一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@90 うちはマダラ 3

どうやら、彼は嬲り殺しが趣味らしい。俺たちを殺すと宣言した癖に、活き活きとした表情で、俺たちが対応可能だが気を抜くと死ぬような術を使って来る。大蛇丸様に迫る勢いのドSだ。

そんなマダラが表情をデフォルトの無表情へと戻す。

 

「来ます!注意を!」

 

水影様が全員に注意を促す。それと同時にマダラは自分で発生させた木の上に瞬身の術で移動し、俺たちを見下ろす。

 

「貴様らの“意志”とやらをオレに見せてみろ。」

 

マダラは息を大きく吸い込む。

 

「火遁 豪火滅却!」

 

周りを囲む木に豪火滅却で火を点けるマダラ。性格が悪いな、アイツ。

地獄のような光景を作り出した彼が言葉を繋ぐ。

 

「さて…貴様らはこの展開をどう処理する?」

「いかに強大な術を使おうともワシらは負けん!」

 

土影様が印を組む。

 

「塵遁 原界剥離の術!」

 

土影様の塵遁が周りの燃え盛る木を消し飛ばす。ついでに、マダラにも術を当てたのだが、餓鬼道の能力を持つ彼には効かなかった。

 

「遊びはここまででいいだろう。真面目に闘ってやる。」

 

マダラの体が青い光に包まれる。しかし、その光が内包するチャクラはこれまで以上だ。今までマダラが作り出していた須佐能乎よりも三回りほどにその青い光が大きくなったかと思うと、体に衝撃が走った。

 

「うっ!」

 

咄嗟にガードしたものの、勢いを殺しきれずに空中へと体が飛ばされる。

あのヤロー。作り上げた須佐能乎の腕で殴り飛ばしやがったな。天道の能力で重力をコントロールして宙に留まる。

 

「大丈夫か!?」

「俺は大丈夫です!」

 

綱手様の呼びかけに答える。

 

「こっちもだ。」

「風影様、ありがとうございます。」

 

我愛羅が水影様と共に綱手様の隣に並ぶ。三人分の足場を咄嗟に用意することのできた我愛羅は油断なくマダラを見ている。

 

「無事じゃぜ!」

「助かったぞ、土影!」

 

雷影様は土影様の軽重岩の術で空に浮いているため無事に戦闘を続行できそうだ。

俺も彼らに続いてマダラを見上げる。

 

「そろそろお前たちには消えて貰う。」

 

宙を移動し、上半身が形作られた須佐能乎と並行になるようなポジショニングになる。

 

「須佐能乎を壊せるのは綱手様と土影様の加重岩の術でパワーを上げた雷影様だけ。つまり、この二人をアタッカーにして俺と水影様と風影様はサポートに回る形で攻めた方がいいでしょう。」

「フン、いいだろう。…行くぞォ!」

「勝利はオレたち忍連合が掴む!」

 

マダラは俺たちの気合いを鼻で笑い飛ばす。

 

「いかなる策もこのオレには通じん。お前たちはここで終わる。さて…どう攻めてくる?」

「お前はもう死んでいる身だ!あの世へ帰れ!」

 

先ほどと同じく綱手様が最初に攻撃を加える。我愛羅の砂に乗りながら、須佐能乎の胸に拳を入れる。

 

「なるほど、その力…侮れんな。だが、それだけだ。」

 

そう言って、マダラは須佐能乎の腕を振り上げさせる。

 

「結局はオレに届きはしない。」

 

須佐能乎はその手に同じ万華鏡写輪眼の瞳術で造られた青い刀を綱手様に向かって振り下ろす。綱手様は砂の土台を蹴り、宙に身を躍らせる。

 

「血迷ったか。」

 

須佐能乎が今度は横薙ぎに刀を振るう。

今だ!

 

「飛雷神の術!」

「なッ!?」

 

綱手様の元に飛び、連続で飛雷神の術を使って今度は我愛羅の元に飛ぶ。

 

「…時空間忍術か。そして、あの移動スピード。忌々しい飛雷神の術だな。」

 

憎々し気に俺を睨むマダラさん。やばい、怖い。そんな弟の敵のような目で睨まれても困る。そして、印を組み上げるマダラさん。

 

「火遁 鳳仙花爪紅!」

 

マダラの口から吐き出されたいくつもの炎弾が俺に飛来する。

 

「綱手様。もう一発、先ほどと同じところに攻撃してください。」

「ああ…って!?」

 

綱手様の腰に回した手を解き、綱手様を空に落とす。そして、綱手様の足の裏に俺の足の甲を付けて思いっきり蹴り飛ばす。

 

「なんちゃって!空軍(アルメ・ド・レール)ババァシュート!」

 

