愛と勇気と知恵で大勝利するストーリーを書いたから、実質初投稿です
さて、なんで前回こんなことになってしまったか、お気づきの方も多いと思うが、改めて説明しよう。
まず、ここに【集魔の水】と言うアイテムがある。
ご存知の方も多いと思うが、これの効果は簡単に言うと【悪魔と遭遇しやすくなる】というものだ。
使用方法も簡単、それを体に香水のごとく振り掛けるだけ。
すると体から発する匂いやマグネタイトの質が変わり、悪魔にとって魅力的なものになるという仕組みだ。
しかし、それ故に、このアイテムはそもそも周囲に悪魔がいない状況で使用してもまるで意味がない。
今回のようにイベント中なのに、エネミーソナーが真っ青な自分たちでは1つ使用したところで対して悪魔遭遇率が殆ど変わらなかった。
……だからこそこんな事を思いついたのだ。
『一つで効果が薄かったら、複数使えば意外となんとかなるのでは?』
悪魔的発想である。
いや、そもそもゲーム内ではこの手のアイテムは複数個同時になんて使用できなかったので、そんなことも可能なのかも怪しい。
Compでも表示上は複数同時使用不可とされている。
が、どうせダメで元々、軽い気持ちで2つ同時使用をしてみた訳だ。
『……すぅ、スゥー、スゥ〜〜〜!!』
『うわっ!!サマニャー、ちゃんと歯磨いてるかにゃ?
ヤバい異臭がするにゃ』
こちらにひっついて離れないモーショボーと、勝手にこっちの匂いを嗅いでおきながらフレーメン現象を起こしやがったカブソ。
カブソを地面と悪魔合体させながら、取り敢えずどうやらこの【集魔の水】は複数同時使用ができそうな事を確認した。
となれば、表示が微妙にバグっているCompを他所に沖田さんと自分は集魔の水をどんどか複数使用するのは自然の流れであろう。
その結果と言えば、1つだけならほぼ変わらず。
2〜3使えばソナーに悪魔の影は映るものの、遭遇する前に逃げられる。
4つ使えばようやくまともに悪魔と戦える様になり、5つでようやく人並み以上の遭遇率。
そうして、6つも使用すれば……。
「……生きてる、私、生きてるよ」
「なんで生きてるんだ、自分」
『当然ですよね!ノッブならこれくらい楽勝、楽勝!
……すいません、流石に今回ばかりはノッブでも厳しいと思ってました』
そうして、起こった結果が前回のラスト、つまりは【異界だよ!全員集合★六本木悪魔祭り♪ドゥベも来るぞ】という訳だ。
あの先の悪魔の大軍とは何とか回避と防御に専念する事で最低限の被害で突破。
そのまま逃げる様にこの六本木ヒルズビルへと逃げ込み、一旦の休息を得たという訳だ。
なお、沖田さんは6つも集魔の水を使用してしまった自分と違い、4つしか使用してないため、このデスレースには巻き込まれなかった模様。
クソが。
『でも、結局今こうして私のナビゲートとノッブの変態回避力のおかげて、一時的に避難はできているんでしょう?
ならば、後はここから態勢を整え反撃するのみ!そうですよね!』
「無茶を言うな、アホゥ」
『えー……でも、現にこうやって一時的とは言えビルの中で籠城できてるんでしょう?
