一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@56 受け継ぐ者

ナルトの掌に圧縮され、乱回転しているチャクラがカブトを飲み込む。拡大したチャクラはナルトの手から離れ、されど、その回転は衰えることなくカブトを前方の岩へと叩きつけた。

 

「…螺旋丸ですか。血というのは争えないものですね。」

「四代目火影と比べると、その才能は雲泥の差よ。」

「四代目と比べるのは可哀想ですよ。四代目の実の息子とはいえ、どちらかと言えばナルトは母親似ですからね。…そういえば、自来也様。ナルトの奴に螺旋丸を教えたのはいつ頃ですか?」

「ざっと二週間程前だのォ。ヨロイ、ナルトはお前よりも習得が早かったの。」

 

大蛇丸様にナルトは螺旋丸の習得スピードが凄くて実は落ちこぼれじゃないってことを証明するために自来也様に話を振ったらニヤリと気色悪い笑顔を浮かべられた。俺より早く螺旋丸を習得したからってこういう風に見下してくるのは頂けない。

 

「あの子、よろしくないわね。」

 

大蛇丸様が呟く。

 

「綱手は医療スペシャリストだ。案じずとも、ナルトの身に心配はないのォ。それよりお前はワシと闘ってるんだ。よそ見してる暇はねーだろ。」

「…ヨロイ、少しの間、自来也を足止めしておきなさい。」

「え?は、ちょっ!」

 

大蛇丸様は言いたいことだけ言った後すぐに蛇から空中に身を躍らせた。大蛇丸様の進行方向にはナルトが居る。ナルトを殺す気だ。

 

「糞がッ!お前は一旦、引け!」

「御意。」

 

足元から声が聞こえたかと思うと煙に包まれた。口寄せしていた蛇が時空間移動した証拠だ。足元と視界を失った上に、綱手様に薬を盛られた自来也様にとっては悪条件だろう。大蛇丸様を追うとしても少し手間取るハズだ。

印を組み、時空間忍術を発動させる。視界が変わった後に見えたのは鮮血に塗れた綱手様だった。

 

「少し遅かったか。大蛇丸様、綱手様を殺すなんてマズ過ぎますよ。」

「私も殺す気はなかったわ。綱手が私の前にナルトくんを庇うように出てきたのよ。…ねェ、綱手。その子に生きていられると諸々の事情で後々厄介なことになるのよ…。邪魔しないでくれる?」

「…この子だけは絶対…守る…!」

 

大蛇丸様の後ろに立ち声を掛ける。

 

「それと、ナルトを殺すことも止めておいた方がいいと思います。」

「何故?」

 

俺の方を全く振り向かずに、というより、口から出した草薙の剣が綱手様の胸を貫いているままだから首を俺の方に向けることができない大蛇丸様が俺に尋ねる。

 

「ナルトは“暁”が居場所を掴んでいる数少ない人柱力の一人です。ナルトを殺すと、九尾の居場所がわからなくなります。死んだ尾獣は一度、自然エネルギーに分解され時を置いて復活しますが、復活する時間や場所のアルゴリズムはまだ解明されていません。で、九尾が復活するまで暇になった暁が俺たちの捜索に力を入れる可能性が高いです。」

「その可能性もあるわね。けど、ナルトくんの場所を掴んでいるなら暁はすぐにでも行動を起こしても不思議じゃないわ。」

「何か理由があるんでしょうね。例えば、封印の像が誤作動を起こしているとか。後は、自来也様が居るってのが大きいのかもしれません。」

「なるほどね。…綱手。あなたがこの子を命懸けで守る理由はないハズだけど何故自分を犠牲にしてまで守ろうとしたのかしら?」

 

大蛇丸様は綱手様の体から剣を引き抜く。シュルシュルと体の中に収納されていく草薙の剣。何回見ても気持ち悪いものである。

 

「木ノ葉隠れを…里を…守る為よ。」

「木ノ葉を守る為?」

 

綱手様はナルトを優しい目つきで見遣る。

 

「なぜなら…この小さなガキは…いずれ火影になるガキだからね。」

「フフ。何をバカな世迷言を…。それに…火影なんてクソよ。馬鹿以外やりゃしないわ。」

「昔、ミナト先生に火影の座を取られて悔しがっていた人のセリフじゃないですね、それ。」

「黙りなさい!」

 

頬を染めて大蛇丸様は俺を睨んでくるが、俺の表情は死人と比べても差はなかっただろう。あまりの衝撃にゲンナリなった俺だったが、綱手様が話を始めたので仕方なく彼女を見る。

 

「火影がクソか確かめてみるかい?夢の為に命を懸けた先代たちに習って…ここからは私も命を()ける!」

「フン…こんなガキ一人の為に投げ出す程度の命なら…!それ相応にさっさと散れ!」

 

再び口から草薙の剣を出した大蛇丸様は綱手様にそれを振り下ろした。まぁ、綱手様が死んだとしても後で穢土転生すればいいだけの話か。問題はない。

大蛇丸様が今度はナルトに刀を振るう。しかし、それは綱手様の体に阻まれた。自分が切られることも構わず、綱手様はナルトの体を自分の体で覆うようにして大蛇丸様の凶刃から守る。

 

「…言っただろ…ここからは…命を()けるって。」

「この死に損ないが!」

 

激昂した大蛇丸様は綱手様を蹴り飛ばす。

綱手様の様子が変わった。それまで震えていた綱手様の手が止まった。大蛇丸様の体に手を当て、共に飛雷神の術でカブトの場所へと飛ぶ。

こちらに視線を合わせた綱手様の表情が今までとはまるで違う。やっと本気になったみたいだな。

 

「…なぜなら、私が…木ノ葉隠れ、五代目火影だからね!」

 

綱手様の額のマークがその文様を大きく変える。それを見たシズネは慌てて綱手様を止めようとする。

 

「ま…待ってください!傷は私が治します!だから、その封印は解放しないでください!」

 

シズネの忠告を無視して、綱手様は印を組む。それと同時に綱手様の傷が全て再生していく。

 

「リジェネ、ブレイブ状態とか厄介過ぎるなあ。」

「ヨロイ、綱手のあの術は何なの?」

「忍法創造再生。初代火影の印を使わない再生体と同じ状態になる術です。同時に身体能力の向上もさせるので接近戦に持ち込まれたらかなりキツイですよ。相手はこちらの攻撃が効かない上にこっちは一発でも当たれば、即ゲームオーバーです。つまり、戦いで死ぬことはそうないでしょう。」

「対抗策は?」

「持久戦で綱手様のチャクラ切れを待つしかないで…ッ!」

 

慌てて親指を噛み、印を組む。

 

『口寄せの術!』

 

大蛇丸様と話していたら綱手様が印を組んでいた。後少し、気づくのに遅れていたらカツユ様に潰されていたかもしれない。

白い煙が晴れていく。そこに居たのは圧倒的な威圧感を持つ蝦蟇、蟒蛇、蛞蝓の三竦みだった。

 


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