一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

56 / 122
@55 忍の才能…!!

高い蛇の上から地面を見下ろす。

 

「いくら才能のないアンタでもそれはないでしょ。綱手に何かやられたようね、クク。」

 

勝ち誇った声を上げる大蛇丸様。それにカブトは律儀に返す。

 

「あの術には生贄が必要でしたからね。おそらく後々のことも考えて力を抑える薬でも盛られたのでしょう。…生贄にするために。」

「相変わらずみっともない奴ね。」

 

二人から目を離し、ナルトを見ると印を組んでいた。口寄せの術か。

 

「中忍試験の時の九尾のガキ…。やっぱり、あの時殺しとけば良かったかしら。一応、暁に気を遣って見逃しちゃったからねェ…。」

「暁が情報を得ている数少ない人柱力です。殺していたら、奴ら、血眼になって俺たちを殺しに来ますよ。」

「それもそうね。全く…資金集めと尾獣集めだけに血道を上げればいいものを。私を狙ってくるのはいい加減にして欲しいわね。」

 

ナルトが地面に手を付くと白い煙が立った。

 

「ナルトくんには五行封印を施して来たのだけど…。自来也に解かれていそうね。気を付けなさい。もし、彼が九尾の力を扱えるようになっていれば…。」

 

煙の中に目を凝らす。そこには、小さな蛙が居た。

 

「…そうでもないみたいね。」

「尾獣は尾の数だけコントロールが難しくなりますからね。九尾をそう簡単にコントロールできたら天才を通り越して奇奇怪怪の化物の類ですよ。」

「とはいえ、彼は元々、忍の才能には恵まれていない(ほう)ですから仕方のないことかもしれませんね。」

「んにゃ。…人柱力としての才能は忍としての才能じゃないと思うぞ、俺は。尾獣ってのは…ヤバい代物だ。」

 

ヤバいという表現しか思いつかない程の圧倒的なチャクラの塊。それが尾獣だ。人智を超えた存在を御する為に必要なのは忍の才能だけではない。キラービーの先代のビーであったブルービーも尾獣をコントロールする為に“何か”について語っていた。その何かは“愛”だったと後に語られる訳だが。

考え事に耽っていると、乗っていた蛇が急に動き出した。

 

「私とヨロイは自来也を…。その他はお前に任せるわ。」

「残念ですね。ボクも三忍・自来也様と()りたかったのに。」

 

口寄せの術で呼び出した蛇は頭から地面に物凄い勢いで突っ込む。砂煙と礫が舞う中、俺と大蛇丸様が乗った蛇は空中に跳び出した自来也様を見つけ、彼の後ろを取る。

 

「お前の相手はこの私よ!」

 

正々堂々行かなくてもいいのに。後ろからサクッとクナイを投げれば今の自来也様になら手傷を負わせることができたかもしれないっていうのに、何で自分からバラしちゃうかなあ、この人。

 

「土遁 黄泉沼ですか。流石は自来也様ですね。」

 

目の前に自来也様が降り立つ。

 

「が…これでヘビも身動きとれねーのォ。」

「ヨロイ。アナタは私のサポートに徹しなさい。」

「了解です。」

 

睨み合う二人。

先に動いたのは自来也様だった。すばやく印を組んでいく。それを見て、大蛇丸様が駆け出した。それと同時に首を伸ばす。軟の改造、やっぱ凄い。悪い意味で。

自来也様の体が、硬化し棘状となった髪で覆われる。忍法 針地蔵の術だ。しかし、大蛇丸様は引かない、媚びない、顧みない。針地蔵の棘に突き刺さるのにも構わず、蹴りを繰り出す。足の裏に針地蔵の棘が刺さるが、大蛇丸様がそのまま足を動かすと針地蔵のガードが動き、自来也様の首が露わになる。大蛇丸様は、その首に迷いなく歯を突き立てる。

 

「ガハッ!」

「お互いハンデはあっても差は付くものね…。もう諦めなさい。」

 

しかし、自来也様は諦めない。突き刺さったままの大蛇丸様の足を掴み放り投げようとしたが、大蛇丸様の方が一瞬早かった。大蛇丸様は自来也様からジャンプで距離を取る。

 

