一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@61 極秘任務…!!

ナルトの攻撃でまだ柔らかい土の上に立つ俺と大蛇丸様。その前には感情なく笑顔を浮かべる“根”の忍が居た。直接会ったことはないが、原作知識で知っている。…サイだ。

 

「話?」

「はい。ダンゾウ様より大蛇丸様に伝言があります。…実は…。」

「その前に…。」

 

ダンゾウ様の言葉を伝えようとしたサイの言葉を大蛇丸様は遮る。

 

「私への言葉は慎重に選びなさい。でないと、死ぬわよ。」

「…ボクはダンゾウ様がおっしゃられた通りにしか申し上げられません。それでお気に召さぬ事があればどうぞご自由に。」

「ヨロイ。」

「うぃっす。」

 

サイの胸にクナイを投げる。サイはそれを避けることもできずにただ見ていた。クナイがサイの心臓に突き刺さる。それを確認した俺は体が崩れていくサイの足元に声を掛けた。

 

「下から見上げるってのは、まぁ、悪くはない。けど、行き過ぎたら逆に失礼だぞ。」

「そういう問題じゃないと思うわ。…で、サイとやら。その話、何を根拠に信じればいいの?」

 

隠れていた地面から這い出したサイは無言で背中に背負っている鞄に手を伸ばす。と、影が上からサイに襲い掛かり、地面に彼を押し付け動けなくする。影が口を開いた。

 

「どういう事です?」

「少し落ち着け、カブト。で、サイだったか?話の続きをしよう。何を持ってお前を信じればいい?」

「そこの封筒の中を見てください。ダンゾウ様から大蛇丸様へです。」

 

カブトに拘束されているサイをそのままに俺は封筒を拾い上げる。(トラップ)があるかどうかその中を確かめて無いことを確認すると、それを大蛇丸様に渡す。

 

「カブト。サイを離してやれ。」

「はい。…中身は?」

 

カブトは押さえつけていたサイの背中から退く。

 

「いいものだ。詳しい説明はアジトに着いてからにしよう。大蛇丸様、今日は走って帰りましょう。」

「チャクラ切れかしら?それなら、仕方ないわね。」

 

今まで見ていた書類を封筒の中に戻し、大蛇丸様はそれを懐にしまう。

 

「さぁ、行くわよ。」

「クソッ!先に言われた!俺が言いたかったのに。」

「もうアナタに言わせないわ。」

 

+++

 

木々の枝を蹴って進んでいると、カブトが大蛇丸様を呼んだ。

 

「大蛇丸様…。」

「分かってる…。尾けられているわね。」

「単純に後を尾けられたか、それともグルか…。」

 

後ろを顧みるカブトに答える。

 

「この場合は前者だな。」

「なぜですか?」

「グルなら尾行なんかしない。スパイが情報を集めるまで接触は無しってのが定石だ。あらかじめ、集合時間や場所を決めているものだ。」

「確かに、スパイを尾行するのは相手に気付かれる可能性が高くなりますね。態々そんなことをする程、木ノ葉もバカではない、ということですか。」

「ああ、だから後を尾ける必要がある訳だ。あいつらとサイは仲間じゃないからな。それで、だ。カブト…。」

「ええ、一つ死体を用意します。」

 

巻物を取り出したカブトは足を止める。それに続いて俺たちも足を止める。

 

「2分待ってください。」

「ええ、いいわよ。」

 

大蛇丸様に向かってカブトは頷くと、巻物から死体を口寄せする。続いて、腰のポーチからメスなどの医療器具を取り出すと、口寄せした死体の顔にそれを入れていく。

 

「見事ね。」

 

一秒毎に変わっていく死体の顔を見ながら大蛇丸様は呟く。

最後にカブトが掌のチャクラを死体の顔に当て、血を拭うとそこにはサイと瓜二つの死体があった。二本目の巻物を取り出したカブトは再び口寄せの術を使い、今度はサイと同じ服を作り上げていく。カブトは裁縫も得意であり、その観察力をフルに使って対象と全く同じ衣服を作り上げる事ができる。

こうして、死体にチャクラを纏わせないことで偽造は限りなく見破られることがなくなる。しかし、ここまで手際がいい奴はそういない。カブトの他には綱手様やシズネぐらいだろうか。改めて考えると、味方で本当に助かった。

死体の首に縄を掛け、木の上から吊り下げる。サイにとっては実にショッキングな光景だろう。自分そっくりの死体が首を吊られているなんてあまり目にしたくない光景だ。しかし、サイの瞳には何も写ってないかのようにその表情は変わることがなかった。“根”の教育の賜物だなと心の中で憎々しげに思う。こういう感情を表に出さない奴だったり、常に冷静な奴が一番厄介だ。俺の話術で行動を乱すのが難しくなる。それを見越して、ダンゾウ様はこいつを俺たちの元に送り込んだのだろう。詐術でこちら側に引き込めないように。大した奴だ。

 

「カブトの工作も終わったようだし、そろそろ行こうかしら?」

「そうっすね。」

 

俺たちは再び走り始める。

川の上を渡りながら大蛇丸様が話しかけてきた。

 

「追跡は止まったわね…。上手く行ったかしら?」

「用心に越したことはありませんからね。」

「それにしても、いつもながら鮮やかな手口ね…カブト。」

「大蛇丸様と一緒にいる御陰で、今までも数限りなく死体を作ってきましたからね。」

 

何かに気付いたようにカブトが声を上げる。

 

「そうだ。あの子にも実験を手伝わせたらどうでしょう?ダンゾウとのパイプ役以外は暇になるでしょうしね。」

「フン…好きにしなさい。」

 

川を渡り終え、一旦、休憩する。すぐにカブトはメスなどを取り出し、川の水で洗い出した。

 

「カブト…。そういうのは帰ってからにしなさい。」

「いえね…。なるべくすぐに血を落としておかないと、切れ味があっという間に落ちてしまうんですよ…。それより、大蛇丸様。」

「?」

「帰ったら無傷の男の死体を早急に頂けますか?」

「まだストックは持ってるでしょ?」

「ええ…。ただ十五・六歳の男の死体はさっきので無くなりましたから。巻物の中は常に年齢順にきちんと保存して置かないと落ち着かなくて。」

「カブト…アナタA型だったかしら?」

「いえ…AB型ですけど。」

 

二人が血液型の話を始めたので、俺も会話に入る。

 

「残念ですけど、大蛇丸様。AB型の男性とB型の女性はすごく合わないらしいですよ。ワースト2位って書いてました。」

「あら、でも私とカブトの相性はばっちりよ。それ、嘘じゃないの?」

「あ、さーません。今の大蛇丸様の体は男でしたね。俺の情報が間違っていたってことで。」

「…。」

 

会話を聞いていたカブトの表情が死んだ。それと、同時に手の動きが速まりあっという間に片付けが終わった。大蛇丸様は鞄の中身を確認していたサイを見遣る。

 

「どうかしたの…サイとやら?」

「いえ…何でも…。」

「では、そろそろ行きましょうか…。アジトまでもう少しですからね。」

「そうだな。」

 

立ち上がり走り始める。

空の太陽の位置を確認して、時間を確かめる。そろそろ約束の時間に迫ってきたようだ。

 


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