「あそこまでやってもダメか…。」
綱手様が臍を噛む。
「フン…結局のところ、お前たちとの闘いはオレにとっては児戯に等しい。かつての柱間との死闘に比べれば、大したことはない…ただの小さな闘いだ。」
「その小さな戦いが…今のワシらにとって重要じゃぜ。」
「この一戦に勝利すれば、忍連合の勝利は目の前です。」
「オレを前にして勝利などありえん。…柱間以外はな。」
「それは最後までやってみなければ分からない。」
我愛羅が力強く言う。
「風影の言う通りだ!全て貴様の思い通りにいくと思うな!」
「図に乗るな。さっきも言ったが、オレは貴様らと遊んでやっているだけだ。いや、それは少し違うか。」
マダラはそう言って、俺を指さす。
「そこのお前。名前は赤銅ヨロイと言ったか?」
「ええ、そうですけど。」
「貴様は本気で殺しにいく。どうやったかは知らんが、輪廻眼を持つことができた貴様を、な。輪廻眼を持つ者はオレ一人でいい。」
マダラは俺の方に向かって歩を進める。
「教えてやる。いかに抗おうと振り払うことのできぬ“絶望”があるということを。…うちはを嘗めるなよ。」
「嘗めるな…か。」
綱手様の唇が孤を描く。
「では、こちらも教えてやろう、うちはマダラ。ここにいる私たちとアンタとでは、決定的な違いがあるのは知っているか?…それは力の差か?違う。…それは経験の差か?それも違う。……私たちとアンタと決定的に、絶対的に異なる差。それは……“影”のみが背負う、幾千幾万の人の“意志”だ!」
「意志だと?」
「“影”の域に立ったことのないアンタには分からないだろうがな!」
「綱手様、綱手様。」
「今、マダラと話している途中だ!もう少し待てないのか?」
「ええ。少し今の発言にピンときましてね。あの…俺もマダラと同じく“影”じゃないです。」
空気が静まりかえった。
「俺は音隠れのトップってだけなんで忍五大国の長だけが背負える“影”じゃないんですよ。」
「だからといって止めるな!“影”の持つ意味はお前なら分かっているハズだ。」
「慕う仲間たちの期待を裏切ることができないってことですか?」
「そうだ。だから、私たち“影”は…いや、ここに立つ六人は相手が強大であっても、傷付き膝をつこうとも勝たなくてはならん!それが上に立つ者の務め、我々の“意志”だ!」
綱手様は拳を構える。
「うちはマダラ!私たちを…嘗めるなよ。」
再び臨戦態勢に入った俺たちを見たマダラは腕を組み直す。
「いかに貴様らが吠えようとオレには届かん。ここで無様に果てるがいい。」
言い方からして、マダラは俺だけじゃなく、ここにいる全員を“殺すべき”敵と認めたようだ。
「マダラ!お前は必ず潰す!我々の手でな!」
「では、行きましょうか。綱手様をメインに攻めますが、皆さん準備はいいですか?」
「ハイ!」
「ああ。」
「おう!」
「うぬ。」
「戦闘開始!」
俺の合図と共に瞬身の術を使った綱手様が一気にマダラに近づき拳を繰り出すが、マダラは一瞬で骨型の小さな須佐能乎を展開し、その拳を防ぐ。
「甘いな。」
そう呟くマダラの背後に雷影様が土影様をその肩に乗せて瞬身の術で現れる。
「甘いわッ!」
「超加重岩の術!」
「何ッ!?」
パリンと軽い音と共に須佐能乎が砕ける。
危険だと感じたのだろう。すぐさま綱手様から距離を取り、空中に跳び出すマダラだったが、その方向には水影様がいる。
「溶遁 溶怪の術!」
「餓鬼道。」
水影の粘性を持った溶怪の術がマダラに吸収されていく。
…ここだな。
溶怪の術で発生した溶液の中に飛び込み、丁度地面に着地したマダラの背後に回る。
マダラを羽交い締めにして、その首に手を置くとマダラは驚愕の表情で俺を見た。
「何だとッ!?」
「そんな顔してもダメですよ。」
「貴様、なぜ…そうか!輪廻眼の餓鬼道で水影の術を吸収したということか。」
「そうです。けど、それだけじゃないですよ。」
「これは…。オレのチャクラを吸収しているのか?」
「ご名答!」
「くっ!」
マダラの頭が下を向く。…おや?攻撃を仕掛けてくる様子がない。せっかく隙を見せていたというのに残念だ。
「…流石はうちはマダラだ。俺がわざと隙を作ったのに気付き、攻撃を仕掛けてこないとは。」
先ほど綱手様の攻撃で墜ちた地面からマダラがゆっくり立ち上ってくる。
「写輪眼はチャクラを色で見抜く。お前を守るように薄く風影のチャクラが取り巻いていたからな。オレが攻撃しても風影の砂がお前を守る結果になるだろう?」
「やりますね。」
チャクラを全て吸い取り、木材となったマダラの分身体を地面へと投げ捨てる。
「輪廻眼、餓鬼道。なるほど…貴様はその力を使いこなせているようだ。では…これはどうだ?木遁 樹界降誕!」
マダラが術を発動させると、木が俺たちのいる場所を円形に取り囲んだ。そして、俺たちがいる地面が大きく揺れ空に向かって押し上げられる。
「ッ!?地面ごと…!?」
揺れが収まると、マダラが俺たちに向かって軽く微笑む。
「さぁ、続きを始めるぞ。」