時間軸的にはタイトル通りなのですが、回想多めなので全然進みません(笑)
原作開始!
明日はナルトのアカデミー卒業試験。つまり、今日があの大人気漫画「NARUTO」の原作開始日なのだ。
ナルトがアカデミーに入学してから特に深刻な問題は無く、悪く言えばやや退屈、良く言えば平穏な日々を送っていた。
この世界線でもナルトはやはり問題児で、ほぼ毎日廊下にバケツを持って立たされていたらしい…が実技の成績は、毎回サスケと1位を争う程であったとか。というか2人が頭抜けていたと聞く。イタチェ…何を教えたんだ…
運動神経が良いと頭の回転も良くなるとよく言うが、ナルトはイタズラの発想が豊かになったらしく、イルカ先生が大変手を焼いていた。
あ、残念ながら座学はドベ。おい、何でだよ!
それでナルトの問題のチャクラコントロールなんだけど…
確か1,2年くらい前のことかな。
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ある日、ナルトが俺に聞いてきた。
「じいちゃん、俺ってば最近変な夢を見るんだ。暗い部屋みたいなところに、超でけえ狐みたいなのが檻に閉じ込められてるんだってばよ。『四代目ェ…』とか『マダラめ…』って何度も呟いてるんだけど、なんか知ってる?」
真実を話すのも難しいけど、九喇嘛とナルトが和解するのは早ければ早いほど良いよね。
「お前はその狐とやらに話しかけてみたのか?」
「いや、恐くて近寄れてないからまだだってばよ」
「ならとりあえず自己紹介をして、名前を聞けば良いのではないか?友達になれるかもしれんぞ?」
「そっか!シカマルやチョウジと同じだな!」
流石少年ジャンプの主人公。ナルトはこうでなくっちゃ!
そして数日後…
「じいちゃん、あの夢の狐のことなんだけどさ、話しかけてみたんだけど全然相手にしてくれねえんだ!」
やっぱまだナルトは認めてもらえてないのかな…。九喇嘛って名前教えてあげたいけど、それだと本当の信頼関係は築けないよなあ。悪いな、ナルト。
「そういう奴にはしぶとく、しつこく、じゃ。儂の経験から間違い無いぞ。正面からぶつかるのじゃ」
「わかったってばよ…俺、もう少しやってみる!」
それからまた数週間後…
「じいちゃん!あいつの名前わかったってばよ!九喇嘛って言うんだってさ!」
おー!遂に認められたか。流石はうずまきナルト!
…さて、そろそろ俺も火影として話をつけるか。
「ナルト、儂もその九喇嘛とやらと話したいのじゃが、良いか?」
「え?でもあいつは夢の中でしか会ったこと無いってばよ?」
「大丈夫じゃ。いいか、ナルト。目を瞑り、腹の中に神経を集中させ、ゆっくり深呼吸をするのじゃ」
「わかったってばよ…」
暫くして、ナルトが精神世界に入り、気を失った。そこで俺もナルトのチャクラの流れを感じながら、ナルトの腹に手を触れる。
「ここがナルトの中の…」
「あ!じいちゃん!どうなってんだ!?」
「おおナルト、とりあえず儂を九喇嘛の居場所に案内してくれないかの?」
「おう!こっちに着いてきてくれってばよ!」
ナルトに連れられてある大きな広い部屋に着くと、そこには今までに感じたことのない程の禍々しい、甚大なチャクラを持つ、巨大な狐が此方を睨んでいた。やべえ…漏れそう。
「貴様は…三代目火影か。ほう、あの日にこのワシの一撃を喰らってもなお生き延びたジジイだな。思い出したぞ」
いや、あれが原因で猿飛ヒルゼンは一度死んでおります。本当人に喰らわす攻撃じゃないですよ、知らないけど。ってか殺気凄え…
「殆ど死にかけになったがの…九死に一生を得たってところじゃの。九喇嘛よ、日頃からナルトが世話になっておるな」
