魔銃使いは迷宮を駆ける   作:魔法少女()

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第一四八話

 最大賭博場(グラン・カジノ)の一件については既に片が付いている。

 テリー・セルバンティスの名を騙っていたテッドは己の罪を全て認め、自ら進んで牢獄に飛び込んだ────都市最強派閥であるフレイヤファミリアに喧嘩を売ったと思い込んでいる以上、彼にとって最も安全な場所はギルド管理の監獄の中だったのだろう。

 そして、あの一件の後、リューさんと顔を合わせるのが何となく気まずくて『豊穣の女主人』を避けている。

 ベルはリューさんとの鍛錬の為か、朝一で出て行ってはボロッボロになって帰ってくるのだが、そのたびに『リューさんがミリアを探してたよ?』とベルに言われるのだ。あんなことを思わず言ってしまった後に顔を合わせるのは気まずすぎるでしょうに。

 

 娯楽都市(サントリオ・ベガ)経営者(オーナー)の首を挿げ替えて、今まで通りに経営を続ける事にしたらしい。面の皮の厚い事で……ただ、今回の一件でギルドが内部に食い込んだとは聞いた。

 今後同じような事があっては困るという事でギルド職員の一部が内部に配属され、監視組織として動くらしい。ついでに収益の一部をギルドが回収する、と……ギルド長の手腕が光り輝いてるなぁ。

 

 まあ、そっち方面は正直どうでも良い。問題は────サークリッジ家のお嬢様が此方に押し付けた依頼だ。

 後、グリディア・サークリッジとかベディヴィス・サークリッジとか……。

 

 結論から言おう。何か勝手に自滅してくれた。

 

 いや、順を追って説明しよう。

 まず、グリディアがクレイティア嬢の暗殺しようと色々と画策していたら、王様がそれに気づいたらしい。

 王家の血を引く分家ともいえるサークリッジ家のごたごたに気付いて王が呼びつけて何をしているのか尋ねた所、グリディアは『我が息子と孫娘が怪物趣味に目覚めてしまい、始末をつけるべく云々』と嘘を並べ立てたらしい。

 

 ────結果、グリディアさんは八つ裂きにされて処刑されました。

 

 あー、話が跳んだと思うじゃん。

 なんでもサークリッジ家が仕える国の王は過去に第一王子と第二王子の二人が怪物によって殺されていて大の怪物嫌いだったのだ。んで、自らと同じ血を引くサークリッジ家から『怪物趣味』が出たと聞いてブチギレたと。

 一族郎党皆殺しを決定。自ら始末を付けると言い訳を並べ立てようとしたグリディアさんは……まあ、話を聞き入れて貰えずに処刑台行き。彼の血筋は……クレイティア嬢の兄弟も含め全員処刑台行き。

 なんでも二ヶ月前に生まれた赤ん坊も八つ裂きにしたらしい、王様怖すぎぃ。

 当然、主犯と思われているベディヴィス殿とクレイティア嬢も処刑対象。騎士団を派遣してオラリオに居る彼らを捕えんとし、テッドの事件の日の晩にクレイティア嬢とそのお付きのカルロスの二人は拘束。

 その日の晩にオラリオを出立していた、と……ただ、どうやらカルロス君が騎士団の面々をぶっ殺して逃亡しちゃったらしいぞ? クレイティア嬢を連れてな!

