一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@7 叶わぬ夢

爺さん。あんたと会ったことがもう随分と昔のことのように感じられるよ。

 

「静寂。白い、白すぎる空間の中、一人の老人が立っていた。その老人と目が合う。静かな湖面に一石を投じたような波紋模様が形作る幻想的な瞳と相対した。その瞬間、憎悪が吹き出しドロドロとした感情そのものを目の前にいる荘厳な、まさに神と呼ぶべき存在にぶつける。てんめぇぇぇえええ!何してくれやがったんだ、コノヤロー!」

「前置きが長い。」

 

もし、六道仙人と会えたらこう叫んでやる、と前々から温めていた言葉を言ってみたもののあっさり切られた。恥ずかしい。

しかし、そんなことは置いといて、だ。前回とは違い、今の俺には体がある。なら、することは一つ。

 

「ハゴロモォォオオーーッ!君がッ!泣くまで!殴るのをやめないッ!」

「神羅天征。」

「メメタァ!」

 

前回とは違い今度はもの凄く吹き飛ばされた。しばらく低空飛行を続けたが、引力に従い落ちていく。ジャリッと嫌な音がしながら、頭から地面に叩きつけられ何回かバウンドしたもののあんまり痛くない。波紋法を身につけた屈強な男爵に波紋エネルギーを流された時のカエルの気持ちが解った。

 

「落ち着け。」

 

嫌味なやつだ。前と同じセリフで俺の心を折りに来てやがる。思えば、俺が大蛇丸様に拉致されーの脅されーの怖い思いをしーの。全てこの爺さんの仕業、いや、一応こんなやつでも神だから御業だ。傍迷惑過ぎる神のおかげで、俺は、俺は…。

爺さんを睨み付ける。

 

「あんたのせいだ!あんたのせいで、あんたのせいで…。」

 

そこからは言葉にならなかった。涙と嗚咽で何も言えなくなる。これまでの強がりが全て剥がれ落ちてしまった。

 

「そうじゃな。…すまぬ。しかし、私はどのような犠牲を払おうがすべきことがあるのじゃ。」

「十尾とか俺には関係ない!フィクションの世界にいきなり飛ばされてこんな思いをしてまで世界を救いたくなんかない!俺は、あの人を殺したんだ…。」

 

涙で目の前が滲む。爺さんの姿はぼやけたが声ははっきり聞こえた。

 

「遅かれ早かれ人を殺すことになるのがこの世界の忍というものの在り方だ。お前はこの世界で忍として生きていかなくてはならない。違うか?」

「うるせー。わかってるよ、そんなこと。理解はできても納得はできないんだよ。…嫌なんだ。ただ、嫌なんだ。」

 

自分が何を言っているのかわからない。自分の気持ちを上手く言葉にできない。自分が我儘なことを言っていることだけは微かにわかった。

泣いている俺を見て爺さんが近づいてくる。ポンと俺の頭に手を乗せワシワシと不器用に頭を撫でる。

 

「私もお前と同じことを思ったことがあった。私が生きていた時代は今よりもっと酷かった。十尾という脅威に人々は手を取り合うこともせず、より安全な場所を求め戦い続けていた。私も…人を殺さなければ友を救うことができない状況に陥り、相手をこの手にかけたのじゃ。」

 

膝をついて一度、俺の目線に合わせた爺さんは悲しそうに目を伏せる。

 

「その時に決めた。その犠牲となった敵のためにも私はこの世界を変える、と。結果、世界は変わり、より良いものとなったがまだ人々は争い続けている。その上、十尾の復活が成されたら世界は元に戻ってしまう。」

「それを防ぐために俺を送り込んだ。んなこと解ってるよ。…少し感情的になっただけだ。もう大丈夫だ。」

「いや、大丈夫とはとても言えんのぅ。後ろを見てみろ。」

「後ろ?」

 

振り向くとそこには黒い塊が蠢いていた。きしょい。

 

「あれはの…お主がチャクラ吸引で吸い取った女のチャクラじゃ。しかも、怨念と言えるほどの邪悪な感情がその体を形作っておる。」

「ふーん。ちっちぇえな。」

 