意外と実力的にも拮抗できるみたいだし、何とかなるのでは?』
此方がピンチの割にやけに余裕のある口調の沖田さん。
しかしながら、実際に戦い続けた身としては、あれと戦うどころかまともに相対すらことすら困難だと言わざる得ない。
「そもそもこうやって運良く休憩できてるのも、沖田さんが別れる直前にくれた無数の回復アイテムのおかげだからなぁ。
敵のボスに此方の攻撃は効かないし、悪魔の質もバカにできるほど弱くはない。
そもそも、相手が鳥系の悪魔を召喚できる時点で制空権すら取られてるんだ。
あくまで、自分が生き残れてるのは、敵がかなり機械的でアホだから、それだけだ」
「……機械思考って、学習能力あるのに?」
「それでも、だ」
沖田さんに分けてもらったチャクラドロップを口に入れながらそう返す。
まあ、確かにあのドゥベたちの召喚する悪魔はレベル制限はあるとは言え、こちらの嫌がる悪魔を積極的に召喚するぐらいの脳味噌はあった。
此方の攻撃が物理攻撃多めだとわかれば、物理耐性の悪魔を多めに、制空権を取るのが苦手だとわかれば、鳥系の悪魔の群れを出す程度のいやらしさを持ってはいた。
が、それでも行動が機械的すぎる故か自我がないからか、その行動は基本的な部分は見え見えであった。
単純な攻撃一つとってもフェイントなしでかわしやすいし、集団で攻めてくるくせに陣形を考えていない。
さらにはどんな悪魔を召喚できても、その肝心の攻め方が【追い詰めて、悪魔を召喚して囲んで殴る】以外の作戦をとってこないのだ。
戦略面も作戦面もお粗末、これならばいくらでもやりようがあると言うものだ。
そのうえ、あいつらは主従揃って【ロボット三原則】すら破れないのが大きい。
即ち【自傷自殺の禁止】と【仲間への攻撃禁止】、それに加えて【無駄な器物損壊】の遵守である。
これだけ縛りがあれば、いくらあの大群でも、体の大きいだけの亀同然だ。
こちらが向こうに肉薄すれば、範囲魔法をつかえず、【デビルスリープ】で前衛を眠らせればそれだけでお手軽の肉壁をゲット。
おかげで悠々と六本木ヒルズビル内に籠城できているし、ビル内で眠らせた悪魔を人質もとい悪魔質にすれば、ビル破壊ですり潰すと言う作戦すら封殺できてしまった。
『……まさか、ドゥベが対魔忍属性があったとは……
この沖田さん、不覚!!』
「対魔忍言うな。
まあ、頭が悪いのは確かだけどな」
改めて、エネミーソナーを確認しつつ、【煙玉】やガソリンをまいて部屋を何度か移動する。
どうやら、今の向こうは此方を探すために一階一階地味なローラー作戦をしている模様、効率悪すぎだろ。
「ま〜、ここまで来ればもう時間稼ぎも十分か。
そろそろ、集魔の水の一つ目の効果が切れる時間だし。
だったらもう、業魔殿に戻っても大丈夫だろう」
そうして、そんな悪魔達の努力を台無しにするべく、懐から取り出したるは一つの石。
その名前も【トラエストストーン】。
このアイテムは使うとあら不思議、何と自分が安全だと思った場所まで一瞬でワープできると言う便利アイテムなのだ。
真Ⅱだとダンジョンの入り口限定であったが、Compで確認したところ、どうやら回復の泉と業魔館のどちらでも好きに行き先を選べるようだ、ⅡじゃなくてIMAGIN式ですか、やったぜ。
なお、ここまでこれを使わなかった理由は、単純にこれが沖田さんからのプレゼントのせいで1つしか持っていなかった事と下手に効果が残っている状態で使っても、逃げたところでまたすぐに悪魔の群れがついてくるのが目に見えていたからだ。
是非もなし。
「それじゃ、じゃあな!バカな悪魔ども!
今度はもっとオツムの方も鍛えてから、出直してくるんだな!」
そうして、私はこの悪魔との知恵比べに完全勝利した事を確信しながら、手に持つトラエストストーンを発動させるのであった。
――――キンッ!
「え?」
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【caution!!】
▼現在そのアイテムはこの建物に貼られた【結界】のため、使用することはできません。
▼そのアイテムを使用するには、この結界を破壊するか、もしくは術者を排除してください
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『……というわけで、モーショボーさん!
