あったけぇ目で見てやってください。
※タイトルとサブタイの変更に伴って、1話の大幅な付記を行いました。
1話 アニメの始まりはだいたい目覚めるところから始まるか、いきなり戦闘シーンから始まることが多い
ピピピッと、しつこいぐらいに同じ電子音を鳴らし続けるそれは、朝起きられない小学生から社会人まで広く知られたの味方で在ると同時に、憂鬱な一日の始まりを告げる悪魔の機械。そんな矛盾を抱えたそれを人は、目覚まし時計と呼んだ。
横文字の少し気取った言い方をするとアラームだが、まぁそんなことはどうでもいい。もう何周目かも忘れるほど、ループして音を鳴らし続けるそれを僕はスルーして、今こうしてクソくだらない目覚まし時計に対する自己解釈を誰に向けるのでもなく永遠と考え続けている。
「れーくーん!朝だよ―!」
その声を聞いて、僕は1秒で布団から出た。ずっと鳴り続けていた、目覚まし時計はやっと仕事を終え、「やれやれだぜ・・・」と言わんばかりのふいんき(なぜか変換できない)を醸し出して、停止ボタンを押されるのを今か今かと待っている。
僕は、停止ボタンにチョップを叩き込むと、少し鈍い音を立てて、ようやく
リビングに行くと、エプロン姿の20代前半(にしか見えない)の女性が、たった今出来たであろう朝食を机へと並べていた。
「れーくんおはよう!ご飯できたから一緒に食べよう!」
リビングへやって来た僕に気がついたのか、満面の笑みを浮かべ、朝っぱらから爆発寸前のカップルが言うようなダダ甘な台詞を僕に言うのが、僕の母
「ほらほら!早く座って!ご飯冷めちゃうから早く食べよ!」
そう言って、僕の手を取って椅子へと誘導し、座らせる。そして、ちゃっかり隣の椅子に座っており、僕よりも早く「いただきます!」と言ってもう朝食に手を付け始めている。ちなみに、いつの間にか等間隔に置かれていたはずの椅子の距離が狭まっており、もうほぼ密着しているような状態である。
さて、もうわかっただろうが、この母。それはもう、息子である僕を溺愛しているのだ。良い意味での親馬鹿であり、悪い意味で言うなら超過保護と言ったところだろうか。まぁ早い話、マザコンの逆だ。言うなれば「ンコザマ」だろうか。
「れーくん?食べないの?」
と可愛らしく、少し首を傾げてそう言う母。少し思考に浸っていたせいか、食べることを忘れていたようだ。流石にこれ以上呆けているわけにもいかないので、食事を始める。数分で食べ終わり、小さく「ごちそうさまでした」と言い、早々に席を立ち、洗面所へと向かう。
洗面所で、鏡で自分の身嗜みを整え、歯磨きをして、軽く顔を洗う。タオルで顔を拭いた後に、再度見る自分の顔は、いつもと変わらない、無表情で無愛想。そして、光に反射すると少し眩しいと思ってしまう、白銀の髪と、金色と銀色のオッドアイが、眠そうにこちらを見つめていた。
この異様な自分の容姿にも、もう慣れた。もう別に気にすることでもないが、時々こうして自分の顔を意味もなく眺めてしまう。「こいつこんな顔してんだな」とか「相手からはこう見えてるのか」と少し感慨に浸りながら。それも意味のないことだとはわかってはいるが、人という生き物はめんどくさいもので、そういったことを割り切れず、考え込んでしまうものらしい。
だから、僕は僕の顔を見て「普通じゃないなぁ」とか「眠そうにしてるなぁ」とかそういうどうでもいいことを思うようにしている。そうでもしなければ、余計なものまで見えてしまうから。・・・今日はなんだか、考え込むことが多い日だ。久しぶりの学校で、変なテンションになってしまっているのだろうか?
