一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@78 サスケの“須佐能乎”…!!

飛雷神の術で予めマーキングしていた場所に飛ぶ。さぁ、このバトルを見届けようか。

 

「始まりました!今世紀最大の戦い。『復讐の業火を操りし六芒の眼を持つ者』VS『キングオブ卑劣の愛弟子』の復讐とエゴがぶつかり合う血を血で洗う大活劇!ここでカメラを解説席の『無限月読ドリーマー』うちはマダラさんに戻します。マダラさん、この戦い、どう見ますか?アアッ!」

 

前方に向けていたカメラを勢いよく隣の彼に向けると、手に持っていたカメラを無言で叩き落とされた。アレ、結構高かったのに。

川底に落ちて行ったカメラにお別れを心の中で言っていると後ろから怨嗟の籠った声が聞こえてきた。

 

「いいだろう。……ここで16年前の貴様との決着をつけてやる。」

 

ユラリと立ち上がる無限月読ドリーマーことうちはマダラことうちはオビト。少し複雑になったが、原作でもオビトの立ち位置は黒幕(ペイン天道)黒幕(長門)のそのまた黒幕としてやってきた彼にはこのぐらいの遠回しな言い方が似合っていると思う。

しかし、それは置いといて、だ。

 

「16年前ってアンタの完全敗北で決着は着いただろう?四代目が死んだのは九尾が原因だし、あの時は俺と四代目が見逃さなきゃお前は死んでたぜ。」

「それなら、今ここでお前を消す新たな戦いを始めるとしようか?」

「えー、むーりぃー…。」

「駄々をこねるな!」

「『お前を消す新たな戦いを始めるとしようか?』とか厨二臭すぎてクシャミが出てしまう程、むーりぃー…。」

「その言い方はやめろ!お前が言うと腹が立つ!」

「仕方ないな、他でもないお前の頼みだ。聞いてやろう。」

「何故常に上から目線なんだ、貴様は!」

 

「うわぁああ」と頭を掻きむしるオビト。しかし、すぐに自分を取り戻した。大声を上げて気分を一転させるのはプロスポーツ選手もやることがある。傍からすれば迷惑極まりないが、その行為は至って効率的だ。

 

「それで、ヨロイ。何故貴様がここにいる?」

「まぁ、そう急くな。ゆっくり観戦したい。腰を下ろさせて貰う。」

「オレが五影たちと話した時のセリフを…。おい、そんな得意げにこっちを見るな!」

「まぁ、オレオでも食べて落ち着け。」

「いらん!」

「そうか。……それで、俺がここにいる理由を聞きたがっていたな。俺がここに居る理由。それは、俺はオレオでサスケを助けたいと思っているからだ。」

「今日はいつも以上に話が通じないな、お前!さっきから話が進まん!」

「あれ?お前とそんなに多く話をしたっけ?」

「………オレを誰だと思っている?このうちはマダラが知らないことなど何もない。」

「無限月読。」

「…。」

 

オレオを一齧りして、隣のオビトから正面の戦いを注視する。それは丁度、ダンゾウ様をサスケの須佐能乎が握り締めて、その体が弾ける所だった。

 

「きたねぇ花火だ。」

「ダンゾウを助けに来たわけではないようだな。」

「うん。あの人を忍連合軍のトップに据えてあげようとしていたのに、勝手に自爆しやがった。俺の顔に泥を塗った人を助ける訳がないだろ?……それに、今の所、俺の助けが必要には思えない。」

 

幽霊の如く霞が人影を作る。サスケの後ろに現れた人影は印を組み、身体能力を上げると左手に持ったクナイをサスケに向かって突き出した。

しかし、その攻撃はサスケの纏う紫色のチャクラに阻まれた。サスケはすぐに反撃に移る。その人影をダンゾウ様だと気付いたサスケは須佐能乎の拳で持って、上からダンゾウ様を叩き潰す。

だが、そのサスケの攻撃はダンゾウ様にとってはダメージがなかった。いつの間に移動したのか柱の上に立つダンゾウ様がサスケを見下ろしていた。

目の前の有り得ない光景を見たオビトが呟く。

 

「…どうなっている?うちは一族でもない者が“あの術”を…。」

「解説席のマダラさん、“あの術”とは?」

「“イザナギ”だ。ほんの僅かな時間だけ、術者のダメージや死を含めた不利なものを夢に書き換える事ができ…そして、術者の攻撃などで有利となるものは現実にできる。幻と現実の狭間をコントロールできる、己自身へ掛ける究極幻術!」

「それは凄い。そんな術を使われるとサスケに勝ち目はないですね。」

「いや、そうでもない。」

「と、いいますと?」

「イザナギの効果時間には差があってな。一分程度、または一事象分しか持たない。連続で使用する場合は一分、そして、長く続く効果、例えば毒などで死の淵に居たとしても、その“毒に掛かったという一事象”をイザナギの効果によって打ち消すことができる。そうはいっても、効果時間が終わればイザナギを使用したその眼は光を失い、二度と開くことはない。」