出番ですよ☆』
「ええええええええええぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
【悲報】ドゥベ達賢い【帰れない】
そんな冗談はさておき、どうやら相手は思ったよりかなり賢いらしい。
ビルの入り口や窓の外を強い悪魔で固めながら、結界まで張り脱出を防ぐ。
そうして相手の逃走路を防いだところで、ゆっくりと下から順に階を制圧して此方を追い詰めているようだ。
「ふ、ふふふ、どうやら今回の知恵比べは引き分けみたいだな!」
「どう見ても完敗なんだよにゃあ……」
そもそも、相手が無敵の上で成り立ってる作戦だからセーフ。
ともかく、多勢に無勢な上に攻撃も通じない相手には、にげることしかできず、現在いる場所はとうとう最上階である。
これ以上逃げ場のない絶対絶命の袋小路で、ここから脱出する方法は、この建物そのものに結界を張っている術者を何とかしないといけないというところまではわかった。
一応は、ビル中を逃げ回ったおかげで、どこにその術者がいるか、また結界の範囲がどの程度かも大凡は理解できた。
……が、当然この結界を張っている術者は雑魚悪魔ではなかった。
「でも、寄りにもよってこれも【ドゥベ】が。
しかも、【複数匹】が分担してるのかよ」
博士特性のCOMPアプリを起動させながら、【マップ】を見ると、そこには特別な反応を示す【ドゥベ】達が六本木ヒルズの1階入り口に複数あるのがわかった。
どうやらこいつらが今回の結界を作っている術者であり、こいつを倒さない限り、自分たちはこの建物の外から周囲10メートル以上は離れられないらしい。
さらに言えば、【ドゥベ】は当然ながら≪全属性完全耐性≫。
その上、この結界は術者を倒さなければ脱出できないのにその術者は無敵な上に一匹二匹倒したところでは結界は壊れないというくそ仕様。
このままでは一方的に消費して、嬲り殺されることが決定しているかのように思えるだろう。
……そう、それはこのモーショボーがいなければの話である。
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【NAME】≪凶鳥≫〈おませ?な〉モーショボー Lv18
【相性】 銃・火炎弱点 衝撃無効 電撃吸収
【スキル】 ・ザン
・ディア
・マカカジャ
・マハザン
☆自爆 (自爆属性【防御できる相性は無い】 使用者の死亡と引き換えに敵味方全体にダメージ)
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「げへっへ!大人しくあきらめて、人間……いや、悪魔爆弾になるにゃ!!」
「はぁぁぁ!!!ふざけないでよこのくそ猫!!!
あんたこそケットシーならケットシーらしく、まともな知恵の一つや二つ出しなさい!!」
モーショボーと元カブソがお互いに罵声を浴びせながらもみ合っているのを尻目に考える。
そう、自分の持ち札で唯一あのドゥベに有効打を与えられる可能性がある、それがモーショボーの【自爆】である。
モーショボーの持つ自爆は【耐性無視】の大ダメージスキル。
一度使えば本人が死亡してしまうが、それでも敵味方を含めた周囲に大ダメージを与えることができる。
もっとも、敵味方の部分は、モーショボーをミサイル方式に飛ばせば何の問題もないし、遠く離れた場所で死亡しても封魔管に戻ってこれるのはすでにカブソで実験済みだ。
今回の結界を破るためにモーショボーを結界ドゥベに特攻させることは決定済みになったわけだが、そうなると一つ問題が出てくる。
「……なぁ、モーショボー?
その【自爆】を使って、果たしてちゃんと【ドゥベ】を倒すことができるのか?」
「……!!そ、そうだよ!!
そもそも、私のできる程度の【自爆】だと、あのへんなのを傷つけることはできても、完全に倒しきることは難しいと思うよ!!」
「そうなの?」
「そうなの!しかも、威力は私の保有マグネタイト?の量に依存しているからね!
【マカカジャ】や【タルカジャ】をしても無駄!