1/100スケールのタタリ神。爺さん曰く怨念ってやつの姿だ。弱そう。

 

「弱そうと思うかもしれんが、アレはお前のチャクラを吸い取り徐々に成長する。そして、最後にはお前の体を内側から蝕むぞ。」

 

ちょー怖ぇ。ちっちぇとは言ってもタタリ神怖い。

 

「だが、そんなことはさせん。お前にいいものを持ってきたからな。」

「いいもの?」

「ああ。転生特典だ。」

「チャクラ無制限と、ナルトの九尾モードレベルっつー感知タイプの中でも最高レベルの能力。それから、医療忍術のエキスパートになれる程の才能。ちなみに、最終的には怪我が印を結ばずに治せるぐらいの。あと、永遠の万華鏡写輪眼で、それ、天照と月読も使えるやつ。あとあと、螺旋丸に飛雷神の術、木遁とか血継限界、血継淘汰が全て使えるのと、もちろん性質変化は隠遁も含めた六属性をマスターできるぐらいに。で、不老不死でしょ!身体能力の超強化。そんでそんで、ドラゴンボールのスーパーサイヤ人10までなれるのと全部の技!とある魔術の魔術、超能力全部、ノーリスクで演算能力まで付けて!鋼の錬金術師の7つの大罪!遊戯王のカード全て使える!FF、DQの魔法、アイテム、アビリティ全部が使える!Fate、stay night、zero、EXTRA、prototypeの全てのサーヴァントの宝具、魔術全て!めだかボックスの安心院さんの7932兆1354億4152万3222個の異常性(アブノーマル)と4925兆9165億2611万643個の過負荷(マイナス)、合わせて1京2858兆519億6763万3865個のスキル、7億人の端末、それと全登場人物の異常性(アブノーマル)過負荷(マイナス)言葉(スタイル)が使える!最後にJOJOのスタンド全て!っていう転生特典をくれるんですか?パネェ!」

「いや、無理。」

 

少し上がった俺のテンションをどん底まで突き落すこの爺さんはやっぱり嫌いだ。

 

「その代わりと言ってはなんだが…。輪廻眼を開眼させよう。」

「輪廻眼より1京2858兆519億6763万3865個のスキルの方がいいんスけど。」

「そんな無茶な…。輪廻眼で我慢しなさい。よく考えてみろ。輪廻眼も凄いんだぞ!」

「安心院さんのパラメーター操作のスキル『自由自罪(フリークライミング)』だけでいいんで。輪廻眼よりもそっちの方が使い易いハズなんでそっちを下さい。」

「…。」

 

爺さんが黙った。少しかわいそうなことをしてしまった。

 

「はぁ。ま、くれるいうんなら貰っときましょ。例え、使えない輪廻眼でも、ね。」

「ぐぬぬ…。」

 

爺さんが涙目で睨んでくる。やべぇ、おちょくるの楽しい。

スッと爺さんが右手を腰の辺りに持っていく。しかも拳を握って、だ。

 

「爺さん?」

「なんじゃ?今から輪廻眼を開眼させる儀式を行うのだが。」

「儀式って。思いっ切り殴ろうとしてるよね、それ?」

「気のせいじゃろう。ただの儀式じゃ。そう!ただの!儀式なのじゃよ。」

 

冷や汗がだらだら出てくる。爺さんの顔はむちゃくちゃ邪悪な笑みを作っている。少し…遊び過ぎたようね。ブゥウンという音と紫の光が爺さんの拳から発せられる。

 

「あの、爺さん。その、生意気言ってさーません。転生特典とかいらないので、このままお帰り頂いてもよろしいでしょうか?」

「もちろん…ダメに決まっておるじゃろぉぉう!」

 

爺さんが叫ぶ。俺の頭が揺れる。更に吹き飛ぶ。爺さんの拳が俺の額を目にも止まらぬ速さで打ち抜いていた。今度はメメタァとか言ってる余裕はない。寝ているハズなのに視界がどんどん狭まり、暗くなっていく。そして、俺は気を失った。

 


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