「あの小僧から名前を聞き出しやがったか…いけ好かねー野郎だ。貴様ら人間がワシを封印したんだろうに」
「じいちゃん、どういうことだってばよ?」
「貴様ら人間のことなど知ったこっちゃないが…この小僧に全ての憎しみを背負わせ、恰も全てが収まったかのように錯覚する、醜い生き物だな。その頂点に立つ火影というのは偽善者代表のことなのか?」
ぐうの音も出ない。この世界に来てから十数年…火影の座に居座り、大好きなNARUTOの世界の原作改変を満喫して来た。そしてナルトに対しても、幸せに過ごせるよう色々取計らった…つもりだった。でも、それは全て「立派なナルトの保護者役」という自分の立場を守ることを前提とした行動。偽善者、今の俺に相応しいな。
「おい九喇嘛!お前が何言ってんのかわかんねーけど、火影を馬鹿にするなってばよ!」
「よせナルト、あやつの言うことは最もじゃ。儂もケジメをつけなきゃならんのう…」
「じいちゃん?」
「ナルト、儂は今までお前に明かさずに隠してきたことを今から全て話す」
「え!?何のことだってばよ?」
「それは…お前が産まれた日のことじゃ」
「俺が…産まれた…日?」
そして俺はナルトの精神世界で全てを話した。
ナルトが産まれた日、里に九尾が襲来したこと。それを四代目火影が自分の息子に封印したこと。しかし彼とその妻は死んでしまったこと。
そして…ナルトがその2人の子であること。
「…ということなのじゃ。ナルト、本当にすまなかった。儂はお前が他人に対して恐怖心を抱いてることを知ってたのに、保護者として何もしてやれんかった」
「仕方ないってばよ…じいちゃんは火影として里の皆を守らなきゃならねえのは俺もわかってるからよ…でもよ!何で父ちゃんは俺に封印したんだよ!?こうなるって予想してなかったのかよ…」
さて、無理矢理あの封印札を剥がしかけさせてミナトを出させて問いただすってこともできるが、流石に危険過ぎるよな…
「確かに儂も最初はミナトが何故息子のナルトに九尾を封印したのかは分からんかった。じゃがな、少し経ってから衝撃の事実が判明したのじゃ…」
「衝撃の事実?何だってばよ!?」
ミナト、正直すまん。真実を伝えるために嘘をつく。
「ミナトとクシナが発見された場所で巻物が見つかったのじゃ。そして、それがミナトの残したものだとわかった」
「…父ちゃんが残した巻物?」
「これじゃ」
俺は懐にしまっていた巻物を取り出し、ナルトに投げ渡した。ナルトはすぐにそれを開き、黙々と読んだ。
「えーっと…つまり、どういうことだってばよ?」
おいっ!今シリアスな展開だろ!ここで馬鹿ひけらかすな!!
「…ふぅ。つまりうちはマダラという初代火影様の宿敵が実はまだ生きており、そいつが九尾を操って里を襲ったのじゃ。そうじゃろう、九喇嘛?」
「うちはマダラ…ああ、忌々しい奴だ…ワシを一度のみならず二度までも貶めやがって」
「あー、そういう意味だったのか。でも、それと俺に封印したのには何の関係があるんだ?」
「ここからは儂の予想なのじゃが…きっとミナトはそのマダラが今後我々の脅威となる存在と悟ったのじゃろう。そして、自分の息子が九尾…いや、九喇嘛の力をコントロールしてその脅威に立ち向かうことができると考えたのではないかと儂は思う。ミナトは無駄なことはしない男じゃったからの…」
「ってことは、父ちゃんは俺のことを信じて九喇嘛を…」
「親ってのはいつまで経っても子供を信じるものじゃ」
「そっか…そうかもしれねえ。いや、きっとそうだってばよ!父ちゃんは俺のことを信じて託してくれたんだ!」
「フハハハハ!三代目も落ちたな…四代目がこんな小僧がワシの力を引き出せるとでも思ってたというのか?」
