一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@60 四本目…!!

「こっち見んな。」

 

思わず、そう呟いてしまう程に今のナルトの表情は嫌だった。キングダムハーツの雑魚キャラをパワーアップさせたような見た目のナルトに見つめられると鳥肌が立つ。

予備動作もほとんどないままにクンッとナルトが自らの腕を俺たちに向けて振り下ろした。

ナルトの腕の延長線上からすぐさま飛び退くと、地面が陥没していた。衝撃波で攻撃してくるなんてチートも良い所だよな、全く。

足元の土を削りながら減速し、懐から指輪を取り出す。

 

「このままじゃあ…ちょっとキツイか…。」

 

右手の全ての指に指輪を付けていく俺を見て、大蛇丸様が驚いたように尋ねて来る。

 

「あら、それを使うの?」

「ええ。万が一ということもありますし。」

 

ナルトが吠えた。白と黒のチャクラの球がナルトの口元に集まっていく。

 

「あれはヤバイわね。」

「喰らったら死んでしまいますね。」

 

右手を構える。今度はしっかりとした予備動作があるため、すごく分かり易い。

顔の前に浮かんだ黒い球を飲み込んだナルトの体が大きく膨れ上がる。

 

「喰らえばですけど。」

 

右手を上に素早く動かすと、ナルトの顔の下の地面が盛り上がって強制的にナルトの顔の方向を上へと変える。

 

「!」

 

遥か頭上に飛んで行った尾獣玉は閃光と暴風を撒き散らしながら爆発するが、距離が離れている俺たちに影響はほとんどない。精々、服がバタバタと風に煽られる程度だ。

 

「その“オーパーツ”はやっぱり便利ね。こんなものを作り出せるなんて、流石は赤銅一族といった所かしら。」

「いいでしょー。でも、あげませんよ。」

「それが、アナタを得る為の条件だったしね。でも、このぐらいはいいんじゃない?」

「一族に手を出さないってことは一切の干渉をしないってこととこの前も説明しましたよね?」

「…まぁ、いいわ。アナタがいなくなったら、かなりの痛手だからねェ。」

「…。」

 

この“オーパーツ”というもの。実は俺が万物創造の術で作った兵器だ。

少し、過去を振り返る。大体十年ぐらい前だったかな。

万物創造の術を色々と試していた時期があった。そう、ワンピの“悪魔の実”にブリーチの“斬魄刀”、それからリボーンの“Xグローブ”にディグレの“クラウン・クラウン”。そして何より…ドラゴンボール。他作品のアイテムを使えるなんて浪漫じゃないかと考えていた俺は様々なアイテムを作っていた。

しかし、上に挙げただけではなく思いつく限りの他の作品の武器などを万物創造の術で作ったが、それは全てパチモンだった。形だけは同じだが、それに付随する能力は何一つ発現できなかった。“悪魔の実”はクソマズイフルーツ。“斬魄刀”は少し形が特殊な刀。“Xグローブ”はお洒落なグローブに“クラウン・クラウン”は仮面付きの白いコート。ドラゴンボールに至ってはガラス玉で、思わず床に叩きつけてやった。その破片を泣きながら片付けたのはここだけの秘密だ。

そんなこんなでハゴロモの爺さんに相談してみると、世界の修正力がナルトの世界を支配しているらしく、万物創造の術には制限がかかるらしい。ここは岸本斉史が作った世界。彼の思惑を大きく外れた他作品からのクロスオーバーはできないと爺さんは言ったが、諦められるハズもなく…。

岸本先生が作った世界なら、“岸本先生が書いた作品ならクロスオーバーができるんじゃね?”と考えて万物創造の術を使おうとしたものの、岸本先生が書いた他の作品って何があるんだよという疑問が出た。確か、読み切り作品の“カラクリ”と“マリオ”だったか。正直、ストーリーをぼんやりとしか覚えていない。てか、岸影様はナルトを続けていて新連載とか持てる訳ないじゃん。

思わず、頭を抱えた俺。もう何作か連載しててよ、岸本先生!