「なるほど、つまりは、イザナギ使用前の重い病気であっても失明のリスクで命は助かる、と。」

「そのような使い方もできるのは間違いない。しかし、うちは一族の中でも禁術に指定された術だ。その情報は流れることはなかったハズだったが…。」

「大蛇丸様が調べ尽くしてダンゾウ様に流しちゃいましたからねェ…。」

「そのパイプ役がお前という訳か。赤銅ヨロイ。」

エサクタ(正解)!」

「本当に貴様は腹が立つな!」

 

オビトと俺がイザナギ談義に花を咲かせている間に、サスケとダンゾウ様の攻防はその激しさを上げていた。

サスケが須佐能乎や天照でダンゾウ様に猛ラッシュを仕掛けるが、暖簾に腕押し、糠に釘という様にダンゾウ様はイザナギを使いユラユラとダメージを無効化し続けていた。埒が明かない上、ダンゾウ様は言葉で以ってサスケを挑発する。ダンゾウ様の挑発に乗ったサスケは彼に切りかかるが、ダンゾウ様の右手がサスケの首を捉えた。しかし、サスケも一流の忍。その程度では怯まず、刀を振りダンゾウ様の腕を、そして、体を切る。

 

「やはり、ダンゾウ様は抜け目ない。あの一瞬で自業呪縛の印を仕込むなんてな。」

「チャクラを色で見分ける写輪眼相手では目に見える範囲の呪印術は看破される。それをギリギリまで気づかせない為に死角である喉元に仕掛けたか。……これも貴様の考案した方法か?」

「逆。俺がダンゾウ様に写輪眼対策として教えられたやり方だよ。」

 

橋の上にある柱のオブジェの上に立つダンゾウ様の背後で刀を構えるサスケの動きが止まった。

 

「サスケェ!チャンスだろ!なんで止める!?」

 

香燐が叫ぶが、サスケの体は動かない。いや、動けない。それに気付いた香燐が駆け出し、ダンゾウ様に向かうが蹴りの一つで彼女は吹き飛ばされた。そもそも、香燐には戦闘に関しては修業を付けていないから、この結果は当然だろう。一人一人に合わせて最適化した修業プログラムを組んでいる音隠れは一芸に強い忍が多い反面、全体の戦闘バランスがいい忍はそう多くはいない。癖があり対策を練るのが難しいが、対策さえ打ってしまえば地力が他里の忍に比べ劣るのが音の忍のネックだ。そして、香燐はそれに当てはまる。前線で彼女を運用していくのは端から捨てて、支援に特化させた忍であるので、二代目火影の護衛部隊でもあったダンゾウ様に一太刀をも負わせることはできないだろう。

そんな考えを頭の中で纏めていると、ダンゾウ様が今は亡きイタチに向かって語った。

 

「見てみろ…この様を…。こいつは…お前の唯一の……失敗そのものではないか。」

 

悪役が型に嵌っているダンゾウ様ではあるが、悪役はこんな場面では返り討ちに合うというのが世の理。ダンゾウ様を知り、彼が悪人ではないという人もいるだろうが、悪人=悪役という等号は成り立たない。善人だとしても、正義のヒーローだとしても、それが行き過ぎれば、違う立場で見てみればその人は悪役でもあるのだ。

そう、テンゾウ、今はヤマトと名乗るアイツの中の人が演じるレイプ目の男の様に。いや、ランサーとのあれで切嗣は悪人認定できるかも知れないが。んー、それとも、外道かな?

サスケから奪った刀をサスケの首に向かって振るうダンゾウ様。

その光景を見て、香燐が叫ぶ。隣の空間が歪む。オビトの神威だ。

だが、世の理という“お約束”からはダンゾウ様と言えども逃げられない。

サスケのチャクラがダンゾウ様の憎しみで更に冷たくなり、須佐能乎を形作る。須佐能乎はダンゾウ様の左腕に傷を負わせながら、その形を変え、力を増し、呪印を解く。

 

「うおおおお!!!」

 

吠えるサスケはダンゾウ様を見据えた。ダンゾウ様の姿にサスケが焦点を合わせた時、サスケの須佐能乎が動いた。武将の様な姿をしたそれは手に持つ矢を番え、ダンゾウ様に向かって放つ。寸分違わずダンゾウ様へと向かう矢。その矢は何も無ければ、ダンゾウ様の体を打ち抜いていたが、そうは上手く行かない。ダンゾウ様の目の前に一瞬で大樹が出現する。そして、その大樹が矢の軌道をずらしたことでダンゾウ様が傷つく事はなかった。

 

「…あれは木遁。初代火影の細胞を己に埋め込んだか。道理であれ程の数の写輪眼を…。」

 

イザナギの印を組んだダンゾウ様は更なる猛攻をサスケへと仕掛けていく。口寄せの術で(バク)を呼んだダンゾウ様。…本気だ。

一度、その戦い振りを間近で見て上手いという印象を受けた。自分の術だけではなく、仲間、そして敵の術をも利用するダンゾウ様の戦い方は学ぶことが多かった。

サスケとダンゾウ様の戦いは更に熱を増していく。両者とも、自分のチャクラを多量に使い続ける白熱した戦いだ。しかし、戦いというものは終わるもの。それがどんなに激しいとしてもその結果は絶対だ。コーラを飲めばゲップをするように、人が死を避けられないように…。

俺は目を細め、手を合わせる。

 

「ありがとうございました。」

 

恩師に礼と…そして、別れを告げた。

 


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