魔銃使いは迷宮を駆ける 作:魔法少女()
月が欠けゆきつつある夜空の下、巻き起こったのは大爆炎。
見る者全ての瞳を焼く魔力の輝き。耳を弄する大爆音と共に周囲に散らばる瓦礫片が吹き飛ばされる。中心部分のフリュネは元より、即座に離脱した俺とレーネ、それなりの距離を置いていたメルヴィスやディンケなども含め、全ての者が爆風に呑み込まれる。
本来ならば回避すべき事故現象である
「がっ────」
レーネに抱えられた状態で吹き飛ばされ、門前にまで盛大に吹き飛ばされた所で地面を二、三度転がり、止まる。
「流石に死んだよねぇ……いたたた……」
「ふぅ、今ので流石に死んだでしょう」
爆発の中心地天からは魔力の残滓が残る熱風がほんの僅かに立ち上っている。
銀槍を突き立て、其処に魔力を充填してからの暴走。体の内に突き刺さった銀槍が爆発したのだ、その
中心地は煙で目視できない。代わりに周囲に視線を向けるとエリウッドとメルヴィス、サイア、ディンケの姿が見えた。
油断なく爆心地を見つめる彼等を見て、フィアとイリスの事を思い出した。早く彼女らを治療しないと、と意識がほんの僅かに逸れた。
瞬間。
轟音と共に瓦礫塊が未だに煙立ち昇る爆心地よりエリウッド目掛けて打ち出された。
「エリウッド、避け──!」
瓦礫塊の着弾音がディンケの絶叫を掻き消し、ついでと言わんばかりにその瓦礫塊はエリウッドの姿も俺達の視界から完全に消した。
「ッ、まだ生きてます!」
メルヴィスが壊れかけの風属性の魔剣を振るって土煙と魔力の残滓を帯びた空気を吹き飛ばす。
「─────ッッ!!」
顔の左側半分の皮膚の表層は完全に炭化し、その下の皮下組織にすら重度の火傷を負った状態であろう事は一目瞭然。左目は急激な圧の変化に耐えきれずに破裂したのか眼孔からゼリー状の液体が零れ落ちて引き裂けた頬を濡らす。右目はギラギラと理性が消し飛び、憤怒一色に染め上げられた状態で此方を射止めている。
爆破箇所である左腕は完全に千切れ取れており、左肩の部分はごっそり消えて無くなっている。その上、体の左側の大半がⅢ度熱傷、良くてもⅡ度熱傷に犯されており、通常ならば動く事等不可能に等しい状態である。
もはや生きている方が不思議な程の重傷であるはずのフリュネ・ジャミールは、ミチミチと顔の右半分に無数の青筋を立て────ブチィッと言う生々しい音と共に、しゃがれた声を上げた。
「アタイの、美しい顔が……アタイの、美しい肢体が……」
文字通りのゼリー状のドロドロしたモノを眼孔より零しながら、フリュネが一歩、また一歩と窪んだ爆心地より這い出てくる。
「嘘でしょ、流石に……流石に死んでくれてもいいでしょ」
「あははー……なんというか、流石第一級冒険者さまだぁ~」
僅かに震える声で現実逃避染みた事を言い出すレーネの尻を引っ叩き、即座に再度攻撃の為の計画を練る。
戦闘続行可能戦力は俺、レーネ、ディンケ、メルヴィス、サイアの五人のみ。せめてフィアとイリスが復帰すればなんとかなる。即座に回復魔法を使用する為に詠唱を始めねば。
「回復魔法を使います、詠唱の時間を稼いでください」
「うへぇ……まあ、やってみるけど」
苦々しい表情でレーネが普通の革製の鞭を取り出し、ディンケが半月刀を握り、サイアが大剣を担ぎ、一メルヴィスが弓を構え、直線に俺に向かって来ようとするフリュネを足止めせんと行動を開始した。
真っ先にフリュネと接敵したのは、最も距離が近かったディンケ。彼が半月刀を振るった瞬間。
フリュネが無造作に振るった拳弾が刃諸共、振るった彼を吹き飛ばす。
「【聖域を守護する者達よ、非力な我が身が捧げる献身を受け取り賜え】」
詠唱にかかる時間はおおよそ1分程度。高速詠唱を得意とする俺でもそれなりにかかる魔法だ。効力は折り紙付きとはいえ、詠唱に時間がかかり過ぎる。
二人目はサイア。彼女の持つ重量級の大剣による振り下ろしは、迎え撃つ下方向からのフリュネの拳と正面衝突。まるで玩具の様に大剣はへしゃげ、勢いのままにサイアが真上へ打ち上げられる。
