一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@68 ダンゾウに迫る!!

四代目の顔岩の上に立ち、木ノ葉隠れの里を見下ろす。いや、正確には木ノ葉隠れの里で“あった”場所と言うべきか。

 

「…ウッキーくん。」

 

ここで暮らしていた時に俺の部屋にあった観葉植物を思い出す。俺が里から出て行った後、ウッキーくんはどうなったのだろうか。アンコと一緒に世話をしていたあの蘭は今も変わらずに、季節が来ると花を咲かせているのだろうか。

かつて、そこに確かにあった里に思いを馳せる。今は瓦礫の山となってしまった木ノ葉隠れの里を見下ろしながら…。

 

+++

 

ペインの襲来により木ノ葉隠れの里はその機能をほぼ失った。先代の火影たちが築き上げ、守り抜き、受け継いできた里は無くなってしまった。とはいえ、彼ら火影たちが本当に残したかった“火の意志”は消えずに灯り続けている。

そう、形は違っていても里を想う気持ちは“根”の者もしっかり持っているのだ。

 

「テライ。久しぶりだな。」

「ヨロイか。…さっさと用件を言え。」

「相変わらずだな。いっつもいっつも俺に冷たい態度を取りやがって。」

「ただお前のことが嫌いなだけだ。死ね。」

「ただのストレートな悪口!どうせ悪口を言うんだったらもっとウィットに富んでエッジを効かせた言葉を使えよ!」

 

仮面の奥から俺を睨む暗部の装束の男。彼の名前はテライという。

別の世界では亀有公園前にある派出所にいる同じ名前の小太りの男性警察官とは似ても似つかぬ外見であるこのテライ。細身の男であり、今は仮面で隠れているものの冷たい印象を与える目の眼光は鋭い。見た目通り仕事はそつなくこなす所謂エリートという奴だ。

話は少し変わるが、エリートを作り上げるには幼少期の頃からの英才教育が重要らしい。そして、テライはその英才教育を受けてきた人物である。“根”は暗部養成機関というだけあって、その教育を受けてきたテライは俺と同じ年齢でありながら、ダンゾウ様の右腕となる実力を持っている。そんなテライは根の中での実力が五本の指の中に入る程である。

 

「俺は昔からお前のことが気に喰わなかった。いつもヘラヘラと人を小馬鹿にした様な笑みを浮かべていたお前が、な。そして、木ノ葉を裏切ったことで俺の気持ちは嫌悪へと変わった。ダンゾウ様からの命令さえあれば、すぐにでもお前の首を掻き切っていた所だ。」

「何それ?ダンゾウ様の命令無しでは動かないぐらいの気持ちは嫌悪って言えるかな?言えないよね。本当に嫌いな奴はどんな手を使ってでも消そうとするものだと俺は思うんだけどねェ。」

「貴様ッ!」

「ああ、そうそう。さっさと用件を言おうか。テライ、お前に急かされたことだし。」

 

目線だけで人を殺せそうな感じを受ける、そんな目で俺を睨むテライ。彼の目線を無視して話を続ける。

 

「ダンゾウ様に取り次いで欲しい。“音”は“木ノ葉”への援助を申し出るってな。」

「何だと!?」

「そう声を荒げるな。…テライ、覚えているか?“根”には…。」

「名前は無い。感情は無い。過去は無い。未来は無い。あるのは任務。それは分かっているが、貴様への嫌悪は消えない。…とは言ってもオレも忍だ。感情を殺して任務に臨む。」

 

テライは俺に背を向ける。

 

「ダンゾウ様に取り次いでくるから待って置け。」

 

瞬身の術で姿を消したテライはすぐに戻ってきた。時間で言えば、一分程の待ち時間だっただろう。そして、テライの後ろの暗がりからコツッコツッという音が聞こえてくる。

 

「お久し振りです、ダンゾウ様。」

「貴様が里を裏切ってから四年…か。恥知らずがよく生きておれたものだ。」

 

会って早々に俺に冷たい言葉を投げかけるダンゾウ様。杖を突いている癖に頭の回転は衰えていない様だ。

 

「相変わらず言葉選びがお上手なことで。…ダンゾウ様。秘密の話があるのですがお時間よろしいですか?」

「フン…。着いて来い。」

 

そう言って、ダンゾウ様は顎で天幕を示す。

 

「お邪魔します。」

 

天幕の中に入る。その中の空間は意外な程に広く、快適そうだ。

ダンゾウ様は大きなソファに腰を下ろす。しかし、俺には椅子を勧めない所か椅子を出す素振りもない。何て人だ!

