一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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注意!オリキャラ出てきます。


@85 「ザク」を超えて

「フン。」

 

角都さんが顎をしゃくったのを合図にしたのか、後ろの仮面のバケモノの口が開き、火と風がその口内で圧縮される。

 

「影分身の術!」

 

火遁 頭刻苦と風遁 圧害の複合忍術か。レンズの奥で眼の色を変える。

それに対処するため、俺は印を組んで影分身体を作り出し、結局アスマとの戦いでは使うことのなかった球を操作し、砂浜に潜り込ませる。

すばやく準備を整えたお陰で角都さんの攻撃を受ける前に策を打つことができた。

 

「死ね。」

 

角都さんがそう言うと、仮面バケモノに二体の攻撃で巨大な火柱が発生した。そして、それは俺の方に向かってくる。

 

「風遁 螺旋丸!」

「水遁 破奔流!」

 

俺本体と影分身の声がユニゾンし、新たな術が生まれる。

 

颶風水渦(ぐふうすいか)の術!』

 

“風”の性質のチャクラで強化された“火”のチャクラはその力を増幅させる。酸素を取り入れ炎となった火の性質の術は“水”単体の術では相殺することができない。そのため、俺も水の性質の術である水遁 破奔流に風の性質の術である風遁 螺旋丸を加えて霧が渦巻く台風を作り出すことで、結果、角都さんの術を止めることができた。俺と角都さんの術がぶつかり合うことで出来た濛々と立ち込めるスチームの中におそらく角都さんはいるだろう。そして、俺を殺す機会を窺っているハズだ。

俺と合致しない風の性質変化の中でも高レベルの忍術である風遁 螺旋丸を使うために発動させた輪廻眼を引っ込め、今度はスチームの中の角都さんを感知忍術で探ると俺の予想通り、角都さんはその中にいた。…なるほど。その後ろには口内に雷を溜め始めたバケモノが一体。少し離れた左右には先ほどの火と風の術を撃ったバケモノがいる。確かに、位置取りはいいが…。

 

「雷遁 偽ッ!?」

 

地面から角都さんの顎を打ち抜くように丸い球が飛び出した。その球は空へと飛んでいく。これで、詰みまでの道筋は整えることができた。本体である俺は片手で印を組み、瞬身の術で浜辺から角都さんの死角である崖の上に移動する。角都さんは感知タイプの忍術は苦手なため、目の前に残した影分身体を俺の本体と思うことだろう。

そして、懐から音隠れの里、謹製の携帯電話を取り出してダイヤルをプッシュする。

 

「殺してやる!このクソヤローが!」

 

角都さんが何やら叫んでいるが無視だ。電話の方に集中する。2コール目で相手が出た。

 

「ハイ!お待たせしました!」

「チィーッス、オレオレ。突然なんだけど、角都さんに見つからないようにして浜辺に控えててくれない?」

「ハッ!」

「そして、“左腕”をいいタイミングで角都さんに放て。」

「…了解しました。」

「任せたぞ。」

 

そう言って電話を切り、視線を角都さんの方に戻す。蒸気も晴れ、お互いに視認できるようになった戦場で俺の影分身と角都さんとエトセトラのバケモノ4体が向き合う。

少し時間が掛かりそうだな。

そう考えた本体の俺は再び携帯電話で連絡を取る。

 

「ハッ!キンです!」

 

今度は1コールもなく電話が取られる。

 

「チィーッス、オレオレ。突然なんだけど…」

「ご用件は何でしょう?」

 

この前からキンの対応が冷たい。宴会芸で腹踊りをした時、キンの顔の近くまで寄って行ってちょっとしつこくしたからだろうか?

これは真面目モードで対応しなくちゃならないっぽいな。面倒臭い。

 

「デンデンの所に水の性質変化持ちの忍を、エヌ公の所に火の性質変化持ちの忍を、そして、ティティの所に風の性質変化持ちの忍を集めろ。頭数は大体10ぐらいでいい。」

「ハッ!3組ともにマーキング付きのクナイを中心とした20mほどの円を作り待機させます。…いえ、デンデンには海の近くに移動して貰います。」

 

俺の意図を読み取るばかりではなく、改善策まで提示することができるとは…。成長したな、キン。

 

「ああ、それで頼む。」

「了解しました!」

 

キンとの電話を切り、眼下を見下ろす。

俺の影分身と角都さんのチャクラが高まっている。……そろそろか。

先に動いたのは俺の影分身だった。影分身はチャクラの鎧を纏い、角都さんの方に向かっていき、体術で角都さんを攻める。拳の応酬を交わしながら角都さんは話し始める。

 