だから、ね?やめよ、やめよう!そんなことしても無駄だから、ね?」
此方の腰辺りに抱き着きながら、必死にそう訴えかけてくるモーショボーちゃん。
その可愛さに思わず罪悪感と癒しを感じつつ、その頭をなでつつ考える。
入口にたむろしているドゥベ達は一回自爆したで倒すのが難しのならば、リカームで無限神風特攻させれば何とかなるか?
でも見たところ、ドゥベ達は最低限の学習能力があるので、波状攻撃は得策ではない。
そもそも、モーショボーをこちらで蘇生させて突っ込ませる関係で、特攻させるたびにこちらの位置がばれるため、できれば一度で決めたい。
ともなれば……
「それ、本当かにゃ~?嘘ついてるんじゃないかにゃ?そんな匂いがするニャ!
自分が自爆したくないからって、そんな嘘をつくだなんて……
かーっ!!みるにゃ沖田、卑しい女だニャ!!」
「はぁああああ!!!!私がそんなくだらないことでうそをつくわけないでしょ!!
……ま、まぁ、確かに自爆の威力を高める方法に心当たりがないわけでもないけど……」
『なんだ!いい方法があるんじゃないんですか!
なんで早く言わなかったんですか?』
沖田さんとカブソに問い詰められたからか、モーショボーは顔を赤め、もじもじしながらもこう答えるのであった。
「えっとね、実は、自爆の威力を上げるには、私の保有マグネタイト量を増やせばいいから……。
即ち、私にたっぷり生体マグネタイト貢いでくればいいのよ!」
「あ!でも魔石じゃ無理よ?あれは、器以上には回復してくれないから!
それと、血とか生贄もダメ!趣味じゃないし!
で、でもそうなると、……ね?そ、その、手軽に出る強い感情でね?
……ぞぞぞ、俗に言うボーチュー術?っていうの?
あ、あの、サキュバスさんが言うには、好きな人と、え、エッチなことをすれば、自然とお互い気持ちよ〜くなって、自然とマグネタイトのやり取りができるというか……。
も、勿論!いくらナギが相手でも!そういう事はまだいろいろ早いと思うわよ!
で、でも、少しくらいなら、ナギがしたいって言うなら、断れないかな〜って……」
「うわっ」
「うわっ」
『何というムッツリ』
「う、うわって何よ!!
そ、それに私だって、これはないなと思いながら言ってるわよ!!
で、でも本当なんだから仕方ないじゃない!!!
私はムッツリじゃな〜〜い!!」
耳まで赤くなりながら、ワタワタと手を振るモーショボーがそう抗議をする。
まあ、確かにそんな方法ならば色々言いたくないのもわかる。
そもそもとして、此方としても召喚や献血以外でのマグネタイトの渡し方なんて教わったこともないし、房中術もそうだ。
当然、あんな様子ではモーショボーの言うことだって正しいかどうかわからないし、やり方を知ってるわけもなし。
正直かなり怪しい方法である。
……でもまあ、試してみる価値はあるか
「え」
『え』
「え?ちょっ…………!!!?!? 」
という訳で、おもむろにモーショボーの唇を奪ってみた。
おおう、悪魔の唇なのにしっとり柔らか。
温かみも感じるし、粉ミルクと炊き立てのコーンを思わせる香りだ。
初めは硬直し、しばらくするとキスされていることに気がついたのか、暴れようとする。
が、それは優しく押し倒し、指も絡めることで封じる。
「……ダメだったか?」
「はひゅ♪え、ええ!???
い、いや、ダメかどうかで言えばダメじゃないけど、ま、まだ、心の準備というか……はひゅん♪」
ダメじゃないならいいよね!