 しかも、この際に王様が妙な事を言い出してなぁ……『怪物は迷宮から連れてこられたモノだった、オラリオのギルドは何をしているのか!』とギルドに抗議文を叩き付けた挙句。『ヘスティアファミリアとガネーシャファミリア、怪物を従える等狂気の沙汰だ』と糾弾してきたらしい。

 というかベディヴィス殿とクレイティア嬢が怪物趣味に目覚めたのは戦争遊戯(ウォーゲーム)の際に【魔銃使い】が竜なんて従えてるから、となんかぶっ飛んだ事言い始めたと……。

 

 いや、なんというかね。ベディヴィス殿が父親のグリディアぶっ殺して怪物趣味だった事を秘そうとした理由って、多分王様の怪物絶対許さないって部分を知ってたからだと思うんだ。バレた結果、一族郎党皆殺しを決行するってわかってたんだろうね。結果的にそうなってて救いは無いけど。

 

 王様大激怒の騎士団総員派兵してクレイティア嬢ぶっころ作戦展開────ついでにギルドに猛抗議とヘスティア、ガネーシャの二つの派閥への糾弾。国を挙げてのお祭り騒ぎを開始しようとしたら……えっと、その、隙を伺っていたラキア王国が戦争吹っ掛けたらしい。

 防衛の要ともいえる騎士団の殆どが出払った王城にラキアの騎士団が強襲をしかけ、国王を血祭りに挙げて国を制圧。今やサークリッジ家も、そのサークリッジ家が仕えた王家は途絶え、ラキア王国領地へと名を変えたそうな……。

 

 つまり、俺の知らぬ間に問題は全て解決。逃亡したクレイティア嬢とその護衛の【白い羽】カルロス君は行方知れずだけど、良いよね、もう知らんわ。

 

 残されたのは宝石箱に収まった『形見の白い羽』のみ。

 ちなみに、賭札(チップ)は最後の最後でリューさんにあえて負けた事で全部とられているので、本当に残るモノが何もない、なんというか骨折り損のくたびれ儲けなのは変わらんのよなぁ……。

 まあ、その残された『形見の白い羽』もギルド長経由で呼びつけたフェルズに投げ付けておいたので、俺の手元には何にも残っていない。

 

 ガネーシャファミリアから協力金貰っただろって? ははは……あれ、あれさぁ……ベルが最大賭博場(グラン・カジノ)で暴れたらしくてさぁ、ギルドから罰金の支払い請求きたんだよね。

 それだけなら半分ぐらい残ったよ? でも、追加で最大賭博場(グラン・カジノ)から破損した賭博卓(カジノテーブル)賭札(チップ)切札(トランプ)なんかの損害賠償をね……………?

 

 つまり、なんだ、本当に何も残るモノが無かった。 

 

 お金(ヴァリス)も、何も、得るモノは無かったんだ……。

 

 

 

 

 

 乏しい燐光が揺らめき怪物(モンスター)の姿を幻視させる影法師を生み出す岩窟内。

 湿った空気に満たされた迷宮(ダンジョン)を闊歩する怪物(モンスター)達をうっすらとした光が照らし影を落とす。

 鋭い嗅覚や聴覚を以てして彼らが血眼になって探しているのは、この迷宮に足を踏み入れる酔狂で命知らずな侵入者(ぼうけんしゃ)の姿だ。

 無数の通路が錯綜する迷宮内を、獲物を求める怪物が徘徊している。

 そんな迷宮の一角。奥まった通路の奥にて────ガツッ、ガツッ、と。岩に小型鶴嘴(マトック)を突き立てる音が響いていた。

 

「おい、本当にここで採掘できるのか……?」

「あっ、リリを疑うんですか? 下調べはしてきました、上級冒険者達は、この地帯(エリア)から例の鉱石を沢山持ち帰っていますっ」

 

 小人族の少女が手にした小型魔石灯に照らし出された壁面へ、ヒューマンの青年が小型鶴嘴(マトック)を振り下ろす。

 ヴェルフが壁面を穿つ度に岩片が足元に転がり落ち、その中に目的の物が無いのを見て小さく舌打ちを繰り返している。

 

「ヴェルフ殿っ、リリ殿っ、……まだですか?」

「モ、モンスターが出てきそうでドキドキする……」

 

 小声で言い合いをするヴェルフとリリを他所に、姿勢低く周辺警戒を行っているベルとミコトは囁きかける。

 俺も同時に展開しているキューイ達を伺えば、彼らは呑気に欠伸をして尻尾を軽くゆすっていた。

 

