一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@82 激戦前!ダルイ部隊!!

アジトから飛雷神の術で忍連合軍本部へと舞い戻る。

ふと横を見ると、大きな水の塊が宙に球となって浮いている光景が目に入った。感知水球だ。チャクラに反応し、感知したチャクラの大きさによって水球の中の泡の大きさも同時に変わる術。敵の情報の視覚化に成功しているこの術は感知タイプの術の中では異端である。通常の感知タイプの術は術者が感覚的に知覚するものだが、この術は術者以外の人間も見ることで情報を得ることができる。

 

「…なるほど。」

 

他の泡と比べて大きな泡が三つ出現した。この場合、現場では人間が突然現れたという現象が起きている。通常では考えられないこの現象ではあるが、俺たちは忍術を扱うことができる忍だ。つまり、この現象は時空間忍術での時空間移動や口寄せの術による召喚が行われたと推測できる。

 

「第四部隊より連絡!敵4名を発見!敵は二代目水影、二代目土影、四代目風影!それから…。」

 

感知用のヘッドセットを身に着けた連絡員は口ごもる。

 

「どうりでじゃぜ。突然、感知反応が三つ出た上に一人分こっちでは感知できとらん。間違いなく無様の仕業じゃぜ。」

「で…あとの一人は?」

 

連絡員の情報に頷く土影と続きを促す雷影。

 

「三代目雷影…様です。」

「何ィ!!」

 

雷影様が椅子から立ち上がる。それとほぼ同時に感知班の一人の忍が声を上げた。

 

「青様!あの白いバケモノの数が多すぎて特定の人物を感知しきるのは私では無理です!そろそろダルイ第一部隊と敵数千が接触します!白い奴と穢土転生組との分別感知をお願いします!」

「分かった!お前は拡大感知を担当しろ!」

 

青さんの顔が青冷める。

 

「ヤバイぞ!!」

「どうされました、青さん。」

 

あの冷静な青さんが慄いている。これは只事じゃないと考え、青さんに声を掛ける。

 

「ダルイ第一部隊に名の通った穢土転生組の忍が多くいる!」

手配書(ビンゴブック)Sランク以上の忍の名前を挙げてください。場合によっては、俺が出ます。」

手配書(ビンゴブック)Sランク以上と言うと…。まず、“暁”だった角都!それと……なんだこのチャクラは!?九尾のチャクラを帯びているぞ!」

「大方、雲の金銀兄弟ってとこでしょう。大蛇丸様が二人の墓を荒らした現場を俺は見ましたし、大蛇丸様のコレクションからカブトが彼らのDNA情報を探し出していても特におかしくはない。……今の戦況から、俺がダルイ第一部隊、土影様が我愛羅第四部隊へ行くってことでいいですか?」

「そうじゃな。それしかなかろう。」

「ワシも出る!親父はワシ以外には止められん!」

「お待ちください。」

 

冷静な声が響いた。

 

「む?木ノ葉のシカクか。なんじゃ、言うてみぃ。」

「相手は穢土転生。“影”と言っても、こちらは親しかった者と戦うことは戦闘に影響が出ます。それに対して相手は穢土転生の術者によりコントロールされている状態ですので、戦闘に置いては冷徹に動くことのできる敵の方が一枚上手でしょう。それに、総大将は最終段階まで戦場に出ることは避けなければいけない。…こちらを。」

 

シカクさんは地図を示し、次いで地図に置かれた兵力を表す凸の模型を動かす。

 

「兵力を集中して有利に立つのは戦術の鉄則!二方向からの敵に対しては一方に兵力を集中して徹底的に叩く!戦場AとBの二か所がそれだ!」

 

シカクさんの指が盤上を滑り、ダルイ第一部隊と敵のマーカーが接触している所を指し示す。

 

「Aっと。」

 

俺はペンを取り出し、シカクさんが指した地図の上にAと書く。音隠れ(ウチ)の研究員である千賀パイロが開発した温度が60℃以上になるとインクが無色になるボールペンで書いたから、戦況が動いたとしてもすぐ消すことができる。

俺がAと書いた場所からシカクさんは指を動かし、我愛羅第四部隊を示す。

 

「Bっと。」

 

俺が地図に書き込むと、シカクさんは一つ頷き説明を再び始める。

 

「この場合、まずはAを叩く!ダルイ第一部隊側に兵力を集中する。そのためには、まずミフネ第五部隊の北側の兵力を帯状のまま増援部隊として向かわせつつ最後尾を合流させる。そして、黄ツチ第二部隊を横に展開して海側から敵を挟むように囲む。」

「ダルイ第一部隊の敵を先に攻略しようという訳ですね。この作戦なら、第一部隊と戦っている敵は第一部隊だけではなく増援の第五部隊、背後から来た第二部隊も同時に相手にしなくちゃならない。しかし、第二部隊と戦っている敵が第二部隊の移動を見逃すとは思えません。」

「そのための第五部隊だ。帯状に長く展開している第五部隊の南側の兵力を第二部隊の増援に向かわせる。」

「しかし、そうすると、Bの戦場、つまり我愛羅第四部隊への増援の時間がかかりそうですが…。」

「ああ。だから、我愛羅第四部隊には時間を稼いで貰う!逆くの字でゆっくりと後退、さらに、Aの戦場に近い半分はダルイ第一部隊への増援に向かわせる。ちなみに、ヨロイ。急に敵の半分がいなくなった場合、敵はどう動く?」

「罠だと考え、攻めきれませんね。それに、戦況が激しい所に敵は目を向けるでしょうから少しでも罠だと思ったら積極的に攻めることはないでしょう。…総大将、どうします?」