「【──聖域に降り注ぐ雫よ、癒しとなれ】」
三人目、メルヴィスが放つ矢は無視されており無意味。
四人目のレーネが立ち塞がらんと鞭でフリュネを穿とうとし────鞭を掴まれた。少女が慌ててそれを手放した瞬間。反撃と言わんばかりに怪物がその鞭を振るう。ただの編み込まれた革紐の束が、持ち手側の部分が回避する間も無く少女の脇腹を穿つ。
鈍い打撃音。鞭で人を打つ音というよりは、鈍器で穿った様な鈍い音を立ててレーネが吹き飛んでいく。その先には狙いすましたかのようにメルヴィスの姿があり────鈍い音と共に二人が激突。
「【──流るる涙の代わりに、我が血を捧げよう──】
後一文節。
残る詠唱を終えれば広域回復魔法が発動する────のだが。
ミシッと俺の足元に広がる
詠唱が間に合わない。後、一文節。それの詠唱が終わるより前に、目の前の巨女、死に際に立ってなお恐ろしい怪力を以てして立ち塞がろうとした者達を玩具の様に蹴散らした化物、フリュネ・ジャミールの攻撃が先に届く。
「────くも、アタイの顔を、肢体を……殺すッ!!」
「【──聖域に──】」
拳が握られ、筋肉の脈動すら感じられる程の距離。凄まじい圧を放つ拳弾が迫る様子を目を見開きながら捉える。
回避不可能。
防御不可能。なけなしの強化
迎撃不可能。回復魔法詠唱中に他の攻撃魔法は使えまい。使えたとて圧倒的威力不足なのは確定。
迫る拳を前に、出来る行動は詠唱を続ける事のみ。
「【──響く──】」
とてもではないが、間に合う筈が無い。
既に眼前に拳は迫っており、救援に来そうな存在はゼロ。
もはやこれまでか、即座に身を翻して撤退していれば反撃で命を落とす事等なかっただろうに。
手負いの獣の反撃で命を落とすのか────あまりにも、悔しい。
最後の詠唱の一言が口から出るより前に、フリュネの拳が俺を捉え────轟音と共に衝撃が全身を打ち付けた。
「──────」
思わず目を閉じ、身構えた俺の全身を走り抜ける衝撃は、思った以上に小さかった。
フリュネの拳が弱かったとか、そんな話以前に、その衝撃は
思わずそちらに視線を向けようとし────目の前のフリュネの拳が、横から伸びた手に掴まれている事に気付いた。
「ッ!?」
受けた衝撃の原因は、その人物にあったのだろう。
俺とフリュネのすぐ真横に
横から、掴んだ? ────横から掴んで、あの一撃を止めた? しかも、着弾の衝撃はあれど、フリュネの拳弾の衝撃は完全に殺されている。
とんでもない芸当だった。化物と罵り続けていたフリュネより、よほど化物染みているうえで技量すらも想像に及ばない程に天井知らずの人物。
「フリュネ・ジャミール……見つけたぞ」
厳然たる声音と共に威圧感に満ちる。
間違いない。この光景を見せ付けられたら誰もが認めざるを得ない。
【イシュタル・ファミリア】が最終目標とした派閥の撃滅に至る際に最も入念な対策がなされる人物。
『殺生石』でのフリュネの強化。それだけに留まらず
「随分と手酷くやられた様だな」
「っ────!」
【剣姫】を目の仇にして、強気な態度を微塵も揺らがす事のなかった巨女が、初めて動揺する相手。
防具どころか、武器すら装備していないにも関わらず、放たれるのは武人の重圧。
【フレイヤ・ファミリア】の首領。
『頂点』とも謳われる、オラリオにおいてただ一人────唯一のLv.7。
【
「オ──オ、オオ、オッタルッ!?」
2Mを超えるはずの巨女のフリュネよりも更に背の高い
フリュネですら子供と思える程の身長差を持ってして、その武人は巨女の攻撃を完全に無力化していた。
「ぎっっ──ギヤアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
劈く様なしゃがれた絶叫に停止しかけていた意識が再起動する。
オッタルが掴んでいるフリュネの腕がまるで溶けた飴細工の様にぐにゃりと形を変える。否、オッタルが巨女の腕を握り潰していた。
骨の砕ける音と共に、巨女の右手首から先がぐちゃぐちゃな状態になる。