「まだ怪物は遠いみたいよ、でも時間の問題かもね」

 

 現在位置は細い一本道を進んだ袋小路だ。広間(フロア)と言うには小さい半円形の空間で、五人+三匹のパーティで採掘作業を行っていた。一つしかない通路から怪物が押し寄せる、または周囲の壁面が罅割れて怪物が生まれ落ちたなら逃げ場はない。

 不安がるのも仕方ない事だと溜息を零しつつ、一向に目的の鉱石が出ないヴェルフとリリのやり取りを見てからベルに声をかけた。

 

「ベル、ちょっと採掘してみてくれない?」

「え? 僕が?」

「良いから、はい予備(スペア)小型鶴嘴(マトック)

 

 ヴェルフの足元に転がっていた予備(スペア)をベルに投げ渡す。冒険者の武装と同じ金属で作られた、少々というか結構お高い採掘道具。

 ベルが小首を傾げつつもそれを二度、三度と壁面に打ち付け────ぼろぼろっ、とこれ見よがしに鉱石が転がり出てきた。

 

「あ」

「はぁ、やっぱりというかなんというか」

 

 大賭博場(カジノ)でもそうだったが、ベルの発展アビリティ《幸運》はこういった場合にも変わらず効果が適応されるらしい。

 ベルが崩した壁面より光沢のある鉱石が零れ出て、地面に転がり落ちた。

 

「や、やりました『紅縞瑪瑙(ブラッド・オニキス)』です!?」

「でかしたベル!」

「流石です!!」

 

 皆が歓喜し、即座にその三つの鉱石を袋に投げ入れ、他の荷物もぱっぱっと纏め上げてヴァンの背負う棺桶にも似た大きな箱の側面に取り付けられた鞄に捻じ込んでその場を後にする。

 大急ぎで移動し、狭苦しい袋小路から正規経路(ルート)まで帰還したところで、ようやく一息ついた。

 

「キューイの警戒があるとはいえ、あの逃げ場の無い場所は足を運びたくないわね」

「ですね……ですがこれで冒険者依頼(クエスト)完了ですよ。依頼されたのは2つ以上の『紅縞瑪瑙(ブラッド・オニキス)』ですからね」

 

 歩みながら、リリが依頼の品を小袋から取り出して眺め、うっとりしている。

 血の色に似た赤と黒の縞状模様の玉髄、俺の知る八月の誕生石である『サードニクス』と似ている様で若干異なる。

 

「もう一つの依頼の『アルミラージの毛皮』も先の戦闘で入手済みですし」

「受託した依頼は全て完了ね。ベルが居るおかげよねぇ」

「確かに、ベルと一緒に居るとドロップアイテムといい鉱石といい、なんだってポンポンでてくるな、ベル? 運が良いのか?」

 

 ヴェルフの質問に曖昧に笑うベル。リリが賭博がどうとか呟いてるけど、それもう無理なんだよなぁ。

 

「リリ、ベルの運を使っての賭博は諦めなさい」

「賭博関連では発揮されないのですか?」

「────全大賭博場(カジノ)で出禁になってるから」

 

 つい先日の最大賭博場(グラン・カジノ)での女性の強引な手段を使った誘拐事件解決の為にリューさんが潜入してきたあの一件。その際にベルは貴賓室(ビップルーム)へガネーシャファミリアを入れない為に一芝居打ってモルド達と共に暴れたのだ────結果、ベル・クラネルとモルド一味は仲良く全ての大賭博場(カジノ)から出禁をくらった訳である。

 

「ま、依頼期限が迫ってた冒険者依頼(クエスト)も片付いたし、本拠の引っ越しの方に戻らないといけないわね」

「……本拠(ホーム)の引っ越しの手伝い投げ出してきて良かったのかな?」

「いつだって先立つものは必要です。派閥が大きくなってもそれは変わりませんよ」

 

