一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

97 / 122
@94 影を背負う

俺たちの周りに現れた総勢37人のマダラ。少し多くないかな?

冷や汗がコメカミの辺りを流れ落ちる。

 

「では、そろそろ行くとするか。」

 

本体らしきマダラの号令で木遁分身たちが一斉に動き出す。

俺にターゲットを絞った六人のマダラは洗練された動きで俺へと肉薄する。どうやら、まずは体術で俺の体力を減らしに来たらしい。

体中にチャクラを巡らせ、マダラたちを迎え撃つ。まずは、右か。神楽心眼の術で細かくマダラたちの動きを感知し続けているため、不意を突かれるということはない。右手でマダラその1の拳を受け止め、頭を下げる。頭を下げたことで出来た空間をマダラその2の拳が切る。さらに、上か。

 

「ウラァ!」

 

右手に持ったマダラその1を上から跳んできたマダラその3に投げて、マダラその3の攻撃を潰しながら、俺への攻撃を空ぶったマダラその2の背中に掌を押し当てる。

 

「螺旋丸!」

「!?」

 

マダラその2の顔が驚きに歪む。それもそうだろう。ただの掌底のように見える攻撃が一瞬で高威力の攻撃へと変化したらマダラとはいえ、驚かない訳がない。

輪廻眼を発動中はチャクラコントロールが仙人のそれと同等レベルに引き上げられる。一瞬で螺旋丸を作り出すことなどは造作もないことだ。これで、一人潰した。

螺旋丸を放った隙を見逃さず、マダラその4とその5は俺の両横から攻撃を間髪入れずに仕掛けるが、ただの体術だけじゃ俺は倒せない。袖に仕込んでいたマーキング付きクナイへと飛雷神の術で飛ぶ。それにより、少し場所をずらしマダラの攻撃を避ける。写輪眼の先読みをさせないためには筋肉の動きを無くすことが大切だ。筋肉にかかる力の量で相手の次のイメージを視る写輪眼は少しの予備動作でも反応できる。そのため、体の予備動作がない飛雷神の術は写輪眼持ちの相手には有効だ。

 

「螺旋連丸!」

 

二人のマダラに螺旋丸を同時に当てようとするが、先ほどの一人を見たマダラは俺の攻撃を既に対策済みだった。掌に作った螺旋丸の完全な球体がマダラに近づいていく毎に歪んでいく。餓鬼道の封術吸引か。

だが、それはこちらも織り込み済みだ。右手を軽く振ると、黒刀が口寄せされる。

チャクラを黒刀vol.1に流し込み高振動させ、マダラその5の腹を切り裂く。大した抵抗もなく切れたマダラの木遁分身は木へとその身を変化させた。

マダラその5に続いてマダラその4を切り捨てようと接近するが、後方のマダラその6のチャクラが増大したことを感知した。

 

「火遁 豪火滅失!」

 

マダラその6の術が周りを巻き込みながら俺に向かってくる。そして、後ろから前へと視界は全て炎に包まれた。だが、炎に巻かれながらも、俺とマダラその4の体には炎が付くことはなかった。餓鬼道で忍術を吸収しているため、ダメージは全くない。マダラその6としては俺の視界を炎で埋め、写輪眼でチャクラの視覚感知ができるマダラその4に俺を仕留めさせようといった所か。しかし、俺は神楽心眼を使うことができるため、その戦法は通じはしない。

炎は気にせず、マダラその4に刀を振るっていくが全て紙一重で躱されていく。写輪眼の性能を十二分に引き出してやがる。仕方ない。

 

「口寄せの術!」

 

両手を合わせ畜生道の力を使い、獣を炎の中へと呼び出す。呼び出した獣の痛々しい声が聞こえるが、そうなることを期待した上での口寄せだ。

 

「やれ!」

 

俺の一声で茶色の獣たちが一斉に火の中から飛び出した。12匹に増えた増幅口寄せの術式に掛かった犬が一斉にマダラその4に襲い掛かる。だが…。

 

「須佐能乎。」

 

犬の牙は須佐能乎によって阻まれ届くことはなかった。

俺は左手を地面に押し当てる。チャクラを掌に集め、地面に直接、術式を刻み付ける。指刻封印の応用した術、掌刻封印だ。

 

「口寄せ 土遁 追牙の術!」

「!」

 

須佐能乎の唯一の穴である足元から畜生道で口寄せした犬たちをマダラに襲い掛からせる。今度はマダラも予想外だったらしく、体の至る所を噛まれていた。

 

「影分身の術!」

 

後ろから迫ってきていたマダラその1とその3に影分身を向かわせ、俺は犬たちにチャクラを送り込む。と、マダラその4の驚いている顔がドアップで見えた。

口寄せ輪廻眼で視界が繋がったまま更にチャクラを送り込む。畜生道の僕を畜生道と成らせ口寄せの術を犬たちに使わせる。

 

「これは…起爆札か!?」

 