あらん限りに仰け反るフリュネを他所に、オッタルが此方を見ていた。
「下がって居ろ」
「え────」
いや、下がれない。そんな返答が口から飛び出すより前に、オッタルが掴んだままのフリュネの腕をそのまま回転。巨女が迫ってきた為に慌ててその場でしゃがみ込んだ瞬間、頭上を巨塊が駆け抜けていった。
唖然としている間にも、前方数十Mの位置に投げ飛ばされたフリュネが石畳を滑空してすぐにごろごろと音を立てて転がり、先の爆心地の窪みの中に転げ落ちていった。
「ミリア・ノースリス、貴様は下がっていろと言ったはずだが」
「……えっと、動けません」
自力で動けない為、なんとか両手を上げて降参を示す。
時間切れ、か……フリュネの息の根を止めるより先に【フレイヤ・ファミリア】が到着してしまった以上、諦める他無い────口惜しい話だが。
訝し気な武人の視線に圧を感じながら、せめて動けるクラスにと意識した途端に頭痛と眩暈で視界が揺れる。踏み止まってなんとか視線を上げた所で、オッタルは既に俺では無く爆心地の窪みでのた打ち回るヒキガエルの方へ歩んでいた。
僅かに見える窪地のフリュネが逃げようともぞもぞと藻掻いている様子が見え────複数の足音が近づいてくる事に気付いた。
「ディ……ンケ、さんじゃない」
皆が戻ってきたのかと視線を巡らせた瞬間、背筋が凍り付いた。
小柄な体躯をした
そして四人の区別不能な
そんな彼らは爆心地を中心に着地し、窪地に転がるフリュネを包囲した。
「う、うひィ!?」
【フレイヤ・ファミリア】が誇る最高戦力。
其処に加えて都市最強の
────本気で【イシュタル・ファミリア】を潰す積りなのか。
完全包囲された窪地の底、包囲に加わるオッタルを見て、ついにフリュネの精神が限界を迎えたのだろう。
「ヒッ、ヒイイイイイイイイイイイイイイッ!?」
醜い絶叫が撒き散らされる。
あれほどまでに苦戦させられたあの怪物が、醜い半顔を隠す様に腕で覆っている。その事に殺意すら沸いた。
思わず歯軋りしかけ────オッタルが此方を振り返った。
否、オッタルだけではない、全員だ。その場に現れた【フレイヤ・ファミリア】が誇る最高戦力の全員が此方を向いた。
思わず息が詰まり、一歩後ずさった瞬間。
目の前に
「やあ、オッタル────こんな所で、奇遇だね」
場違い感すら感じられる程の気さくそうな挨拶。
都市最強派閥に対しそんな軽口を叩ける人物がいるとすれば、それはこの
例えば、そう────
「【
【ロキ・ファミリア】の首領とか。
「フィン、さん……」
「すまない、遅くなったね」
黄金色の髪を揺らし、短槍を肩に担ぐ
それだけに留まらない。
軽い着地音が次々に響き、気が付けば周囲には無数の冒険者の姿があった。
【剣姫】、【
【ロキ・ファミリア】が誇る第一級冒険者達が集っている。
「皆、無事?」
「酷くやられたわね」
「でも、フリュネもなんかボッロボロじゃない?」
「けっ、臭ぇ場所だな」
彼等は各々が負傷した仲間を抱えている。
アイズさんがフィアとイリスを。
ティオネさんがメルヴィスとサイアを。
ティオナさんがディンケとエリウッドを。
ベートさんだけはポケットに手を突っ込んだまま鋭い視線をオッタル達に向けている。
「……【ロキ・ファミリア】か。外周は包囲していたはずだが」
「ああ、外周の包囲網ならば【ガネーシャ・ファミリア】が引き受けてくれているよ」
戦闘に夢中になっている間に、外周部では更に大きな抗争が起きているらしい。
耳を澄まさずとも聞こえてくるのは、激しい剣戟のやり取り。外周部を包囲している【フレイヤ・ファミリア】の団員と、その包囲を崩さんとする【ロキ・ファミリア】と【ガネーシャ・ファミリア】の連合による乱戦。
「我々と戦争をする気か」
「いや、そんな積りは無い。あくまで僕達は同盟派閥である【ヘスティア・ファミリア】救援に訪れただけさ」
それを妨害したから、
「そうか。ならば【ヘスティア・ファミリア】の眷属達を連れて、直ぐに去れ」