 依然として上機嫌なリリの言葉に苦笑しつつも、補足をするならば────受託していた冒険者依頼(クエスト)が期限内に達成できなかった場合、派閥の評判が下がる。更に依頼によっては失敗時に罰則金の規定もあるのだ。

 ヘスティアファミリアの評判が悪くならない為にも、受けた依頼は達成率十割を維持していきたい。

 

「それに、ベルもミリアも戦争遊戯(ウォーゲーム)が終わって、今の能力(ちから)を試したかったんじゃないのか?」

 

 ヴェルフの指摘にベルが言葉に詰まり、恥ずかし気に頷いた。

 俺の方は、確かに新しい『ケットシー・ドールズ』の試しがしたかったが……こっそりと一人で『フェアリー・ドラゴニュート』を確かめちゃったとは口が裂けても言えんな。

 

「────キュイ!」

 

 キューイの鳴き声、怪物が来るという報せを告げるそれに皆が一瞬で反応して構える。

 

「何匹?」

「リリスケは下がってろ」

「十三匹、ヴァンも下がってて」

 

 今回は荷物持ちとして巨大な飛竜用の鞄等を装着しており戦闘に非参加となっているヴァンを下げた。リリを後ろに庇いつつ後衛魔術師として全体を見回してキューイと並んで構える。

 交戦陣形を整えた所で、暗がりに無数の赤い光点が浮かび上がった────鋭く此方を睨む赤い眼光。怪物達の瞳が此方を捉え、一気に駆け出してくる。

 迫りくる無数の怪物を前に、ヴェルフが叫ぶ。

 

「正面は任せるぞ!」

「うん!」

 

 ベルが隊列から飛び出し、十を超える怪物の群れに斬りかかった。

 火炎放射を放とうとする黒犬(ヘルハウンド)をいの一番に狙う二振りのナイフと大刀。瞬く間に重ねられる剣閃の前に怪物が賽の目状に解体され、鉄槌の如き勢いで振るわれた大斬撃が大柄な固体を木っ端微塵にした。

 

「リリ殿、槍を!」

 

 戦端を開いたベル達の後にミコトが続く。

 彼女の呼び掛けに素早く反応したリリが、先端に刃が取り付けられた短剣程の金属棒(スティック)を取り出し、投げ渡す。受け取ると同時にミコトが素早くその棒を振るうと、瞬く間に伸長し、2Mを超える長柄武器へ早変わり。

 伸縮性の銀槍(シルバー・ランス)(スピア)ではなく騎乗槍(ランス)という呼び名なのは少し引っかかるが、まあそういうものだろう。

 いつでも援護出来る様にと構えるモノの、Lv.3に至り突出した力を持つ攻伐特化(スコアラー)のベル。そしてベルと共に連携をより磨き上げつつあるヴェルフ、そして前衛の攻守支援(サポート)に回る中衛のミコト。

 後衛として俺やリリが控えているし、キューイもいつでも援護に入れる様に身構えている。

 パーティの力量(バランス)は以前の比ではない程に膨れ上がっている。上級冒険者と上級鍛冶師で編成された前衛と中衛は非常に強力であり、この編成ならば中層で敵無しを謳っても良いかもしれない。

 最速で殲滅を終えたのを目にしたリリが『13階層では敵なしです!』と嬉しそうに怪物の死体に近づき、鼻歌混じりにサポーターの本業である戦利品の回収を行おうとする。

 構えていた俺の援護も無く討伐し終えた事もあり、パーティには余力が満ちている。もしも行こうと思えば、中層下部の『大樹の迷宮』も探索可能であろう────とある事情もあってあまり行きたくはないのだが。

 

「……キュイキュイ」

 

 討伐も終え、リリが戦利品回収するのを眺めようというところで、キューイが怪物の接近を知らせる。

 ヴァンが不愉快そうに唸り、クリスが俺の頭の上でキョロキョロと周囲を見回し始める。ベル達も何事かと身構えた所で、野太い叫び声と怪物の咆哮が遠くから響いてきた。

 