という訳で、めんどくさいことを言われる前にもう一度唇を奪った。
とは言っても、ただ唇を奪うだけではそれは本当のセクハラヤロウ?になってしまう。
今回の目的はあくまで【マグネタイトの供給】。
なので、あくまでその目的のために、静かに此方の唇を開き、舌を使って相手の唇も開かせた。
「はわわ、はにゃにゃにゃにゃ……」
背後がうるさい。
しかし、モーショボーも聞こえてないのか無視しているのか。
モーショボーの口内を舌でなぞり始めると、彼女も覚悟を決めた表情で、その潤んだ瞳を静かに閉じた。
静かな水音が響く中、自分はようやく準備の整い、手探りながらも口から口へとマグネタイトを送り込んでみた。
やり方は単純、いつもやっている業火の術こと【ファイアブレス】を発火させずに、エネルギーのままモーショボーの方へと注ぎ込むと言った方法だ。
残念ながら、正規のデビルサマナーでない自分では、この方法が正しいかどうかはわからない。
がどうやらモーショボーが炎上していないところを見るに、直ちに悪影響はなさそうだ。
少しづつ、慎重に唾液と共に流し込んでいく。
『ちょ〜〜!!ノッブ〜〜!!
ま、マジでやっちゃってるんですか!!あ、明らかにえ、エチエチな音が聞こえちゃってるんですけど〜〜!!』
まあ、怪しい水音がしちゃってるからね!
是非もないよね⭐︎
でも色々と命がかかっている場面だし、そもそも相手は悪魔だ。
この程度ならたとえ供給相手の見た目が人外童女でも許される……筈だ。
「……ぷはぁ♪
あ……あ……♪」
「お〜い、モーショボー、大丈夫か〜?」
「あひゅん♪
えへへ♪ナギったら、本当に強引で……えへへ♪」
どうやら大丈夫じゃないようだ。
どうにも話が通じないようなので、諦めてアナライザで互いの状況確認してみる。
すると、モーショボーのHPとMPがどうやら最大値を超えて回復しており、逆にこちらのHPとMPはそれ相応に減少していた。
適当に勘だけでやってみたが、どうやら試みは概ね成功したようであった。
「うわぁ……まさかマスターが処女なのに房中術の使い手だったとは。
色々知りたくなかった、まさに清楚系び……プゲラ!!!」
カブソからも成功しているお墨付きをいただいたよ!やったね!嬉しくねぇ。
そんな出刃亀にアギストーンの塊を投げぶつけ、それをビル中にばら撒くように指示して部屋から追い出した。
そうして、ようやく自分は改めてモーショボと向き合い、口を開く。
「モーショボー」
「えへ、えへへへへ♪
だ、ダメよナギ♪ここだとまだオキタが聞いて……」
「今から、君にはこの結界の術者であるドゥベに【自爆】をもって特攻してもらう。
おそらく、それだけが私達がここを無事に脱出できる唯一の方法だ」
「あ……」
蕩けていたモーショボーの表情が引き締まる。
此方の真剣な言葉を聞いたからだろう、彼女の顔も自然とまじめなものへと戻っていた。
「もちろん、君がこの作戦を嫌がっていることは十分理解しているし、それがただ痛いからというちゃちな理由ではないことは私は十分理解している。
……それでもなお、私は君にこの作戦に同意してもらいたいと思っている」
補足しておくと、このモーショボー、こう見えて戦闘の際にはかなり真面目だ。
ちゃんとこちらの盾になれと言えば、たとえそれが死ぬほどの致命傷の攻撃であれきっちり庇ってくれるし、そのために本当に死んでしまう攻撃を受けることもあった。
その彼女をしてなお嫌がる【自爆】とは……おそらくこちらの予想を上回り、厳しいものなのであろう。
そうして、その推測は彼女の言葉によって肯定された。
「……うん、そうね。
ナギ、いえ、愛しい人でありマスター、そしてサマナー。
自爆っていうのはね、そんな貴方に頼まれてもなお嫌なものなの。
だってね、本来概念である悪魔にとって、自爆は文字通り【自我の崩壊】、いわゆる【本物の死】を意味するのよ?」
モーショボーはそう言いながら、まっすぐな瞳でこちらをのぞき込んだ。
「勿論、私は貴方と契約しているから、自爆しても完全に自我が消失することはない。
強い変質もしないだろうし、ちゃんと復活もできる。
……でもね、それでも多少は影響は出るかもしれない。
いや、もしかしたら一度自爆したら以前の自分とは別物になってるかもしれない、いや、絶対になるに違いない」
モーショボーは悲壮に満ちた表情を浮かべながら此方へと顔を向ける。
「それでもマスターは私に【自爆】してほしいの?