「悪いけど、それはできない」
そう言い切るとフィンは手にした得物をオッタルに────オッタルの奥に居るフリュネに差し向けて口を開いた。
「僕達の同胞が殺されたんだ。殺した実行犯であるフリュネ・ジャミールも僕達が回収したい」
フィンがそう口にした瞬間、ゾッとするほどの圧がロキ派閥の面々から漏れ出す。思わずチビる程の圧に視線を巡らせると、ベート・ローガは元より、アイズさんやティオネさんまでもが鋭くオッタル、その向こう側で縮こまっているであろうフリュネに殺気混じりの視線を向けていた。
「ああ? 後からしゃしゃり出てきて何言ってんだお前ら」
既に臨戦態勢である猫人の青年、ベート・ローガと
「そもそもフリュネ・ジャミールは僕達の同盟派閥の【魔銃使い】以下数名と戦闘を行っていた所にキミ達が乱入した、と僕は認識している」
つまり、後からしゃしゃり出てるのは君達の方ではないか。と挑発混じりにフィンが返す。
瞬間、アレンが踏み出そうとし、オッタルが止めた。
「待て……フィンの言い分にも一理ある」
「おい、オッタルがもたもたしてるからこんなことになったんだろうが」
アレンは殺意混じりの眼光をオッタルに向けながらも、此方から意識を外す事は無い。
他の面々、特に四人の小人族なんかは特に大きな敵意をフィンに向けながらも黙っている。
確かに、フィンの言い分も一理ある。
最初にフリュネと戦闘をしていたのは俺達【ヘスティア・ファミリア】である。
抗争に関しても同様、【フレイヤ・ファミリア】が仕掛けるより以前に、【イシュタル・ファミリア】が俺達に仕掛けてきていた。
詭弁と切り捨てられかねないが、フリュネの処遇に関しては此方に寄越せと言える状態では、ある。
それを彼らが飲むかどうかは別にして、だが。
一触即発の状態で睨み合うオッタルとフィン。
【フレイヤ・ファミリア】側は【イシュタル・ファミリア】との抗争を邪魔されているという事。
【ロキ・ファミリア】側は【ヘスティア・ファミリア】救援の妨害に加え、雪辱を果たす対象を横取りされかけている事。
互いに主張している内容自体は最もだが、譲れるか否かの問題が残っている。
どうするか、とピンと空気が張り詰める中、空気の読めないしゃがれた声が響いた。
「ゲゲゲッ、ゲッ……どうやら運はアタイに向いてきたみたい、だねぇ」
────何を、何を言っている。
いきなり喋り出した死に掛けのヒキガエルの言葉に全員が無条件に視線を向けた。
オッタルやフィンですらも不愉快そうに表情を歪める中、視線を集めた醜女のフリュネが声高らかに叫び出す。
「【
……何、言ってんだあのヒキガエル。
話をちゃんと聞いていなかったのか? それとも、頭がぶっ壊れてお花畑にでもなってしまったのだろうか。
「アタイの美しさったら罪だねぇ、こんな風に【
顔の半分が重度の火傷で見れた状態ではないし、肢体も左肩から先が吹き飛んでるじゃねぇか。元々の顔も体も、醜悪が過ぎるというのに。
「アタイのこの美貌にこの肢体……いまは滅茶苦茶になってはいるが治療すれば元通りさ!」
誰が治療を施すというのでしょうかね。
と言うか、オッタルもフィンも、誰しもが余りの出来事に完全に表情強張らせて硬直する程だぞ。
「その【魔銃使い】を八つ裂きにするんだよォ! そして『再生薬』をアタイの為に持ってきておくれよぉ」
誰に向かって言っているのか。
もしかして、オッタルとフィンに向けての言葉だろうか。信じられん。
「そのガキを八つ裂きにしてアタイを助けてくれたら、アタイを抱かせてやるよぉ!」
────ギリィッ、と恐ろしい音と共にオッタルの拳が握り締められ、槍を持つフィンの眉間に青筋が浮かび、視覚を揺らがせる程の殺気が第一級冒険者達から漏れ出る。
アイズさんが何を言っているのかと不愉快そうに口元を歪め、ティオネさんは般若の表情を浮かべる。ティオナさんだけが『誰が喜ぶのそれ』と至極真っ当な突っ込みを入れていた。
「そもそもアタイが何をしたって言うんだい!! こんな事される謂れなんて無いはずだよォ!! アタイの為に来たって言うなら早くアタイを助けなァ!!」