 

「“音”は“木ノ葉”に援助したいとテライから聞いたが狙いは何だ?」

 

俺の内心の憤りなんか知ったこっちゃないという感じでダンゾウ様は話し始めた。

 

「狙いなんて言うものはありませんよ。強いて言えば、“音”と“木ノ葉”の結びつきを強めるというぐらいですね。」

「…同盟、か。」

「はい。」

「だが、両国の結びつきを強めることで何が得られる?」

「これからの忍世界。」

 

ダンゾウ様の目が細くなった。

 

「これからの忍世界?」

「はい。おそらく…いえ、まず間違いなくこれから第四次忍界大戦が発生します。それの発端は“暁”です。つい先日の話なのですが、八尾の人柱力である雲隠れのキラービーが暁に拉致されるという事件が起こりました。」

「なるほど…。それで雷影は暁を殲滅する為に木ノ葉と同盟…いや、お前の先程の“忍界大戦”という言い方から察するに五影会談の開催の方が可能性としては高いか。そして、その会談、九尾の人柱力をどう扱うかという議題でワシが優位に立てるようにお前が裏で動く、と。」

「いえ、違います。」

 

ダンゾウ様は元々細い目を更に細める。

 

「今回は世界自体がヤバイので、立場を問わずに協力をお願いしたいんですよ。」

「…まぁ、良かろう。」

 

言葉の上だけの同意。ダンゾウ様のことだ。心から協力する気は全くないのだろう。一瞬の言葉の詰まりがそのことを物語っている。俺も端から心から協力する気はないからお互い様だ。いや、ダンゾウ様をサスケにぶつける為に動く俺の方が悪い人間だな。

気持ちを完璧に隠し、言葉で上書きする。

 

「ダンゾウ様は火影の代理になられるのでしょう?」

「お前、それをどこで?…いや、いい。お前に聞いた所で嘘の情報しか得られんだろうからな。」

「賢明な判断です。こればっかりは誰にも教えられませんからね。」

 

前世の記憶なんてものは俺だけが知っているからこその切り札だ。その切り札を自ら捨てるなんてことはできない。そして、原作知識をフルに活用した計画も右に同じだ。

 

「ダンゾウ様。あなたには覚悟がありますか?」

「覚悟だと?」

「忍連合軍のトップに立つ覚悟です。もし、ダンゾウ様にその覚悟があるのなら、俺があなたをトップに据えるように動きます。」

「暁が集めた尾獣に対する為の忍連合軍か。そして、それを纏める責任。…お前に言われずとも覚悟はある。その覚悟を持ってワシはこれまで木ノ葉を支えてきた。」

「GOOD!…では、こちらはそのように動きます。」

 

ダンゾウ様に背を向け立ち去ろうとしたら後ろから声が掛けられた。

 

「して、ヨロイ。貴様はなぜ上に立たぬ?お前なら五影をも騙し、自らが忍連合軍のトップに納まることもできるであろう?」

 

俺は振り向き、ダンゾウ様に向き直る。

 

「俺は立場には興味がないんですよ。俺が求めているのは…。まぁ、金と酒と女なんで。」

「昔と変わらず読めぬ奴だ。話はもういい。退がれ。」

「では。…この件はくれぐれも内密に。」

「分かっておる。」

 

今度こそダンゾウ様の天幕から出る。立て直し始めている木ノ葉を横目に薄く笑みを作る。

 

「俺の求めているものはダンゾウ様、アンタには分からないよ。仮に言っていても…。」

 

最後に一度だけ振り返った。

 

「終わりにはアンタは忘れていることだ。」

 


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