「九喇嘛よ…儂はナルトを信じておる。此奴は憎しみで繋がった人間とお主ら尾獣の関係を新たなものに作り変えてくれるとな。そして、儂はまた、お主のことも信じておるのじゃ。憎しみだけが尾獣のもつ感情ではなかろう?」
「何を言うかと思えば…人間がワシを信じる、か…。貴様、よっぽど変わった人間だな。まあ貴様がどう考えようが、全てはナルト次第。こいつが面白い奴だったら、力を貸すか考えてやらなくはないかもな…。まだ口煩くてしつこい餓鬼としか思ってないが、まあそのしぶとさだけは認めてやる」
「そうか…九喇嘛よ。これからもナルトのことを宜しく頼むのお」
「…フン」
「じいちゃん。俺ってばそろそろアカデミー行かないと遅刻しちゃうってばよ!じいちゃんも火影の仕事あるんだろ?」
「そうじゃな、では戻るとしよう」
そして俺とナルトは現実世界に戻った。さて、そろそろ仕事しに行くか…
「じいちゃん、俺ってば色々ビックリしたし、落ち込んだこともあったけど…四代目の息子だから、我慢するってばよ!」
「そうか、それなら儂も安心じゃ。アカデミー行ってらっしゃい」
「おう!じいちゃんも火影の仕事頑張れよ!」
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こういうことがあったんだ。そこからナルトのチャクラコントロールは格段に良くなって、分身の術は勿論、木登りや水上歩行もできるようになった。影分身の術は、卒業祝いに伝授してやるかな。
ちなみにまだ完全に九喇嘛とは和解してないらしい。「ワシのチャクラを使うにはまだ小僧過ぎるな」って言われてるんだって…てことは成長したらチャクラを貸すのは吝かではない、ってことだね!
さてさてナルトはそろそろアカデミーから帰ってくるかなー。俺はもう一仕事があるから、水晶の術でちょちょいとな。
お、イルカ先生と何か話してるぞ。ナルトめっちゃ喜んでる。ってことは…イルカ先生のおごりでラーメン行く感じか。ならナルトの夕飯は考えなくていいか…丁度いい。今日最後のタスクに集中できるな。
さて、水晶の観察対象を里の中心部からかなり離れた森の中へ…お、やっぱいたか、ミズキの奴め…
んー、誰かと話してるけど、額当てしてないな…抜け忍か盗賊とかかな?佇まいからして忍では無さそうだな。でも何の取引だ?今回のアカデミー卒業候補生は皆優秀で、卒業確実って聞いてるから落第生は使えないよ?
…ちょっと不安だな。今手の空いている忍は…あ、こいつでいいや。呼び出すか。
少しして、ドアを叩く音がした。
「入れ」
「火影様、お呼びでしょうか?」
「うむ、お前にミズキの監視を頼みたい」
「ミズキさんって…確かアカデミーの人気講師ですよね?」
「そうじゃ。ここ最近怪しい動きをしておる。特にアカデミーの子供達に接する際は注意して監視せよ」
「はあ…分かりました」
「宜しく頼む。…ところで例の件、何かわかったことはあるか?」
「はい。火影様の仰る通りでした…あの大企業ガトーカンパニーの裏側…。もし他里と手を組んだりしたら、かなりの脅威になりますね」
やっぱ偵察のセンスあるなあ。気配を消し、素早く動くから見つからない。やっと見つけたと思えばいつの間にか幻術の中。もしくは幻術で情報を吐かせてから光のように消え去る。
「やはりそうじゃったか…流石じゃな。自来也ですら得られなかった情報をいとも容易く入手してくるとは」
「火影様が俺の才能を見抜いてくださったお陰ですよ…最も、交渉術には長けてないので自来也様には敵いませんが…」
自来也…そろそろ戻って来ねえかな。ナルトの修行頼もうと思ってんだけどなあ。
「取り敢えずガトーについては様子見じゃ。ではミズキの監視、くれぐれも頼んだぞ」
「御意」
さて、これで何とか大丈夫だろう。
そろそろナルトも帰って来てるかな…俺も帰ろ。