「その程度ではオレに傷一つ付けられん。」

「でしょうね。俺もその事は分かっていますよ。」

「なら…雷切か?」

「雷きッ!?」

 

カカシから教えて貰った雷切ではあるが、一度、角都さんはこの術を生前に受けている。ってか、一回この術で殺されていた。そして、その時にこの術のレンジを見極めていたのだろう。角都さんは空に飛び上がりながら自らの体を変化させる。

 

「遠距離戦闘タイプですか。」

 

角都さんの体を中心として、黒い触手が掌のように回りに広がった形態となった彼を見上げる。体が変化した上に飛行能力を得るってどこのRPGのラスボスだよ。小林幸子様でさえ飛行能力はなかったっていうのに。その上、火、風、雷の性質変化持ちのバケモノまで彼の側を飛んでいる。初見殺しのボスっぽい。

しかし、もう手は打っている。

影分身体は砂を蹴り、空中へと跳び上がる。

 

「なに?」

 

わざわざ動けないハズの空中に跳び上がるなんてバカなことは普通しない。そのことが頭の中にあったのだろう角都さんの動きが止まり、俺の動きを観察する。

それは、俺にとってラッキーだった。角都さんよりも高く跳んだ俺の影分身はポーチから先ほどの物と同じ能力を持つ二つの球を取り出し、足の裏に付ける。

 

「影分身の術!」

 

影分身体が更にもう一体、影分身体を作り自分の背中にしがみ付かせる。

 

「ボリューム上げるYO!磁力結び(Gボンド)!」

 

足を角都さんに向けた俺の影分身はまるで磁石が引き寄せられるように角都さんの元に凄い勢いで向かっていく。ちなみに、両手の形はじゃんけんのチョキの形っていうのがポイントだ。

 

「なに!?」

「ジャンケンチョキッーク!」

「少しばかり驚いたが…甘い。」

 

速度だけで言えば六道の術“万象天引”にも引けを取らないジャンケンチョキッークであるのにも関わらず、角都さんはあっさりとそれを見切り、体中に纏う黒い触手で俺の影分身体を捕まえた。

だが、もう一体の影分身体までは捉えられていない。それどころか、もう一体の影分身は…なんだかややこしいな。始めの奴を影分身A、そして、影分身Aが作り出した影分身を影分身Bとしよう。

影分身Bは角都さんの触手に捕まった影分身Aの肩を足場にして、さらに上に跳ぶ。そして、手の形に形態変化をさせたチャクラの鎧を使って3体のバケモノを掴み、飛雷神の術でデンデン、エヌ公、ティティの所に一体ずつ置いていくのを本体の俺が感知忍術で感じ取ることができた。

角都さんは俺の本体を捕らえていると思っているため、影分身体を無理に追わずに本体を殺そうと決めたようだ。今、掴んでいるのは影分身なのに。見ていて可哀そうになるので、もうしばらくしたら種明かしを簡単にしてあげよう。

 

「オレと戦場で会ったことが不運だったな。“暁”の準メンバーとはいえ、貴様は裏切り者だ。ここで死んで貰う。」

「待って!」

「聞く耳持たん!」

「ちくしょう、このッ!」

 

影分身体は足に付いているオーパーツ、トリッキーを操作して角都さんの顔の前を通り過ぎるように動かす。

 

「一体、何を…?」

 

一流の戦闘経験を積んでいる角都さんはトリッキーが自分を狙うことを予測していると俺は踏んだ。そして、今の表情、彼が自分を攻撃しなかったトリッキーの行方を目で追っていることから、その俺の考えは当たっているようだ。『なぜ自分に攻撃を加えなかった、オレは準備をしていたのに』という期待を裏切られた表情をしている。

そんな彼の期待を裏切ったトリッキーは空中をふわふわと漂い、角都さんから離れて崖の方に向かって来る。

そして、本体の俺の掌に収まったトリッキーを見た角都さんが顔色を変える。

 

「俺と戦場で会ったことが不運だったな。“暁”の正メンバーとはいえ、貴様は卑劣な奴だ。ここで死んで貰う。」

「待て!」

「聞く耳もたん!ゴーストカミカゼアタック!」

 

