新年の初投稿です
「……ゔぁー」
深い微睡から目を覚ます。
二日酔いのさらにその先の泥酔状態からの覚醒は一言で言えば最悪の気分だ。
ふらつく頭部を抑えつつ、辺りを見渡すとそこには瓦礫、瓦礫、それとガラクタ。
周囲の光景と自分の朧げな記憶から、すぐさまに警戒レベルを引き上げる。
速やかに管を取り出し、仲魔を呼び出した。
「うにゃにゃー!!ようやく晩ご飯の……あれ?ここはどこにゃ?」
「あらあら、何か厄介ごとの雰囲気ね?
いいわ!私に任せなさいね♪」
取り敢えず、問題なく召喚ができて一安心。
また、その仲魔のリアルな反応から、ここが夢や幻覚の類でないことも悟り、一落胆と言ったところだ。
その上、出かけるときに家に置いてきたモーショボーは、ここでは呼び戻せないようだ。
明らかな戦力ダウンに沈む気持ちを抑えつつ、久しぶりともなる刀を握る。
いくつかの荷物と今回の
「おぎがぎょょょ!!!」
「キハハハハ!久々の人間じゃ!
さて、頭から喰らうてやろうか!手足をもいでやろうか!」
薄暗い崩れかけの廃墟から出ると、そこは無数の邪悪な悪魔の溜まり場であった。
その容姿は、片や半人半獣の緑色の毛むくじゃら、一人邪悪なぽん●っきー。
片や低位の日本の水神と言う名の空飛ぶ巨大エイ。
そんな愉快なレベル15オーバーの悪魔の群れの姿である。
元の世界だとどちらも異界の主をやっていてもおかしくない格の悪魔であり、そんなのが突然問答無用で群れになって襲いかかってきた。
並のプレイヤーでは歯が立たないのは間違いないし、大半のプレイヤーならばソロでこれらを相手する事は死を意味するであろう。
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【NAME】≪妖獣≫ピアレイ Lv17
HP ??
MP ??
【相性】 氷結・毒無効 火炎・破魔弱点
【スキル】・アクセルクロー
・毒ガスブレス
・プリンパ (単体 混乱付与)
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【NAME】≪妖魔≫イソラ Lv15
HP ??
MP ??
【相性】 氷結耐性 火炎弱点
【スキル】・毒かみつき
・アイスブレス
・メディア
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「おら!ギターケースの錆になれ!!」
「「「グギアアァァァ!!!」」」
もっとも、今回の自分に限って言えば、特に苦もなくこの戦闘を終えることができた。
相手が此方よりも低レベルかつ火炎属性弱点であったのは、運がいいのか日頃の行いか、悩ましいところである。
「ふぃ〜、倒した倒した!
……ところで、結局このレベルの悪魔が出るってこと、ここは知らないレアな異界……って事で良いのか?」
「いやいや、MAGの濃度は濃いけどここは異界ではないにゃ。
オイラの髭センサーもそう言ってるにゃ」
「確かに魔界の空気も混じってはいるけど……。
でも、ここは魔界や天界、ましてやドゥアトとも違うわよ?
だって、看板や崩れた建物から見える広告や文字が日本語でしょ?
魔界や冥府ならもう少し煩雑でわけのわからない言語が揃っているのよ」
周囲のあまりの荒廃っぷりと野良悪魔の強さからここは何処かの異界だと思ったが、仲魔に聞いたところ如何にも違うようだ。
かと言って、何故か都内をほぼ網羅しているはずのマップアプリも何故か作動しない。
仕方なく、改めて周囲の状況を確認するべく、近くで一番高い建物(元高層ビルの廃墟)へ悪魔を蹴散らしながら登り詰める。
「うわぁ……」
「おお〜絶景だにゃ、絶景だにゃ!