「リリ、戦利品回収は諦めなさい」

「え? ですがまだ魔石を回収……この音は」

「これって、悲鳴?」

「こちらに近づいてきます……まさか?」

 

 徐々に大きくなってくる音と振動にリリが顔を引き攣らせ、ベルとミコトは硬直する。

 そして、嫌な予測というモノは的中するモノであり────予測の通り、通路の奥から冒険者の一団(パーティ)と数え切れない怪物が姿を現した。

 

「……リリ達の元へ向かってきますよっ!?」

「ベル、今回は助けるなんて言わないよなっ!?」

「流石に今回は無いでしょ、無いわよね?」

 

 血走った目、真っ赤な顔、武装の殆どを投げ出してきたのか全員が武器を携帯していない状態で数え切れないぐらいの怪物を背に必死に走る冒険者達。彼らは此方と目が合った瞬間にその表情に歓喜の色をにじませた。

 ヴェルフが前の出来事を思い出して尋ね、ベルが首を全力で横に振る。流石に器の昇格(ランクアップ)をして戦力的にはかなり増強された現在においても、不用意に他のパーティを助けるという選択は選べない。

 ────が、怪物に追いかけられている彼らはそんなもん知った事かと言った雰囲気だった。

 

『てめぇ等、ヘスティアファミリアだな!? 喜べ、俺達の獲物をくれてやるぞぉぉ!!』

「ふざけろ!? 要るか!!」

「に、逃げよう!!」

 

 モンスターの擦り付け────怪物進呈(パス・パレード)に、ヴェルフとベルの悲鳴が重なる。

 三十を優に超える数の怪物に追われた同業者達に背を向け、全員で走り出した。

 

「誰だこの階層で敵なしって言ったやつ!?」

「時と場合によります!! ああ、まだ魔石も拾えて無かったのに……」

「リリ殿、早く荷物(バックパック)を此方に!!」

「で、出口ってどっち!?」

 

 大刀を担いで悪態をつくヴェルフ、慌ててリリから荷物を預かり背負うミコト、そして嘆く非戦闘員(リリルカ)を抱え駆けるベル。咄嗟にキューイの背にしがみ付いて背後を伺う俺。ヴァンも疾駆してパーティに追従してきている。

 後方の一団は既に限界に近かったのか徐々に怪物に追い付かれつつある。あのままだと死ぬだろうなぁ。

 後ろを振り返る余裕の無いベル達をちらりと見てから、溜息一つ。

 

「まあ、試験運用として、でいいかしらねぇ」

 

 キューイの背にしがみ付いたまま、クラスチェンジ。第二クラスの『ケットシー・ドールズ』に変化して、詠唱を呟く。

 

「全員、そのまま走り続けて。【我は奏者、奏でる者成りて────】」

「ミリア殿何を!?」

 

 ミコトが焦っているが、まあ平気だ。走るのはキューイに任せつつ、片手を後方に向けて突き出す。

 

「【我は操者、操る者成りて────】」

「おい本気か!?」

 

 あのままだとマジで死にかねないし、目の前で死なれるのは寝覚めが悪い。

 

「【汝は傀儡、五指奏でる調べに踊れ】」

 

 ヴァンが背負う棺桶を思わせる箱の蓋が蹴破られ、中から一体の人形が飛び出して冒険者達の頭を飛び越えて怪物達の前に立ち塞がった。

 俺が操っているのは中身が空っぽの板金鎧(プレートアーマー)。右手にショートソード、左手に帆盾(カイト・シールド)を携えた騎士人形だ。

 『青銅の騎士人形(ブロンズ・ナイト)』と言う、ドールズ型の固有スキルにて形作られた人形。中身は無く、俺の魔法の補助を以てして駆動する騎士だ。本来ならもっと数を揃えての運用が基本だが、生憎と持ち運び関連で四苦八苦した結果、ヴァンの背負う棺桶を思わせる木箱に突っ込んで運ぶしか無かったのだ。

