルト君か、実技の成績は申し分ないし大丈夫だね」
「よしナルト、分身の術だ。やってみろ」
「任せろってばよ!分身の術!」
ボン!と鳴ってから教室一杯一杯にナルトの分身が出現していた。
イルカはその分身の数に少し驚いたが、すぐ表情を戻し、ナルトに告げた。
「5体で十分なんだけどな…流石だナルト、合格!」
「っしゃあ!俺ってば忍者だってばよ!」
「おいおい、まだアカデミーの卒業が決まっただけだ!…まあいいか。ナルト、お前を説教するのももう無くなるんだな…」
「え、イルカ先生ってば俺のこと叱り足りねえのか?んー…仕方ないってばよ、最後に俺のとってきおきの術を見せてあげるってばよ!…変化!おいろけの術!」
そう言うとナルトは忽ち、ナイスバディなセクシーお姉さんに変化した。
「ブバーーーッ!!!おいナルト!お前は此の期に及んでなんてくだらん術を!…わかった、そこまでするなら今日の放課後、この階全部残り掃除だ!」
「えー!!それは無いってばよ!!イルカ先生勘弁してくれってばよ…」
「自業自得だ!ほら、まだ残りの生徒が待ってるんだ。教室に戻って大人しく自習してろ!」
「ちぇ…」
そしてナルトはとぼとぼと退出していった。
すると近くで待機していた次の生徒、うちはサスケが話しかけた。
「おいナルト、何落ち込んだんだ?」
「お、サスケ。いや、試験は受かったんだけど…イタズラして居残り掃除になったんだってば…」
「フン、お前のことだ。そんなところかと思ってたぜ」
「うるせーってばよ。まあ、お前もしっかりやれよ!」
「ああ」
そう言ってサスケは試験教室に入って行った。
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「ふう…これで全員ですね。皆問題無く合格で良かった…あれ?イルカ先生、額当てが一つ残ってますよ?」
「数ぴったりと聞いてたんですけど…あ!ナルトに渡すの忘れてた!」
「そういえばナルト君受け取ってませんでしたね。僕が渡してきますよ。イルカ先生は職員室に報告をお願いします」
「あ、そうですか…?分かりました。よろしくお願いします」
ミズキが自らナルトに額当てを渡すのを申し出たことに少し違和感を覚えつつも、イルカは職員室に戻っていった。
「よし、これで準備は整った…ナルト、今迎えにいってやるからな」
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「…ったくイルカ先生ってひどいってばよ。ちょっとからかっただけだのによー」
ナルトが退屈そうに箒を掃きながら、愚痴をこぼしていたところにミズキがやって来た。
「ナルト君、お疲れ様。ごめんね、僕も流石にイルカ先生厳し過ぎるかなって思ったから止めようかと思ったんだけど…」
「ミズキ先生!いや、別に大丈夫だってばよ。俺ってば他の奴らと違って祝ってくれる父ちゃん母ちゃんいねえからどうせ暇だったしな…」
「そっか…。あ、そうそうナルト君。大事なコレ、忘れてたよ!」
そう言ってミズキはナルトに額当てを見せた。
「あ!なんか忘れてると思ったらそれだってばよ!サンキューミズキ先生!」
そうしてナルトはミズキの元へ額当てを取りに行ったが…
ミズキはそこで素早くナルトの首元をトンと叩いて気絶させた。
「全く、こいつは少し優しく扱うだけで直ぐに警戒を解く…愚かな奴だ」
そういうとミズキはナルトを抱え、木の葉の外れの森に向かった。
暫くしてイルカはナルトがいた教室に向かった。
「ナルトー、そろそろ掃除を終えたかー?…ナルト?どこにいるんだ…。!この額当ては…ミズキ先生!いらっしゃいますか?ナルトの額当てがここに!」
イルカは教室の入り口近くに落ちていた額当てに気づくと、何か嫌な予感がしてミズキ先生を探すがその気配はない。
「…不味いな。そういえばミズキ先生がわざわざナルトに渡すなんて妙だったんだ…。万が一も考えた方がいいかもな、火影様のところに報告だ」
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「は?ナルトのおいろけの術で気絶してミズキを見失ったじゃと?」
「…面目無いです。気づいたら試験教室には誰も…」
おい、こいつにこんな
「馬鹿者!…まあ儂もあの術を初めて生で見せられた時は…いやいや、そんなことはどうでもいいのじゃ。それまでに怪しい動きは見られかのか?」
「いえ、自分が監視を始めてからはこれといって怪しい動きは…」
突然、ドアが豪快に開かれた。
「ノックもせずに、一体何事じゃ!!」
「すみません火影様。しかし、大変です。ミズキ先生とナルトがアカデミーから居なくなりました!自分が教室に戻った時には既に…」
「やはりミズキはナルトを…」
「火影様?」
「恐らくミズキがナルトを誘拐した。奴は外部の輩と関係を持っている。もしかすればナルトを…」
「ミズキ先生…ミズキがナルトを!?クソっ!俺がしっかりしていれば…」
「落ち着くのじゃイルカ。多分ミズキ達は西の外れの森に向かった。イルカはそこにいる暗部と奴等を追うのじゃ」
「イルカさん、行きましょう」
行きましょう、じゃねえよ!
お前がドスケベじゃなければこんなことには…
まあ正直そこまで心配はしていない。九喇嘛はナルトと和解していないとはいえ、徐々に心を開いているようだ。本当にやばかったら力を貸してくれるはずだ。
二人は直ぐに退出し、森へ向かった。さて…俺も様子を見てみるか、水晶の術、っと。
どれどれ…あ、いたいた。ミズキと商人を装った2人の男が何か話している。その横でナルトは眠っている。この距離ならあと2,3分で2人は到着するかな…
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時を同じくして、里の外れの森では…
「ミズキよ、こいつが本当に九尾の人柱力なのか?ただの小せえ餓鬼にしか見えねえが…」
商人を装った男が眠ったナルトを見て怪訝な顔を浮かべた。
「いや、こいつがあの九尾襲来の日に四代目が九尾を封印した赤子だ…確かに里の戒厳令で外部には知られないようになっているから疑うのもわかるが、間違いないぜ」
「兄貴、こいつが本当の人柱力ならこの後直ぐに里が混乱するはずだぜぃ。とりあえずさっさとここから離れちまった方が…」
「それもそうだな。じゃあミズキ、一先ずお前の入隊を許可する。さっさとここを出るぞ」
「ああ…行くか。…!」
ミズキはそう言った瞬間に背後の気配に気づいて振り向いた。
「待て!ミズキ!」
振り向くとイルカと1人の暗部がもう直ぐ追いつかんとしていた。
「イルカ!?何故ここが…」
「おいミズキ!お前はここは安全だと言ってたではないか!」
ミズキと共にいた男は慌てだした。
「おいミズキ!やっぱりお前がわざわざナルトに額当てを渡すなんて変だと思ってたんだ!早くナルトを返せ!」