醜悪な叫びに耳を貸す者は居らず、アレンが『てめーの息が続いてるのが害悪だ』と毒舌をぶちまけてもフリュネは反応しない。
────というか、今コイツなんつった。
こんな事される謂れなんて無いはずだ? お前が、お前が身勝手に俺達の仲間を殺したんだろう。なのに、自分は悪く無い、と? 本気で言ってるのかこいつ。
やっぱ殺すべきだろ。
全ての者から向けられる殺気に対し、フリュネは気付いていないらしい。既に精神は別世界へと旅立ってしまったのか、彼女に言葉は一切届かなかった。
「アタイ以外に素晴らしい女なんて居ないよォ!! 治った暁には女神も逃げ出すこの体にこの美貌、そんなアタイを好き勝手できるんだ、ほぉら、そそるだろぉ!?」
あそこまで痛めつけられて尚、そこまで喚き散らすだけの元気が残っている事に驚愕はすれど、全く持ってそそらない誘いである。
いや、ある意味ではそそられる誘いなのかもしれない。もっと、ずっと、これ以上に激しく痛めつけても元気一杯だとか────もっともっと、死ぬまで甚振りたいこっちからすれば嬉しいかもしれない。
「あんた達の貧相な
────瞬間。
殺気が消えた。
否、消えてなんていない。
人の視覚や聴覚には感知できる範囲が存在する。
例えば人間の視覚器官では捉える事が出来ない赤外線や紫外線しかり。
人間の聴覚器官の可聴域を超えた周波数である超音波しかり。
俺の感覚器官で感知できる範囲を超える程の鋭すぎる殺気。感じ取れずとも、其処にあると認識は出来る程に練り込まれたソレを放つのは、
超要約してしまうと、【フレイヤ・ファミリア】の眷属達が、きれた。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
比喩抜きで両目から真っ赤な眼光を撒き散らし、怒りの大咆哮を響かせる
彼の雄叫びに【ロキ・ファミリア】の第一級冒険者達ですら面くらって硬直する中、オッタルは此方を振り返り、告げた。
「失せろ。今、俺は機嫌が悪い」
他の美神を慕う眷属達の方は完全に此方の事を認識していない。
既に彼らの視線はフリュネに釘付けだ。濃密を通り越して鋭く研ぎ澄まされたその刃は俺の感覚では捉える事は出来ないが、それでも背中から夥しい量の冷や汗がとめどなく流れ続けているあたり、俺の体は五感を超えた第六感辺りで感知はしているみたいだ。
「……皆、此処は引こう」
フィンですらも僅かな冷や汗を流す様な憤激。
今、部外者である俺達が居るからこそ、彼等は爆発を抑えているのだ。直ぐに立ち去らなければ、その憤激の爆発に俺達まで巻き込まれかねない。
────フリュネが余計な地雷を踏まなければ。
「……はぁ」
溜息と言うよりは、喉に詰まった重苦しい空気を吐き出し、フィンに抱えられて離脱。
凄まじい断末魔の声を背後に、全力で離脱していくさ中にふと思った事は一つ。
あのヒキガエル、人の地雷を踏む事に関しては天才的過ぎだろうに。
フリュネ戦決着……まあ、読者の予想通りの展開でしょうし言う事無し。
普段より文字数は2000~3000程少ないのは、展開の切りが悪かったので……。
次回でイシュタルとフレイヤ、後ロキも出てきての種明かしですん。
ミリアちゃん弱体化フラグだと思ってる人も多くてですな。
実際は割と違うんですけどね。逆、逆というと間違いか。
えっと、ヒントとして、そうですねぇ……キューイの魂って、何処から生まれたんでしょうね。
そして、生まれた後のミリアちゃんのイベントも割と関係があったり()
そして読者は割とどうでも良い情報として。
掲載開始が2017年11月06日
今回投稿が2020年11月08日
投稿開始から丸まる三年の月日が流れました。
(ほぼ)毎週投稿を三年の間続けられた事は、感想や評価があってこそだと思います。これまでのご愛読ありがとうございました。
そして今後も執筆頑張りますので、これからも是非、感想等々よろしくお願いします。