「フフ…。かつては里の狂気とも呼ばれたアナタが、あんな子一人連れ回して里のために奔走するとは落ちたもの。私の才能を見抜く力は誰よりも確か…。あの子は私の目から見れば凡庸そのもの。」

「フッ…。だからこそだ。」

「…。」

「ワシはうちはのガキなんていらねーよ。初めから出来のいい天才を育てても面白くねーからのォ。」

「クク…。かつての自分を見ているようで放って置けないってワケ?生まれつき写輪眼という忍の才を受け継ぐうちはにあの子は勝てない。なぜなら、ナルトくんは写輪眼を持っていない。…忍の才能とは世にある全ての術を用い、極める事が出来るか否かにある。…忍者とはその名の通り、忍術を扱う者(・・・・・・)を指す。」

「忍の才能はそんなとこにありゃしねぇ。まだわからねーのか?…忍者とは、忍び耐える者(・・・・・・)のことなんだよ。」

「ただの職業名だと思うんスけど…。」

 

一瞬の静寂の後、自来也様が両手の人差し指で俺を指す。ゲッツがこの世界で流行っているとは聞いたことがないんだけどな。

 

「そういうことじゃねーのォ!そういうことを言っているんじゃないってことをお前は分かっていて言ってるよな!?」

「…ヨロイ、アナタの意見も一応聞いてあげるわ。言ってみなさい。」

「え?忍者が何たるかとかちょっとジジ臭くて恥ずかしいんですけど。」

『誰がジジイだ!』

 

おお、二人に同時にツッコまれるとは思ってもみなかった。この二人、コンビネーション抜群じゃん。

で、忍とは、だっけ?

 

「んーとですね。俺は利他的な人物(・・・・・・)が忍って言うんじゃないかと思ってますね。」

「利他的?」

「ええ。自分を消し、里の為に尽くす。それが俺の考える忍の最低ライン。もっと良いのは、自分から里の為に何ができるかっていう考えを持つ者ですね。」

「ワシの考えに近いってことだな?」

「どこがよ?」

「まぁ、近いっちゃ近いですね。里の為に行動する為には自分を消すってことに耐える必要がありますから。…言い忘れていましたけど、忍術を扱うことができるっていうのも忍の条件の一つです。忍術使えねー奴は里の為に行う任務で役に立たないことがほとんどなんで。」

 

再び、蛇の上から地面を見下ろす。

 

「けど、どちらにも重要なのは“諦めねェど根性”ですけどね。忍なんてのは根性が無けりゃ、すぐに鬱になって自殺してますしね。」

 

カブトの拳をナルトが額で止めていた。

最後でモノを言うのは根性、っつーか体力。身体面でも精神面でも要求されるのが忍というお仕事である。それが、ナルトには備わっている。原作を読み切る前に爺さんの天碍震星で天に召されたからナルトが火影になった所は見ていないけど、ナルトは火影になったのだと予想している。物語はハッピーエンドで終わらなきゃいけないというのが持論だ。というより、ハッピーエンドじゃなきゃ泣くね。

 

「色々なことに耐えるのは根性。修業で術を使えるようになるのも根性。で、ナルトはその根性を持っている。忍に向いている、向いていないは度外視するとなかなかいい少年だと思いますよ。」

 

カブトが倒れたナルトを蹴り続ける。ナルトの動きが止まり、カブトが少し離れる。

フラフラとした動きでナルトは立ち上がるとカブトを睨み付ける。

 

「できなければ、もっとやれ。それでもできなければ、更にやれ。部下に常々言っていることです。それでそいつが死ななければ…。」

 

ナルトが影分身の術を使い、もう一人の自分を隣に出現させる。しゃがみこみ震える綱手と、クナイを取り出たカブトがナルトに向かって叫ぶのがこちらまで聞こえた。

 

「ナルト…もうやめろ!」

「そういう意地張ってると…死ぬって言っただろ!死んだら何もかも…夢も何も無いんだよ!」

「もういいからどけ!逃げろ!」

 

鮮血が舞った。

少し笑い、口を開く。

 

「そいつは大きく成長できる。」

 

ナルトの声は大きくはなかったが、はっきりと聞こえた。

 

「オレは…オレは火影になるまで、ぜってェ死なねーからよ!」

 

ナルトの右の掌の上で青白くチャクラが渦巻く。

 

「螺旋丸!」

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。