一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@57 三竦みの攻防!!

睨み合う三人。木ノ葉の三忍と謳われた彼らの実力は他の忍を凌駕する。その力の一因がこの口寄せ動物たちだ。蝦蟇(ガマ)蟒蛇(ウワバミ)、そして、蛞蝓(ナメクジ)。その体はちょっとした建物よりも大きい。

 

「マンダに大蛇丸。カツユに綱手…。こりゃあ懐かしい面々じゃのォ。今から同窓会でもするーゆーんか…自来也?」

「バーカ!久し振りに呼んでやったのにつまらねー冗談言ってんじゃねーよ。そろそろ長年の因縁に決着(ケリ)をつけようと思ってのォ…。」

 

自来也様がこちらを見据える。

 

「大蛇丸を今日、ここで…倒すんだよ。」

「…。」

 

大蛇丸様の表情が少し、動いた。まるで能面の様な大蛇丸様の表情は見る者によって感じ取る内容が違うだろう。楽しそう、悲しそう、つまらなそう。色々な感情を捕えることができるが、俺の予想は“哀愁”だ。これまで大蛇丸様と長く居て、彼の感情が少し分かるようになってきた。自来也様との闘いを懐かしく感じているのだろう。

 

「オイ、大蛇丸。オレ様をこんなメンドくさそーなとこに呼び出してくれてんじゃねーよォ!てめェ…食うぞ、コラ。」

「そうおっしゃらないでください、マンダ様。それなりのお礼は必ず…。」

「誰がテメーと口きいてんだよ、コラ!オレ様に話しかけんじゃねェ、ガキ!」

 

あそこのクソガエルといい、ここのクソヘビといいなんでこんなに口が悪いかな。

 

「マンダさん。そんな口を利いているとロクな死に方しないよ。具体的には爆発の盾にされて、そいつに恨み言を言いながら死んでいくみたいな。そんな死に方をしたくなかったら俺たちに協力してくんない?」

「…チィ。後で供え物、生贄100人用意しとけなァ。」

「牛肉の方が安くて旨いから却下で。アンタの大好物の大吟醸を用意しとくから勘弁して。」

「辛口にしとけよ。」

「はい、喜んでー。」

 

カブトには辛辣なマンダだが、俺には割と友好的だ。その理由は実に簡単。酒を飲んで先に潰れた方が勝ちという賭けをして俺が勝ったからだ。実は、俺そっくりの姿をしたロボで飲んだ酒がそのまま地下に流れるような装置をマンダに見つからないように使っていたのはマンダには秘密だ。

そして、その内容は多岐に渡る。口寄せで呼んだ時に俺の指示に従うことから、日常の言葉遣いまで。特に、マンダは怒鳴ることが多いからそれはしない様に言い含めた。ざっと、文書30ページぐらいはあっただろうか。マンダはなぜか賭けの内容が勝者の言うことを一つだけと聞くと勘違いしていたが、俺はそんなことは一言も言っていない。勝手に勘違いした方が悪いのだ。

ちなみに、マンダは意外と約束を守る奴であり、先程の様に少し注意すればきっちり守ってくれる。これだから、プライドの高い奴は操り易い。

一人でほくそ笑んでいると、目の前が煙に包まれた。唯の煙ならまだ良かったが、この臭いは煙草。人の顔に煙草の煙を吹きかけるとか、喧嘩を売っているとしか思えない。つーか、喧嘩を売ってんだろうな、このクソガエルは。

 

「どうする、マンダさん。処す?処す?」

「カラッカラの干物にしてやるよ、コラ!」

「わしゃ、ちょうどヘビ革の財布が欲しゅーてのォ…。」

「…。」

 

マンダ、ガマブン太、カツユ。

 

「大蛇丸。おめーは悪に染まり過ぎた。もう同志じゃあねェのォ。」

「同志?クク…心寒(うらさむ)い。」

「三忍と呼ばれるのも今日限りだ!」

 

自来也、大蛇丸、綱手。

三体と三人の間で目に見えない火花が散る。

一番初めに動いたのはカツユ様だった。強酸を敵に吐きかける舌歯粘酸を俺たちに向かって吐きかけるがマンダはそれを地面に潜り込むことで躱す。地面に潜ったマンダは瞬時にカツユ様の足元、足元って足は彼女にはないのだけれど、から奇襲をかける。カツユ様の体を自身の体で締め上げ、そのまま大きく口を広げて食べようとするが横槍が入れられた。

ガマブン太の短刀(ドス)がマンダの口に差し込まれるが、マンダは口を閉じる事でその攻撃を防ぐ。ふと、カツユ様の方を見ると分裂が始まっていた。人間大の大きさにバラバラになったカツユ様はマンダの拘束から抜け出す。

 

「カツユ様の前にまずはブン太だな。」

「ヨロイ。お前、オレ様と気が合うじゃねェか。」

 