…岸本先生。そう、岸本先生だ。

岸本…聖史。

もう一度印を組み、万物創造の術を行う。イメージは三枚刃の風魔手裏剣。それをこのNARUTOの世界で使えるようにチャクラをエネルギー源に設定し直して…。

俺の前にイメージ通りの手裏剣が現れた。問題は、これが“使える”のかどうか、だ。チャクラを込め、アジトの壁に向かって投げる。

 

「エフェクト発動!トリプル!」

 

壁に向かって行った手裏剣は壁を貫き、更に地上まで飛んで行き、大空に消えて行った。風の性質のチャクラを纏わせるのは失敗だったな。威力三倍は凄い。ジオの攻撃を喰らって五体満足だったクロスも凄い。

分かる人は知っている。岸本斉史の実の双子の弟である岸本聖史。彼が書いた作品はNARUTOの世界でも十全に使えることが分かった。双子の力という奴だろうか。編集者から聖史くんと呼ばれていた岸本聖史先生マジグッジョブ!アナタの作品を呼んでいてマジ良かった。

これでマダラに勝てる!ってか絶対に負けない!

 

「ハハハ。素晴らしいじゃないか!」

 

風魔手裏剣を見送った笑顔の俺の肩に手が置かれた。

 

「ごめんなさい、マジでごめんなさい。すぐに直すんで許してください。」

 

20代に成長したリンの黒い笑顔は怖かったことをここに記しておく。なんで体が成長できるように穢土転生を調整したのかな、俺は。

 

「いきなり、なんで泣いてるのよ?」

「いや、昔のことを思い出しまして。」

「それで、動かなくなるのは頂けないわね。」

 

大蛇丸様が俺をジト目で見てくる。ああ、そういえば、大蛇丸様には嘘を付いている。

この“オーパーツ”は俺が作ったものだけど、大蛇丸様には赤銅一族の某が作ったと言っている。このオーパーツは本来この世界にあってはならないもの。用法容量を守らなくちゃ新たな問題の火種にもなりかねない。その為、大蛇丸様には流せない代物だ。だから、大蛇丸様と以前約束した俺の一族には手を出さないということを盾に取って流通数を限りなく減らしているという訳だ。

そして、大蛇丸様は俺とオーパーツを天秤に掛け、俺を選びオーパーツは諦めた訳だ。

 

「グルルルル。」

 

ナルトが頭を振り、こっちを睨む。先程の攻撃、オーパーツ“ジャスティス”の技であるアース・オブ・インパクトで顎を打たれて意識が飛びかけたせいで攻撃がなかったのだろう。

しかし、これからは違う。

 

「ルラァアアア!」

 

三本目よりも格段にスピードが上がったナルトが一瞬で距離を詰め、空中から腕を振り下ろそうとする。

 

「ダンス・オブ・ゲイル。」

 

指で十字を切り、カマイタチを発生させる。ナルトを吹き飛ばすことはできたが、怯ませる程の攻撃ではなかったらしい。宙に浮いたナルトの口元に再びチャクラが集まる。

両の親指を再度、噛んで血を垂らす。

 

「口寄せ 三重羅生門!」

 

拮抗は一瞬。ナルトの尾獣玉が三重の防御壁を打ち破った。だが、それは囮だ。土遁で地面に潜った俺はそのまま土の中を移動する。

地面から出た俺は尾獣玉の反動で後ろに飛ばされたナルトの前に出る。

 

「!」

「螺旋丸!」

 

空中で身動きの取れないナルトの腹に螺旋丸を叩き込み、更に吹き飛ばす。

森を割るように吹き飛んだナルトは崖にぶつかることでその勢いを止めた。天地橋まで飛んだナルトはまだ起き上がる。少し動きが鈍ってきたな。

 

「ボクはダンゾウ様の使い。敵ではありません。アナタたちにお話しがあります。」

 

追撃を掛けようと膝を曲げた所で横から無粋な声が掛けられた。俺が楽しくなってきた所で有無を言わさず止めるのがダンゾウ様クオリティとは言っても、部下にまでそれを徹底しているとは考えもしなかった。

膝を伸ばし、乱入者を見つめる。

蝋人形の様な白い肌に墨の様な黒い髪。コントラストが見事な少年がそこに居た。

 


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