僕は一つ短く息を吐き、踵を返して洗面所を出る。すると、玄関前にもうすでに僕の発行指定のカバンを抱えた母さんが、まるで、デートの待ち合わせ場所に30分前に来てそわそわしている乙女のようにして待っていた。これもいつものことなのだが、少し長い休み明けに見るとなかなか思うところがあるのだ。
そして、僕が洗面所から出てくるのを確認すると、満面の笑みをを浮かべてこちらを見るのだ。傍から見るとラブラブの新婚の夫婦にも見えるが、僕はもう気にしないことにした。そんな母さんをスルーして、僕は靴を履き、カバンを母さんから受け取る。
「いってらっしゃい!気をつけてね!」
と、いつも通り母さんの声をバックに、「テンプレ」通りの日常への第一歩を
・・・あぁそうそう。自己紹介がまだだったな。僕の名前は
ーーー
「突然だが」このワンフレーズで始まる物語は、数えるのも億劫になるほど存在している。そして、その大方の物語は、突然というよりも唐突に始まっているものが多い。故に、始まり方は千変万化。同じようなものは存在していても、完全に一緒なものは早々ありえない。
そんな物語の中にも、よく出てくる言葉と言うものがある。それは、所謂「テンプレート」と言うやつで、大体「テンプレ」と略されて広く使われている。その「テンプレ」とは、大体の意味で「定形」を指すものであり、それの通りにやっておけば取り敢えずはまぁ、それなりのものになるというものだ。
少し話はずれたが、要は「テンプレ」と言うやつは、どの作品にも少なからず当てはまるもので、先程の物語の中での「テンプレ」を挙げるとすれば、「転生」とか「転移」とかであろうか。これらの「テンプレ」を大まかに説明するなら、「死んじゃったから、別の世界へレッツゴー!」と言う、普通に考えなくても馬鹿らしいものなのだ。
だがこうした、「テンプレ」ができていることから、それに対する需要は一定数あるようで、今現在も物語はこの「テンプレ」の元に量産されている。・・・さて、僕がこうして、ぐちぐちと能書きをたれたのには、それなりの理由がある。と言うより、ここまで言ってわからないやつも少ないだろうが、僕は今その「テンプレ」と言うやつを実際に体験しているということにある。
目が覚めたら、真っ白な空間に居て神と名乗る存在が、地面を擦り減らす勢いで土下座をしている。・・・こう最低限のことだけを文字に起こしてみると、今の僕の置かれた状況がいかに馬鹿らしいかよく分かるだろう?これが今時の「テンプレ」と言うやつなのだから、恐れ入る。
休話関題。話を戻してこの目の前に、地面を擦り減らして土下座している神は、急に顔を上げてこれまた急に
「ごめんなさいいいいぃぃぃ!」
と、可憐であったであろう顔を自分の体液でぐちゃぐちゃにして僕に謝罪している。傍から見ると、「幼女に土下座させて泣くほど謝らせているやべー奴」である。因みに、神は小学3年生ほどの身長130cmほどの幼女である。その神の容姿も相まって、なんだかやるせない気持ちになってくる。
流石にこのまま、この幼女を放置して置けるほど僕は鬼ではない。取り敢えず、僕のも取る最大限の慈愛を持って目の前の幼女を慰めるのだった。・・・紳士諸君は、決してイヤラシイ意味ではないから、安心してほしい。そうして、30分ほど幼女をなだめるとようやく気が落ち着いたのか、ぐすぐすと鼻水を啜りながら、事の本末を語りだした。
先程、取り乱して泣いて謝ったのは、僕を誤って(ギャグではない)殺してしまったからだと言う。そしてこの真っ白な部屋は、死んでしまった魂を裁く部屋であるということを、幼女は涙目ながらにゆっくりと話してくれた。・・・まぁこれも「テンプレ」と言うやつなのだろうから大隊で察してはいるが、自分が死んだということがあまりにも唐突過ぎて、理解が及ばない。
「そうでしょうともー!」
といきなり、僕の思考に横切ってぶっこんでくる幼女も、「テンプレ」というやつらしい。
「ちょ!?さっきからなんだか失礼なこと考えてますよねー!?全部聞こえてたんですよ―!?と言うかさっきからテンプレってひどくないですかー!?」