本体の俺がそう叫んだ瞬間、影分身体が何の前触れもなしに爆発した。正確には、ゴーストカミカゼアタックではなく影分身・砕ではあるが、ここでは些細な問題だろう。

しかし…あの至近距離での爆発を瞬時に対応できる角都さんは見習うべき先輩である。体を硬化させる土遁 土矛(ドム)で俺の攻撃を防いだ角都さんだったが、爆発の勢いまでは土矛では殺せないので砂浜に向かって落ちていく。俺は角都さんが落ちていく砂浜の丁度反対側に降り立ち、俺の少し前にある崖が崩れてできたであろう岩にマーキング付きのクナイを突き刺す。

ズザザと砂浜に足から着陸し、爆発の勢いを徐々に落としていく角都さん。そして、その後ろには“左腕”を展開したザクがいた。

 

「!?」

 

殺気だけで後ろにいる忍の存在に気が付いたのであろう角都さんの顔が驚愕に染まるが、少し遅い。ザクの“左腕”が角都さんの背中に押し当てられる。

 

「ポジトロン……ショット!」

「飛雷神・導雷の術!」

 

左腕からザクの体を守るように開いたチャクラの盾の奥でザクが呟く。俺もマーキング付きのクナイを構え、術を発動させた。

その一瞬後、クナイから広がった結界の外からでも分かるほどの熱量と光量が一直線に俺の元に届き、時空間忍術で飛ばされたポジトロンショットが岩に突き刺したマーキング付きのクナイから天に向かって立ち昇る。その幻想的な風景の中で角都さんの姿は存在できなかった。

やがて、光が収まるとザクの展開していた左腕が収納される。それを見て終わったと判断した俺も発動し続けていた飛雷神・導雷の術を止める。

ポジトロンショットを放った後のオーパーツ、ムゲンはかなりの熱を持ち、触ったら火傷じゃすまないレベルだ。それを急速冷凍するためにザクは氷を操る鎖型のオーパーツ、レイスをムゲンに巻き付けて冷やしていく。一応、ムゲン自体を改造していて冷却用の氷と風のミスティッカーも仕込んでいるために専用の冷却ポッドを用意しなくてもいいということはザクの運用に関してかなりの幅を持たせられる効果がある。

 

「ザク、大丈夫か?」

「はい、問題ありません。ただ、冷却が終わるまでにあと2分ほど掛かりそうです。」

「そうか。……封印班!」

 

俺が封印班を呼ぶと、崖の上にいる筒状になった布を持った忍が側に降り立った。彼らに向き直り、指示を飛ばす。

 

「“アレ”が封印できるサイズになったら封印して。」

 

親指で後ろを指すと、塵芥が舞い人型になっていく様子がそこにあった。それと同時に角都さんのバケモノの方に送った影分身からの情報が還元される。あっちも終わったようだな。

 

「ハッ!では、今より封印します。」

「うん、よろしく。」

 

封印班の人が角都さんを封印術で封じていく。

 

「くっ…まだ、まだだ。」

「『心臓が来ればまだ戦える』とか思ってます?残念ですけど、あの三つの心臓は既に潰しています。飛雷神で飛んだ影分身が一体ずつ優勢の性質変化を持つ忍で取り囲んでいる場所に送って潰していきました。」

「クソが…。」

「アナタの負けです。後ろのモブキャラと言っても過言じゃないザクに心臓二つ潰されたアナタの絶対的な敗北です。」

「ヨロイさん!?」

 

ザクが何やら驚いているがここはスルーの方向で。

布でグルグル巻きになっていく角都さんを見下しながら、顎を上に向けこの上なく不遜な態度を取りながら角都さんに最後の一言を言い放つ。

 

「もう彼はモブキャラではない。ザク、角都さんに自己紹介を。」

「え?あ!ハイ!」

 

ザクは息を整え、目を閉じたかと思うとカッと目を見開く。

 

「オレは……超ザクだ!!」

「ザクとは違うのだよ!ザクとは!」

 

俺も一言付け加える。

 

「あの…ヨロイさん。」

「ん?どうした?」

 

おずおずといった様子のザクが顔を赤らめて俺に尋ねる。

 

「なんで俺は忍なのにこんな決めポーズとか取っているんですかね?」

「ninjaだからだ。」

 

そこらへんは岸本先生’sに言ってくれ。あと、神である六道仙人の爺さんに。




情報通信部隊として、オリキャラのデンデン、エヌ公、ティティという音隠れの忍を名前だけ出しています。これからの出番は90%以上の確立でないでしょう。
ちなみに、この三人の名前はとある企業名とその前身となった企業名から文字っています

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