 

「おお! あの木箱にあんなものが!」

「なんか変なもん持ってきてるとは思ったがあんな秘策が!!」

 

 …………あー、ごめん。一言いうと多分焼け石に水だ。

 

 飛び出して行った騎士人形は力強く棘付きの靴で大地を踏み締めて剣を両手で構えて怪物の群れに突撃する。

 最前列に居た一角兎(アルミラージ)を切り伏せ、返す刃で二匹目を切り捨て、三匹目の突進を盾で受け止め、四匹目が人形の足を穿つ。片足の部品(パーツ)が弾け飛んで姿勢を崩し────瞬く間に勢いに飲まれて粉砕された。人形の部品(パーツ)が飛び散り、怪物に踏み潰されて粉々になる。

 

「「「「………………」」」」

「いやぁ、焼け石に水ねぇ」

 

 一応、ぶっ壊れた人形の部品に足を取られて怪物の一部が転倒し、結果的に玉突き事故の様に怪物達は止まった。抜けて追いかけてくるのはわずか数匹なので適当に【サブマシンガン・マジック】で着いてくる数匹を処理。

 知ってはいたが、やっぱり最下級人形の『青銅の騎士人形』は運用するのに向かないなぁ。

 まあ、一応あの冒険者達も逃げきれそうだし構わないか。中層で活動してるって事は少なくとも上級冒険者。上層のモンスター程度ならば素手でもなんとかなるだろ。

 

 ────ちなみに、先ほどの『青銅の騎士人形(ブロンズ・ナイト)』は『アポロンの彫像』三体を生贄に作成したモノである。




 ミリアちゃん、最終的に報酬金すら消し飛んで手元に何も残らなかった模様。
 骨折り損のくたびれ儲けですな。目が死んでそう()



 本当なら本文に突っ込もうと思ってた説明。

『ケットシー・ドールズ』
 人形を召喚、戦闘に参加させるクラス。
 特有の装備として見た目以上の容量を持つ大型鞄を所持しており、その中に無数の人形を入れて持ち運び、必要とあらば中から取り出して戦わせる形。
 人形と共に自らの【サブマシンガン・マジック】で前線を張る事が出来る上、人形用の部品を自身の身体(ボディ)に組み込んで戦闘人形に進化する事も出来るクラス。

 当然、ミリアちゃんは見た目以上の容量を持つ大型鞄も持って無いし、生身なので人形部品を搭載したりは出来ない。


 魔法は三つ。
 【サブマシンガン・マジック】
 ・三点バースト、威力はピストルと同等。扱いやすく、癖が少ない初心者向け。
 【人形操作】
 ・人形そのものが無いと意味が無い操作魔法。生き物には効果が無いが、意識が無い相手なら動かせなくもない。
 【修理魔法】
 ・無機物相手にしか効果の無い代物。人や生き物はなおせない。

 スキルは二つ。
 【人形作成】
 ・用意された素材と己の魔力を消費して人形を作成する。
 利点:消費魔力が少なく済む。一度作成すれば壊れない限り永続的に使用可能。
 欠点:素材の強度次第で能力が左右される。
 【人形複製】
 ・素材を一切使わずに魔力だけで人形を作り出す。
 利点:魔力を込めた分だけ強力な人形が作れる。
 欠点:一定時間経過で消滅してしまう。消費魔力が多い。



 ヤバい、執筆中に熱が出てきた……あー、うん、風邪、だと良いなぁ……。
 手洗いうがいはちゃんとしてたんだけど、何があかんかったんやろか。だるさは無いし、咳も出ない、けれど熱だけは出てるっていう不思議ぃ……。
 ちょっと休みたいからいつもよい文量少なめだけどゆるしてくだちぃ。

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