尻尾をブン太に向けて振り下ろすが、ブン太はそれを跳び跳ねる事で上手く回避する。

 

「綱手!離れてろ!」

「マンダ。それ、返してやれ。」

 

自来也様が印を組んでいく。それを妨害するため、マンダが咥えていた短刀(ドス)をブン太に向かって放り投げるが、ブン太はそれを再び跳んで躱す。

 

「ブン太ァ、油だ!」

「おっしゃ!」

 

ブン太の油に自来也様が火遁で火を付ける。火遁 蝦蟇油炎弾だ。

ピリリと足元から皮が破れる音がしたかと思うと、目の前が暗くなった。マンダが脱皮をし、地面に潜ったのだろう。そう俺が結論づけると目の前が明るくなった。

上を見上げる。そこには先程マンダが放り投げたブン太の短刀(ドス)を持った綱手様が居た。小さなビルぐらいの刀を軽々持ち上げるなんて人間技じゃないね、どうも。

チャクラの鎧を身に纏い、次いでそれを巨大な手に形態変化させてその攻撃を横にずらす。

 

「ヨロイか!グッ!」

 

俺に注意を向けた綱手様の一瞬の隙を突いて、大蛇丸様の舌が綱手様の首に絡みついた。

 

「そろそろ決着を付けようじゃないの!…グゥゥ。」

 

綱手様を短刀(ドス)の上から引きづり下ろそうとした大蛇丸様の動きが止まった。今度は綱手様が大蛇丸様の隙を突き、大蛇丸様の舌を引っ張る。逆に大蛇丸様を引っ張り上げた綱手様はその拳を大蛇丸様の顔に入れる。幸いな事に、綱手様のチャクラが少なくなっていた上に不安定な足場だったお陰で大蛇丸様のダメージは多くはない。つくづく悪運の強い人だ。

おっと、それよりも…。

大蛇丸様を受け止め、マンダに指示を出す。

 

「マンダ、ここまでだ。お前は帰ってろ。」

「フン。大蛇丸のヤローもザマァねェな。」

 

最後に憎まれ口を残し、マンダは姿を消す。すぐさま印を組み、掌を大蛇丸様に当て幻術を掛ける。

 

「フゥ…。ヨロイ、助かったわ。まさか、あんな時に腕の痛みが来るなんてね。それに、アナタがマンダに指示したお陰で彼に腕のことを知られることはなかった。素直に褒めてあげるわ。」

「それはどーも。マンダがあまり頭を使わない奴ってことが一番でかかったんですけどね。」

 

大蛇丸様がゆっくりと面を上げる。

 

「!」

「綱手…お前に直して貰わずとも…私には一つだけ方法があるのよ。…この腕を復活させる方法がね。木ノ葉は必ず潰してあげるわ。その時、また会えるといいわね、我が同志。クク…綱手、自来也。」

 

先程、綱手様に殴られたせいで大蛇丸様の顔の皮膚の一部が剥がれて、そこから“今の”素肌が見えるようになっていた。

 

「綱手…。本当の不老不死。それが私…我、不滅!」

「またいずれ…。」

「待て!」

 

地面の中に溶け込んでいく大蛇丸様と煙の中に姿を消すカブト。それを引き止めるように綱手様が叫ぶが、二人の姿は完全に消えた。

 

「待ちましたけど、どうかされました?」

「…ヨロイ。どういうことだ?」

 

綱手様の代わりに自来也様が俺に尋ねる。

 

「待てって言われたから待っただけッスよ。」

「お前…。」

「話もあるんですけどね。自来也様は知っていると思うんですけど、“音”と“木ノ葉”はつい先日、不可侵条約を結びました。その内容の中に木ノ葉の忍には手を出さないって項目もありまして…。今回はその条約を知らない綱手様から攻撃してきたんで条約違反としてはこちらからは通告しません。その代わりとして、俺と秘密裏に組んで頂きたい。」

「は?」

 

綱手様がポカンとした表情で俺を見つめてくる。

 

「俺個人と、んーとそうですね。綱手様か自来也様との協力関係を裏で結んで欲しいって話です。…“暁”対策として。」

「“暁”?なんだそれは?」

「…聞いてやろう。話せ。」

「自来也!お前まで何を!?」

「お前との協力はワシがする。それでいいか?」

「ええ。後ほど文書はお渡しします。しばらく、短冊街に留まるのでしょう?」

「ああ、この体じゃそうするしかないのォ。」

 

よく言う。この体とかいいながら、ピンピンしてる癖に。

 

「では、後日改めて伺います。…これからよろしくお願いしますね、自来也様。そして…五代目火影様。」

 

印を組み、飛雷神の術で姿を消す。

最後にナルトを一瞥した俺の口元は上がっていた。

…いい流れだ。強くなったな、ナルト。

 


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