綱手様をマダラの方向に飛ばした反作用で俺は後ろに飛び、マダラの鳳仙花爪紅を上手い具合に避ける。そして、綱手様は先ほどよりも強くマダラの須佐能乎を殴りつける。

須佐能乎を殴りつけた綱手様は須佐能乎の胸を足場に大きくジャンプして俺たちのところに戻ってくる。

 

「ヨロイ…。この戦争が終わった後、覚えていろよ。」

「何で!?上手くいったじゃないですか!」

「誰がババァだ?あァン!?」

「誠に申し訳ございませんでした!」

 

さっきマダラに睨みつけられた時よりも数段上の恐怖を感じた。

 

「フン…存分に踊るがいい。」

 

綱手様に負けていられないと感じたのかマダラが印を組む。

 

「火遁 豪火滅却!」

「水影!」

「いきます!水遁 水衝波!」

 

水影様の水遁がマダラの火遁を打ち消した。

 

「ワシがやる!」

「頼む!」

 

雷遁チャクラモードで雷影様が須佐能乎の元にすばやく近づき、何度も打撃を放つ。マダラを、それを一瞥すると須佐能乎の手で雷影様と土影様を払う。

 

「オレを相手に随分と粘るものだな。これは褒美だ。受け取れ。」

 

首を鳴らしたマダラの後ろの空に小さいがいくつもの隕石が見えた。そして、それは俺たちに向かって降ってきている。

 

「風影様、俺の足場をお願いします。」

「分かった。」

 

砂の足場に降り立ち、両手を空に向かって広げる。

 

「神羅天征!」

 

斥力の力場を発生させ、天から降ってくる隕石を吹き飛ばす。

 

「今です!」

「おう!」

「分かっている!」

 

雷影様と綱手様がマダラの元に向かっていく。

 

「…嘗めるなと言っている。」

 

両手を広げた須佐能乎の手の間にはいくつもの八坂ノ勾玉があった。

それを俺たちに向かって同時に放つ。グンと足元の砂が動いた。慌てて体勢を低くし、風の抵抗を少なくする。

速い。

全員でマダラの周りを飛び回り撹乱する。その効果があったのは短い間だけだった。すぐにマダラはターゲットを綱手様に絞り、彼女に向かっていくつもの八坂ノ勾玉を連続で放つ。あの数と範囲は避けられない。一度、飛雷神で綱手様を移動させるべきだな。攻めるチャンスは失うが、ここで綱手様を失う訳にはいかない。

そう結論付け飛ぼうとすると、上から声がした。

 

「させん!」

「させんぞ!」

 

我愛羅と土影様だ。二人が同時に術を発動させる。土遁 剛隷式(ゴーレム)の術と女性の姿を象った砂の盾が八坂ノ勾玉から綱手様を守る。

 

「沸遁 巧霧の術!」

 

水影様の術が須佐能乎の表面を溶かすと共に、連続攻撃でマダラが修復し切れなかった須佐能乎の罅割れが広がっていく。

 

「雷影!」

 

綱手様が上に視線を向けて叫ぶ。

 

「オォオオオオ!」

 

すると、雷影の雄叫びと雷鳴が響き渡った。

 

「超加重岩の術!」

 

雷影様の落下スピードが更に上がる。雷と化した彼の拳の一撃は寸分違わず須佐能乎の罅にめり込んだ。

 

「くっ!」

 

マダラの焦った声が聞こえるが抜群の防御力を誇る須佐能乎はそれでも破ることができない。だが、もう一撃だ。

 

「飛雷神の術!」

 

雷影の元に飛び、チャクラを足に集めて須佐能乎の上に垂直に立つ。

 

「!?」

 

マダラの驚く顔を見下し、俺を右手を空に向かって掲げる。

 

「万象天引!」

 

空の上にあるものを引き寄せる。隕石?いや、違う。それよりももっといいものだ。

 

「ハァアアアア!」

 

俺が引き寄せている者が声を上げる。雲の中から現れたのは額の紋を変化させた綱手様だった。

 

「痛天脚ッ!」

 

落下の速度と俺が引き寄せる力を加えた膨大なチャクラを込めた綱手様の右足がマダラの須佐能乎を今度こそ打ち破った。

細かく割れた須佐能乎の破片は固体から光へと変わっていく。

 

「ラアッ!」

 

遂に綱手様の攻撃がマダラを捕らえた。須佐能乎の中から吹き飛ばされたマダラはそのまま地面へと落ちていく。

おっと、このままじゃ俺たちも地面に叩きつけられるな。瞬身の術でマダラが木遁で持ち上げた足場へと移動する。すぐ横に綱手様、雷影様、土影様が並び、離れていた我愛羅と水影様がそのまた隣に並ぶ。

俺たちは一列に並んで空に溶けていく須佐能乎を見送った。


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