この反応も「テンプレ」通りであるし、一気に色々言われて返しづらい。と言うのが僕の本音だ。あと幼女特有のハイトーンボイスは頭に響くから、とてもうるさい。
「ひどっ!?さっきまで優しく宥めてくれていたのがウソのように冷たい!?」
それはそれ、これはこれ。
「投げやりすぎません!?」
さっきとは違って、元気になれたからいいじゃないか。
「まぁ・・・。確かにさっきと比べたら元気になれましたけど・・・」
なら、細かいことは気にするな。それに、まだ本題は途中までしか聞いていない。
「急に真面目にならないでください・・・。はぁ・・・じゃあえっと、どこまで話しましたっけ?」
死んでしまった僕が魂を裁くこの空間に来た、と言うところまでだったと思う。
「おーけーです。じゃあ続きから。」
ここからの話は冗長になるので割愛。要点だけまとめて話すと、
・間違って送られてきた魂は裁きにはかけられず、天国へ行くか他の世界へ転生するか選べる。
・もし転生する場合は、今の記憶を引き継いで赤ん坊から生を受ける。
・そして、手違いで死なせてしまったお詫びに転生する場合、いくつか特典を付ける。
・因みに、天国は何もないまっさらな世界だからあまりおすすめはしない。
・転生する世界はランダムで決まるため、僕が元いた世界にも行ける可能性がある。
ということだった。・・・遠回しに僕に「転生しろ」と言っているようにも思えるが、この展開も「テンプレ」通りとのことで、僕にはもうなにがなんだかわからない。最早、僕にはほぼ選択肢などなく「テンプレ」通りに転生することを選んだ。
・・・のだが。転生するに当って、僕がぶち当たる障害が存在する。それは、「特典」と言うやつだ。これは、最近の「転生モノ」でよくある、ボーナス的なモノと捉えてくれていればいいだろう。理想の能力や容姿を
僕は、今のこの容姿を気に入っているし、そんなアニメなどで出てくるような能力にも
僕は、それだけでも一向に構わないと言うか、これだけでいいのだが、幼女曰く、
「最近は5つぐらいは特典あげなきゃ文句言われちゃうの!」
とのことであり、確かにそのような「テンプレ」は
故に、
それに、幼女も快諾してくれたので、問題はない。もう一度言おう。問題は、ない。・・・さて、抱えていた悩みも、無事解決したから、早いところ「転生」したいのだがあの幼女は一体何をしているのか。
「あなた鬼ですか!?仕事押し付けて、サラッと私のことディスって行こうとするなんてド畜生の諸行じゃないですか!?」
うるさい。この世で一番大事なものは、時間だということを知らないのか。
「こちとら神様ですよ!?もうちょっとこう・・・あるでしょう!?」
はい、語彙力―。神様だったらもうちょっと語彙力鍛えようね―。
「うぅ・・・。私神様なのに・・・。神様なのにぃ・・・。」
ちょっと煽ったら、壊れた玩具のように「私、神様なのに」と譫言のように呟くだけになってしまった。・・・少し悪ふざけが過ぎたようだ。
「・・・正直、すまんかった」
「謝る気ゼロじゃないですかぁ・・・。」
いやいや、本当に悪いとは思っている。幼女を泣かせると全世界の紳士に、殺されてしまうしな。
「謝る動機が不純すぎますよぅ・・・。」
「・・・ホントに、ごめん」
「うっ・・・。急に真面目にならないでくださいぃ・・・。」
・・・チョロいな。
「聞こえてますからね!?」
ほら、元気なった。
「元気になったんじゃなくて・・・あぁもう!調子狂うぅー!」
はっはっは。
「はっはっは、じゃないですよ!?・・・ほら!こんな馬鹿なやり取りしてる間に、準備できたので、早く行っちゃってください!」
そう幼女は食い気味に僕の背中を押して、先程まではなかった扉へ向かわせる。それに対して、少し思うところもあったが、僕の目には「テンプレ」
「ありがとう」
それだけ言って、僕は扉を開け、新たなる世界への一歩を踏み出した。
どうも、はくぁです。
ここまで見ていただいた方はお疲れ様です。
深夜テンションで適当に書いたものなのでアレなのですが気が向いたら更新するかもです。
それと、主人公の設定はまた次の話で、少し話をするかもです。
では、機会があればまた次の話でお会いしましょう。