少なくも力強い、人間達の怨恨怨苦のMAGが溢れてるにゃ!」
すると、そこに広がるのは明らかに光が少なくなり、荒廃した都市の夜景であった。
ほとんどが崩れ、灯りがついているのが少ない建物。
薄暗く物、まるで人工の光のようにあっての光しか映さない石壁の星空。
淀んだ空気に軟調の濁流が流れる河川と海岸線。
何よりも目に引くのは、かつてこの大都会でもっとも高いとされたはずであった【折れた東京タワー】が、今いる場所が何処であるか、それを如実に示していたのであった。
「……な〜んで【東京大破壊】済みなんですかねぇ?」
思わず、目の前に広がる光景と今の自分が置かれている状況、怒涛の展開に、ただただ無力にもそう叫ぶしかなかった。
◆
さて、何故このような事になっているのか、大まかに説明しよう。
話は今より半日前、自分がはかせの家に修理に出した装備やアイテムを引き取りに来た時まで遡る。
「と!いう訳で、例のナギちゃんの装備とアイテムの修理と補強、さらにはランキング報酬の機械の解析も終わったから返すね!」
「ありがとナス!」
はかせから渡された懐かしの刀と学ラン風防具を受け取り、装備具合を確かめてみる。
服はバッチリ、刀も手に吸い付くかのように持ちやすい。
マントも以前より力強く前転しやすく、おしゃれ帽子も激しく動いても何故か全然外れない。
「注文通り、前回の【ドゥベ】討伐時に出た【フォルマ】をそのマントや軍服に使ったからね。
受け流しにさえ成功すれば理論上どんなに攻撃にも耐えられるよ。
あと、マントの【極地適応】も強化しておいたから、【毒沼】や【放射能汚染】などの【地形ダメージ】も防げるはずだね。
これからも存分にハプニングに巻き込まれてくれ!」
「その騒動の原因の半分ははかせのせいだって自覚ある?」
「でももう半分はノッブちゃん自身のせいだよ、間違いなく」
そんな風に装備の馴らしを行いながらも、はかせの説明を聞き、COMPを整理する。
そして、はかせの造魔と軽い模擬戦なんかもしたのちに、改めてはかせに説明を求めた時にそれは現れた。
「……で、結局あと【ランキング報酬】でもらったあの機械、あれは結局何だったの?」
「え?ああ、これね。
これは【FASS】、私たちの持つのと同じ【ターミナル】の一種だね。
ちょっと性能に差がありすぎるけど」
先のイベントの特別報酬【FASS】。
名前自体は確か【魔神転生Ⅱ】辺りで出てきた覚えはあるが、残念ながら詳しくは覚えていなかった。
「【ターミナル】って事は……これも女神転生恒例のテレポート装置の一種か?
もしくは悪魔を呼び出しちゃう系の機械?」
「理論上はどっちもできるかな。
この【FASS】と呼ばれる【ターミナル】はどうやら【時空間移動兵器】みたいでね。
それこそ無茶をしようと思えば、単純な場所移動だけでなく、【時間移動】や【平行世界移動】もできる【超高性能ターミナル】だよ。
無論、魔界と繋げれば【悪魔召喚プログラム】に、空間断絶すれば【異界創造機】に、異なる空間を繋げて【無限発電機】なんかもできるよ」
「ちょっと何言ってるか分かりませんね」
なお、その実態は思わず自分の脳が理解を拒絶するほどの劇物だった模様。
まさかこんなところでリアルタイムマシン兼どこでもドアを見るとは。
取り敢えず、ノリではかせに預けてみたがどうやらそれはいろんな意味で正解だったようだ。
こんなやばい機械を取扱説明書も無しに送ってくる運営は間違いなく頭がおかしい。
さて、そんなやばいを超えて意味不明な性能を持つ【FASS】であるが、だからこそ一つ気になることが出来てはかせに尋ねてみる。
「……と言う事は何だ、もしかしてこれさえ使えばワンチャン【元の世界】に帰れるかもしれないの?」
「それは、MU⭐︎RI!
ナギちゃんのいた世界に戻るにも座標の設定がわからないからね。
そもそも、この【FASS】自体が時空間移動兵器としてのマシンパワーが抑えめみたいでね、近くない並行世界へ移動は厳しいだろうし、無理にそんなことしたら、移動中に壊れて時の迷子になるのが関の山だよ!」
「ですよねー」
まあ、ある種予想通りの答えではあった。
現実はこんなもんだろう。
「色々言いたい事はあるけど、はかせ的にも十分これの解析は終わったし、そろそろこれをナギちゃんに返したいと思います!」
「え、なんか話聞く限り危険物すぎてそのまま預けてバイバイしたいんだけど、もしくは買い取って欲しい」
そんな危険物をポンと返されても困ると言うのが本音だ。
いや、そんな危険物を友達とは言え知らずに預けていた自分も大分問題ではあるが、それはそれと言うやつだ。
「まあまあ!
この【FASS】はノッブちゃんでも問題なく使えるように専用リミッターいくつも付けたし、ちゃんと取説やヘルプも付けたんだよ?
具体的にはこれ一つで【無限発電炉】兼【悪魔合体装置】兼【悪魔全書】機能を使えるようにしてみました!
後、【はかペディア】や【パリンと割れるバリア】、さらにはキッチンシンクなんかも付けて今ならなんとお値段送料共に無料!お買い得だね!」
しかしながら、ここまでしてくれたのに無碍に返すわけにもいかない。
さらに言えばこの【FASS】、元はと言えば(運営に押し付けられたとは言え)自分のものである。
だからこそ、自分はこの【FASS】を素直に受け取ったし、はかせがリミッターとやらをかけていると言ったから、まず問題ないだろう。
そんな風に思っていたのだ。
「げっ」
「あっ」
しかし、それゆえにハプニングと言うのは予想外の時に起こるからこそ問題なのである。
そう、まさか初めての【FASS】での悪魔合体で【合体事故】をやらかしてしまったのであったとさ。
◆
「にしても、この【大破壊後東京】は歩きにくいったらありゃしねぇ。
道も舗装が溶けてボロボロのが多いし、なのに薄暗い。
かといって明かりをつけると悪魔が集まるし、やりにくいったらありゃしない」
「難しい事はよくわかんにゃいけど、取り敢えず面倒くさい場所だと言う事は分かったにゃ。
……って、あ!つまりここだとちゅ〜●を買うことが出来ないのかにゃ!?!?