須佐能乎の中で爆発が起きた。

口寄せ輪廻眼は俺自身の輪廻眼を対象にコピーする術。それが人間だろうと他の生き物だろうとそれの構造に変わりはない。増幅口寄せに掛かった犬は痛めつければ痛めつけるほど戦力が増大するため、起爆札を口寄せさせる術式を刻んでいた甲斐があった。

マダラの須佐能乎が消え、風が俺の服をはためかせる。マダラその4のチャクラは爆発と共にロストした。間違いなく分身体は消えたことだろう。

しかし…。

 

「マズイな。」

 

戦場を見回すと、押され気味だということが分かった。五影と言えど、マダラの分身体六体を同時に相手にすることは難しいようだ。

綱手様は三体、我愛羅は一体、水影様も一体、雷影様も一体、そして、土影様は四体倒しているが、状況は悪い。俺も含め、全員のチャクラはあまり残されていない。これが限界だろう。

考えを纏めている俺の頭上にマダラその1とその3が発動している須佐能乎の青い剣が迫っていた。

 

「飛雷神の術。」

 

一秒にも満たない間に飛雷神の術を五回行い、五影を回収してマダラの分身体全てが目に入る位置、我愛羅がいた場所に飛ぶ。

印を組み、術を発動させる。

 

「塵遁 原界剥離の術。」

 

血継網羅を会得している俺にとって血継淘汰などはかつて通り過ぎた道でしかない。性質変化を組み合わせて発動するタイプの術は輪廻眼発動時には扱うことができる。三代目火影(プロフェッサー)を間違いなく超えたね。

 

「ほお…塵遁をも使うか。」

 

俺の塵遁で分身が全て消えたというのに、マダラは焦る様子は一つもなかった。それどころか笑みを浮かべている。バトルジャンキーってのはこれだから困る。焦ってくれた方が対策を打ちやすいのにそれがない。厄介だよ、全く。

 

「強すぎる…。どうやってこんなのを…。」

「確かに…。このままでは…。」

 

水影様、そして我愛羅が呟く。どちらかというとこちら側が焦燥を感じているらしい。それだけではなく、綱手様も雷影様もその表情は暗い。完全に諦める一歩手前まで追い詰められている。仕方ない、幻術を掛けて気を逸らさせるか。黒刀を時空間に収め、印を組もうと手を胸の前に持ってくる。

 

「生死を分ける時に、もう弱音を吐くな!」

 

俺が印を組む前に喝が響き渡った。

 

「五影の端くれなら最後の言葉はその肩書に恥じぬものにせい!ワシらがナルトに預けた戦いがあるのじゃ!あいつに預けられたここでの戦いは絶対に勝つと誓ったんじゃぜ!」

 

土影様だ。彼の言葉で他の四人の目に火が再び灯る。

 

「それにもう一つ、ワシらは忍の者全員から預かったもんがある……五影を預かったことを無駄にするな!」

 

綱手様が土影様の両肩に手を乗せる。そして、その左横には雷影様が、右横には水影様が、そして、後ろには我愛羅が付く。俺が幻術などで感情を誤魔化す必要は無くなった。

彼らの後ろの少し離れた場所に付き、足にチャクラを溜める。

 

「何をするかは知らんが…。」

 

マダラは須佐能乎を纏い、印を組む。

 

「無駄なことだ。」

「姫、もっとじゃああ!」

「言われなくても!」

 

先ほどの焼き直しのように大量のマダラが岩の中から生えてくる。全員が須佐能乎を展開し、今度こそ俺たちを仕留めようと足を速めた。

 

「塵遁 原界剥離の術!」

 

本場の塵遁の威力は凄まじい。俺が先ほど出した塵遁よりも二回りほど大きな規模の術は生れ出たマダラの分身を一瞬にして飲み込み、マダラ本体の体をも削り取る。

 

「行けい!」

 

土影様が手を大きく広げると塵遁が二つに分かれた。

 

「ハイ!」

「おう!」

 

水影様と雷影様は同時に術を発動させる。即席のチームにも関わらず、コンビ忍術を発動させることができるとは本当に大した奴らだ。

 

『雷水龍弾の術!』

 

雷水龍弾がマダラの体を飲み込んだが、マダラは輪廻眼開眼者。すぐさま餓鬼道で雷水龍弾を無効化していく。

 

「オレには物理攻撃しか効かんと言ったハズだ。塵遁で分身を消しつつ陽動を仕掛けたつもりだろうが…。」

 

その通りだ。あくまでこれは陽動。

 

「!?」

 

マダラの体に砂が巻き付く。

 

「砂だけではない!」

 

我愛羅が声を荒げる。

マダラを捕まえている砂に次々と封印札が入っていくのを見て、俺は空へと跳び出した。

チャクラを練り上げ、印を組みながらマダラの頭上へと躍り出る。頭を下に右手を伸ばす。

 

「ならば…うちはマダラも全力で答えよう!」

 

手の感触が固いと伝えてくる。

失敗か…。

 

「五影も何も全てが無駄になるということを…!」

 

下から青いチャクラ体に押し上げられ、空へと再び戻る。

 

「この完成体須佐能乎でな!」

 

地面に降り立った俺の目の前には破壊を司る巨人が顕現していた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。