「…良い忍がいるな、綱手。」

「褒めんのは戦争が終わってからにしな!で…どうすんだ?」

「よし…やってみろ!」

 

雷影様が重々しく頷いたので、俺は椅子から立ち上がり土影様の近くに移動する。

 

「第四部隊の所まで俺が送っていきますよ。」

「そりゃ、ありがたいのォ。長距離移動は腰に響く。」

「待て、ヨロイ!話を聞いていなかったのか?五影は最高戦力。そうおいそれと出せるものではない。すでに風影様が出ているというのに、土影様まで出るというのは時期尚早だ。」

 

シカクさんが俺たちにストップを掛ける。しかし、ここで俺たちが出ないということはしない方がいい。

 

「…血継淘汰。二代目土影は塵遁の使い手です。」

「な!? 」

「ヨロイの言う通りじゃぜ。」

「それは三代目土影様のことではないのですか?まさか、二代目まで…。」

「風、火、土の性質。その三つを一度に合わせることのできる…塵遁をワシに教えてくれたかつての師じゃぜ。」

「塵遁を止めることができるのは塵遁だけ、か。しかし、ヨロイ。お前まで出る必要はないだろう?」

「雲の金銀兄弟は九尾のチャクラを持っています。通常の封印術では力尽くで引き千切って封印はできないと予測されます。それに…」

 

拳を掌に叩きつける。

 

「…あの兄弟は許せない。一族が迫害され続けているのは金銀兄弟のせいですし、何よりあの兄弟の尻拭いは同じ一族である俺がするしかない!」

「そうか…。それなら、俺から言うことはない。」

 

頷くシカクさんにバレないように心の中でほくそ笑む。

まぁ、半分嘘だけど。一族の責任とか知ったこっちゃない。他人の責任を別の奴が取ることはナンセンスというのが俺の持論だ。失敗したら失敗した奴に責任を取らせる。俺が失敗した時は身代わりを立てる。それで万事OKだ。

俺が雲の金銀兄弟に狙いを定めた理由。

それは、彼らが持つ爺さん(六道仙人)の宝具を手に入れるためだ。俺が知っている原作知識では、二つの宝具は外道魔像に飲み込まれたし、他のものに関してはテンテンが持っている以外の原作知識はない。元々、あれは赤銅一族が管理していたものだ。他の奴に渡すなんてことはしたくない。

 

「では、行きましょう。土影様。」

「うむ。」

 

土影様の肩に手を当て、飛雷神の術で飛ぶ。

 

「!?」

 

驚いた顔で振り向く第四部隊の忍。

 

「あー、本部の伝令がまだだったね。すぐに来ると思うから気にしないでくれ。」

「少し早すぎたの。…そうじゃな、ワシが先程の作戦を風影に伝えてくる。ヨロイ、お前は第一部隊の方に向かってもよいぜ。」

「では、よろしくお願いします。」

 

ここの連絡は土影様に任せ、俺は飛雷神の術で時空間移動を行う。

二度目に目を開けた場所は、海沿いにズラリと並ぶ忍連合軍第一部隊の後方だった。

 

「ヨロイさん、早いですね。」

「お前の様子からして連絡は来ているようだな…キン。」

 

長い黒髪を揺らしてくノ一、キン・ツチが頷く。

 

「本部からの連絡はすでに前線にいるダルイ隊長に伝えています。同時にヨロイさんの次の行動も私が予測して伝えています。」

 

キンが走り出したので、それに続き前線へと向かう。

 

「どう伝えた?」

「なるべく派手な攻撃でヨロイさんから相手の目を逸らす攻撃を初撃にすることをお願いしています。」

「キン…お前、ザクより切れるな。」

「ありがとうございます。ダルイ隊長!ヨロイさんが参られました!」

 

前方の視認できる距離に第一部隊隊長であるダルイの姿を捉える。

 

「ヨロイさんも来たんで、そろそろ始めましょうか?だるいッスけど。」

 

俺から前に目を移したダルイさん。彼の目線を追い、俺も目を前に向ける。

俺たちの目線の先には海から次々と上がってくる白色の人間。そして、それぞれを表現した衣服を着た死んだハズの人たち。そして…。

 

「初めましての人もそうじゃない人も纏めて…さようなら。」

 

隣のダルイさんと共に術を発動させる。

 

『雷遁 黒斑差!』

 

ダルイさんの雷遁の攻撃が海水を伝わり、白ゼツたちを感電させる。

しかし、敵も然る者。海面から跳び上がり、感電しないようにしつつ俺たちに攻撃をしようと前に出てくる。

 

「上だ!!行けェー!!」

 

地上から空に向かってクナイが放たれる。青を黒に染める程の量のクナイではあったが、相手も超一流の忍たち。穢土転生組には傷一つ与えることができず弾かれ、白ゼツたちも前面に居る味方を盾に攻めこんでくる。

 

「ダルイさん。金銀兄弟は俺が…。」

「お願いします。損な役回りを押し付けちゃってすみませんね。」

「気にしないでください。」

 

少ない言葉を交わし、俺とダルイさんは二手に分かれる。ダルイさんは数多くの敵がいる場所へ。そして、俺は目の前へと。

 

「なさけねェ…。ぶっ倒した二代目火影の術にこのオレたちが掛かってるなんてのはな…なぁ、金角。」

「ああ、銀角。オレたちの目の前の奴らをぶっ殺したら術者も殺してやるか…。で、オレたちが何者なのかわかって目の前に立ってんだよなァ…お前は?」

「もちろんです。」

 

笑顔を浮かべる。

 

「初めまして…。曾お爺さん、大大叔父さん。」

 


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