せっかくの人間界なのに!!あの人類が生み出した最高傑作の一つが、まさか失われてしまったのかにゃ!?!?」
まさかのち●〜る
でも、製造元のい●ば食品は確か静岡の企業故、この大破壊後も残ってるかは怪しいだろう。
「うおおおお!!!
で、でもオイラは信じてるにゃ!
世界に誇り『世界の猫を喜ばす。』のキャッチフレーズを持つ●なば食品なら、きっとこの世界に猫がいる限り、滅びはしない!
滅びはしないはずだ……と!!」
勝手に熱くなっている元カブソはさておき、時間は戻り、現在自分たちがいるのは【大破壊後東京】。
結局のところ、今自分たちがこんな場所に来てしまった原因は、悪魔合体の合体事故による【FASS】の暴走である。
暴走した【FASS】は何故か勝手に【時空間移動】を発動させ、自分をこの【大破壊後東京】に飛ばしてしまったという訳だ。
「そう言えば、放射能汚染とか大丈夫なのかねぇ?」
当然、こんな状況は此方にとっても想定外であり、出来事は致命的だ。
このような事態の前では、流石に先のイベントのランカーと言えども消沈してしまう事不可避……
「あ!あっちにピアレイの群れがいるぞ!
逃すな!追えっ!!」
「合点承知にゃ!
お!サマニャー!そこ直線で行くより、こっち回り道すれば挟み撃ちに出来るにゃ!」
「でかした!」
「ちょっと順応するの早過ぎない?」
なんて事はなく、こんな状況でも意外と自分の心は平穏であった。
そもそも、こんな風にいきなり知らない場所や危険な場所に飛ばされるのはもう3度目くらいである。
それに今回はイベントの備えのために、事前の準備はそれなりに整っているし、飛ばされる直前にきちんとはかせを突き飛ばしたお陰で、おそらく被害は自分だけ。
その上、元凶である【FASS】はきちんと此方の手元のCOMPに収納済みなのだ。
なればこそ、まだまだ全然希望はあるし、ともすれば落ち込むよりは少しでも手足を動かした方が為になると言うのが此方の経験則だ。
「取り敢えず、当面の目標は何処か休める場所の確保。
時間に余裕ができたら今回の飛ばされた元凶の【FASS】の解析……は自分だと無理だから、専門家に解析してもらう。
それと出来れば、この東京崩壊の原因究明も出来たらって感じかな」
「マスターがタフ過ぎて、お母さん嬉しくもちょっと寂しい。
もっと、も〜っと頼ってくれてもいいのよ?」
こうして、自分と仲魔は決意を新たに、この未知なる【大破壊東京】の探索を開始するのであった。
なお、数時間後。
「イヤアアァァァァ!!」
「ヒャッハー!!!
脱走奴隷だぁぁぁ!!女だァァァァ!!
捕まえろ〜〜!!」
「ゲッヘッヘ!!
女ぁ!今ならまだ俺様の肉奴隷で勘弁してやるゼェ!
大人しく降伏しろやぁぁぁ!!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【NAME】≪外道≫処刑ライダー Lv18
HP ??
MP ??
【相性】 銃・呪殺弱点
【スキル】・たいあたり
・挑発 (敵全体 攻撃力上昇 防御力低下)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
なんと!そこには悪魔より悪魔と評判な、バイクに乗った暴漢達と追いかけられる女性の姿があった!
「やっべ!!リアルヒャッハーだ!
写真撮ろう!写真!
あ、あと奴隷制度あるのか、あっちゃうのか!
流石大破壊東京!期待を裏切らない!」
「……サマナー、なんかテンション上がってない?
気のせい?」
「これもまた人間にゃ」
かくして、私は溢れ出す世紀末臭に、胸の高鳴りを抑えながら、そのモヒカン達へと接触を謀るのであったとさ。
◆あらすじを3行で
【FASS(タイムマシン)】の導きで〜
大破壊東京に飛ばされて〜
ノブナギは〜ヒャッハー達と〜出会った〜()
なお、当初はもっとイージーモードになるはずでしたが
主人公強いし、もっとリソース削ったろと言う天の声でこうなりました。
ここまで見てくださった方&感想ありがとうございます!
また、今回も感想などがあると嬉しいです