私が私でなくなるかもしれないのに、本当に私が消えてしまうかもしれないのに?」
そういうモーショボーの瞳には、人には出せぬほどなお黒々とした深淵を映しながら、何処か壊れかけの少女の様な儚さも見て取れた。
もし、真に今の彼女を愛していれば、それだけで自分の考えを改めたかもしれない。
善人ならばそれだけで罪悪感に囚われ、別の作戦を取ろうとしたかもしれない。
「私の心までもが悪魔になっても、好きと言ってくれますか?」
……しかし、それでも私の答えは変わらないのだ。
何故ならば、独善的なデビルサマナー、仲魔を思いはしてもそれで自分を曲げる事はしてはいけないから。
「……あっ♪」
それ故に、私は返答と謝罪がわりに、改めてモーショボーを強く抱擁した。
言葉は不要、純粋な信頼による返答である。
……いや、別に答えに困ったからごまかそうとしているわけではない。
ないったらない。
「……うん♪わかったわ、ありがとうね、ナギ。
私、【自爆】するわ。
誰でもない、私のために。
貴方の愛が欲しいから、自分から死んであげるね♪
貴方の
……だから、その分たっぷりの【
顔を赤らめながらも、その様にお願いするモーショボー。
その誠意に答えるべく、此方もそっとその顔に此方の顔を重ねるのであった。
かくして、お互いの合意の上、自分とモーショボーによるドゥベ爆殺作戦が実行に移されるのであったとさ。
なお、供給風景
「取り敢えず、初めは此方のHPが残り1割切るにまで全力で注ぐ感じにするか。
慣れたら残り1止め、そんな感じで」
「え」
「丁度魔石も99個あるし、50回は挑戦できるな!
あ、チャクラドロップやドリンク系を口移ししつつマグ供給出来れば、時間短縮にもなるな、試してみるか」
「いやいやいや!さすがにそれは、いろんな意味で壊れちゃうから!!
それに、私の体だとそこまでの過剰マグには耐えられな……」
「え?無理?
あー、でもよく考えなくても過剰マグは危ないのか。
となると常にCompは見れる様にしておいた方がいいな。
それと効率は悪いけど画面が見えなくなる口移しでのマグネタイト供給もやめて、手からやった方が……」
「ダメです」
「え」
「そんな雰囲気台無しなこと、今更許される訳ないでしょ!!!!!!!
私とのマグネタイト供給は口移し以外絶対に認めないんだから!!
あ!でも、手と口同時ならウェルカムだからね!!
むしろそうして!!
ハーリーはーりーHurley!!」
「……まいっか!」
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かくして、ようやくビル全体にアギストーンという名の爆弾とポリタンクに入ったガソリンをばら撒き終わったカブソ。
彼が最上階に戻って見たものは、かなりやつれた自分のマスターと、まるで崩壊寸前の太陽を思わせるほど輝き点滅しながらもいい顔をした凶鳥少女の姿であった。
なお、マグネタイトの過剰供給による性能向上効果は素晴らしく、モーショボーは溢れ出る魔力でまるで彗星の如く高速で悪魔も壁も関係なしに最下層へと突き進む。
さらに、肝心の自爆の威力は最下層から放たれたそれは、20階以上離れている筈なのに、なお建物内全ての悪魔、カブソ、さらには彼女のマスターを巻き込み、建物ごと倒壊させるには十分な威力があったことをここに記載しておこう。
この後めちゃくちゃドゥベ狩りされた
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久々の投稿であったのに、沢山の感想ありがとうございます!
すごく励みになります!
ゆっくりですが更新していきたいと思っています